-"METROPOLIS" 85th Anniversary #16-
皆さんおはこんばんちわ!
asayanことasami hiroakiでっす!(・ω・)ノ
9月ももうおしまい。 秋深し10月が始まります。
が、何なんでしょうこの暑さ。
朝晩はさすがに秋の気配を感じますが、昼間の日差しはまだまだ夏! いい加減にしてほしいです。
そしてアツいと言えばロンドンオリンピック! asayanはまだまだ観戦中です。
カヌー&カヤックのスラロームがアツかった! そして今は乗馬がアツいです。
ただ、以前ご紹介したIOCの公式サイトでは、やはりサバが遠過ぎて上手く繋がらない事がほとんどなので、今はコッチで観てます。(↓)
Official Olympic Channel by the IOC
YouTube内のIOCオフィシャル・チャンネルです。 サバがストリーミング専用なので、こっちの方が繋がり易い上、全競技全種目、全試合がフルサイズ完全ノーカットで観れます。 もちろん、YouTubeなので全動画フルHD対応。 高解像度の映像で観戦できます。
ただし、繋がり易いと言っても飽くまでも“比較的”。 高解像度では間違いなくラグる上、最悪エラーで要再接続です。 240以外は、まず間違いなくラグるので注意。
また、開催期間中のライブ映像をそのままアップしているので、編集が極めて雑。 競技間の休憩時間すら、カットせずにそのままなので、時々シークしてやる必要があります。
まあ、今のYouTubeはシークし易い仕様になったので、煩わしさはずいぶん低減されましたが。
いずれにしても、あっしのアツい夏はまだまだ終わりそうにないです。
……って、え? この昼間の夏の日差しは僕のせい?
んなバカな。(笑)
それとは関係ありませんが、ココで緊・急・告・知!
来月10月に予定していたMFD‐WEBの更新ですが、誠に遺憾ながら延期させて頂きます。
というのも、来月のアップでは現在当ブログで連載中の『「メトロポリス」伝説』のPDF版をアップするつもりでしたが、ブログ連載の方が10月のアップ予定日までに終わりそうにない上、その次の12月のアップを予定していた『Beyond』のアルティメット版の制作が、10月のアップ予定日に間に合いそうにないので、アップ予定日そのモノを延期する事にしました。
本当に申し訳ないです。つД`)゜。
MFD‐WEBの次回の更新は、11月25日の予定。 『Beyond』のアルティメット版をアップするつもりです。
連載中の『「メトロポリス」伝説』のPDF版は、その翌月の12月の更新でアップする予定です。
それまでには、ブログ連載も終わるハズなので。
公開予定日まで、今しばらくお待ち下さい。
<今週の特集>
今週の特集コーナーも、引き続き映画『メトロポリス』の徹底解説シリーズ、連載第16回です。
最後までヨロシクね☆
・もう一つの80年代修復版(パタラス版/1987年)
モロダー版の成果には、しかし前回記した通り批判もあった。 その考えには、西ドイツで本作の修復作業を続けていたパタラスも大いに同意した事だろう。
パタラスは、大きく分けて4種、すなわちソ連・チェコ版、東独版、イギリス・ポロック版、そしてオーストラリアのメルボルンで見つかった版(注:競技場のシーンが含まれていた版)を主に使用し、検閲カードから中間字幕を再現し、さらにフッペルツのスコアに書き込まれた指示に従って、ショットの尺を合わせた。
これを、オリジナル脚本に従って編集した。
しかし、作業は難航した。
欠落したシーンがあまりにも多く、フッペルツのスコアに合わせると所々歯抜けになってしまう。
かといって、歯抜けにならないようにすると、フッペルツのスコアと尺が合わない。
また、先にも記したように版によって同じショットでも別アングル、あるいは別テイクのフィルムが使われている事があり、どちらのショットを使うか大いに悩まされた。
また、修復作業中も「どこそこでフィルムが見つかった」という情報が絶えず入り、その度にそのフィルムがどういう版でどういう状態なのかを確認する作業にも追われた。
