よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

“肥満”について考えてみよう!(4)

2014-07-18 14:19:10 | 健康・病気

 減量が成功するかどうかは、太らせる原因となる炭水化物や糖分を取り除けるかによります。したがって、ダイエットと称してエネルギー源や細胞や組織を修復するために必要な脂肪や蛋白質まで減らしてしまうと、からだが飢餓状態となり、その結果空腹となり、減量は失敗することになります。

 では炭水化物や糖分を減らした分のカロリーは、脂肪と蛋白質のどちらで補うのがよいのでしょうか?「ヒトはなぜ太るのか?」の著者ゲーリー・トーベスは、高蛋白質の食事は腎臓に負担をかけ有害でありうるため、脂肪75%、蛋白質25%の食事が副作用なく、継続しやすいと論じています(これはイヌイット族の食事のバランスです。でもさすがに日本人には真似できるとは思いませんね。)。 

 摂取する炭水化物を脂肪に置き換えたとき、細胞がエネルギーとして燃やす燃料が変化します。すなわち、ブドウ糖から脂肪(からだの脂肪と食事中の脂肪)への変化です。この際、虚脱感、疲労、悪心、脱水、下痢、便秘、起立性低血圧などの副作用を伴うことがあり、炭水化物の禁断症状と考えられています。

 これまで、やせるためには糖質制限が重要だという話をしてきました。しかし、例えば糖尿病の人すべてに当てはまるかというとまだ議論の余地があります。糖質制限食は続けるのが困難(リバウンドがおこる)、1~2年の観察期間では生命予後に差がない(むしろ悪くなる)といった臨床研究もあります。また腎機能や脂質異常症が悪化する可能性も指摘されており、現時点では日本糖尿病学会は糖質制限を推奨してはいません(炭水化物5060%、蛋白質1520%、脂質2035%)。

 他方、「炭水化物が人類を滅ぼす」の著者夏井睦氏は、ヒトの生物学的進化も踏まえ炭水化物不要論を展開しています。氏は、米、小麦の代わりに豆類を推しています。大胆な仮説もありますが、納得させられるところも多いです。

 私は、糖尿病があって太っている方には、基本的にはマイルドな糖質制限をお勧めしています。体重がなかなか減らず血糖コントロールに難渋されている方には有効だと感じています(ただし、腎機能、脂質異常には十分注意しています)。

 無論、少しぽっちゃりしていても特に病気のない方は無理にやせる必要はありませんし、自然の恵み(炭水化物や糖分)を愉しむことも人生の一部ですよね。

 


“肥満”について考えてみよう!(3)

2014-07-18 14:16:09 | 健康・病気

 前回、やせるためにはインスリン分泌量を減らすことが重要で、炭水化物と糖分を控えることが有効であるというお話をしました。

 無論、同じ量の炭水化物を摂取しても太るヒトと太らないヒトがいます。これは遺伝的素因によると考えられています。インスリンの分泌量、そのインスリンに対して度程度反応するか(インスリン抵抗性)、脂肪細胞、筋肉細胞、肝細胞がそれぞれ違う反応をするなどです。 また同じ個体でも年をとるとインスリン抵抗性が増すなどの現象がみられ、若い頃はやせていても中年になると太ることと関係しているようです。

 では糖分のなかでも果物に含まれる果糖はどうでしょうか。果糖はブドウ糖と違い急激にインスリンを分泌させることはありませんが、肝臓ですみやかに脂肪に変わると考えられています(最も脂肪を生成する炭水化物)。

 アルコールは、肝臓で少量のエネルギーと大量のクエン酸塩に代謝されます。このクエン酸塩はブドウ糖から脂肪酸をつくる過程を促進させ、アルコール性脂肪肝の原因になります。アルコールは、一般にはエネルギーとして消費され脂肪として蓄積されることはないと考えられていますが、一緒に炭水化物をとると結局脂肪として蓄積されることになります。ちなみに、ビールのカロリーは2/3がアルコールで、1/3が麦芽糖(精製炭水化物)ですので、飲み過ぎればビール腹になります。

 インスリンには空腹感を増す働きもあります。炭水化物や甘いものを食べることについて考えるだけでインスリンは分泌されます。インスリンは栄養を血液循環から一時的に取り除いて貯蔵することで私たちを空腹にし、その結果、最初のひと噛みがよりおいしく感じられるようにします。その結果血糖とインスリンの反応の大きい食物ほど、私達はそれを好み、よりおいしいと感じることになります。 

 この「血糖値とインスリンによるおいしさ」の反応は、太っている人や太りやすい体質の人では、間違いなく増大されています。そして彼らが太るにつれて、インスリンはより効果的に脂肪を脂肪組織に、蛋白質を筋肉に溜め込み、それらを燃料として使えなくするため、ますます炭水化物の多い食物を食べたくなるという理屈です。