世界的に有名な音楽コンクールが開かれ、観客が次々に会場に集まってきた。
日本人とドイツ人は開始1時間前に到着した。
アメリカ人は開始ちょうどに到着した。
フランス人は5分遅れて到着した。
イタリア人は15分遅れて到着した。
スペイン人は30分遅れて到着した。
ポルトガル人は・・・いつ来るか誰もわからない。
これを聞いたスペイン人が反論した。
日本人は自分は時間を守る1位国だと思っているかもしれないが、日本人が守るのはスタート時間だけだ。5時に終わる予定の会議が7時まで続くというのはザラではないか。ラテン系は時間を守らないというが、5分や10分遅れるのとどっちが悪いのか?
私はこの手のエスニックジョークが大好きである。確かに、日本では開始時間にはうるさいが、終了時間については極めてルーズだ。
もう一つ紹介する。この話は有名であるから聞いたことがある人も多いだろう。
豪華客船が沈没しかけている。船長が「ボートが不足しています。女性と子どもを優先します。男性は海に飛び込んでください」と叫んだ。
アメリカ人には「英雄になれる」と言ったら飛び込んだ。
イギリス人には「ジェントルマンでしょ」と言ったら飛び込んだ。
ドイツ人には「規則です」と言ったら飛び込んだ。
イタリア人には「飛び込むな!」と言ったら飛び込んだ。
日本人には・・・「みんな飛び込んでいます!」と言ったら飛び込んだ。
よくできたジョークである。なぜこんな話を持ち出したのか?
理由は、日本とドイツの労働時間の差を説明するためである。2017年に私は「ドイツに学ぶ働き方改革」について書いた。
http://homepage1.canvas.ne.jp/minamihideyo/doitu%20ni%20manabu.html
しかし、この記事を書いた時には、まだ日独の本質的な違いを理解していなかったように思う。現在日本の年間労働時間は1724時間、ドイツは1298時間(いずれも2016年統計)。年間で426時間も日本のほうが長く働いている。1日8時間労働とすると、日本はドイツより年間2か月近くもよけいに働いていることになる。日本のサービス残業を加味すれば、実際の差はもっと大きいだろう。日本とドイツの労働時間の差はなぜ生まれるのか?
三国丘高校の卒業生が医者になってドイツに行った時のことを話してくれた。「先生、向こうではクジゴジが当たり前ですよ」。「クジゴジ」とはもちろん勤務時間が「9時から5時」のことである。
先日紹介した『ドイツの学校にはなぜ部活がないのか』という本の中に、こんなエピソードがあった。
ドイツの小学校は朝8時に始まって13時には終わる。13時になれば先生もみんな自宅に帰ってしまう。学校には日本のような職員室はなく、長机が置かれた会議室のような部屋がその役割を果たしている。それで、みんな自宅に帰って授業の準備をしたり、採点をしたりするのである。
ある時、小学校で教育実習の反省会が行われた。13時になったので実習生が「先生、もう13時になりました」といったところ、先生も「あら、まあもうこんな時間。では終わりにしましょうね」と反省会がお開きになったというのである。実習生から申し出ることもすごいが、それで反省会をさっさと終了させる先生もすごい。日本では考えられない。
ドイツ人は時間を守る。規則も守る。だから就業規則も守られるのが当然だと思っている。
労働時間をきちんと守れば、消費者に対するサービスは当然悪くなる。ドイツでは「サービス砂漠」という言葉があるそうだ。「お客様は神様」とされる社会と「サービス砂漠」のどちらがいいのか。考えどころである。
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