待ちに待った納車の日
いや、“待った”ぐらいの感覚かな
とにかく親父にとって、13年ぶりに新車がやってきた
午前中、10時頃には来ると聞かされていた
お互い、冷静を装いつつもどこかワソワソ
パソコンに向かい仕事をしているフリをしていると
ドアをノックする音が
「車来たけど、見る?」
どこかドライにと言うか、クールに
「あぁ、来たの?」
と返せればいいんだろうけど
そこはどうにも、クワクワして
それでいて冷静さを保っては
「あぁ」
って出て行く
車に乗り込みディーラーの担当者の説明を
聞いている
たぶん、ほとんど頭の中には入っていないだろう
「今までと一緒やろぉ?」
どの説明をしても、最後はその台詞
そりゃそうだろう、車だからね
と
僕はそれでいいのだが、可愛そうなのは担当者
まぁ、向こうも色んな人に車売ってるわけだから
こんな事は日常茶飯事なんだろうけど
さて、担当者も帰り
二人でじっくり新車を拝見
やっぱり新車はいいもんです
汚れていない窓ガラス
この匂い
運転席に座ってハンドルを握る顔は
まさに子ども
とっても嬉しそうな親父
あぁ、よかったね!って一段落
仕事の続きに取り掛かっていると
ふたたびドアをノックする音
「ちょっと、乗ってくるわぁ!」
どこまで嬉しいねん!って突っ込んでみたが
仕方がない
新車がやってきて喜ばない男はいない
車を見る目は、もう純粋そのもの
何歳になってもこの瞬間だけは、子どもに戻るんですよ
男は