そのため、修復作業は何度も中断しては再開し、再開しては中断するを繰り返した。 その時の苦労を、パタラスは「要した時間も分からない。 2週間とも8年とも言える。」と語っている。
最終的に、尺の問題は音楽の方を編曲する事で解決したようだが、最大の難問は失われていたシーンをどうするか?だった。
既に、83年にパリのシネマティークに眠っていた831枚にも及ぶスティルが発見され、これにはスティルではあったが失われたシーンを写したモノも含まれていた。 そのため、モロダー版と同じくこのスティルを挿入する事で、失われたシーンを再現する事は可能だった。
この問題に、パタラスは迷いに迷った。
しかし最終的に、パタラスはスティルを使う事を断念した。 そして、失われたシーンには中間字幕化した説明文を入れるという方法を取った。
これが、パタラスの選択した“英断”である。
批判的に考える方もいるかもしれないが、筆者はパタラスの“英断”を讃えたい。 何故なら、スティルから再現すると失敗する事が多いからだ。
最も顕著な例は、この章の頭に記したシュトロハイム監督作品の『グリード』である。
この映画のオリジナル版は、上映時間実に10時間という途方もない巨大映画で、スタジオは映画の失敗が目に見えているため、シュトロハイムに短縮を指示し、140分にまで短縮された。 結果、失われたシーンのフィルムは破棄され、撮影中に撮られたプロダクション・フォトだけが残されたが、後にこの映画はデジタル・リマスター化され、オリジナル版を再現すべく残されたスティルから失われたシーンの再現が試みられている。
……が、正直観ていて煩わしい。
資料がなかったのか、中間字幕が全く再現されていないので、スティルシーンがどういうシーンなのかが全く分からない。 少なくとも、中間字幕も一緒に再現すべきだった。
本作の修復でも、これと同じ事が起こる可能性は十分あった。 中間字幕の再現は可能だが、“映画”なのに画が動かないという印象が、観客に煩わしさを与える可能性は高かった。 実際、これと同じ手法で修復された2001年版(注:後述)を観てみると、失われたシーンの説明文は文章なのでかろうじて観ていられる(読んでいられる)が、これが動きがないスティルとして脳内補完すると、正直筆者でも鑑賞に耐えられるかどうかはなはだ疑問である。
ともかく、パタラスは失われたシーンの再現にスティルを使わない事を決めたが、ただ1ヵ所だけ、スティルを使って失われたシーンを再現したショットがある。
それが、ロートヴァングの家に鎮座する巨大なヘルの頭像を写したシーンである。
検閲カードには、中間字幕としてヘルの頭像の台座に刻まれていた碑文が書かれていたが、フッペルツのスコアには他の中間字幕のタイミングは全て指示されていたのに、これだけがない。(注:本来は中間字幕ではなく映像のため)
検閲カードにある中間字幕が何なのか分からず、パタラスは脚本を確認したが、これに相当する中間字幕は脚本にもなかった。
そこで、スティルを探してみると、“文章”が写されている写真が見つかった。 その文章は、紛れもなく検閲カードに書かれてあった中間字幕だった。
パタラスは、このシーンがフレーダーセンとロートヴァングの関係を明確にする重要なシーンである事を悟り、このシーンに限り、スティルから失われたシーンを再現する事を決断したのであった。
こうして、パタラスは長い年月をかけてラングが本来意図したオリジナル版に相当するようにフィルムを再構築し、本作の修復作業を進めた。
そうして1987年、パタラスは再現された中間字幕を含む3153m、fps24で約115分という、当時最長の修復版を完成させた。
この版は、尺を合わせて編曲したフッペルツのスコア付きでモスクワで最初に上映された後、ヨーロッパ各国やアメリカなど、世界各国でも上映され、極めて高い評価を受けた。
そして、かつてのポロック版やモロダー版を“無かった事”にして、本作の正しい解釈に観客を導く事に成功した。
このパタラス版によって、本作は60年の時を経てようやく、現代に蘇ったのである!
