-"Sight of OMEGA" Ultimate Analyse #29-
皆さんおはこんばんちわ!
asayanことasami hiroakiでっす!(・ω・)ノ
今週の話題は、何と言っても小笠原諸島の“新島誕生”でしょう!
小笠原諸島の沖合いで海底火山が噴火。 海上保安庁の巡視船が確認したところ、この火口を取り囲むように、海面に浮かぶ直径200mほどの小さな“島”が出来ていたそうです。
ちょっと前に、パキスタンでも同じように海上にポッカリと小さな島が隆起した事がありましたが、あれは地震性によるモノ。 今回の小笠原諸島のそれは、火山の噴火によって噴出したマグマが海水で冷え固まった事で出来たモノで、海底火山は今もなお活動中で、残念ながらパキスタンの時のように上陸する事は出来ない。
しかし、マグマの噴出は未だに続いており、コトと次第によっては今後この島が“成長”し、上陸可能な島になる可能性も。
ただ、専門家の話しでは逆に沈下して島として残らない可能性もあるとか。
こんなコトがあると、日本はやっぱり火山大国なんだなぁ~と思う。
なんにせよ、決して珍しい現象というワケではないですが、決して良くある事でもないので、このまま島として残れば、新しい観光名所(^ ^)になるかもしれないですね。
<今週の特集>
今週の特集コーナーは、『アルティメット・アナライズ』シリーズ第4弾、同人ヴィジュアルノベル『Omegaの視界』の徹底解説連載第29回です。
もうしばらく続きます。 今回から新章突入です。
第3章:キーワードアナライズ
さて、ココからはアルティメット・アナライズ恒例の解説テクスト集、キーワードアナライズである。
本作に関連するキーワードをいくつかピックアップし、それらについて個別に説明、解説していく。
例によって、これらの解説は筆者独自の考察に基づくモノであり、作者の見解を代弁しているワケではないのでそのつもりで。
1.『Omegaの瞳』と萩原朔太郎
本作の本編、各章の最後の最後に毎回画面に表示される決まり文句の一文。
その中に、こんな行が含まれている。
“また「Omegaの瞳」は萩原朔太郎の散文詩の題名です。”
この一文から、『Omegaの瞳』という散文詩。 そしてその作者である萩原朔太郎という人物に興味を抱いた読者も多い事だろう。
筆者はそれほど興味が湧かなかった(←オイ!)が、ある程度気にはなったので、この機会にリサーチしてみた。
以下そのリサーチ結果。(↓)
・詩人:萩原朔太郎
詩人、萩原朔太郎(はぎわら さくたろう)は、日本における近代詩を語る上で欠く事の出来ない、日本を代表する作家である。
1886年(明治26年)、当時の群馬県東群馬郡曲輪町(注:現在の同県前橋市千代田町)で開業医を営む父、密蔵とその妻、ケイの間に生まれた長男に、両親は朔日(ついたち)生まれの長男にちなんで“朔太郎”と名付けた。(注:誕生日は11月1日)
当時から、医者は比較的裕福な家庭であったが、萩原も開業医の父の下で何不自由なく育った。
しかし、小学校に入学した萩原は、神経質で内向的な性格の少年に育ち、病弱だった事もあって学校ではいつも除け者にされるようになり、いつも一人でハーモニカやアコーディオンを弾いて遊ぶ孤独な少年だった。
詩や小説などの文学に傾倒していったのも、この孤独な少年時代からではないかと思われる。
ちなみに、この頃音楽に接していた経験から、後に楽器演奏の講師としても活躍するようになる。
小学校高等科(注:現在の中学校に相当)を卒業後、県立中学校(注:現在の高校に相当)に進学。 ココで、萩原は学校の校内誌に短歌を発表。 さらにこれがキッカケとなり、クラスメイトらと共に回覧誌を刊行し、短歌を発表する。 この頃の作品は、与謝野晶子の影響が見られる作品だったとか。
そして、これらの短歌が与謝野鉄幹(注:よさの てっかん。 与謝野晶子のダンナさん)の目に留まり1903年、鉄幹が主宰する『明星』という雑誌(注:1900年~1908年に刊行された月刊の文芸誌。 アイドル情報誌とは無関係)に3首の短歌が掲載され、注目されるようになる。
また、この掲載がキッカケとなり、当時かの石川啄木も在籍していた“新詩社”という同人に加盟する事になった。(注:当時から、“同人”という単語は存在し、現在の同人サークルの元型もあった。 ただし、現在の同人とは大きく異なり、当時の同人は若い作家が新しい文学を模索して活動する、現在の同人界における同人一次創作がメインで、二次創作はそれ自体が存在しなかった)
