よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

「体の使い方」を意識しよう

2019-05-15 14:07:02 | 健康・病気
さて、健康な毎日を送るためには、「食事」、「運動」、「精神」が重要な要素ですが、今回は、「運動」のなかでも普段ほとんど気にしていない「体の使い方」について考えていきたいと思います。

「体の使い方」とは、具体的には①筋緊張の程度、②姿勢・動作の仕方、③呼吸の状態を意識して活動することです。これがうまくできていないと、肩こり、腰痛など整形外科疾患はもとより、便秘、消化不良、息苦しさなど内臓疾患、睡眠障害、自律神経失調症などの病気、さらには、あがり症、声がでないなどの症状の原因にもなり、結果的に自分のパフォーマンスを上げることができなくなります。
多くの方が、姿勢を維持するのに過剰な筋肉の緊張をしており、余分な力を抜くことが重要になります。そのためには、慣れ親しんでいる脳の自動プログラムを変えることが必要です。

理想的な立位姿勢は、体の重心を適切に位置付けて、体軸の骨を立てた状態になっています。

実現方法のポイントは、背筋をピンとするのではなく、頭を高くしようと意識することです。背筋を伸ばすという意識では、筋や関節を使おうとする感覚になり、結果的に背筋を過剰に緊張させ、背骨を反らし過ぎる原因になります。次のポイントは、骨盤を立たせることです。この状態では、大腿前面とすねに体重がかかる感覚があります。三つ目のイントは、足の裏をべったり床につけることです。かかとだけでなく、足の指の裏にも均等に地面からの圧力を感じることが重要です。四つ目のポイントは、体を少しだけ前に倒すことです。これにより背筋やお尻の筋が適度に働いてくれます。腹筋と首の筋の緊張を緩めるには、息をしっかり吐くことと頭が自由に動くことが重要です。
別の著書では、アゴを引いてお尻の割れ目を締めるように力をいれることで、骨盤が固定され、前のめりや猫背姿勢が防止・改善されると表現されています。

次は、座位での正しい姿勢です。

ここでは、お腹の前面を前に導くように意識して、骨盤を立たせることがポイントです。ここでも頭を高くすることを意識し、お尻と足裏に体重をしっかり預けることも重要です。十分に息を吐き、腹筋の緊張をとき、頭が自由に動くことを確認してください。さらに脚のスタンスを広めにとることも座位の安定に役立ちます。
骨盤の左右に高さのずれがある場合は、無意識に下がった側の脚を上に組むようになりがちです。この場合は、下がった側の脚(すなわち上に組む脚)の坐骨に2cm程度のタオルを敷き骨盤を平行にするか、下がった側の腸腰筋をストレッチして骨盤の傾きを矯正することが有効です。

最後に歩行です。歩行で意識するのは、頭と胴体を前に導き、それに応じて脚を動かすことです。脚を動かそうとすると、脚が前に出て上半身が後傾してしまい、前に進む力を得にくくなってしまいます。胸を張って歩こうとするのも背中を過度に反らすことになり同様に効率が悪くなります。
さらに、足裏が地面に止まっているとき、頭と胴体を前に導くことができるという意識を加えることもポイントです。すなわち、筋力だけで進むのではなく、摩擦の力も有効に活用しようということです。
頭は高く保ち、着地は、かかと側から軽い着地を心がけ、膝は曲げず伸びた状態がよいです。腕は、ぶらりと下げる状態にして自然に揺れる感じでよいと思います(意識的に早歩きをするときは肘を後ろに引く感覚です)。
ハイヒールで歩く時は、つま先を外へ向け、時々は足指側にも体重をかけ、膝を伸ばすことを意識してください。また階段昇降では、視線が下にならないように注意しながら、進行方向に対して足先を45度傾けて一歩一歩真上あるいは真下に運ぶと膝や大腿への負担を軽くすることができます。

以上、立位、坐位、歩行での「体の使い方」の基本を述べましたが、これは日常のあらゆる動作に応用することができます。逆に言えば、「体の使い方」が悪ければ、体のあらゆる部位の慢性的な不調の原因となります。
したがって、普段から筋緊張を緩めるエクササイズ、ストレッチ、マッサージなどのセルフケアが重要です。
そして、時間に追われる現代社会では見過ごされがちですが、「体の使い方」を意識しながらゆっくり動くことも重要であることを付け加えます。


参考文献:日本実業出版『心と体の不調を解消するアレクサンダー・テクニーク入門』著者 青木紀和
 光文社新書『アゴを引けば身体が変わる』 著者 伊藤和磨

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