ちなみに、この版は当時日本でも古典映画の上映会などで複数回上映されているが、ナゼかフッペルツのスコアが無い、完全なサイレントとしてしか上映されていない。
……なんで?(´・ω・`)??
・修復作業の継承
以上のように、本作は映画を愛する多くの人々の多大な献身によって、初公開から60年以上という長い年月をかけてようやく再生され、不当に低かった本作の評価を改めさせる事に成功した。
残念ながら、失われた完全版の再生には至らなかったが、パタラス版というラングやフォン・ハルボウ、フッペルツの意図を汲み取ったバージョンが完成し、本作のヴィジュアル的、音楽的、ストーリー的、そしてテーマ的先見性と現代性を確信出来る版を、ビデオソフトという形で我々一般の観客も観る事が出来るようになった。
だが、本作の修復の歴史は、これで終わりではなかった。
ビデオソフト化されたパタラス版は、新たな修復の歴史の始まりになったのである。
少し時間を遡るが、ラングやルービッチュ、デュポンらと共に1920年代のドイツ映画黄金時代を牽引した巨匠、F・W・ムルナウの発案で1966年、F・W・ムルナウ財団という財団法人が設立された。
これは、第2次大戦、そして戦後の混乱期によってドイツ国内から失われてしまった戦前のドイツ映画作品の蒐集、保護、管理、保存を目的とした財団であった。
設立当初は小さな組織でしかなかったが、ドイツ映画産業組合(SPIO)との協力により、ドイツ国内の複数のフィルム・アーカイヴや映画博物館とも連携し、約3000タイトルのドイツ映画の保護に貢献した。
1978年になると、ウーファ社が戦後になって再度民営化し、しかしソ連の共産化政策によって分割再編されて出来たDEFA=ドイツ・フィルム・AG社とも提携。 さらに幅広い映画作品の保護に努め、現在までに娯楽映画、短編映画、さらにはニュース映画まで含めて、実に20000タイトル(!)ものドイツ映画の保護、管理を行っている。
2009年には、ドイツ映画研究所と共同でヴィースバーデンにドイツ・フィルム・ハウスという映画博物館をオープンし、財団が蒐集、保護した作品の資料を常設展示する他、蒐集したフィルムを館内の映画館でも上映している。
また、1994年からは短編映画賞を設け、若手の育成にも努めている。
本作の修復は1990年代に入り、この財団に引き継がれた。
ムルナウ財団に務める映画修復家、マルティン・ケルバーは、パタラス版とその修復のためにパタラスが蒐集した資料を引き継ぎ、さらに本作の修復を完全なモノにすべく独自のリサーチを開始した。
ケルバーはまず、それまでに蒐集されていたフィルムや資料、全てに目を通し、再検証する事から始めた。 そうする事で、オリジナル完全版の全体像を捉え直そうと考えたのだ。
これと平行して、世界各地のシネマティーク、フィルム・アーカイヴ、映画博物館、近代美術館、個人コレクター等と連絡を取り、既存の版を超える、すなわち失われたシーンが含まれているプリントが残っていないかの確認を行った。
その結果1998年、フィルムリール全8巻の、アメリカ・ポロック版のオリジナル・ネガ・フィルムが発見された!(注:このフィルムの出所は、筆者はリサーチし切れなかったので不明。 現在は、約9万巻に及ぶフィルムを所蔵するベルリンのフィルム・アーカイヴに収蔵されている)
しかもこのフィルムは、保存状態が非常に良かっただけでなく、パタラス版にも含まれていないいくつかショットが含まれていた。
フィルムは全部で3341m。 ランニングタイムは、fps24で約121分。
ただし、フィルムを確認してみると、8巻のフィルムリールのうち1巻だけは、どうやら60年代に複製されたモノらしく、画質が悪いドコロか既にフィルムが腐食してしまっており、映画の修復素材には使用出来なかった。(注:後述するソフト版のランニングタイムが微妙に短いのはこのため。 計算上は、3341mのfps24で121分が正しい)
が、それ以外はそれまでに観てきたどの版よりも極めて状態が良く、また追加リサーチしてみると、どうやら本作の撮影に実際に使用された撮影ネガであるらしい事が分かった。
映像素材としても、いわゆる別テイク、別アングルではなく、キャストの演技もカメラアングルも最高のモノであった。
この発見により、ケルバーはこのフィルムをベースに、パタラス版を補完する改訂パタラス版に再構築する事を決意した。
