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映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『カラスの親指』

2012年11月27日 | 映画(か行)
『カラスの親指』
監督:伊藤匡史
出演:阿部寛,村上ショージ,石原さとみ,能年玲奈,小柳友,
   ベンガル,ユースケ・サンタマリア,古坂大魔王,鶴見辰吾他

先週の土曜日、大阪ステーションシティシネマにて。
封切りしたところなのに、どの劇場も回数が少ないなぁと思ったら、
160分という上映時間がネックなのですね。
何も考えずに予約して、あれ?よく考えたら予告編を含めて3時間?とビックリ。

道尾秀介の著作を初めて読んだのは数年前、『向日葵の咲かない夏』でした。
痛々しい描写や唖然呆然の仕掛けゆえ、レビューサイトの評価は若干低め。
私もこのオチには苦笑いしたものの嫌いにはなれず、文庫化された著作は全部読みました。
やはり評価イマイチの『片眼の猿』と『ソロモンの犬』が大好きで、
京極夏彦を思い起こさせる道尾秀介と真備庄介コンビのシリーズもお気に入り。
十二支をなぞったとおぼしきタイトルもののうちのひとつ、
『カラスの親指』も原作を読み終えて、映画公開を心待ちに。

原作にさまざまなアレンジが加えられ、
冒頭のシーンも銀行ではなく競馬場から始まります。

中年男のタケは、保証人となった友人が飛んだせいで借金を丸ごと背負う。
妻も仕事も失い、幼い娘の沙代を抱えて、借金返済のために自ら取り立て屋に。
しかし、取り立てに行った先の女性が自殺した日、
タケは事務所から顧客リストを抜き出して警察へと持ち込む。
おかげでヤミ金業者は一網打尽にされ、平穏な生活が訪れるかに思えたが、
自宅から原因不明の火が出て、留守番をしていた沙代をも亡くす。

傷心のまま、詐欺師として生きるようになって8年。
タケはひょんなことから初老の詐欺師テツと出会い、コンビを組むことに。
今日もひとつ詐欺を働こうと街へ出たところ、
若い女がスリに失敗して追われているのを見かけ、
同業者として放ってはおけないと、彼女を助ける。

彼女の名はまひろ。
タケは、まひろが8年前に取り立てのせいで自殺した女性の娘であることに気づく。
家賃が払えずもうじき部屋を追い出されそうだというまひろに、
タケはテツと暮らす自分の家へ来ればいいと思わず声をかけてしまう。

数日後、まひろは姉のやひろとその恋人である貫太郎を連れて、本当にやって来る。
こうして家族のように暮らしはじめる5人だったが、
やがてこの家にもタケへの昔の恨みからか嫌がらせが起こるように。
逃げてばかりはいられないと、5人は一世一代の勝負に打って出る。

原作にはみごとに騙されました。
未読のほうが映画を素直に楽しめるし、驚きもあると思いますが、
原作を読んでいるからこそわかる伏線があって、めちゃ楽しい。
ビミョーな価格設定の違いは映画のほうが納得の金額。
原作のままだとややこしくなりすぎそうな部分は上手にやんぴ。
村上ショージの標準語にはやはり違和感があるけれど、赤井英和よりはマシ。(^^;
まぁまぁいい配役だったのではないでしょうか。

理想的な詐欺は、相手が騙されたことに気づかない詐欺。
そんな原作中の言葉を思い出しながら、ニヤリ。
原作をお読みになった方は、原作とは大きく変更された点もお楽しみください。

テツが最後に読んでいた文庫本、タイトルまでは見えなかったのですが、
ジャケットの色から想像するに『向日葵の咲かない夏』では。違います?

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