典型的な急性心筋梗塞の症状は、冷汗、嘔気、嘔吐を伴った30分以上持続する前胸部の絞扼感です。これら激しい胸痛を自覚したなら直ちに救急車を要請するのが正解です。病院に行く途中に心停止になることも稀ではありません。この場合、最近いろんな場所で目にするAED(自動体外式除細動器)が役に立つかもしれません。
いずれにせよ一刻も早く、閉塞した血管を薬物やバルーン、ステントを使ったカテーテル治療によって再開通させることが重要です。再開通までの時間が早ければ早いほど心筋のダメージが少なくなります。治療がうまくいくとほとんど心筋壊死をおこさず一週間程度の入院と退院後のリハビリですむ場合もありますが、広範囲の心筋壊死がおこった場合は心不全を合併したり、重篤な不整脈が起こり最悪亡くなったりします(最近の院内死亡率は5%程度ですが、病院にたどり着く前になくなる方もたくさんおられます)。
さて、この命にかかわる心筋梗塞を予防するにはどうすべきでしょうか。
まずは、先ほどの動脈硬化を促進させる危険因子をしっかり管理することです。食生活の乱れや運動不足から肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症をきたし、いわゆるメタボリック症候群になっている方は要注意です。また喫煙は、動脈硬化を促進させるだけでなく、血栓形成にも関与しますから絶対に避けるべきです。
また心筋梗塞は、夏よりも冬の寒い時期に多く、しかも低気圧の時に多くなる傾向があります。また明け方から午前中の時間帯に多いことも知られています。原因として交感神経活動や血液凝固能が亢進していることが考えられています。普段の生活でも、入浴、夜間のトイレ、寒い日の外出など急激な温度変化が血圧上昇をきたしプラーク破綻の引き金になりますから、十分な寒さ対策が重要になります。
皆様は、この時期、広島県医師会が、心筋梗塞予報を毎日発表しているのをご存知ですか? その日の天候に応じて、心筋梗塞発症危険度のレベルを普通・注意・警戒の三段階で発表しています。特に先に述べた動脈硬化の危険因子をお持ちの方は是非参考になさってください。