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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『かたつむりのメモワール』

2025年07月16日 | 映画(か行)
『かたつむりのメモワール』(原題:Memoir of a Snail)
監督:アダム・エリオット
声の出演:セーラ・スヌーク,コディ・スミット=マクフィー,エリック・バナ,マグダ・ズバンスキー,ドミニク・ピノン,トニー・アームストロング,
     ポール・カプシス,シャーロット・ベルジー,メイソン・リツォス,ニック・ケイヴ,ジャッキー・ウィーヴァー他
 
『メアリー&マックス』(2008)を観たときは言葉を失いかけました。
そのアダム・エリオット監督の新作は大阪市内へ出向かないと観られません。
TOHOシネマズなんばで鑑賞。
 
エリオット監督の年齢が定かではないのですが、プロフィール写真からはまだそれほどのお歳ではなさそう。
とはいうもののものすごい寡作で、日本で公開された作品は3本のみ。
この3本以外に4本撮っていらっしゃるようですが、それらはすべて短編作品らしい。
もっとようさん撮れんのかいと思わなくはないものの、粘土でこんな造作をするだけでも多大な時間を要するうえに、
毎度アニメとは思えないほどテーマが重いストップモーションアニメなんです。
本作も子ども向けとは到底言えない重さ。アニメだからって子ども向けと思うのがそもそも誤りなのでしょうね。
 
主人公の女性グレースが家族同然に親しかった老婆ピンキーを看取るシーンから始まります。
ピンキーを喪ってひとりっきりになったグレースが、シルヴィアと名づけていたかたつむりに話して聞かせる思い出。
 
1970年代のオーストラリア。
双子の姉弟グレースとギルバートがこの世に生を受けるが、出産と同時に母親は死亡。
口唇裂のせいでいじめられるグレースをいつも守ってくれたのはギルバート。
いよいよ手術したほうがよいということになったときもギルバートが輸血に協力してくれる。
 
母親の亡き後、父親はなんとか子どもたちを育てようと頑張ってきたが、不幸な事故に遭う。
下半身麻痺となってからは酒に溺れ、ある日急死。
グレースとギルバートは別々の家に里子に出されることに。
 
グレースの里親イアンとナレルは「まぁまぁ」の良い人間。
ただ、彼らはスワッピングカップルであるため、ほかのカップルとの出会いの場を求め、
たびたび乱交パーティーヌーディストグループの集まりへと出かけて家を空ける。
そのときにはグレースは置き去りにされるのだ。
 
一方のギルバートの里親オーウェンとルースは農家を営む宗教原理主義者。
言うことを聞かない子どもには悪魔祓いと称して虐待をおこなうのが常。
彼らの実の息子4人のうちベンだけはギルバートとウマが合い、こっそり一緒に遊ぶようになるが、
あるときギルバートとベンがキスしているのをルースに見られ、ホモは悪魔だとして虐待される。
 
グレースとギルバートは会えないまま年月が過ぎてゆく。
処女のまま年頃をはるかに過ぎたグレースは、ついにありのままの自分を愛してくれる男性ケンと出会う。
自分の結婚式にはギルバートに参列してもらおうと、招待状と航空券を送ると……。
 
こうして書いているだけでも、どんなアニメやねんと思います。(^^;
ようやく幸せを掴んだかに見えたグレースでしたが、実はケンがただのデブ好きだとわかります。
グレースのために作ったミルクセーキマシーンも、グレースを自分好みのデブにしたかっただけ。
 
社会に巣食うありとあらゆる問題が込められていて、観ているのが本当につらい。
クレイアニメと言ったって、“ウォレスとグルミット”みたいな可愛いものではなく、
シワだらけの婆さんの死に際の絶叫を聞くシーンから始まるのですから。
 
凄惨な話が続くだけに、最後はちょっと感動。
徹底して叩き落とされて、でも最後には「人生、生きていればいいこともあるよ」と言われているかのよう。

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