しかし、それとは対照的に学業は低迷した。
学校の授業をサボりまくり、たまに学校に来ても授業中は窓の外に見える空を眺めてばかりいて、文字通りの上の空だったそうだ。(笑)
さらに中学校卒業後、高等学校に進学するも試験をサボって落第を繰り返し、最終的に1910年、慶大予科に進学するもチフスを患って退学。 翌年再入学するも、精神的な情緒不安定のために中退し、萩原は学校に通うのを諦めた。
さて、学業を諦めた萩原は、しかし1913年、かの北原白秋が主宰する雑誌に5編の詩を発表。 詩人として本格的にデビューを果たした。
これがキッカケとなり、詩人の室生犀星(むろう さいせい)、詩人で児童文学者の山村暮鳥(やまむら ぼちょう)と知り合い、故郷である前橋に戻った後、3人で詩や宗教、音楽を研究する“人魚詩社”という同人サークルを設立。 1915年には、同サークルから『卓上噴水』という雑誌を刊行し、自身の詩を発表する。 また、ギターやマンドリン演奏の教授も始め、演奏会を主宰するようになったのも、この頃からである。
1917年、既に32歳になっていた萩原だったが、この頃になってようやく詩集の発表を決意する。 そして同年、自費出版ながら『月に吠える』というタイトルで自身初の詩集を出版。 従来の詩作の常識を打ち破り、型に囚われない口語象徴詩、叙情詩の新境地を開拓する事に成功しただけでなく、かの森鴎外が絶賛した事もあって、詩集はベストセラーになり、日本の詩壇に確固たる地位を築く。
一躍時の人となった萩原は、複数の雑誌で詩を発表。 また、詩や短歌の評論、楽器演奏会の主宰など、多岐にわたって活動するようになっていく。
しかし1924年、『新興』という雑誌の創刊号に掲載された12編からなる『情緒と理念』という作品が当局の検閲に引っ掛かり、同誌が発売禁止になった。
また、既に結婚して2人の娘の父となっていた萩原だったが、1929年に離婚。 これがキッカケとなり、精神的な情緒不安定に拍車がかかり、私生活は荒廃していった。 この頃萩原は、心の拠り所を教会に求め、足しげく通うようになったそうだ。
しかし、私生活とは対照的に、仕事の方はかなり順調にキャリアを重ねた。
1934年~36年にかけて、詩集や評論を多数出版。 これらの功績が高く評価され、36年には“文学界賞”という賞を受賞している。 また、37年には自身が発起人となり、“透谷文学賞”という文学賞を設立。 かの島崎藤村らと共に選考委員を努める。
また、執筆活動と同時に講演会を多数開催し、その講演内容などから“国粋主義者”と呼ばれるようになっていったのも、この頃からである。
1940年には、『帰郷者』という詩集で自身が創立メンバーになっている透谷文学賞を受賞。 さらに精力的に活動する。
……が、この頃から既に体調に異変を感じていた萩原は、最終的に1942年(昭和17年)5月、急性肺炎を患い急死。 享年55歳。(注:後述するウェブサイト、“萩原朔太郎研究所”に掲載されている略歴では、“享年57歳”となっているが、明確に誤り。 正しくは、“55歳と6ヵ月”である。 これを始め、同サイトの年代表記は誤りが“多々”あるのでご注意を) 亡骸は、生まれ故郷の前橋の寺に建てられた墓に葬られた。
萩原の死後、その作品は存命中以上に高く評価され、その作品は現在までに実に5度(!)も全集が出版されるほどの人気を得ている。
1993年には、萩原の故郷である前橋市が市制施行100周年を記念して、同市出身の萩原にちなんだ“萩原朔太郎賞”を設立。 現代詩を対象とするこの文学賞は、設立から丁度20年目を迎える今年2013年現在も、受賞が継続して行われている。
日本文学が最も活発だった20世紀初頭。 同時代を代表する多くの作家たちと幅広く交流し、彼らと共に新しい文学を模索しながら活躍した詩人、萩原朔太郎は現在、“日本近代詩の父”とまで称されているほど、日本を代表する偉大な詩人として極めて高い評価と人気を得ている。
ちなみに、萩原の長女、葉子は、父の影響からか作家として活躍。 その娘、すなわち萩原の孫娘にあたる朔美もまた、演出家として現在活躍している。
・散文詩『Omegaの瞳』
以上のように、萩原のバイオグラフィを紹介したワケだが、ではこの萩原という詩人が詠んだ散文詩、『Omegaの瞳』とは、いったどんな作品なのだろうか?
