よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

新型コロナウイルスQ&A  ~最新研究を踏まえて~

2020-06-08 18:53:15 | 健康・病気
 前代未聞の全国緊急事態宣言も段階的解除になり、やっと少し平穏な日々が戻ってきましたが、まだまだ第二波の心配など予断を許さない新型コロナウイルス。今回は、最新研究も踏まえてQ&A形式でお送りします。

 Q.新型コロナウイルス(正式名称 SARS-Cov-2)とは?
 A.直径100~200nmのエンベロープと呼ばれる脂質や糖蛋白質でできた膜状構造物に一本鎖RNA遺伝子を内包したウイルスです。従来コロナウイルスは、感冒の原因になる4種類に加えてSARS,MERS(いずれも重症急性呼吸器症状を引き起こします)が知られていましたが、今回、中国武漢市で見つかった新型は7つ目となります。このウイルスによる感染症をCOVID-19と呼びます。

 Q.感染経路、潜伏期間は?
 A.手指を介しての接触感染や咳・くしゃみによる飛沫感染、あるいは呼吸や発声によるエアロゾル感染が考えられています。ウイルスは、単独で増殖することはできず、前記の経路を介して、ヒトなどの宿主細胞(鼻咽頭、舌、肺、小腸など)に侵入・感染して増殖します。
潜伏期間は、2~7日(平均4日)と言われます。他の多くのウイルス感染症と違い、発症する4日前から他人を感染させる可能性があり(ピークは発症前2日~発症直前)、発症後6日以降は感染力がなくなるということが最近わかってきました。

 Q.症状は?
 A.発熱、倦怠感、筋肉痛、咳、痰など一般的な風邪症状が発症初期に見られます。その他やや特徴的なのは、嗅覚・味覚異常の出現頻度が高いです。ただ呼吸器症状が全く見られず、無症状あるいは下痢、食欲不振などの消化器症状のみの方も一割程度おられます。
80%の方は軽症でとどまり、多くは一週間程度で回復します。しかし、20%弱の方が肺炎による呼吸困難などで重症化し、5%の方が集中治療を要します。死亡率は1~2%です。

 Q.重症化しやすい人の特徴は? 逆に日本人は重症化しにくい?
 A.高齢者および高血圧、糖尿病、肺疾患、心疾患、免疫不全など基礎疾患をもっている方あるいは喫煙者は重症化率が高いです。
一方、欧米人に比較して、アジア人(中国、韓国、日本、ベトナムなど)は死亡率が低いことが報告されています。原因として、生活習慣、BCG摂取歴、遺伝子(免疫応答の違い、HLA型)、流行しているウイルス型の違いなどが考えられていますが、まだ結論はでていません。
 
 Q.検査所見や診断は?
 A.一般血液検査では、白血球は正常から低下(リンパ球は35%で低下)。CRPは軽度上昇。肝障害は35%にみられますが、腎障害はまれです。胸部レントゲン写真では、初期の肺炎など異常を捉えにくく、胸部CTが有用 です。
確定診断には、鼻咽頭ぬぐい液を採取し、PCR検査(ウイルスの遺伝子を調べる。感度70%と高いが検査時間がかかる)や抗原検査(ウイルスの蛋白質を調べる。感度60~70%とやや劣るが検査時間が短い)を行います。
血液でウイルス抗体を調べることにより、ウイルス罹患歴の有無を判定することができます。風疹や麻疹のように罹患により終生免疫が獲得される場合は、多くの人がウイルス抗体を持つことで今後の流行を抑制することが期待できます。しかし新型コロナウイルスに関しては、できた抗体がどれだけ長期にウイルス再感染予防に役立つかは、今のところ不明です。

 Q.治療は?
 A.今のところ確立した有効な治療法はありません。軽症者は、普通の感冒と同じように対症療法になります。現在、抗ウイルス薬のレムデシビルが日本でも治療薬として認可されました。その他ファビピラビル(アビガン)、ロピナビル、ステロイドのシクレソニド(オルベスコ)、蛋白分解酵素阻害薬のナファモスタット(フサン)などが治療薬として研究されています。

 Q.予防は?
 A.石鹸による手洗いアルコールでの手指衛生により、ウイルスは不活化します。また顔を極力触らないことも重要です。環境面の消毒としては次亜塩素酸ナトリウム0.05~0.1%(500~1000ppm)が有効です。
無症状(あるいは潜伏期)でもウイルスに感染していれば他人への感染力があるため、マスク着用は有用です(感染防御にはN95マスクが必要)。3密(密接、密集、密閉)を避ける社会的距離をあけることも必要でしょう。
免疫力を上げるには、前報で紹介した食事、十分な睡眠(休息)、適度な運動を心がけてください(感染防御に有用なサプリもご紹介しております)。
ワクチン接種による感染予防も期待され開発がすすんでいます。しかし、ワクチン接種後にウイルスに自然感染すると通常よりもかえってウイルスを取り込みやすくなる「抗体依存性感染増強」という現象も知られており懸念材料になっています。  

   参考文献:日経BP『日経メディカル4月号 新型コロナ 感染爆発に挑む』
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