375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

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名曲夜話(31) シベリウス 『4つの伝説曲(レミンカイネン組曲)』

2008年03月30日 | 名曲夜話② 北欧編


シベリウス 『4つの伝説曲(レミンカイネン組曲)』(作品番号22)
1.レミンカイネンと島の乙女たち
2.トゥオネラの白鳥
3.トゥオネラのレミンカイネン
4.レミンカイネンの帰郷
オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団
録音: 1999年 (BIS-CD-1015)
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名曲夜話の第31回目、今回はいよいよロシア・ソ連系以外の作曲家が登場する。

北欧フィンランドの大作曲家、ジャン・シベリウス(1865-1957)。19世紀から20世紀にかけての激動の時代を生きた彼は、7つの交響曲を始めとして、多くの傑作を世に遺した。そして晩年の30年間にわたる沈黙。幻の第8交響曲はどこへ消えたのか? 没後50年にして、未だ解決されざる謎の多い作曲家でもある。

今回からしばらくの間、名曲夜話・北欧編と題し、日本でも人気の高いシベリウス、ニールセン、グリークをはじめとする北欧の作曲家にスポットを当ててみたい。

音楽史では、シベリウスは国民学派の作曲家に分類されることが多い。この国民学派というカテゴリーは、一般的には19世紀後半に活躍したロシア系、東欧系、北欧系の作曲家を総称して用いられる。一言でいえば、西欧系の伝統的な音楽に対抗して、独自の語法でおらが国の音楽を創造しようとした作曲家たちを指しているのである。

これまでの名曲夜話でも見てきたように、国民学派に分類されるロシアの作曲家は、自国に伝わる民話・昔話を、作品の題材として取り上げることが多かった。シベリウスの場合も、まったく同じように、特に初期の頃は自国に伝わる民話・昔話から題材を得ていた。

そして、シベリウスが最も好んで用いた民話・昔話のネタ本が、全50章から成る壮大な国民的叙事詩集カレワラ(Kalevala)」である。シベリウスは、デビュー作のクレルヴォ交響曲以来、このカレワラの中で展開される物語に、多大なインスピレーションを受けていた。そして、このカレワラ・シリーズの中でも最も充実した作品が、1893年から95年(作曲者28~30歳の時期)にかけて書かれた、この4つの伝説曲(「レミンカイネン組曲」とも言う)である。

4つの伝説曲は、カレワラの第11、14、15章に歌われている、若者レミンカイネンの恋と冒険の物語に霊感を受けて書かれた4楽章の交響詩で、当初はオペラを作曲しようとして行き詰まり、計画を変更したものと言われる。しかし、出来上がった作品は素晴らしく、もともと4楽章構成を意図して書かれた交響曲を聴くかのような、充実した音のドラマを楽しむことができる。

第1曲レミンカイネンと島の乙女たち
冒険心旺盛の若者レミンカイネンがサーリ島に行き、乙女キュリッキに求婚。ところが他の娘たちが彼に好意を示したのに対して、肝心のキュリッキは彼の愛を拒絶する。やむなく、レミンカイネンは踊りの最中にキュリッキを強奪することに踏み切り、ようやく結婚を承服させて、母親の待つ故郷へ連れ帰った。

第2曲トゥオネラの白鳥
もともとは、オペラの前奏曲として着想された作品。白鳥の浮かぶ黄泉の国トゥオネラ川の情景を描いた神秘的な音楽で、単独でたびたび演奏・レコーディングされる。

第3曲トゥオネラのレミンカイネン
キュリッキと別れたレミンカイネンは、今度は北の国ポヒョラの乙女を得るために、3つの難題に挑戦する。しかし、最後の難題であるトゥオネラ川の白鳥を射ようとした時、待ち伏せていたライバルの手によって命を落とす。彼の死体は黄泉の国に運ばれ、5つに切り裂かれる。

第4曲レミンカイネンの帰郷
レミンカイネンの母親は、鍛冶屋に作ってもらった大きな熊手で川に散った息子の体をかき集めた。そして呪文と薬の力で彼を生き返らすことに成功。レミンカイネンは依然としてポヒョラの娘への未練を語るが、母親に説得されて故郷へ帰っていく。

以上が物語の概略だが、もちろん、このような予備知識がなくとも、音楽の素晴らしさだけで十分に感動できる。人気曲なのでCDの種類は多いが、個人的に最もよく愛聴しているのは、ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団の演奏。見通しの良い小編成のアンサンブルで、シベリウス特有の神秘的な静けさと、北国のローカル色あふれる雰囲気を堪能できる名演だ。

このCDには通常の4楽章版の他に、第1曲と第4曲の初稿が収録されているのが興味深い。同じ作品であることは明らかなのだが、曲の展開やオーケストレーションが微妙に違っていたりするのを確認することができる。

他のCDでは、ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団の演奏(DGG 453 426-2)が素晴らしい。手作りの味が際立つヴァンスカ盤とは対照的に、大編成オケによる血潮の吹きすさぶような迫力が聴きものだ。



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