『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(原題:The Last Black Man in San Francisco)
監督:ジョー・タルボット
出演:ジミー・フェイルズ,ジョナサン・メジャース,ティチーナ・アーノルド,ロブ・モーガン,
マイク・エップス,フィン・ウィットロック,ダニー・グローヴァー他
梅田ブルク7にて、『82年生まれ、キム・ジヨン』の次に。
これが長編デビューとなるジョー・タルボット監督。
幼なじみのジミー・フェイルズの実体験を基にしたフィクションで、
主演もそのジミーが務めています。
サンフランシスコなんて行ったこともないのに、なぜか郷愁を誘われる。
黒人青年ジミーは、親友モントの家に居候中。
ジミーはかつて自分が暮らしていたフィルモア地区の豪邸に執着している。
その一軒家は「サンフランシスコで最初の黒人」と呼ばれるジミーの祖父が建てたもの。
父親が税金を滞納して追い出されたが、ジミーはどうしてもまたそこに住みたい。
フィルモア地区は昔と様変わりして、住人には富裕な白人しかいない。
その豪邸にも今は白人夫婦が住んでいるが、庭も壁も手入れが行き届いていないのが許せない。
ジミーは夫婦の留守中を狙って忍び込み、勝手にペンキを塗ったりしている。
帰宅した夫婦にそれを見つかって通報されそうになることもしばしば。
ある日、その夫婦が家を出て行くことになったとジミーは知る。
家族と遺産相続で揉めたらしく、当分この家には誰も住まないだろう。
ジミーはモントを誘い、空き家となった豪邸に移り住むのだが……。
不思議な話です。
細かいことを言えば、ジミーは定職に就いている様子もなく、
居候させてもらえる家があるとはいえ、金をどう工面しているのか謎。
豪邸で寝泊まりするようになったって、食費すらないやんと思ったりも。
ネタバレになりますが、祖父が建てたと聞かされていた家が実はそうではなかった。
あれだけ固執していたのに、それだけがジミーの心の支えであるように思えたのに、
事実は違うと知ったとき。やるせない気持ちが伝わってきます。
何が事実であろうと、ジミーはジミー。父親や祖父をとっくに飛び越している。
それをわからせてくれた友人、モントの存在がとても大きい。
たいして面白いとは思わずに観ていたはずなのに、
鑑賞後しばらく経ってからのほうが映像が頭に蘇ります。