萩原の作品は、現在その全てがパブリック・ドメイン(注:“公有”という日本語訳があるが、一般的にはパブリック・ドメインの方で認知されている。 “著作権、あるいは特許の保護期間が終了した著作物、及び特許取得技術”の事で、国によって規定が異なるが、日本の場合は小説や詩、音楽などの著作物は、“著作権者の死後50年”で保護期間が終了する規定になっている。 パブリック・ドメインに関しての詳しくは、拙著『「メトロポリス」伝説:クリティカル・エディション』の169~171頁を参照の事)になっており、『青空文庫』などの有志参加による非営利のパブリック・ドメイン作品配信サイトや、萩原の研究サイトなどで代表的な作品を中心に多数が無償公開されている。
で、そうしたウェブサイトの中でも最大級の情報量を誇る研究サイト、“萩原朔太郎研究所”に、件の『Omegaの瞳』の全文が掲載されていたので、以下にコピペする事にした。
仮名使いは、原文通り旧仮名使いを用いているが、読み易いように改行を増やしてあるので予めご了承を。
Omegaの瞳
死んでみたまへ、屍蝋の光る指先から、お前の霊がよろよろとして昇発する。
その時お前は、ほんたうにおめがの青白い瞳(め)を見ることができる。
それがお前の、ほんたうの人格であつた。
ひとが猫のやうに見える。
……はい、以上が“全文”です。
短ッ!!Σ(゜Д゜;)
まあ、“散文詩”ってのは元からこーゆーモンです。
散文詩『Omegaの瞳』は、萩原の詩集、『蝶を夢む』(注:初版は1923年7月に新潮社から刊行。 正題:『現代詩人叢書14 蝶を夢む』)に収録された4篇の散文詩の内の1篇である。
実際に詠まれたのが詩集の出版時期なのかどうかは分からないが、少なくとも詩集が出版された1923年(大正12年)当時、萩原はこの前作に当る詩集、『青猫』(注:同年1月に出版)を発表したばかりで、直後の1924年には、雑誌に掲載された『情緒と理念』という作品が問題になり、掲載誌が創刊号であるにも関わらず発売禁止になってしまうという事件が起こった頃の事である。
この頃萩原は、地元前橋の詩人や歌人らと共に文芸座談会(注:親交を目的としたいわゆる勉強会と考えてもらったおk)を設け、交流を深めていたが、雑誌に寄稿した短歌の論文がキッカケとなって当時の歌人らの攻撃に晒され、論争の的になっていた。 萩原は、万葉集などに見られる短歌のロマン的な精神の復活を唱えていたが、新しい作風を求めていた当時の歌人らには受け入れられなかったようだ。
さらにこの詩集の出版直後の1924年、親交の深かった同志であった山村暮鳥が亡くなり、萩原は悲嘆に暮れた。
さらにさらに翌年の1925年には、前橋を離れて東京に移り住んでいる。 ご近所さんには、親友の室生犀星や、かの芥川龍之介もおり、お互い頻繁に行き来していたそうだ。(注:しかしこの直後、芥川は友人に宛てた手紙の中で「ぼんやりとした不安」という言葉を残して自殺する。 1927年の事)
こうした交流に影響されたのか、萩原は次第にニヒリズム(注:nihilism。 日本語では“虚無主義”と訳されているが、人間の存在に真理や本質的価値を見出せない悲観主義の事。 18世紀にドイツで定義された哲学用語。 ニヒルは元々、ラテン語で“無”の意)に傾倒していくようになり、妻との関係にも溝が出来始める。 萩原が離婚を決意するのは、1929年の事だ。
このように、まるで詩集の出版をキッカケに、萩原はプライベート面で様々な問題を抱えるようになっていくのである。
すなわち、散文詩『Omegaの瞳』は、萩原が精神的に(比較的)安定していた頃の最後の作品と言えるのではないだろうか?
とは言え、作品そのモノには元々情緒不安定だった萩原の言い知れぬ苦悩が垣間見えるのも確かだ。
死への恐怖、対人関係、自己の存在と認識。
正確に言葉で表現するのが極めて困難だが、何かこう、自分が自分でないような視覚の疎隔(注:自分の視界が他人の視界のように感じられる事。 主に心理学用語)というか、あるべき姿にない感覚というか、そういった不安定な心理がうかがえるように思う。
死によって視る事が出来るオメガの青白い瞳は、今の自分を客観視する自分自身の本当の人格。 すなわちその瞳は、その瞳を見つめている自分自身の鏡映であり、あるいはそれは、今自分が見つめている猫の瞳か? それとも、自分は死して猫に転生したのか?
