よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

糖尿病の薬物治療(2)

2015-08-21 18:13:14 | 健康・病気
新薬のなかで最も注目され使用頻度が増えているのがDPP4阻害薬です。血糖依存性のインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制があり、低血糖をきたしにくい、体重増加させないなど優れた特性があります。

糖吸収・排泄調節系の薬剤として、αグルコシダーゼ阻害薬(ベイスン、セイブルなど)とSGLT2阻害薬があります。 αグルコシダーゼ阻害薬は、炭水化物の吸収を遅延することで食後高血糖を改善します。 SGLT2阻害薬は、腎臓での糖再吸収を阻害して尿中に糖を排泄する作用があり、今までにない体重減少が期待できる新薬です。

内服薬ではなく注射薬ですが、GLP1製剤(ビクトーザ、バイエッタなど)も新しい薬です。この薬は、DPP4阻害薬と同様の作用機序でより高い効果が得られます。膵臓のβ細胞(インスリンを分泌する細胞)の保護効果も期待されています。

2型糖尿病においてもインスリン製剤は重要です。特に、高血糖が続き膵臓機能が落ちている時(糖毒性といいます)には速やかに血糖を下げるための必須の治療になります。作用時間により、超速効型、持続型、前2者の混合型の種類があり、生活パターンにより使い分けています。

以上が最近の糖尿病の薬物治療の概要になりますが、ここ数年で多くの新薬が登場し質のいい血糖コントロールが可能となっています。昔から使用している薬で副作用なく良好なコントロールができている方はよいのですが、今ひとつの方は新薬を試してもよいと思います。

さらに最も重要なことは、なるべく早期に厳格な血糖コントロールを実現することです。これにより、糖尿病の合併症を有意に減らすことが大規模臨床研究にて明らかにされています。誰しも注射薬より内服薬による治療を希望されますが、早期から注射薬を使う方がよい場合もあることをご理解ください。
そして、薬物治療を行う場合も、食事・運動療法が基本にあることは忘れないでください。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

糖尿病の薬物治療(1)

2015-08-21 18:07:40 | 健康・病気
前回、“血糖管理は、量(HbA1cを下げる)だけではなく質(食後高血糖や低血糖を避ける)も重要”とお話しました。今回は、最近の薬物療法の進歩についてお話します。

1型糖尿病(絶対的インスリン不足)には、やはりインスリン治療しかありませんが、インスリン製剤の進歩により、生理的なインスリン分泌と同様になるように管理することができるようになっています(強化療法:基礎インスリンとして持続型インスリン一日1回打ちと追加インスリンとして超速効型インスリン食直前3回打ち)。さらに今年から、自己血糖を持続的にモニターしながらインスリンを持続注入する機器も保険適応となり実用化されています。

2型糖尿病は、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大により相対的インスリン作用不足となり高血糖をきたす病態です。ここ数年の新薬登場により病態に応じて薬物を使い分けられるようになってきました。

インスリン抵抗性改善系として、ビグアナイド薬(メトグルコ、メデットなど)とチアゾリジン薬(アクトス)があります。 特に、ビグアナイド薬は昔からある薬で安価な上、どのタイプの患者さんにも使いやすいため欧米では第一選択薬になっています。主に肝臓での糖新生を抑制します。 チアゾリジン薬は、筋肉・肝臓でのインスリン感受性を改善します。

次にインスリン分泌促進系として、スルホニル尿素薬(アマリール、グリミクロンなど)、グリニド薬(グルファスト、シュアポストなど)、DPP4阻害薬(ジャヌビア、エクア、ネシーナなど)があります。 日本人は遺伝的にインスリン分泌が少ない人が多いため、スルホニル尿素薬が第一選択で使用されることが多かったのですが、低血糖になることがある、体重増加しやすいという欠点があり、最近では少量のみ使用することが多くなりました。 グリニド薬は食後高血糖を改善するよい薬ですが、食直前3回内服しなければならないのが難点です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする