シベリウス 交響曲第1番ホ短調(作品39)、第4番イ短調(作品63)
オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団
録音: 1996年[第1番]、1997年[第4番] (BIS-CD-861)
---------------------------------------------------------------------
ふつう、シベリウスの交響曲と言えば、番号のついた第1番から第7番までの7曲のことを指す。ほとんどの「シベリウス交響曲全集」には、この7曲が収録されている。
もっとも、厳密に言うと、この7曲の前に、「クレルヴォ交響曲」(作品7)という標題付きの交響曲があるし、7曲の後に、ほぼ完成されながらも破棄されたらしい「交響曲第8番」という作品の存在も議論されたりする。ただ、「クレルヴォ交響曲」に関しては、1892年に初演された翌年から、シベリウス自身がこの曲の演奏を禁止し、生前は楽譜の出版も認めなかったし、「第8番」もシベリウス自身が破棄した以上、最終的には存在しなかったもの、と考えたほうがいいだろう。ここでは、まずシベリウスの遺志を尊重して、正式に認められている7曲の交響曲を採り上げてみたい。
まず「第1番」。前回の「4つの伝説曲」でも紹介したように、初期のシベリウスは、祖国フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」をはじめとする民話・伝説から作品の題材を得ていた。1899年に作曲された「第1番」は、初期の民話・伝説路線の雰囲気を残した作品で、荒削りではあるが、土俗的な迫力に満ちた魅力作である。
第1楽章の序章。ティンパニのトレモロに続く、「カレリアの弔い人の嘆きを暗示する」と言われる、クラリネットの旋律。伝奇的な雰囲気の中で、北欧の大自然を連想させるような雄大なテーマが、起伏豊かに展開されていく。
第2楽章は緩やかなアンダンテだが、平和な雰囲気の中で、荒々しく盛り上がる自然の脅威が聴きもの。第3楽章はブルックナー風の野人的スケルツォ。すさまじいティンパニの強打が最後の追い込みをかける。
第4楽章は「幻想風に」と指示された序奏的なヴァイオリンの旋律で始まり、次第に盛り上がって、嵐のような情景が繰り広げられる。嵐が一段落すると、夢のような美しい旋律。その後、テンポの速いアレグロの主題が突き進み、やがて回帰する美しい旋律とフーガ風に絡みながら、雄大で感動的なエンディングを迎える。
この曲に関しては、ベルクルンド、サラステ、ヤルヴィ、セーゲルスタム…と、ほとんどのシベリウス指揮者が名演を残しているが、ここでは「手作りの味」が際立っているヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団のCDを挙げておこう。
ヴァンスカ盤のカップリングは、「第1番」から12年後の1911年に初演された「第4番」。こちらは暗く、内省的で、行きどころのないような閉塞感に満ちた音楽。「第1番」のような大自然の凄みは期待できないが、その代わり、無駄な音がまったくない、幾何学的とも言えるほどの緻密な魅力を味わえる作品である。人によっては、シベリウスの最高傑作に数えたりもする。
最初のうちは親しみにくいかもしれないが、繰り返し聴き込んでモチーフを覚えてくると、急に病みつきになってくる不思議な音楽だ。
最新の画像[もっと見る]
- ●LIVE体験記(8) 「スコットランドの歌姫」 ニーナ・ネスビット(Nina Nesbitt)の野外ライヴ 11年前
- ●LIVE体験記(8) 「スコットランドの歌姫」 ニーナ・ネスビット(Nina Nesbitt)の野外ライヴ 11年前
- ●LIVE体験記(8) 「スコットランドの歌姫」 ニーナ・ネスビット(Nina Nesbitt)の野外ライヴ 11年前
- ●LIVE体験記(8) 「スコットランドの歌姫」 ニーナ・ネスビット(Nina Nesbitt)の野外ライヴ 11年前
- ●LIVE体験記(8) 「スコットランドの歌姫」 ニーナ・ネスビット(Nina Nesbitt)の野外ライヴ 11年前
- ●LIVE体験記(8) 「スコットランドの歌姫」 ニーナ・ネスビット(Nina Nesbitt)の野外ライヴ 11年前
- ●LIVE体験記(8) 「スコットランドの歌姫」 ニーナ・ネスビット(Nina Nesbitt)の野外ライヴ 11年前
- ●天才歌姫!ジャッキー・エヴァンコ特集(4) 『SONGS FROM THE SILVER SCREEN』 11年前
- ●天才歌姫!ジャッキー・エヴァンコ特集(4) 『SONGS FROM THE SILVER SCREEN』 11年前
- ●天才歌姫!ジャッキー・エヴァンコ特集(3) 『HEAVENLY CHRISTMAS』 11年前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます