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南英世の 「くろねこ日記」

テレビは真実を伝えない

『テレビ局の裏側』は2009年に出版されたものであるが、今も状況は似たり寄ったりではないか。番組作りの裏側が書いてあって面白かった。

テレビ局には、フジ・TBS、テレビ朝日、日テレなどがあるが、これらは主にコマーシャルをとる営業活動が中心で、実質的に番組を制作するのは下請けの制作会社である。テレビ局はプロデューサーを一人出すだけで、実質的には下請けに丸投げする。

プロデューサーは番組の予算・部下の管理・視聴率の達成などすべての責任を負う。プロデューサーの指示でディレクター(そのディレクターも時には派遣社員だったりする)が動き、視聴率を上げるために、過剰演出、やらせ、捏造なども行われる。「川口浩の探検シリーズ」や「納豆を食べれば痩せられる」といったたぐいの事例はたくさんある。

捏造がばれても、「悪いのは下請けで・・・」と言い逃れができる。下請けの制作会社も視聴率が取れないと次に仕事がもらえないので必死で数字の取れる番組を作る。だから小学生が見ても分かる番組ばかりになる。「正確性」よりも「おもしろさ」が優先されるのがテレビの世界である。

この本を読んで初めて知ったことがある。それはワイドショーのつくり方である。月曜日から金曜日まで「帯番組」のワイドショーを作る場合、月・火・水・木・金の番組をそれぞれ別の制作会社に下請けに出すのだそうだ。そして、制作会社同士で競わせる。最近、ウクライナ情勢を伝える似たような番組が連日報道されているが、よくまあネタ切れにならないで次から次番組を作るものだと思っていたが、こういう仕掛けになっているとわかって納得した。

クイズ番組も視聴率をとるためのバラエティ番組である。問題作り、解答作りもすべて専門の担当者が行い、解答者はそれを演じているに過ぎない。番組の企画、構成、レポーターの台本、司会者の台本などを放送作家に依頼することもあるらしい。

 

おっと、今日はそんなテレビ界の裏話を書くことが目的ではない。そろそろ本題に入ろう。

「テレビは真実を伝えない」。

このテーマを思いついたのは、昨日のNHKのニュースを見ていた時である。ニュース番組は「金食い虫」なので民放は力を入れないからNHKの独壇場である。そのNHKのニュースで、最近の急速な円安について財務大臣と黒田日銀総裁のコメントを流していた。

まず、事実を確認しておこう。今年に入って1ドル=115円から一気に1ドル=135円まで急速に円安が進んだ。原因はアメリカの金利引き上げである。FRBは8%というインフレを抑えるために金利を引き上げたが、その結果生じた日米の金利差が円安の引き金となった。

円安を食い止めるためには基本的には日本の金利を引き上げるしかない。しかし、ニュースの中で財務大臣も日銀総裁も、「金利を引き上げれば景気が悪化する。だから日本の金利を引き上げることはできない」という趣旨の説明をしていた。

これは間違いではない。しかし、真実のすべてではない。

金利を引き上げることができない理由の一つは「金利を引き上げれば国債の金利負担が増加し、財政が保たない」ということではないか。単純に考えて、金利を1%引き上げれば、1000兆円の借金の金利負担は10兆円増える。10兆円というと消費税5%分に当たる。来月に迫った参議院選挙を国債発行によって乗り越えようとしている自民党にとって、金利負担が増えるとまた増税されるかもしれないなどと余計な連想されては困る。だから、なるべく触れないようにしたのではないか。

第二の理由は、金利を引き上げれば国債価格が暴落する。その結果、500兆円も国債を保有している日銀は大損をし債務超過になる可能性が高い。日銀が債務超過に陥れば日銀券に対する信用がなくなり、これはただでは済まない。

第3の理由は、財務省自身がインフレを望んでいるということである。日本にインフレが進行すれば発行した国債残高の実質的価値は目減りする。返済が楽になるというものである。

NHK職員も、真実を国民に伝えて政府ににらまれるよりは、今の高給取りのポジションを維持したいはずである。だから、あえて政府発表以上には踏み込まないのではないか。

あるいは、難しいことを言っても国民には伝わりにくい。だから国民が理解できるレベルでしかテレビは伝えない。案外、真相はこの辺りなのかもしれない。

 

昨日、『朝日新聞政治部』という本を読んだ。

その中にこんな言葉があった。

「君たちね。せっかく政治部に来たのだから、権力としっかり付き合いなさい」「権力とは、経世会、宏池会、大蔵省、外務省、アメリカ、中国である」。1999年、27歳だった著者が政治部に着任した際に上司から聞いた訓示である(注:当時はまだ清和会は非主流であった)。

マスコミの仕事とは権力を監視することだと思っていたが、特ダネをとるためには権力の懐に食い込み権力と仲良くしなければならない。それが時には癒着になることもある。権力が嫌がる記事を書けば、次から情報をもらえなくなる。新聞記事の多くは所詮その程度のことでしかない。権力にとって不都合な真実はなかなか表面には出ない。出るのは、せいぜい文春砲のスキャンダルぐらいか。

日本は自由な国だと思っている人が多いが、報道の自由度ランキングは世界第11位(2010年)から、67位(2021年)に下がっている。いやいやまだまだ大丈夫? 香港80位、ロシア150位、中国177位、北朝鮮179位(笑)。ゆでガエル理論を思い出した。

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