よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

「副腎疲労」とは? ~疲れのたまった人は要注意~

2021-12-28 15:29:38 | 健康・病気
 現代社会では、身体的、精神的あるいは環境的など様々なストレスに上手に付き合っていくことが必要ですが、この時に重要な働きをする臓器が副腎です。

 副腎は、体がストレスに対処し、生き延びるのを助ける役割を果たすために様々なホルモンを分泌します。副腎髄質からは、呼吸循環に関わるアドレナリンやノルアドレナリン、副腎皮質からは、体液バランスに関わるアルドステロンや性ホルモン、コルチゾールなどが分泌されます。中でもコルチゾールは、抗ストレスホルモンと呼ばれ、①血糖値を正常化させる、②抗炎症作用、③白血球の制御、④循環器系への効果、⑤中枢神経系への効果などを介して、ストレス下の生理機能の恒常性を保つ働きをしています。このホルモンは、視床下部―脳下垂体―副腎で厳密に制御され体をストレスから守ってくれますが、ストレス過剰では枯渇してしまいストレスに対応が出来なくなってしまいます。この状態を「副腎疲労」と言います。
 ストレス対応能力には個人差が多いのですが、この能力は副腎のコルチゾール分泌能力に大きく左右されると言うこともできます。

 「副腎疲労」になると、朝起きるのがつらい、疲れがとれない、塩辛いものが無性に欲しくなる、体がだるい(エネルギー不足)、性欲の低下、病気やケガからの回復時間に時間がかかる、人生のすべてが虚しい、カフェインがないと仕事ができない、思考が定まらない、記憶があやふやなど様々な症状がでてきます。
 「副腎疲労」の原因となる生活習慣として、①睡眠不足、②栄養バランスの悪い食事、③疲労時に食べ物や飲み物を刺激剤として摂取すること、④疲れていても夜更かしすること、⑤長期間決定権のない立場や勝ち目のない状況におかれること、⑥完璧を目指すこと、⑦ストレス解消法がないこと、などがあります。

 さて、「副腎疲労」はどのように診断するのでしょうか。実は、副腎機能低下が重度(アジソン病)であれば、臨床症状も明らかで、血液検査などで比較的容易に診断できます。しかし、「副腎疲労」は一般の尿・血液検査、画像検査では異常はなく、医者からも「検査上、異常は見つかりません。疲れがたまっているようですから少し休養して下さい。」と言われることが多く、正確に診断できていないことがほとんどです。
 「副腎疲労」に関する質問表や一日のコルチゾール分泌能力を評価する唾液副腎ホルモン検査、24時間尿中コルチゾール検査などがありますが、一部の専門医で行われているに過ぎません。

 では、「副腎疲労」から抜け出し、副腎の健康を取り戻す方法について考えてみましょう。
 まずは、生活習慣の改善です。
① エネルギーを消耗するする生活状況(特定の人物・集団、特定の環境・建物、職場・家庭など)を排除したり改めたりする
② 内面のストレスを軽減する(状況についての認識を異なる枠組みで見る=リフレーミング)
③ リラクゼーション(瞑想法、ヨガ、太極拳、気功、深呼吸など)
④ 自由時間と休憩(楽しむことが重要)
⑤ 深い睡眠(室温は少し涼しく、必要ならサプリ、適度な昼寝)
⑥ 笑い、楽しみながらの運動

 次に、食事に関しては、エネルギー不足を解消するために栄養バランスのよい食事を規則正しくとることが基本です。低血糖発作を起こさないためには、急激に血糖を上げる砂糖・甘いものは避けるべきです。塩分は身体が欲している限り適量を積極的に摂取する必要があります。カフェイン・アルコール・グルテン(小麦製品)・乳製品・加工食品・揚げ物・アレルギー食品は避け、豆類・ナッツ・海藻・野菜・魚介類・きのこ・いも類を摂りましょう。
 サプリメント・薬としては、ビタミンC、ビタミンB群、ビタミンE、マグネシウム、亜鉛、ハーブ(甘草、アシュワガンダ、朝鮮人参、エゾウコギ、生姜、イチョウ葉)、副腎細胞エキス、ホルモン補充(コルチゾール、DHEA、プロゲステロン、プレグレノロン)などがあります。

 さらに、「副腎疲労」になっている人は高率に腸内環境も悪化しており、乳酸菌、消化酵素、抗炎症サプリ、抗真菌薬、真菌線維消化酵素、ビタミンDなども効果があります。
 もう一つ気をつけたいのは、日本人に多いと言われる重金属(特に水銀)中毒です。体にいい油と言われるω3系不飽和脂肪酸(EPA,DHA)は魚に含まれていますが、マグロなど大型魚には重金属も蓄積されています。水銀中毒は、「副腎疲労」の原因の一つで、疲労感、うつ、食後の腹部膨満感などが代表的症状です。解毒するには、暴露量を減らす、細胞内グルタチオン濃度を上げる、DMSAやαリポ酸などのデドックスサプリ、野菜(ブロッコリー、カリフラワー、パセリ、セロリ、パクチー)、抗酸化治療があります。
 これらの治療は、軽症であれば自分でできますが、重症な場合は、専門医の適切な助言や処方を受ける方が回復への早道になります。
 

参考文献:ジェームズ・L・ウイルソン『アドレナル・ファティーグ』中央アート出版社
杉岡充爾『すぐ疲れるが治る本』大和書房
     宮澤賢史『副腎疲労~私の治療法~』分子栄養学実践講座


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