・電脳修復技巧(2001年版)
ケルバーが行った本作の修復作業は、パタラス版までのようにフィルムをコピー、再編集するだけに止まる事のない、更なる“画質の向上”を目指した修復作業であった。
当時既に一般化していた、デジタルリマスター化を行ったのである。
デジタルリマスターとは、フィルムをコンピュータに取り込み、映像をデジタルデータ化して修復、保存する技術の事である。
元々は1980年代、本作のパタラス版が公開されたのと前後して、ジョージ・ルーカスが映画編集用のノンリニアデジタル編集システム(注:通称Avid)をILMに開発させ、その副産物として映像をデジタルデータ化したAVI形式の動画ファイル(注:後に、LD=レーザーディスクの動画記録形式に採用される)が出来、その延長線上で90年代に入ってから、古くなって画質に劣化が見られるようになった映画作品の修復、再保存を目的とした世界初のデジタルリマスター技術、“THXデジタリーマスタード”がILM社によって開発され、当時ビデオソフトで再リリースされたTHX版『スターウォーズ』シリーズ旧三部作に採用されたのが、その始まりである。(注:詳しくは拙著『異説「ブレードランナー」論:完全版』、127頁辺りを参照の事)
これにより、80年代以前の名作映画作品が次から次へとデジタルリマスター化されるようになり、98年頃から急速に市場が拡大し始めたDVDソフトの大量リリースへと発展し、2000年にリリースされたソニーのコンシューマゲーム機、“プレイステーション2(PS2)”によって一気にDVDソフトが普及したのは、皆さんも周知の通りである。
こうした映像のデジタル化、並びにデジタル技術を利用した映像の修復技術が普及した事により、今日では数十年前のフィルム映像を撮影した当時、あるいはそれ以上の美しい映像で観る事が出来るようになった。
ホント、良い時代になったモンだよ。
ケルバーは、この技術を本作の修復にも利用する事を決定する。
ルーカスがILMに開発させたTHXテクノロジー以降、デジタルリマスター技術は世界各国の映画産業で注目され、多数の企業により独自のデジタルリマスターソフトが開発され、中にはデジタルリマスター化を専門的に行う企業も設立されるようになった。
本作のデジタルリマスターは、ムルナウ財団の後援により、ケルバーの監修の下でドイツのデジタルリマスター専門会社、アルファ=オメガ・デジタル・GmbH社によって2000年から2001年にかけて行われた。
ケルバーはまず、ブンデス・フィルム・アーカイヴに赴き、発見されたアメリカ・ポロック版のオリジナル・ネガを実際の修復作業に使用するワークプリントに複製した。 そして、これをアルファ=オメガ社に持ち込み、デジタルスキャナーでスキャニングした。
通常、コピー機やファックスを含むスキャナーは、フロント・プロジェクションと同じ要領で原稿に光を照射し、この照射された光の反射光をCCDカメラで撮影してデジタル化する。
しかしネガ・フィルムの場合は、フロント・プロジェクションで光を照射すると、明暗が反転した画像が取り込まれてしまうため、リア・プロジェクションと同じ要領でフィルムの裏側から光を照射し、反射光ではなくフィルムを通した透過光をCCDでスキャンする、という方法が取られる。
現在は、デジタルカメラの普及でスティルでもムービーでも素材が最初からデジタル化されているため、手書き原稿や印刷済み原稿を取り込む事にしかスキャナーを利用する機会がなくなり、需要がなくなって一般向けのスキャナー製品ではこのような機能、あるいはオプションが実装されている事が少なくなった。
また、映画の世界でも、撮影にフィルムカメラを使用する例がどんどん少なくなっており、3D映画の頻作もあって、映画の撮影現場でもデジタルカメラがかなり普及(注:3D用の撮影では、右目用の映像と左目用の映像を同時に撮影しなくてはならないため、フィルムだと結果的に2倍の量のフィルムを消費しなければならない。 デジタルならば、フィルムの消費量を無視して撮影出来る。 ちなみに、本作の撮影では2台同時撮影によって右目用と左目用に相当するフィルム素材が一部だが現存しているので、これを使えば部分的ではあるが『メトロポリス:3D』が製作出来る。 ……頼むからやらないでね? 3Dキラいなんで)してきてはいるが、筆者的には撮影だけでもフィルムで撮って頂きたいと願う。 デジタルカメラの映像は確かにキレイだが、フィルム特有の“アジ”がないからだ。
