夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『サイドカーに犬』

2008年01月18日 | 映画(さ行)
『サイドカーに犬』
監督:根岸吉太郎
出演:竹内結子,古田新太,松本花奈,谷山毅,ミムラ,
   鈴木砂羽,トミーズ雅,山本浩司,椎名桔平他

長嶋有の同名小説の映画化。

不動産会社に勤める薫は、
久しぶりに再会した弟の透から、結婚式の招待状を受け取る。
離婚した両親にも出席するよう促したと透に聞き、
小学生だった20年前の夏休みのことを思い出す。

その夏休みは、母の家出で幕を開けた。
わけのわからない商売に手を出した父に母は愛想をつかし、
念入りに部屋を掃除した翌日、突然、家を出た。

父は母を捜すでもなく、ヨーコさんという若い女性を家に呼ぶ。
ママチャリとは大違いの自転車に乗って颯爽と現れたヨーコさんは、
警戒心を示す薫に、「怖がらなくていい」と笑う。
「食事を作りに来ただけだから。買い物に行こう」と誘われて、
薫はおそるおそるヨーコさんについていく。

神経質な母とは対照的に、ヨーコさんは何事につけても大ざっぱ。
仕草も言葉遣いも男っぽくて、ざっくばらん。
買い物はカートにいっぱい、細かい勘定はせずに投げ入れる。
先生が体に良くないと言った自販機のコーラも「飲んでみな」。
おやつに買ってくれた麦チョコは、餌のごとく、カレー皿に山盛りに。
母ならば、カレー皿に麦チョコを盛ることなんて許さない。

怪しげな中古車販売を始めた父が
仲間と麻雀に明け暮れる横で、宿題をする薫と透。
台所には椅子に座って膝を立て、
タバコを吸いながら本を読むヨーコさん。
ヨーコさんと過ごした、衝撃的で忘れられない夏休みの回想。

薫と透のいわば子守りに来ているヨーコですが、
面倒くさそうな素振りはいっさいありません。
薫と透が別のことをしている間は、タバコと読書。
子どもたちが暇を持て余しているように見えれば
さりげなく散歩やキャッチボールに誘う。
真面目で内気な薫は、ヨーコとの距離をあるところから進められずにいますが、
ヨーコはそこにズカズカ踏み込んで来ることもありません。
ヨーコを演じる竹内結子が実に自然体で、
これは彼女の最高傑作なのではと思います。

監督は日活ロマンポルノも多数撮っている人。
こんな人のポルノなら、是が非でも観てみたい気になります。
忌野清志郎の歌も絶妙のポイントで使われ、
エンディングのYUIの曲もぴったり。

その昔、海辺で拾ったカメノテも懐かしく。

嫌いなものを好きになるより、
好きなものを嫌いになるほうがむずかしい。

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