よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

生活習慣病の治療(2)

2011-10-01 15:46:46 | 健康・病気

さて今回は、生活習慣病の治療のもう一つの柱である運動療法についてお話したいと思います。

人以外の生物は、動けなくなるということはすなち、“餌がとれない=死”を意味しています。しかし現在の日本人は、動けなくても食べることができるため死ぬことはありません。しかし、運動は、①摂取するカロリーが基礎代謝量(呼吸、循環など安静にしていても生命活動に必要なエネルギー量)以上の場合に、その余分なエネルギーを消費する、②心肺機能を高める、③気分を高揚するなどさまざまな重要な役割を担っています。

運動療法の柱は、2本あります。一つは有酸素運動で、もう一つは筋力トレーニングです。

有酸素運動というのは、酸素を十分取り込みながら持続的な運動を行い、体内に脂肪として蓄えられたエネルギーを燃焼させる運動のことです。代表的な運動として、散歩、ジョギング、サイクリング、登山、水泳などがあります。例えば、体重60kgの人が、1時間散歩すると125Kcal消費します(水泳だと440kcal)。一般的には20分以上連続して行なうことが、体脂肪燃焼には効果的だと考えられています。

次に筋力トレーニングですが、これは筋肉量をアップすることにより基礎代謝を上げる効果があります(1kg筋肉が増えると50Kcal基礎代謝が増えます)。基礎代謝が上がると安静時のカロリー消費量が増え、食事で取り過ぎたカロリーが体に脂肪として蓄積されにくくなります。具体的には、自宅で腹筋や腕立て伏せをしたり、ジムで本格的に鍛えるということになります。

また最近では、運動とわざわざ畏まらなくても、日常生活での家事、動作をすることでもある程度の効果があると考えられています(非運動性行動熱発生 NEAT)。

以上、運動にもいろいろありますが、基本は歩くことです。「老化は足から」という言葉もありますが、筋肉の2/3が下半身にあるためエネルギー消費や筋力アップに効率的です。また足は第二の心臓といわれるように血液循環も良くなります。その他、認知症の予防には各種の脳トレよりも歩くことが最も効果的だといわれています。

ただし、運動も突然死、関節痛など体にとってマイナスの原因になることもありますので、心配な方は主治医にご相談ください。

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生活習慣病の治療(1)

2011-10-01 15:22:22 | 健康・病気

 最近、糖尿病・高血圧・脂質異常症という生活習慣病の患者が増えているという報道を聞かれた方も多いと思います。過剰な内臓脂肪蓄積が原因となるメタボリック症候群はその代表的疾患です。この生活習慣病の治療の根幹はやはり食事・運動療法です。これは、江戸時代の儒学者、貝原益軒の有名な『養生訓』にも出てきますが、一言でいえば“元気で長生きするには、食べ過ぎず、よく歩く”とういことです。

 人類の歴史を振り返ると、現代を除くと、生きるためには飢餓との戦いでした。したがって、食欲は生きていく上で最も重要で、我々の遺伝子の中に強固に埋め込まれています。いざ飽食の時代になっても遺伝子は急には変わりません。わかっていてもついつい食べ過ぎてしまうのは、本能に沿っているからにほかなりません。しかし一方で、食べ過ぎると体の調子が悪くなることも、我々は日常生活で経験し知っています。先日NHKで、食事制限がサーチュイン遺伝子(老化を抑制する働きがある)を活性化するという放送をしていました。食事の量を今の7割にして2ヶ月程度続けると、すべての人がもっているこのアンチエイジング遺伝子を活性化できるというものです。

 ではどうしたら食事の量を減らすことができるでしょうか? ○○ダイエット!? あるいはモデルの写真と鏡の中の自分とを見比べながらダイエットに励む方もおられるでしょう。先に野菜をしっかり食べてお腹を太らせるというのもいいでしょう。でも私が誰にでもできる効果的で簡単な方法だと思うのは、ゆっくり味わいながらしっかり噛んで(一口30回)食べるということです。咀嚼することで満腹中枢を刺激し無理なく食べすぎを抑えてくれます。加えて消化もよくなり、食後の血糖上昇もゆるやかになります。

 先人から言い伝えられた言葉ではありますが、“栄養バランスのとれた内容を、ゆっくり、しっかり噛んで腹八分目で食事を終える” これが食事療法の極意だと思います。

 次は、運動療法についてお話したいと思います。

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