よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

高血圧と塩(2)

2012-10-29 18:18:18 | 健康・病気

今回は、前回に引き続いて高血圧と塩についてお話します。

前回、腎臓を中心とした水・ナトリウム保持機能(レニン・アンジオテンシン系)が、血圧維持に重要な働きをしていることを述べました。そして塩(ナトリウム)が貴重品であった時代は、少ない塩で適正な血圧が保たれていました。

ところが、近代になり塩が手軽に入手できるようになると、嗜好や食品加工の影響で塩を過剰に摂取するようになりました。元来、塩分が過剰になる状況に遭遇したことがない我々は、過剰摂取した塩分を排出する能力が低下しています。そうなると浸透圧の関係で、体内の水分量が増加し血圧が高くなりました。別の解釈をすると過剰の塩を排出するために血圧を上げる必要があるということもできます。

この塩を排出する能力には個人差があり、遺伝的に日本人は低下している人が多いと言われています。最新の研究では、食塩を過剰摂取すると、腎臓から塩分排出する機構に関与する遺伝子発現が抑制される(言い換えると塩分排泄がうまくいかなくなり)、高血圧を発症するメカニズムまで解明されてきました。 逆に言うと、この個人差が高血圧治療に塩分制限が効果のある人(食塩感受性高血圧)とあまりない人(食塩非感受性高血圧)の違いでもあります。しかし、全員に遺伝子検査をすることは費用対効果が低く(まだ研究段階であり保険診療で調べることもできません)、かつ程度の差こそあれ塩分摂取過剰が高血圧と密接に関係することは事実であり、食塩非感受性高血圧の人も、減塩により降圧剤の効きをよくするとの報告があり、塩分制限を高血圧患者全員に指導することは理にかなっていると考えます。

さて少しでも楽に減塩するにはどうしたらよいでしょうか?

味付けが濃いのが好みの人は、塩分以外の香辛料、鰹、昆布などの天然ダシ、酢や柑橘類の酸味などを上手に使うことです。同じ食塩をとるなら、精製塩より天然塩でミネラルをあわせてとるのも効果的です。またカリウムをしっかり摂取するとナトリウムの排泄が促されますから高血圧には有効です。野菜、果物をしっかりとりましょう。薄味続きでストレスを感じる人は、一日一品だけ通常の味付けで少量食べるという方法も減塩を長続きさせるコツと言えます。加工食品は塩分が多いのでなるべく旬で新鮮な食材を使いましょう。ついでながら、加工食品であれば塩分がどの程度含まれているか包装紙の成分表示を見ればわかります。注意しなければならないのは、それが食塩表示ではなくナトリウム表示になっている場合です。ナトリウム●(mg)であれば、食塩換算すると●×2.54×0.001(g)となります。カップラーメン1個で1日摂取制限量をゆうに超える食塩量が入っていますから高血圧の方はくれぐれも注意しましょう。

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