ヒトが猫のようにみえるのは、もしかしたら……?
この他にも、ウェブサイト“萩原朔太郎研究所”には、萩原の代表作である『月に吼える』(注:萩原の初の詩集。 初版は1917年出版)、『青猫』、『蝶を夢む』の3つの詩集の全編が掲載されているので、興味のある方は読まれてみてはいかがだろうか?(注:編纂がバラバラだが、“青空文庫”でも、全編が公開されている)
・本作への影響
さて、解釈はともかくとして、散文詩『Omegaの瞳』はこのような作品なワケだが、ではこの散文詩が本作に対してどのように影響を与えているのだろうか?
言うまでもなく、本作は『Omegaの瞳』にインスパイアされた作品である事は、先に記した詩の全文を読んで頂ければ明白であると思う。 詩の節々に、本作との関連を見出せる語が散見されるからだ。
例えば、前半の“お前の霊がよろよろとして昇発する。”という一文からは、起動したCATが魔眼質によって幽霊のような存在として視覚される過程とイメージが被るし、“おめがの青白い瞳(め)”という一文からは、金髪碧眼の冬夏やミリアム、ドレミリアのイメージが想起される。
また、後半の“ほんたうの人格”という一文からは、自己暗示によって真言という人格を演じていた黒のイツワという正体、あるいは正体を隠しているミルハや大神などのキャラクターのイメージが強いし、そもそも最後の“ひとが猫のやうに見える。”という行は、多少改変してほぼそのままの意味で本編の姫様のセリフ(注:「あなたが猫のように見えます」)として引用されている。
そればかりでなく、萩原の作品を丹念に見ていくと、“猫”という単語がそこかしこに散見され、本作本編の節題にも引用された『猫町』というタイトルの小説(注:1935年版画社刊)もあったりする。
散文詩『Omegaの瞳』、そして萩原の作品群をいくつか読めば、本作がいかに萩原作品の影響下にあるかが自ずから見えてくるハズである。
しかし面白いのは、その影響の受け方である。
序章にて記したように、本作は極めて特殊な独特の文体で書かれており、その読み難さ、理解し難さは、他の小説やヴィジュアル・ノベル、ノベル系ゲームの追随を許さないほどで、本作の読者に対する知的要求スペックの高さは、極めて突出していると言える。
この知的要求スペックの高さが、読者にとっての極めて高い“越えられない壁”となり、本作の理解を諦めてしまった読者も多い事と思うが、その原因の一端となっているのが、散文詩『Omegaの瞳』を始めとした一連の萩原作品の影響である。
これを説明するためには、まずそもそも「“詩”とは何か?」から説明しなければならない。
Wikipedia日本語版によると、詩とは、「言語の表面的な意味(だけ)ではなく美学的、喚起的な性質を用いて表現される文学の一形式」の事である。 すなわち、今皆さんが読んでいるこの文章のように、言語本来の意味を文法的、言語学的に正しく用いて、順序立てた、論理的に意味の通るように並べる事によって、書き手の意図、意思、思考を明確に書き記す文章、ではなく、その言葉が本質的に内包する美的、芸術的意味合いをハッキリとは書き記さず、あえて読者に考えさせる事によって言わば意図的に“行間を読ませる”文章の事である。
詩の起源は驚くほど古く、現存する世界最古の詩は、メソポタミアのシュメール(注:現在のイラク、及びクウェート周辺)の一部と考えられているアッシリア遺跡から19世紀中期に発見された“ギルガメッシュ叙事詩”という粘土板で、これはなんと紀元前2000年頃のモノ(!)である。(注:ただし、発見されたのはいわゆる写本で、オリジナルは紀元前3000年頃に成立したと考えられている)
これとは起源を異にする可能性が高いが、ヨーロッパや中国などで、同様の形式の短い文章を用いた詩の元型と考えられる文章が多数発見されている。 そして、我が国ニッポンでも、『万葉集』と『古今和歌集』という短歌を編纂した書物が見つかっており、これは紀元6世紀後半から7世紀頃のモノと考えられており、現存する日本最古の和歌集である。(注:ただし、どちらも全巻が成立した年代がよく分かっておらず、編纂の開始から全巻の編纂完了までに数十年の時を経ている可能性が高いため、成立年代は諸説ある。 一応、現在は『万葉集』が先で、『古今和歌集』が後という説で落ち着いている)
