糖尿病でインスリン治療を受けておられる方は、日常生活において自分で血糖を測定することに馴染みがあるかもしれません。血糖値に応じて、打つインスリン単位数を変更したり、食事量や運動量を調節することは非常に重要なことです。
今回、最新の持続血糖測定器(FreeStyleリブレ)を使用する機会がありましたのでご報告します。
特徴は、簡便性です。今までは、一回一回いちいち指の皮膚を細い針で穿刺し、出てきた血液を測定用紙に染込ませて測定していました。しかしリブレでは、最初に上腕の皮膚にセンサーを留置してしまえば、以後2週間、本体を近づけると、瞬時に今の血糖値を知ることができます(もちろん入浴も可能です)。
また何もしないでも15分おきに血糖値を測定してくれるので、睡眠中の血糖変動も知ることができます。
さて、糖代謝が全く正常な人(HbA1c 5.5%未満)は、どんなに沢山食べても、逆に食べなくても血糖値は80~140mg/dlの範囲内におさまります。しかし、HbA1cが5.6%以上の方は、食後に(重症化すると空腹時も)高血糖になっています。
注:HbA1cは、過去1~2ヶ月間の血糖の平均を表す指標ですから、HbA1c高値の人でも血糖変動の激しい方や、糖尿病薬を飲んでいる方は低血糖になることもあります。
上のグラフは、私のある一日の血糖変動を示しています。オレンジの丸は食事開始ポイントです。一日を通して(睡眠中も)、ほぼ80から140mg/dlの間を推移していますが、昼食後に血糖値が200を超えています。残念ながら私は、食後高血糖という立派な糖代謝異常といえます(ちなみにHba1c 5.7%です)。
ここで注目すべきは、昼食後の高血糖です。ちなみに、朝食は、ナッツ、果物、ヨーグルト。昼食は、お弁当。夕食は、おかず(たくさんの野菜を含む)とアルコール(ビール350ml+ワイン少々)です。量(カロリー)は、三食ほぼ同量と思います。
昼食後のみ高血糖になっているのは、ご飯(糖質)を摂取しているためと思われます。主食と呼ばれる米、小麦(パン、麺類)、いも類は、糖質が豊富で、血糖が急激に上がります。逆に、蛋白質、脂質、野菜、アルコールなどでは血糖の上昇はほとんど見られません。
最近健康番組でよく耳にすることとの一つに、野菜、おかずを先に食べて最後にご飯を食べると血糖が上がりにくいというのがあります。要は、先に食物繊維を摂ると糖質の吸収がゆっくりとなり、急激な血糖上昇が抑えられるというものです。これは会席料理の順番にも似ており、先人の知恵には感心しますが、やはり食事に一定の時間をかけるというのが条件になります。
今回も、昼のお弁当はおかずを先に食べ、最後にご飯を食べているのですが、食事時間がせいぜい15分程度では、血糖上昇抑制効果はほとんど期待できないことがわかります。
次に、糖尿病薬の効果を見てみましょう。
上段は、DPP4阻害剤とビグアナイドの合剤を朝食後に内服した時、下段は、グリニドとαグルコシダーゼ阻害剤の合剤を昼食直前に内服した時の血糖推移です。それぞれ作用機序や容量・用法が違う薬ですから直接比較することに意味はありませんが、見事に食後高血糖を抑えています。
最近の知見では、HbA1c高値だけでなく食後高血糖も血管内皮を傷つけ動脈硬化を促進させることが知られていますので、これらの薬を上手に使い食後高血糖を抑えることにも重要な意味があります。
2週間の間、自分の食生活習慣が血糖に及ぼす影響を観察することができ、私自身非常に勉強になりました。残念ながらまだ保険適応ではないため、皆様に積極的にお勧めできないのですが、この持続血糖測定器は自己血糖管理を身近にする非常に有望なツールだと感じます(ただ瞬時に血糖測定ができるので、甘いものが食べれなくなるという“食の楽しみ”が奪われる欠点もあります)。
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