確かに、膨大なフィルム消費に伴うコストを考えれば、デジタルカメラの方がカメラそのモノが高価でも、結果的にランニングコストが下がるので合理的だというのは分かるが、やっぱり映画はフィルムであって欲しいと思う。
話しが逸れた。
ともかく、本作のデジタルリマスター化でもそれは同じで、ケルバーとアルファ=オメガ社は本作のフィルムをフレーム単位でスキャニングし、コンピュータに取り込んだ。
が、これが裏目に出た。
先ほど延べたように、ネガ・フィルムのスキャニングでは裏側からライトを当てて透過光をスキャニングする必要があるのだが、こうするとフィルムに残っていた細かい傷や汚れが目立ち、全体的に映像がぼんやりと白っぽくなってしまったのだ。(注:ケルバー曰く、「ヴェールを覆ったように白くなった。」)
これは、もちろんスキャニングの原理上仕方のない事なのだが、これをデジタルリマスターの素材として使用するには手間がかかり過ぎるとケルバーは判断し、別のスキャニング方法を用いる事にした。
それが、“ウェット・スキャン”と呼ばれる手法である。
これは、読んで字の如しネガ・フィルムを濡らしてスキャニングする技法である。
多少汚れたクルマを洗車する際、ホースで水をかけただけで汚れが目立たなくなり、キレイになったように見えた経験が、皆さんはあるだろうか?
これは、水によって汚れが洗い流されたからではなく、汚れているトコロと汚れていないトコロの差が水によって埋められ、差がなくなった事でキレイなった“ように見える”からである。
フィルムでも、これは全く同じである。
水で濡らす事で、フィルムの表面についた細かい傷や埃、汚れが埋まり、キレイになった“ように見える”状態にする事が出来る。
すなわち、濡らす事によってフィルムの劣化を隠す事が出来るのである。
発見されたアメリカ・ポロック版のフィルムは非常に状態が良く、撮影フィルムだったので画質は申し分なかったため、ケルバーはリマスター化作業に手間がかかるだけのドライ・スキャンではなく、このウェット・スキャンを優先してスキャニングした。
結果、多くの素材がデジタルでの修復を必要としないほどの高画質、高品質でスキャニング出来たそうだ。
ちなみに、現在のデジタルリマスター化作業では、ドライとウェットを使い分け、かつ4K(注:フレーム当り3840×2160ピクセルの超高解像度でスキャニングする事。 フルHDの約4倍に相当。 当然、その分ファイル容量が大きくなり、HDDを圧迫する上、エンコードにマシンスペックを要求するというデメリットもある)でスキャンするのが一般的になったが、当時はまだ2K(注:1920×1080ピクセル。 すなわちフルHD解像度)が主流だったハズなので、本作のスキャニングも2Kで行われたハズ。(注:資料が見つからなかったので自信はない)
スキャニングされたフィルムは、ウェット・スキャンのおかげでデジタル修復の必要がないほどキレイになったが、中にはキズや汚れが大きく、デジタルでの微修正を必要とするフィルムもあった。
修復作業当時、既に複数のソフトメーカーによってデジタルリマスター用の映像修正ソフトが開発、リリースされており、ケルバーは“ライムライト”という自動修正ソフトを主に使用してこの微修正を行った。
自動修正ソフトは、その名の通り映像を自動的に判別し、キズや汚れを取り除いて映像をキレイにするソフトである。
このソフトは、まず取り込んだ映像をフレーム単位で認識し、あるフレームとその一つ前のフレームをピクセル単位で比較する。 そして、一つ前のフレームには無いのに目的のフレームにはある“連続した映像としての相違点”を検証し、この相違を“ゴミ”と判断して、一つ前のフレームと同じ状態になるように修正する。
これが、自動修正ソフトの基本的な修正プロセスである。
デジタルリマスター化作業を効率的に進めるためにも、非常に便利なソフトと言える。
ただし、これには弱点もある。
結局のトコロ、このソフトが判別しているのは“フレーム間の相違”であって、それが“ゴミ”であるか否かを判別しているワケではない。 そのため、このソフトはフレーム間の相違を全て“ゴミ”と判別してしまい、時には必要なモノまで勝手に修正して映像を改変してしまう事があるのだ。