先ほど記した定義に従えば、短歌や俳句も行間を読ませる事に主眼を置いた短文形式であるのは間違いないので、これらが日本における詩の元型、起源と考えて良いと思う。
ただし、短い文章であれば全て詩と呼べるかというと、決してそうではない。 詩には、実はいくつか守らなければならないルールがある。
例えば、言葉のアクセントや語感、発音した時のメロディにも似た文章そのモノが持つリズムを“韻律(いんりつ)”、または“韻文(いんぶん)”と呼び、ヨーロッパや中国の古典詩では特に重要視された。
韻律と同時に、特にヨーロッパの古典詩で重要視(注:中国ではあまり重要視されていなかったそうだ)されたのが、“押韻(おういん)”である。 いわゆる“韻を踏む”事だ。
また、比喩や隠喩などの修辞技法を用いる事で、より豊かな文章表現を試みた作品が大多数を占め、それぞれの作家の創意工夫がココに見られるのも特徴である。
こうした韻律や押韻、そして修辞技法は、近代になって文学全般に見られるようになり、1970年代になって韻律と押韻を全面的に押し出した音楽が登場し、ポップカルチャーの一部として大衆に受け入れられた。
そう、いわゆる“ラップ”である。(注:一般に“ヒップホップ”と混同されているが、ヒップホップは飽くまでも音楽を含めたファッションや絵画、ダンスなどのポップカルチャーの総称であり、音楽のジャンルではない。 ラップを含む音楽は、正しくは“スクール”というジャンル名である)
さて、では我が国ニッポンではどうだったかというと、先にも述べたように日本には古来より伝わる短歌や俳句、川柳、都々逸(どどいつ)といった和歌、あるいはそれに類する落語などの話芸が盛んで、江戸時代に入って鎖国政策が実践された事もあり、西洋詩の影響を受ける事なく、和歌が長い間日本文学の中心になっていた。
もちろん、和歌にも一定のルールがある。
俳句であれば季語を入れなければならないとか、短歌であれば序詞や縁語などの修辞技法が重要視されたとか。
そして何より、“五、七、五”や“五、七、五、七、七”のような文字数の制限による韻律が最重要視され、西洋詩とはやや異なるモノの、日本語独自の言葉の持つリズムにより、西洋詩との類似性を指摘するのに十分な要素があったと言える。
ちなみに、俳句や短歌などの和歌は現在、海外でも一般に浸透しており、和歌を教えるカルチャースクールやサークル活動が盛んなのだそうだ。
ただ、海外では日本語のように“五、七、五”のような文字数の制限による韻律が使えないため、“季語や修辞技法を用いたごく短い詩”として詠まれている。
それはともかく、しかしこうした和歌中心の短文文化が背景としてあった事から、日本では元々“詩”と言えば漢文の事を指し、西洋詩はもちろん、日本語の詩も存在しなかった。
この状況が変化するには、鎖国政策が廃止される江戸時代の終焉、明治の始まりと文明開化を待つしかなかった。
さて、文明開化華やかなりし頃の明治初頭、様々な分野で西洋文化が大量に、そして急速に日本に流入し、日本はにわかに西洋ブームが巻き起こった。
19世紀末を迎えたこの頃、世界はヨーロッパ列強による植民地支配が最盛期を迎え、しかし20世紀に入って間もなく、第1次世界大戦という形でヨーロッパ列強支配の時代は終焉するのだが、世界の中心は当時の大英帝国(現:イギリス)であった。
文学の世界でも、19世紀のイギリス文学は後の小説や映画に多大な影響を与え、モーリス・ルブランやコナン・ドイル、アガサ・クリスティ、ルイス・キャロルなどの人気作家を多数輩出し、世界の文学の中心的な存在であった。
そのため、文明開化直後の日本から、イギリスに留学する作家も多かった。 夏目漱石などは、その最たる例と言えるだろう。
また、文学と同時に哲学や心理学など、それまでの日本にはなかった学問が大量に、しかも極めて急速に流入したのもこの頃で、巷にはニーチェやショーペンハウアー、あるいはフロイトやユングの著書を読み漁る書生が溢れかえった。
そして、これら流入した西洋文化の一部として、西洋詩も大量に流入し、それまでの日本文学、特に和歌とせいぜい漢文しかなかった文学界に、詩は一大旋風を巻き起こした。
この当時、孤独な少年だった萩原は一人遊びの手慰みにこれらの西洋詩に触れ、和歌との類似性に気付き、傾倒していったのではないだろうか?
