柯隆先生の3冊目の本である。2014年に発行された本だが、今読んでも新鮮である。印象に残った言葉のいくつかを紹介する。
◆鄧小平の「先富論」はごまかし。一部の人が豊かになった後、残りの大半の人はいかにして豊かになれるのか。彼は何も語っていない。
◆中国共産党に入れば莫大な利益を手にすることができる。たとえば、共産党幹部が入院すれば、それを聞きつけた企業が数百万円単位のお見舞いを持ってくる。だから、あっという間に数千万円がたまる。もちろん、これはワイロであり、見返りとして仕事を回してもらえる。社長の仕事は共産党幹部の入院先をいち早くつかむことだという。
◆共産党の末端まで利益が行き渡れば「共産党万歳」「習近平万歳」となり共産党体制は盤石となる。
◆中国の権力闘争はすさまじい。習近平を含め全員が命の危険を感じながら毎日の政治活動を行っている。権力闘争に敗れれば憐れな末路が待っている。その権力闘争は日本企業の社長選びに似ていて、ブラックボックスに入っている。ただし日本では命までは取られない。
◆ 中国共産党も日本の自民党も、触れられたくない歴史を抱えている点では同じである。自民党は日中戦争、中国は文化大革命と天安門事件である。
◆中国の「愛国教育」とは毛沢東を絶対視し「神様」扱いにすることである。
◆日本は性善説社会だが、中国は性悪説社会である。飲み屋でも日本は後払いだがこれは性善説を前提にしている。中国でビジネスを展開しようとするならば、中国が性悪説社会であることを前提にしてビジネスを進めることが重要である。それは中国の文化であり、中国では「だまされる方が悪い」のだ。
中国社会の現実を知るうえで役に立つ本である。