よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

新型コロナウイルス対策 分子栄養学的アプローチ

2020-04-06 18:17:37 | 健康・病気
 新型コロナウイルス感染が世界的に流行しています。日本でも連日感染者の増加が報道され、いつ終息するのか不安に過ごしておられることと思います。
特効薬がない現況では、感染予防がなにより重要です。対策として、マスク着用、うがい、手洗いに加えて、三密(密閉、密集、密接)を避ける生活などが薦められています。
 今回は、分子栄養学的アプローチから感染予防を考えてみます。

 ウイルスや細菌などの病原体が感染するためには、体内に①侵入②定着そして③増殖することが必要です。それに対抗して、体には種々の免疫機構が備わっています。

 まずは、のどや鼻腔の粘膜から分泌され、病原体の侵入を防ぎ体内に入る前に体から排出する役割をになう粘液です。粘液には、ムチンや抗菌タンパク(カセリシジン、ディフェンシン)、IgA抗体などが含まれています。ムチンや抗菌タンパクの産生に必要なのが、十分な水分硫黄を含むアミノ酸ビタミンDです。IgA抗体は主に腸管のリンパ節で産生されます。IgA分泌細胞を活性化するには、ビタミンA(レチノール)、グルタミン亜鉛が重要です。
 粘膜の強化と免疫細胞活性化に必須のアミノ酸がグルタミンです。グルタミンは、各種ストレスに応じて筋肉から取り出されますが、感染のストレス下では不足する可能性があり積極的に摂る必要があります。

 病原体が侵入してから重要なのが、免疫細胞(好中球、リンパ球、貪食細胞など)の賦活化です。ビタミンCは、免疫細胞産生増加、好中球の機能アップ、抗ウイルス作用を有するインターフェロン産生、殺菌作用のある活性酸素や次亜塩素酸から細胞を守る、など様々な作用を有しています。前述のビタミンDは、インターフェロン分泌を促進しウイルス消失率を高め、この場面でも活躍します。
 天然抗生剤様物質として注目されているものとして、オリーブ葉から抽出したオーレユーロペンがあります。これは、直接的あるいは好中球を介して間接的に病原体殺菌作用がありますが、ヒト細胞にはダメージを与えない、腸内細菌を乱さないなど安全性もある優れものです。その他、糖タンパクの一種であるラクトフェリン、様々なフラボノイドを含むハーブなども抗菌作用が認められています。

 病原体の定着・増殖を抑えるために炎症が起こりますが、過剰な炎症は病態を悪化させます。過剰な炎症を抑える役割をするのがオメガ3脂肪酸(EPA,DHA)です。これらは、炎症メディエーター(ロイコトリエン、プロスタグランディンなど)を抑えるだけでなく、抗炎症メディエーター(レゾルビン、プロテクチンなど)の材料となり直接的に炎症を抑える働きをします。
 さらにミネラルの中でも、マグネシウムは、各種タンパク代謝に欠かせないだけでなく、抗炎症作用も指摘されています。セレンは、抗酸化物質の構成成分として知られていますが、ビタミンC再生にも関与しています。

 一方、腸内細菌も免疫機能を高めるのに重要です。腸内環境を改善し善玉腸内細菌を増やす食品として、水溶性食物繊維(海藻、熟した果物、イモ類)、プロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌)、発酵食品(味噌、納豆、漬物)などが知られています。

 これらの栄養素を積極的に摂取するとともに、あわせて十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理に気をつけて総合的に免疫力を高めることが、新型コロナウイルスから身を守ることにつながります。皆でこの難局を乗り切りましょう。

 最後に上記の栄養素を含む代表的な食品を列挙しておきます。ただ、食品からでは十分量の摂取することができない場合もあります。その際には、適宜サプリメントを利用されるのも効果的です。

タンパク質(アミノ酸): 卵、肉、魚、豆類
ビタミンC: イチゴ、キウイ、柑橘類、緑色野菜
ビタミンD: 魚の内臓、レバー
ビタミンA: レバー、卵、ニンジン、ウナギ、タラ肝油、バター
亜鉛: 牡蠣、牛肉、レバー
ラクトフェリン: 牛乳
オメガ3脂肪酸: 青魚、亜麻仁油、えごま油
マグネシウム: 海藻、ナッツ、魚貝類、バナナ
セレン: かつお節、バター、ナッツ (ただし摂り過ぎもよくない)




参考文献:「新型コロナウイルス対策 感染防御と栄養の関係」 溝口徹 アドバンスセミナー特別講義       
     「分子栄養学のすすめ」 三石巌 阿部出版
     「新型コロナ対策(オーソモレキュラ医学会の報道関係者向け説明会より)」 松本明子 
      HP: 内科医が教える「遺伝子から体を変える」DNA健康法

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