和歌と同じく韻律と修辞技法を重要視し、しかし和歌にはない押韻による鮮烈な文章形態は、萩原少年の心にすさまじいインパクトを与えたハズである。
しかし、萩原にとって最も衝撃的だったのは、19世紀以前の伝統的な西洋詩ではなく、20世紀に入って早々に登場した新たな詩のジャンル、散文詩であった。
19世紀中頃のフランスで勃興したこの新ジャンルは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてヨーロッパで流行的に普及し、かのオスカー・ワイルドに多大な影響を与えた後、20世紀初頭のフランスで始まった芸術の新ジャンル、シュールレアリズムの画家たちによって支持されたとされている。
先にも述べたように、本来“詩”とは、韻律や押韻、修辞技法を用いて美的、芸術的な文章を構成し、読者に行間を読ませる事を主体とした文学の事である。 そのため、言葉の表面的な意味だけではその詩の本質を見抜くのは難しく、表層に隠された裏の部分、すなわち行間を読む事で初めてその詩の意味、作者の意図が理解出来る。
よって、詩は必然的に意味の分かり難い文章になる事が多い。
が、それでも文章としては比較的分かり易い方である。 和歌のように文字数制限があるワケではないので、理解するためには本文の数倍もの文字数になる訳、解釈を必要とする和歌ほど分かり難いモノではない。
しかし、西洋詩における伝統的な詩の前提ルールを嫌い、ルールを無視した意味の通らない、行間を読んでも補完しきれない文字通りの“散文”を用いた散文詩は、最早作者以外に正確に理解するのは不可能と言っても過言ではないほど、難解な作品がほとんどである。(注:そのため、勃興当初の散文詩は「最早“詩”ではない」と批判された事もあった)
萩原が詩人として本格的に活動を始めた1913年頃、日本にもこの散文詩が入ってきており、萩原はしかし多大な影響を受けたハズである。
それまでの伝統的な様式を無視し、難解かつ意味不明な単語が羅列された散文詩は、しかし萩原や与謝野晶子が敬愛したロマン的な古代の和歌に見られる主観的芸術性が垣間見え、萩原が求めて止まなかった新しい文章表現、模索し続けた“答え”がそこにはあった。
そして萩原は、この“答え”を自身でも執筆するようになり、先に全文を紹介した『Omegaの瞳』に代表される多数の散文詩を発表。 日本における最も重要な散文詩人として、20世紀初頭の日本文学界に名を馳せる事になったのである。
そして、その萩原にさらに多大な影響を受けたのが、本作の作者である閂である。
本作の本編には、明らかに萩原の、そして萩原作品に類する散文詩の影響がハッキリと見られる。
意味の通らない、行間を読んでも補完しきれない表現や描写、用語、多様な韻律、押韻の多用、意図的な伏字や当て字、単語の誤用など、本作の読み難さ、理解し難さを構成している要素は、しかし文章単位で細かく読んでいけば、その言葉の美しさ、文字通りの詩的な表現が多数あり、その全てが散文詩の影響であり、ヴィジュアルノベルたる本作に散文詩的文体を導入したが故のモノである。 本作を鑑賞済みの読者ならば、そして特に、読了を諦めてしまった読者であるなら、これは大いに納得出来る説明だと思う。
本来“詩”とは、物語りがあったとしても、小説のように長文で表現せず、とにかく短く、簡潔な文章で表現するのが基本である。 そうする事で、読者に“行間を読ませる”という演出を意図的に導入するのが、“詩”という文学作品の基本であり、そして極意でもある。
対して小説とは、意図的に行間を読ませる事はあっても、それは飽くまでも作品の一要素に過ぎず、物語りを物語るためには説明不足があってはならない。 だから、詳細に説明するためには必然的に文章が長くなり、詩のように短文で済ませる事が出来ない。
詩と小説は、同じ文学というカテゴリーにありながら、その目的が全く正反対と言っていいほど異なるジャンルなのだ。
しかし閂は、この相反する二律背反の完全なる融合を試み、その結果として散文詩的文体を導入する事でこれを成し遂げた。
本作の読み難さ、理解し難さを構成してる要素である散文詩的文体は、しかし言葉としての美しさ、文章としての面白さという詩の持つ芸術性を小説に導入する事に成功し、なおかつこれが作品の世界観や設定にも生かされているという、これまでの小説、そしてヴィジュアルノベルを含めたノベル系ゲームでは到達出来なかった領域に、初めて到達する事に成功したパイオニア的作品なのである。
