気が重い。
どのように書くべきなんだろうか?
まず、今回の定額給付金についてのWeb記事を記載する。
*麻生首相が10月30日発表した新総合経済対策は、「生活対策」と銘打ち、
<生活支援定額給付金>などを盛り込んだ。
直接の財政支出にはならない中小企業向け支援で総事業規模は26.9兆円と膨らみ、小渕政権が98年に実施した「緊急経済対策」の23兆円超を超える大型になった。
<朝日新聞:2008年10月30日>
*自民、公明両党は12日、政府の追加経済対策の目玉である、
<総額2兆円の生活支援定額給付金>について、給付額を1人当たり1万2000円、18歳以下と65歳以上には8000円を加算することなどで正式合意した。
懸案だった所得制限は給付窓口となる各自治体が実情に応じて有無を含めて判断し、制限する場合は所得1800万円(給与収入概算2074万円)を下限とすることを決めた。
<MSN産経ニュース:2008年11月12日>
本来の目的は、アメリカで起こり世界を巻き込んでいる金融危機の経済対策として考えられ浮上した計画案のはずだ。
しかし、蓋を開けてみれば選挙の思惑も絡み、迷走に次ぐ迷走。
この迷走ぶりを、見事に表現した読売新聞の社説。
*定額給付金は、福田内閣が公明党の強い要請で打ち出した定額減税が姿を変えたものだ。
減税だと、税金を払っていない所得の低い世帯には恩恵が及ばない。
給付金なら所得に関係なく支給でき、景気刺激にも即効性がある、というのがその理由だ。
だが、政府・与党内から、高額所得者は対象外にすべきだ、という声が出て迷走が始まった。
当初は「全世帯が対象」と明言した麻生首相も、党内の声に押され、
「高額所得者には辞退してもらう」などと軌道修正した。
ところが閣内からさえ「辞退というのは制度ではない」との指摘があり、結局、高額所得者の扱いを市町村に委ねる中途半端な手法を取らざるを得なくなった。
選挙対策として華々しく打ち出し、詰めは衆院選の後でやればいい。
そう考えていたが、解散先送りで予定が大いに狂った。
(11月13日付・読売社説)
困ったことになってきた。
世界中が震えあがっている、<大恐慌への危機感>がまるで感じられないこの国の政府与党の動き(他の政党も含め)には、呆然とするばかりである。
このブログでは、先週のアメリカ大統領選挙に関連して、アメリカの大統領の言葉やキング牧師の言葉を記事にしている。
大統領選挙戦後、何度も登場している、
バラク・オバマ氏の<勝利宣言スピーチ>の中に下記の一説がある。
There are mothers and fathers who will lie awake after the children fall asleep and wonder how they'll make the mortgage or pay their doctors' bills or save enough for their child's college education.
多くの父親や母親達は、子供達が眠った後に、
どのように住宅ローンを支払い、
どのように医療費を支払い、
どのように大学に進学する学費を確保するか、
を眠れずに思案している。
今、多くの日本人が求めている言葉を上記のスピーチは端的に示している。
しかし、
日本の政府(あるいは官僚機構)は、
「誰が困っているのか?」
を認識していない。
今後起きるだろう大リストラ計画に不安を抱く多くの家庭。
意に反して、派遣社員やアルバイト労働者として働かなければならない若者達。
金融危機の煽りを受けて借り入れがままならない多くの中小企業とその労働者。
進出してくる大手量販店の価格破壊に人生を狂わされた地方商店街。
失業の恐怖や、就業格差の問題に何の配慮もないこの都度の計画に、
良識ある国民は<自分の身に置き換え>、不安を増幅している。
“たぶん、彼等は、私達が困っていても何もしてくれない”と。
例えば、
ある石川県の家庭、Aさんの場合。
91歳の新聞社勤めだった父と、一部上場企業の事務職をしていた87歳の母。
Aさんは65歳で、学校の校長を務め、妻は職場で知り合った同僚の教師。
息子は38歳で、都会で就職して所帯を持っており、
33歳になる娘は、市役所に勤めながらこれまた同僚と結婚し、
車で10分の市内に嫁いでいる。
91歳の父は、7年前から身体の具合を悪くし、医療機関に入っている。
Aさんには、持ち家があり、家族4人でコツコツと貯めた数千万円の預金を持っており、
Aさんが手にする、
国から支給される4人分の年金は、月額100万円に近い。
娘は、そんなAさんを頼りにしており、5歳と2歳の2人の孫を妻に預け、毎日の勤めに出かける。
そんなAさんの目下の不安は、
「国が税金の無駄遣いをせず、年金が安定して支給されること。」
である。
次に、
同じ市内に住むBさんの場合。
今年、55歳になるBさんは、母と妻と子供の4人暮らし。
もともと父の家業を継いで電気屋をしていたBさんは、バブルがはじけた1990年頃までは、何の不安も持たず毎日を暮らしていた。
1994年、父が死に少しの得意先を失ったものの、
息子2人を養うに困らないほどの収入はあった。
1999年頃、長男が大学に通いだす頃に家計が圧迫。
妻は、事務を中心に家業の手伝いをしていたのだが、支出に対する収入不足から、外にアルバイトに出るようになった。
