夜な夜なシネマ

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『オートクチュール』

2022年04月06日 | 映画(あ行)
『オートクチュール』(原題:Haute Couture)
監督:シルヴィ・オハヨン
出演:ナタリー・バイ,リナ・クードリ,パスカル・アルビロ,クロード・ペロン,
   スーメ・ボクーム,アダム・ベッサ,クロチルド・クロ他
 
終業後に大阪市内へ出るのが億劫になっている今日この頃ですが、
半日余った有休を消化するため、最後の最後に午後休を取り、
なんばパークスシネマへと向かいました。
 
監督は本作が長編2作目のシルヴィ・オハヨン。
主演は今年73歳になるフランスの名女優ナタリー・バイ
ほとんどW主演といってもいい少女役にリナ・クードリ。
『GAGARINE/ガガーリン』ロマの少女を演じていた彼女です。
 
ディオールオートクチュール部門でアトリエ責任者を務めるエステル。
ベテランのお針子で、次のコレクションを最後に引退を決意している。
 
ある日、地下鉄構内でギター片手に歌う少女の声に耳を傾けていた折、
ハンドバッグをひったくられる。
少女は「犯人を追いかけて捕まえる」とギターをエステルに渡して走って行くが、
実は少女と犯人は友だちで、共謀したひったくり。
ギターを捨てるわけにも行かず、エステルはガックリ。
 
後日、その不良少女ジャドがエステルにハンドバッグを返しに来る。
郊外の団地に暮らす移民二世のジャドをエステルは罵倒するが、
彼女の手を見てお針子の資質を見て取り、アトリエに招き入れる。
見習いとして勤めることになったジャド。
 
厳しいエステルに反発を繰り返し、その都度やめようとするジャドは、
しかしモノを作る楽しさを知り……。
 
音楽がとこどころ大げさです。
オープニングの曲は作品のイメージと異なり、損なっている気すらします。
ただ、そのおかげで興味は惹かれる。
エンディングの曲は単純に音量がデカすぎ。ここまで大音量にする必要がありますか。
 
と、文句は言いたくなるけれど、その点を除けば非常に面白く観ました。
 
ジャドは育ちの悪さが一目瞭然。
可愛い顔をしているのにワガママだし、手癖が悪くてアトリエから香水を盗む。
こんな子に目をかけるエステルにもイライラします。
 
エステルは仕事一筋だったせいで一人娘との仲が断絶。
ジャドの面倒を見ることで償っている気持ちになっているのかもしれません。
そんなところもジャドはお見通しで暴言を吐く。
 
一方のジャドはといえば、ワガママ娘に思えるけれど、いわゆるヤングケアラー
家から一歩も出ようとしない母親の世話をずっとしている。
母親は身体に不自由があるわけではなく、自分は鬱なのだと娘に頼りきり。
ジャドが心を許せるのは団地の真下の部屋に住む不良仲間のスードだけです。
 
エステルの部下たちもそれぞれ悩みを抱えている。
後任の責任者に決まっているカトリーヌはとても良い人だけど、
ジャドのことを敵視するアンドレという人もいて、
アンドレのこのひん曲がった性格はなぜなのかはもう少し描写があってもよかった。
ジャドと恋に落ちるアベルがなぜ本名を名乗らないのかなど、
パリに住む人、お金のある人、それはそれで悩みがあるんだなぁ。
 
オートクチュールのお針子のテクニックが見たいということならば、
本作を見てもそこまではわからないと思います。
ただ、オートクチュールが仕上げられるまでの流れはわかるし、
モデルの存在だったり、「生地の落ち方がいい」なんて話だったりも面白かった。
 
ちょっと非日常的な世界を味わえます。
「奴隷みたいな金額でドレスを作るなんて」という台詞には驚いたけど。
お針子の給料って、そんなに安いんですか。

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