よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

高血圧と塩(1)

2012-09-29 11:19:17 | 健康・病気

今回は、高血圧と塩についてお話します。

今や日本人の三割(40歳以上に限るとと半数近く)が罹患しているといわれる高血圧症ですが、その治療に塩分制限があることはご存知のことと思います。現在平均的日本人は、一日に10g以上の食塩を摂取していると考えられていますが、高血圧の方は、6g未満に制限しましょうというものです。

疫学調査によると、塩分摂取の多い地域は高血圧患者が多く、塩分をほとんど取らない地域(民族)では高血圧はありません。 一方で、塩分摂取の多い方がすべて高血圧になっているわけでなく、また塩分制限が高血圧治療に有効な人とあまり効果のない人がいるのも事実であり、一律に塩分制限を指導するのは間違っているという議論もあります。

そもそも、血圧と塩はどのように関係しているのでしょうか? 

人の体内環境は、海の組成に近いことが知られており、これは生命の源が海から生まれたことに起因します。すなわち体内には多量のナトリウム(塩)が含まれています。祖先は、海から陸上に生活の場を移す時に、海中にふんだんにあった水・ナトリウムを体内に保持するシステムを作り上げる必要がありました。これが腎臓を中心とする水・ナトリウム調節機能です。さらに、海中では、重力は浮力の影響で大気中の1/6ですから、血液が重力に逆らって体内を循環するのに必要な血圧は15mmHg程度でした。しかし、陸上で動き回るには、100mmHg近くの血圧が必要になります。この血圧を規定しているのが、循環血液量(水分量)と全身の血管抵抗です。循環血液量は主に腎臓により調節されていますから、塩と血圧はきってもきれない関係になっているわけです。この血圧維持機構を専門的にはレニン・アンジオテンシン系といいます。

さて、古代ローマでは、塩が兵士の給料として支給されていました(英語のsalary=給料はラテン語sal=塩から派生しているそうです)。また日本でも、「敵に塩を送る」ということわざがありますが、昔から塩は貴重品であり、摂取しすぎることはありませんでした。この状況では、レニン・アンジオテンシン系が有効に働き、適正な血圧が保たれていました。

ところが、近代になり塩が手軽に入手できるようになると、・・・ 続きは次回にお話したいと思います。

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