特に、本作製作当時の1920年代までのサイレント映画では、トーキー普及前でカメラも手回し式がほとんどだった事もあり、撮影されたフィルムのフレームレートは一定せず、マチマチだった。 そのため、fps16での再生を前提に撮影された本作のフィルムを現在のfps24で再生すると、1.5倍速程度の映像になる。 すなわち、フレーム間の動きが大きな映像がフィルムに焼き付けられているのである。
そのため、現代の作品を自動修正する分には何ら問題ない自動修正ソフトでも、フレーム間の動きが大きな当時のフィルムを自動修正させると、手足や頭を速く動かすような映像において、動きがあまりに速い=フレーム間の相違が大きいため、ソフトが“ゴミ”と誤認して勝手に修正してしまう事が多かった。
中には、手が消える、足が消える、頭が髪だけを残して消えるなど、まるで心霊動画のような映像になってしまう事もあった。
そのため、ケルバーとアルファ=オメガ社のスタッフは、自動修正ソフトが誤認してしまう映像をフォトレタッチ(注:スティルの画像加工技術の事。 グラビア写真や広告写真でもよく使われている)の要領で手作業で、チマチマと映像を修正しなければならなかった。
先ほど延べたように、新発見されたアメリカ・ポロック版は3341m、fps24で121分の尺があるが、単純計算すると24(フレーム)×60(秒)×121(分)=174,240枚(!)のスティルがある事になる。
これを、全部ではないにしても、フレーム単位でチマチマチマチマ……。
デジタル修復が、いかに手間のかかる作業を必要とするかお分かり頂けるだろうか?
しかし、ケルバーは語る。
「流し観すれば気付かないが、映像の史料的価値を求めるなら、こうしたミスは許容出来ない。 本来の版と映像が異なるからだ。」
ケルバーとスタッフは、来る日も来る日も映像を確認しては修正を繰り返すという気の遠くなるような修復作業に忙殺された。
これとは別に、スキャンしたフィルムに元々あったテクニカル・エラーも修正する必要があった。
編集やフィルムの複製によって起ったフレームのズレ、画の歪み、画質の劣化、経年劣化による画質の不均質である。
これらはキズや汚れではないため、自動修正ソフトでは修正出来ない。 全て、手作業で修正していくしかない。
例えば、バベルの塔の伝説のシーンで、アニメーションによって“BABEL”の文字が“キラリキラリぱぁああ☆”と光る(笑)ショットがあるが、新発見されたフィルムのこの部分は経年劣化しており、“ぱぁああ☆”と光った時に光で文字が飛んでしまい読めなくなってしまっていた。 これは、他の版でも大差なく、修正ソフトでの修復が断念され、手作業での修復が決断された。
ケルバーとスタッフは、まずフレーム単位で文字だけを抜き出し、文字だけの映像に作り直した。 そして、フィルムから今度は光だけを抜き出し、文字だけの映像に重ねる。
最後に、光の透過率を調整して、文字が白く飛んでしまわない程度にまで半透明化する。
こうして、あのタイポグラフのアニメーションショットはほぼ100%作り直された。
さらにやっかいなのは、経年劣化によってフィルムそのモノが物理的に破損、すなわち裂けてしまっている場合だ。 これはもう、デジタルでしか修正出来ない。
裂けてしまったフィルムから映像を抜き出し、コンピュータ上でフィルムの断片を繋ぎ、本来の映像に戻す。
これを、フレーム単位で繰り返した。
こうして、ケルバーとスタッフはテクニカル・エラーも修正していき、映画全体が均一な画質になるように作業した。
先に記したように、新発見したフィルムは全部で8巻のリールにまとめられていたが、この内の1巻のフィルムは60年代に複製されたリールで、しかも保存状態が悪かったのかフィルムそのモノが腐食してしまっており、映っている映像が全く使えなかった。
心臓機械が崩壊するシーンを含むリールがそれだったのだが、他の版のフィルムにしても、劣化や損傷が激しいモノがほとんどで、修復しても他のリールほどの画質にはならないと判断せざるを得なかった。
しかし、幸運はケルバーに味方する。
心臓機械が崩壊するシーンは、シュフタン・プロセスや多重露光ではなく、撮影後にフィルムを重ねて複製するという複写合成で制作されたシーンなのだが、なんとこの合成する前の合成素材のフィルムが見つかったのである!
