よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

“血糖”について考えてみよう!(2)

2014-04-01 18:47:46 | 健康・病気

 巷では、ダイエット目的で、いろんなカロリーゼロ飲料が売られています。カロリーゼロならと安心して飲まれている方もおられるかもしれませんが、これにも大きな落とし穴があります。 まず、カロリーが本当にゼロではない可能性があります。100gあたり5キロカロリー以内なら「カロリーゼロ」「ノンカロリー」「カロリーフリー」などと表示できるからです。

 

次に、糖の替わりにサッカリン、アスパルテーム、スクラロースなどの人工甘味料が使われていますが、これらは砂糖より数百倍の甘味があります。これらを摂取し続けると、逆に食欲が増進して太りやすくなることがわかってきました。この理由として、①肥満ホルモンといわれるインスリンやインスリン分泌を促すインクレチンを増やす、②甘みに対する味覚が鈍くなり、自然の甘さでは物足りなくなり、食べ過ぎたり砂糖を追加したりする、③食欲増進作用のあるグレリンを胃などの消化管から分泌させる、④薬物依存症と同じように脳の神経伝達物質に影響して甘み依存症をきたす、などが考えられています。

 

さらに、これらのカロリーゼロ飲料を愛飲する人は、ジャンクフードと呼ばれる高カロリー高脂肪の食事を好む傾向があり、食生活が偏っているため糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病になりやすいという実態もあるようです。

 


  では、コーラなど炭酸飲料に入っている異性化糖(別名 果糖ブドウ糖液糖)と呼ばれる天然甘味料は大丈夫でしょうか?
果糖は、ブドウ糖と代謝経路が違い直接血糖を上げることはありません(無論、カロリーはありますし中性脂肪が上がります)。したがって、ブドウ糖を摂取した場合は満腹感が得られても、果糖の摂取では満腹感が得られず食べ過ぎる可能性があります。また果物から果糖を摂取する場合は、食物繊維やビタミンなども同時に摂取できるため適量摂取はメリットもあるのですが、異性化糖入り飲料水から摂取する場合は、カロリーオーバーに注意する必要があります。

 

あの手この手で魅力的(あるいは健康に良さそう)に宣伝された飲料水の「甘い罠」には、皆様くれぐれもご注意くださいね。

 


“血糖”について考えてみよう!(1)

2014-04-01 18:43:20 | 健康・病気

糖尿病の方のみならず、“血糖”という言葉は皆様ご存知だと思います。“血糖”とは、血液中に存在するブドウ糖の濃度で、健常者では空腹時100mg/dl前後で食後でも140mg/dl以下保たれています。

この血糖値が異常に高くなっている状態を高血糖といい、空腹時126mg/dl以上あるいは食後2時間値200mg/dlの方を糖尿病といいます。

一方、ブドウ糖は、脳が唯一利用できるエネルギー源ですから、血糖がある程度以下(50mg/dl以下は特に問題)になると脳の活動が低下して意識消失をきたすことがあります。(これを低血糖といいます)。

 

さてそれでは、ヒトの血液中には一体どれくらいのブドウ糖が溶けているのでしょうか?

ヒトの血液量は、体重60kgではおよそ5リットルです。血糖が100mg/dlというのは、逆算すると体中の血液にブドウ糖がわずか5g(ティースプーン1杯!)が溶けている状態ということになります。

 

一般的なジュース350mlの中に溶けている糖分の量は35g程度です。これが吸収されると血糖が一気に上昇します。健常者ではこの時、すい臓から適切なインスリンが分泌されて、ブドウ糖を肝臓や筋肉に取り込んで速やかに血液中の血糖を正常値まで下げることができます。糖尿病の方は、インスリン分泌が少ないか、分泌されたインスリンを有効に活用できない(インスリン抵抗性がある)ことにより、高血糖状態が続き、血管や臓器にダメージを与え続け、のちのち恐ろしい合併症(脳卒中、心筋梗塞、腎不全、網膜症など)を引き起こします。

 

たかがジュース1本といえども、体中の血液に溶けているブドウ糖の何倍も糖を含んでいるのです。医者が、「水分補給はジュースではなく水かお茶にしなさい」と指導する理由がご理解いただけると思います。

では、今流行りのカロリーゼロ飲料は大丈夫でしょうか? 次回はそのあたりについてお話したいと思います。