減量が成功するかどうかは、太らせる原因となる炭水化物や糖分を取り除けるかによります。したがって、ダイエットと称してエネルギー源や細胞や組織を修復するために必要な脂肪や蛋白質まで減らしてしまうと、からだが飢餓状態となり、その結果空腹となり、減量は失敗することになります。
では炭水化物や糖分を減らした分のカロリーは、脂肪と蛋白質のどちらで補うのがよいのでしょうか?「ヒトはなぜ太るのか?」の著者ゲーリー・トーベスは、高蛋白質の食事は腎臓に負担をかけ有害でありうるため、脂肪75%、蛋白質25%の食事が副作用なく、継続しやすいと論じています(これはイヌイット族の食事のバランスです。でもさすがに日本人には真似できるとは思いませんね。)。
摂取する炭水化物を脂肪に置き換えたとき、細胞がエネルギーとして燃やす燃料が変化します。すなわち、ブドウ糖から脂肪(からだの脂肪と食事中の脂肪)への変化です。この際、虚脱感、疲労、悪心、脱水、下痢、便秘、起立性低血圧などの副作用を伴うことがあり、炭水化物の禁断症状と考えられています。
これまで、やせるためには糖質制限が重要だという話をしてきました。しかし、例えば糖尿病の人すべてに当てはまるかというとまだ議論の余地があります。糖質制限食は続けるのが困難(リバウンドがおこる)、1~2年の観察期間では生命予後に差がない(むしろ悪くなる)といった臨床研究もあります。また腎機能や脂質異常症が悪化する可能性も指摘されており、現時点では日本糖尿病学会は糖質制限を推奨してはいません(炭水化物50~60%、蛋白質15~20%、脂質20~35%)。
他方、「炭水化物が人類を滅ぼす」の著者夏井睦氏は、ヒトの生物学的進化も踏まえ炭水化物不要論を展開しています。氏は、米、小麦の代わりに豆類を推しています。大胆な仮説もありますが、納得させられるところも多いです。
私は、糖尿病があって太っている方には、基本的にはマイルドな糖質制限をお勧めしています。体重がなかなか減らず血糖コントロールに難渋されている方には有効だと感じています(ただし、腎機能、脂質異常には十分注意しています)。
無論、少しぽっちゃりしていても特に病気のない方は無理にやせる必要はありませんし、自然の恵み(炭水化物や糖分)を愉しむことも人生の一部ですよね。