南英世の 「くろねこ日記」

中国不動産バブル

先日、柯隆先生の講演を聞き興味を持ったので、最新作(2024年4月20日発行)を読んでみた。

 

チャイナリスクに備えよ

1978年の改革開放政策は輸出主導による経済発展を目指した。1990年代に入ってそれまで取り残されていた都市開発が急ピッチで進められ、不動産ディベロッパーの起業ラッシュが起きた。そして2000年代に入って不動産ブームが起きた。2008年には北京オリンピックが開かれ一人当たりGDPは3000ドルを超えた。

しかし、恒大集団が2021年にデフォルトを起こしたことに象徴されるように、いま中国経済は不動産バブル崩壊の危機に立たされている。中国における不動産業は中国経済の3割を占める。もし、不動産バブルが崩壊すればディベロッパーだけではなく国有銀行、地方政府並びに地方が管理する年金財政に大きな影響が出る。

2013年に習近平政権が誕生して以来、中国の経済成長率は低下の一途をたどっている。なぜ中国で不動産バブルが起きてしまったのか。習政権の欠陥とは何か。中国共産党一党独裁と市場メカニズムは両立できるのか。中国経済の第一人者が「チャイナリスクに備えよ」とわかりやすく解説する。

 

ワイロは中国社会の潤滑油

著者はこの中で、中国における所得分配の基本構造を鋭くえぐっている。下図を見ていただきたい。

中国では権力中枢に近いほど富が集まる構造になっているという。例えば地方政府が不動産ディベロッパーに土地の使用権を入札させる際には、ディベロッパーから地方政府高官に多額のワイロが提供される。中国ではワイロは「社会の潤滑油」なのだそうだ。ワイロは現金であったり、マンションであったり、香港やアメリカ西海岸の豪邸であったりする。ワイロが外国資産であれば悪事がばれにくいのだそうだ。共産党幹部の中には数十戸から100戸以上のマンションを所有する人が少なくないという。

そうしたワイロの「経費」は当然マンションの販売価格に反映される。つまり、実質的に負担するのはマンション購入者であり、中国では貧乏人から富裕層に富が吸い上げられる構造になっているという。(うーん、なるほど。でも中国だけかな?)

そのほか、教科書には載っていない面白いエピソードがいっぱい書かれており、中国の実態を知る上で貴重な本である。柯先生は逮捕されないように、こうした本は中国語では絶対に書かないのだと先日の講演で笑いながら言っておられた。

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