よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

自分で脈をとってみよう(2)

2016-04-29 15:03:26 | 健康・病気
有名な元プロ野球監督や元総理大臣が、突然脳卒中で倒れマスコミで話題になり知名度が上がったのが“心房細動”とよばれる不整脈です。年齢とともに発症頻度も増えますが(80歳以上の高齢者では8%)、40、50代の方にも珍しくはありません。

 心房細動とは、文字通り心臓の心房と呼ばれる部屋が小刻みに(バラバラに)興奮する不整脈です。心房が心室と連関して規則的に収縮しないため、心臓のポンプ機能が約2割低下すると考えられています。 この不整脈は、発作性(数分~7日以内持続)、持続性(自然停止せず7日以上持続)、慢性(除細動不能)と分類されます。
 症状は、動悸、労作時息切れ、胸部不快感などが一般的ですが、全く無症状の方もおられます。
 原因は、加齢、高血圧、心臓弁膜症などに伴う心房筋の変性に、肺静脈や上大静脈からの異常興奮が伝導して起こると考えられています。

 心房細動は、不整脈自体による症状以外に、重要な問題点が二つあります。一つは、ポンプ機能低下による心不全です。もう一つが、心房内に血液がうっ滞することにより、心房内に血栓とよばれる血の塊ができることです。この血栓が、血流に乗って流れていき末梢動脈に詰まると、何の前触れもなく突然塞栓症を引き起こします。脳動脈に詰まると脳塞栓症となり、半身麻痺など重篤な合併症をきたします。

 治療として、症状の改善には、再び規則正しい脈に戻すために抗不整脈薬や電気的除細動、カテーテルアブレーションをおこないます。規則正しい脈に戻らない場合は、たとえ無症状でも心不全発症の予防と血栓形成の予防が必要です。

 皆様も、時には自分の脈を触れてみて、生まれてから一日も休まず動き続けてくれている心臓をチェックしてくださいね。
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自分で脈をとってみよう(1)

2016-04-29 15:00:18 | 健康・病気
今回は、脈についてお話します。

通常心臓は、1分間に60~80回、規則的に拍動し全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしています。皆様も自分の手首(親指の付け根あたり)で血液の拍動を感じることができると思います。これが脈です。
心臓の拍動の異常が、”不整脈“と言われ、心臓がドクンとする、動悸がする、ふらふらする、気を失うなどの症状の原因になります。
不整脈には、脈が速くなる(頻脈)、遅くなる(徐脈)、飛ぶ(期外収縮)など様々なタイプがあり、直ちに治療をしないと死に至るものから、ほっといても特に問題ないものもあります。日中にでやすいタイプ、夜間に出やすいタイプなど出現時期に特徴があるものもあります。
また不整脈を自覚する程度には個人差があり、一つ脈が飛んだだけでしっかり感じることができる方もおられる一方、総拍動の3~4割が不整脈でも全く自覚症状のない方もおられます。

さて、不整脈はなぜ起こるのでしょうか?
心臓の筋肉の中には、電気的な興奮が伝わる道筋(刺激伝導路)があり、これが心臓の拍動を規定しています。その伝導路の一部が、途切れたり、余分な伝導路があったり、筋肉細胞の一部が勝手に興奮したりして不整脈は生じます。これには、先天性、感染、変性、高血圧、加齢などが原因になります。また心臓に異常がなく、貧血、脱水、甲状腺機能異常、食道からの機械的刺激、精神的要因などにより生じる場合もあります。

治療は、不整脈の原因・種類により異なります。緊急を要する電気的除細動(最近街でも見かけるAED)、ペースメーカー植え込みから抗不整脈薬による薬物療法、息こらえ、頚動脈マッサージなどが有効な場合もあります。最近では、高周波を用いて不整脈の原因部分を焼灼して根治する治療もあります(カテーテルアブレーション)。

さて、自覚症状がない不整脈はすべて放置していいのでしょうか?
次回は、最近注目されている不整脈“心房細動”について解説します。
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