長男も都会の大学でアルバイトをしながら、家計の負担を減らそうと努力した。
ところが2001年。
町の郊外に、大型の家電量販店が進出してきた。
それも年をまたいでの、2店舗の進出に経営が困窮。
その年、次男も大学進学を控えていたのだが、次男は家計への配慮から近くの専門学校へ進学。
Bさんは、自分への情けなさを感じる間もなく、量販店との価格競争に太刀打ちできず、さらに逼迫した経営状態に銀行からの貸し渋りにあい経営を断念。
上の子が大学を卒業した2003年のことだった。
50歳になったBさんは、就職する当てもなく、55歳になった今でも派遣登録をして、その日、その日をしのいでいる。
母は、父の国民年金の内、わずかばかりの給付を受け、
妻のスーパーでのパートは、10年目を向かえる。
長男は、都会の中堅商社に就職。
次男は、地元の中小企業に就職したものの長続きせず、
今はコンビニでアルバイトをしながらも将来を夢見る。
2人が卒業したことで、生活は困窮とは言えないまでも、
先の見えない暮らしに光明が見えない。
ただ、息子2人を育てるための数百万円借り入れの返済がいまだ未納である。
そんなBさんは言う。
「あの時、意固地になって家業を続けていれば今頃この家も取られていたかもしれない。1990年には3000万円していたこの家の地価も、商店街の衰退と共に今では800万円でも買い手が付かない。勿論、この住宅も担保には入っているが、畳の上で眠れる幸福を感じる。」
2つの話をフィクションととらえるか、実話ととらえるかは、読まれる方の地域差もあると感じる。
しかし、おおよそ<閉じられたシャッター>が多いとされる市町村では、誰もが一度は、耳にする話ではないだろうか?
今回の定額給付金が支給される額は、
*Aさんの家族は、4人分=8万円。
*Bさんの家族は、4人分=5万6千円。
これが、この都度の政府の決定である。
もう一度、同じ言葉を記載する。
つまり、
日本の政府(あるいは官僚機構)は、
「誰が困っているのか?」
を認識していない。
今後、次々と起きるだろう大リストラ計画に不安を抱く多くの家庭とその家族。
意に反して、派遣社員やアルバイト労働者として働かなければならない若者達。
金融危機の煽りを受けて借り入れがままならない中小企業と、その労働者。
進出してくる大型量販店の価格破壊に人生を狂わされた地方の商店街。
失業の恐怖や就業格差の問題に何の配慮もない政府の計画に、
良識ある国民は<自分の身に置き換え>、不安を増幅している。
“たぶん、彼等は、私達が困っていても何もしてくれない”と。
下記、10月31日:
<中日新聞>のWeb記事を転載。
http://www.chunichi.co.jp/article/politics/news/CK2008103102000050.html
麻生太郎首相は30日、首相官邸で記者会見し、世界的な金融危機の影響を緩和するための新たな総合経済対策「生活対策」を発表した。
給付金の支給と政策減税を柱に、生活者や国内企業へのさらなる支援を行う狙いだ。
同時に、将来的な社会保障費の財源確保の重要性も強調し、景気回復を条件に「3年後に消費税の引き上げをお願いしたい」と表明した。
首相は「現在は100年に一度の暴風雨」と危機感を訴えた上で、消費税を上げるまでの3年間は減税など景気対策を優先する方針を示した。
首相が消費税の引き上げ時期を明言するのは異例。
2011年度以降、段階的に税率を引き上げる方向とみられる。
年末の税制改正議論で、自民党の税制調査会(税調)を中心に、所得税や法人税、相続税も含めた税制改革の全体像をまとめ、
「2010年代半ばまでに段階的に実行する」と明記した。
総合経済対策の事業規模は過去10年で最大の約27兆円で、国の財政支出は5兆円に上る見通し。
費用を手当てするため、麻生首相は08年度第2次補正予算案を編成する方針だ。
財源には、特例措置として「霞が関埋蔵金」といわれる特別会計の準備金の一部を充てる。赤字国債は発行しない。
生活者対策の柱となる「給付金」は、全世帯を対象に年度内に実施。総額2兆円で「4人家族で6万円程度」(首相)になる見通し。
証券優遇税制は現行のまま3年間延長。
今年で期限切れになる住宅ローン減税も延長し、減税幅も過去最大規模に拡大する。
企業向けにも、省エネ設備などを購入した場合などに税制を優遇する「成長力強化税制」を導入する。
また中小零細企業の経営は特に厳しさを増しているため、法人税の優遇措置をさらに緩和するなど支援策を広げる。
このほか、地方公共団体への支援として、国の道路特定財源約3・3兆円のうち1兆円を地方に配分する。
これまでも地方の道路整備促進のために約7000億円を交付してきたが、別枠で支給する。
【 追加経済対策の骨子 】
▼事業規模は26・9兆円、国費は5兆円。
▼総額2兆円の生活支援定額給付金、
4人家族で6万円程度を本年度内に支給。
▼雇用保険料引き下げ。
▼住宅ローン減税を過去最大規模に拡充して延長。
▼中小企業向けの融資や保証枠を前回対策と合わせて30兆円に。
▼金融機関への予防的な資本注入枠を拡大。
▼高速道路料金の大幅引き下げ。
▼道路特定財源から1兆円を地方に。臨時交付金も支給。
▼赤字国債は発行せず、特別会計の準備金を財源に活用。
▼消費税を含む税制改革の全体像を年末に提示。