よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

「腸」と「脳」の意外な関係

2016-09-14 09:33:55 | 健康・病気
 かつては、食物の消化・吸収を担う臓器と考えられていた「腸」ですが、最近は、免疫の中心臓器(免疫機能の7~8割が腸に存在)で、「脳」と密接に関係していることが解明され注目されるようになってきました。

 「腸」の役割は、①食べたものから栄養を吸収し、体に不要なものを排泄する、②健康に危害を与える可能性のある粒子、化学物質、細菌などが血流に入るのを阻害する、③免疫グロブリンと呼ばれる抗体をつくり、病原性生物が腸管に付着するのを防ぐ、などです。 この②③の機能が損なわれると体の中に有害物質が入り、炎症が惹起されます。 通常なら、「脳」には血液脳関門といって、脳に有害がものを遮断する機能がありますが、腸のバリア機能が落ちると血液脳関門の機能も低下することもわかってきました。 
 腸内細菌の役割も重要です。腸内細菌は、ヒトが自力ではつくれない物質を含めていろいろな物質を合成する働きがありますが、この機能が落ちると、脳の働きに重要な脳内化学物質(脳由来神経栄養因子(BDNF)、ガンマ・アミノ酪酸(GABA)、グルタミン酸塩、ビタミン)などが低下します。 また、腸内細菌のバランスが崩れることにより糖尿病が発症し、それにより終末糖化産物(変性したたんぱく質)が増え、体がこれを異物と認識して炎症がおこります。さらに、糖尿病は動脈硬化の危険因子であり、血管が細くなり循環不全を引き起こします。
 アルツハイマー病(認知症)は、未だに根治治療できない病気ですが、その基本的病態は、脳の炎症や循環不全と考えられています。上述のように、「腸」は、この両方に深く関与しています。
 その他、多発性硬化症、うつ病、自閉症などさまざまな「脳」の病気の原因にも「腸」は関わっていることがわかってきたのです。
 
 「今日食べたものが、自分の体をつくる」ことを銘記し、毎日の食事に気を配ることが、「腸」を元気にし「脳」を守る一番のポイントです。         
 参考図書: 「腸の力」 であなたは変わる  デイビッド パールマター   
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