よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

脂肪の話(4)

2015-04-28 14:42:09 | 健康・病気
 ここで飽和脂肪酸(パルミチン酸など)は、動物性脂肪に多く含まれます。熱には強いのですが、摂取量が多いとLDLコレステロールを上昇させ動脈硬化を促進させやすいと考えられます。ただし短鎖や中鎖脂肪酸(ココナッツ油)はすぐエネルギーとして利用され中性脂肪の上昇を抑え、脂肪代謝を活発にして体脂肪を減らす効果も指摘されています。
一価不飽和脂肪酸の代表がオリーブ油に多く含まれるオレイン酸です。オレイン酸にはLDLコレステロールを下げ、HDLコレステロールを上げる抗動脈硬化作用があり、酸化されにくい性質があります。 尚、飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸は生体内で生合成することが可能です。

 一方、多価不飽和脂肪酸は生体内で合成することができないため、食事から摂取しなければならず必須脂肪酸と呼ばれます。多価不飽和脂肪酸は、n-3系とn-6系とn-9系にわかれます。n-3系の代表が、α-リノレン酸(エゴマ油、亜麻仁油など)と青魚に豊富に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DHA)で、抗血栓作用、抗炎症作用、中性脂肪低下作用など抗動脈硬化作用があります。 n-6系の代表がリノール酸(紅花油、コーン油、大豆油など植物油)です。リノール酸はLDLコレステロールを下げる作用があり積極的に摂取することがすすめられていましたが、代謝過程でできるアラキドン酸が増え逆に動脈硬化を促進することが示され過剰摂取は体に悪いといわれています。さらに植物油は加熱し固体化(マーガリン、ショートニングなど)すると一部トランス脂肪酸がつくられ動脈硬化症のリスクになります。
 n-3系とn-6系の脂肪酸の摂取バランスが重要と考えられており、現代人は肉類や植物油の摂取が多く、魚の摂取が少ないため、バランスが崩れて動脈硬化性疾患が増えていることが懸念されています。日本人の食事摂取基準(2010年版)によると、EPA+DHAを1g/日以上(魚では約90g以上)摂取することを推奨しています。いわし、さんま、さばといった魚を積極的に食べることが若々しい血管を保つ秘訣といえます。

 ただし、いくら体にいい油だとしてもとり過ぎはカロリー過多になります。また長寿食として有名な地中海食も、オリーブ油だけでなく十分な野菜・果物、良質なたんぱく質も一緒に摂取していただくことが重要であることを忘れないでください。

脂肪の話(3)

2015-04-28 14:36:03 | 健康・病気
脂質異常症に対する治療として、まず試みるべきは食事療法です。
原則は、「油ものを控えなさい」という指導になりますが、高コレステロール血症と高中性脂肪血症では食事療法の内容が少し違います。一般的には、高コレステロール血症の方には、脂質は総エネルギーの25%以下(主に植物性脂肪から摂取)にし、コレステロールの多い肉の脂身、レバーを控え、食物繊維をしっかり摂るようにします。ただし食事由来のコレステロールは3割といわれており、残り7割は肝臓でのコレステロール合成により決定されるため、コレステロール合成を抑える薬を飲まないと下がらないことも多いです。高中性脂肪血症の方は、総カロリーの制限(特に糖質・アルコール)が効果的です。
 次に運動は、LDLコレステロールや中性脂肪を下げ、HDLコレステロールを上げる効果があり有用な治療法です。特に散歩、ジョギング、登山、水泳といった有酸素運動は、体脂肪を減らす効果も期待できます。
 薬物療法として、近年よく使用されるのはスタチンという肝臓でのコレステロール生成を抑制する薬剤です。この薬により、動脈硬化の進行が抑えられ心血管系合併症が減るという研究が多数報告されています。その他、小腸からコレステロール吸収を抑える薬もあります。

 ここで一口に動物性あるいは植物性脂肪といっても、脂肪にはコレステロール、中性脂肪、脂肪酸などの種類があり、食品によりその組成も違うということを理解しなければなりません。
 最近食品に含まれる脂質の中でマスコミにも登場し注目されているのは脂肪酸です。
 私たちが摂取する油(脂肪酸)は、構成する炭素数により、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸に分けられます。
次に炭素分子同士の結合が単鎖のみの脂肪酸を飽和脂肪酸、二重結合(不飽和結合)を有する脂肪酸を不飽和脂肪酸と呼びます。不飽和脂肪酸は、二重結合が一つの一価不飽和脂肪酸と二つ以上の多価不飽和脂肪酸に分けられます。
続きは、脂肪の話(4)へ・・・