虚淵玄、那須きのこ、竜騎士07、科(注:同人ヴィジュアルノベル『単彩綺劫』の作者)等々、独特の文章と世界観で人気作、ヒット作を世に送り出している作家は多い。 しかし、その誰もが、“小説”という制約に囚われ、その領域からはみ出る事のない、まさに“小説”を書いている。
それはそれで悪い事ではないし、むしろそうであるからこそ、それぞれの作家の作品が売れたのは間違いない。(注:読み易く分かり易いので)
しかし、そうした人気作家らを以ってしても成し得なかった領域に足を踏み入れたのが、本作の作者である閂夜明という作家である。
本作は、小説という枠組みに囚われる事のない、詩と小説の完全な融合を試みた記念碑的作品なのである。
それと同時に、本作には構成面でも散文詩の影響が垣間見える。
意図的な時系列の混乱、いわゆる“時系列シャッフル”は、作品の構成に散文詩的文体を導入していると言える。
また本編中には、これが“意図的なモノ”であるコトを説明しているセリフも、実はある。
1章23節、千野チノが初登場するシーンで、チノの長台詞に対する真言の感想。
“単語を、遣いたい意味のまま並べただけな気がする”
それはチノのセリフだけでなく、散文詩的文体を導入した本作の文章、全体に言える事なのである。
といったトコロで、今週はココまで。
楽しんで頂けましたか?
ご意見ご感想、ご質問等があればコメにどうぞ。
来週もお楽しみに!
それでは皆さんまた来週。
お相手は、asayanことasami hiroakiでした。
SeeYa!(・ω・)ノシ
Thanks for youre reading,
See you next week!
-"Sight of OMEGA" Ultimate Analyse #28-
皆さんおはこんばんちわ!
asayanことasami hiroakiでっす!(・ω・)ノ
フィリピンの台風、大変なコトになっちゃいましたね。
今回の台風は30号だったワケですが、30コ以上の台風が発生したのは、1994年以来の事。
加えて、この時期に発生した台風の規模としても、今回はまさに最大級。 瞬間最大風速は、実に90m/s(!!)にも達したというから驚きです。
90m/sというコトは、時速に直すと実に324km/h(!?)にもなる。 うっへ! 時速200m/h達成かよ!Σ(゜Д゜;) ナルギスとかカトリーナドコロの騒ぎじゃないしッ!
フィリピン政府の発表によると、死者は2000~3000人規模になるとの事ですが、行方不明者の正確な数が未だに分らず、被災地の警察などでは行方不明も合わせて1万人規模になるのではないか?という見方もあるとか。 また、インフラが寸断された事により、被災地では救援物資が届かず治安が悪化。 略奪なども起こっているようで、早急な対策が望まれます。
一応、日本を始めとした各国が自衛隊などの災害派遣を準備していますが、あるいはUNの出動も必要なのかも。
最後の最後にこんなデカいのが来るとは……!
……しかし、こういうコト言うのは不謹慎だと分っていますが、つくづく日本直撃じゃなくて良かったと思う。 ただでさえ、今年は全国各地で台風や豪雨や突風(竜巻)、果ては火山の噴火まであって大変だったのに、こんなのに来られた日には3.11ドコロの騒ぎじゃないです。
ホント、日本に来なくて助かった。
とは言え、被災地の惨状は3.11の記憶も生々しい我々日本人にとっても他人事ではありません。 犠牲になった方々のご冥福と、被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
<今週の特集>
今週の特集コーナーは、『アルティメット・アナライズ』シリーズ第4弾、同人ヴィジュアルノベル『Omegaの視界』の徹底解説連載第28回です。
キャラクタープロファイルは、今回がようやくラストです。
八重洲うら(やえす うら)
真名:WC_NK:Beehive/オズマ・イース
年齢:―(AA済)
性別:女
WCLに所属する魔眼質者で、CATライヒェンカチュの遣い手。 カヴン所属で、NKのB。
元々はLu=Leの魔眼質者で、しかもWEを下賜されたESの第三位という高位のメンバーであったが、ダーカやヨルド・モネらと共に改宗されてWCLに与する事になったらしい。
今回の『No.13』のおいて、ねこざんまいでの待機を命じられたNKナンバーの一人だが、四重奏団らの会話の中で名前が出てくるだけで、うら本人は本編には未登場。 立ち絵もない。
設定も未公開のため、詳細は一切不明。