しかも、この合成素材のフィルムは大変状態が良く、再発見されたフィルムと比較してもそれに匹敵する良質なモノであった。
ケルバーは、この合成素材フィルムをウェット・スキャンし、コンピュータに取り込んでコンピュータ上でコンポジットして、このシーンを修復した。
すなわち、70年前のポス・プロ作業をやり直したのである。
70年の時を経て、本作はようやくポス・プロ作業が完了したワケだ。(笑)
失われたシーンの再現は行わず、パタラス版と同じくスティルを使用しない説明文のみ(注:ただし、パタラス版と同じくヘルの頭像のシーンだけは例外的にスティルを使用)にした。
さらにケルバーは、映画の中間字幕にもこだわった。
リサーチの結果、当時の映画雑誌の記事などに中間字幕に使われたオリジナルのフォントの情報が見つかり、ケルバーはこれを基にコンピュータを使ってフォントを再現。 中間字幕を全て作り直し、映像に挿入した。
そして、フランク・シュトローベル指揮、ベルリン放送交響楽団の演奏によって新たに収録されたフッペルツのオリジナル楽曲をミキシングし、3341m、fps24で118分ランニングタイムを持つ史上初のデジタルリマスター版『メトロポリス』2001が完成した。
ケルバーの成果である2001年版は、同年にベルリンで、しかもシュトローベル指揮によるフルオーケストラの生演奏付きで大々的にプレミア上映が行われ、集まった観客から拍手喝采を受けた。
そして、“再誕生”した本作は再び再評価され、その芸術的価値が認められた結果、人類共有の財産としてユネスコが定める世界文化遺産に認定された。
映画作品としては、これが史上初の快挙であった。
この版は、世界各国でも上映され、2003年からはDVD化されたソフト版がリリースされた。
日本では、紀伊国屋書店が権利を取得し2006年に特典映像付き2枚組みのDVDソフトが、“クリティカル・エディション”と題されてリリースされている。
といったトコロで、今週はココまで。
楽しんで頂けましたか?
ご意見ご感想、ご質問等があればコメにどうぞ。
来週もお楽しみに!
それでは皆さんまた来週。
お相手は、asayanことasami hiroakiでした。
SeeYa!(・ω・)ノシ
LunaちゃんのMODコレ!
志村ー! 後ろ後ろーッ!!
※HM2
韓国在住のクリエーターによるシリーズ第2弾。 前作がノンクエストMODだったのに対し、今回はクエストMODになっているので攻略ダンジョンを探す手間がないのでラク。
ナゼか壁に密着してルナちゃんに背中を狙われているオーク。 神殿には、訓練に励んでいる同種族のネームドNPCもいるが、ダンジョン内ではこれも敵。 デフォルトのオークそのままではなく、ボディは専用の新規モデリングらしい。
Thanks for youre reading,
See you next week!
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