一応、現在公開されている設定では、『interlude』にも登場するようだ。
ちなみに、真名の“Beehive(ビー・ハイヴ)”は“ハチの巣”の意。
・WE:3=ハスマリム(ライヒェンカチュ)
WCLが保有するCATで、現在の遣い手は八重洲うら。
旧Lu=Le時代、ガロー神蝕事件直後にイツワから萌芽したWEの内の1体で、ES第三位という高位を与えられたオズマ・イースに下賜された。
しかし、大封時に初代の魔眼の刺し手であったエンリケによって捕獲、封紙、回収され、遣い手であったオズマも捕らえられた。
理由は(設定未公開のため)定かではないが、オズマは改宗を受け、WCLに与する事になり、そのCATであったハスマリムもまた、改宗されてWCLの保有となり、呼称を“ライヒェンカチュ”と改められた上で、カヴンに所属する事になったオズマ、和名、八重洲うらに再度下賜された。
現在は、遊戯の事後処理を行うNKナンバーに加えられている。
エジプトで発見されたミイラ、あるいはロケットにも似た姿をしており、長く伸びた巨大な両手が特徴的である。
ライヒェンカチュはフェイズ7特化型のCATだが、直接的な攻撃能力は有しておらず、それ以外のフェイズも特にコレといった調整がされた形跡はない。
しかし、このCATには極め特殊な能力がある。
それは、有機物を驚異的な速度で腐敗させる事が出来る(注:技名“ici!ワ!”)という能力である。
このCATは、通常地中に隠れた状態で稼動しており、対象を補足した後、地中からその巨大な両手を出して対象を地中へと引きずり込み、驚異的な速度で腐敗させて土に還すのである。
遊戯において、不正操作を以ってしても隠匿が不可能な無関係の犠牲者が出てしまった場合、これを隠匿するのがその主な目的である。
そのため、これまでの遊戯でも滅多に稼動した事が無く、遣い手とCATは常に待機するのが主な任務となっている。
実際、今回の『No.13』でも、遣い手のうらはねこざんまいで寝ているだけで、遊戯には一切関わる事なく物語りは終わっている。 当然、立ち絵もセリフもない。
もっとも、ライヒェンカチュの稼動が必要になる事態が起こる事自体が、そもそもカルロサが定めた遊戯のルールに反する事なので、カルロサとしてもこのCATが稼動しない事を良しとしているのかもしれない。
一応、現在公開されている設定では、『interlude』にも遣い手と共に再登場するようだが、ライヒェンカチュの稼動が必要になるような事態にならない事を祈るばかりである。
灰野ささこ(かいの ささこ)
真名:WC_ESS:BoobyAce/ヨルド・モネ
年齢:―(AA済)
性別:女
WCLに所属する魔眼質者で、CATヨォクリサリスの遣い手。
元々はLu=Leの魔眼質者で、実はWEを下賜されたESの一人だった。
設定未公開のため出自や来歴は不明だが、ともかくESの第七位という下位ではあったが、WEを下賜された資質を発揮してLu=Leの発展に貢献した。
が、大封時に逃亡に失敗。 捕らえられ、そのCATはエンリケによって封紙、回収された。
これまた設定未公開のため理由は定かではないが、モネは改宗に同意し、和名、灰野ささこを賜ってWCLに与する事になった。(注:改宗を受けていないという説もある。 本作で言う“改宗”とは、CATによる不正操作によって、記憶や思考傾向を書き換えられる強制改宗、すなわち“洗脳”であり、これを伴わない場合は単純に“改宗”とは言い難い。 モネの場合、“自らの意思で”WCLに与した可能性があるのだそうな)
WCLではカヴンに所属し、同じく改宗された元WEの第7位、アルク=ベー(注:改宗後はヨォクリサリス)を下賜され、現在に至る。
うらと同じく、本作では四重奏団やNKナンバーたちの会話の中で名前が出てくるだけで、ささこ本人は未登場。 もちろん立ち絵もない。
設定も未公開のため、これ以上の事は一切不明。
現在公開されている設定では、『interlude』にも登場するようだ。
ちなみに、真名は“ブービー・エース”と読む。 ただし、この場合のブービーは“ブービートラップ”の意ではなく、準最下位を意味する“ブービー賞”の方。 ささこはES、すなわち八人姉妹の第七位なので。
ただ、ナゼ“エース”なのかは分からない。
もしかしたら、CATと関係があるのかも。(注:下記参照)
・WE:7=アルク=ベー(ヨォクリサリス)
WCLが保有するCATで、現在の遣い手は灰野ささこ。
元々はLu=Leが保有していたCATで、ガロー神蝕事件直後にパラミアキスから萌芽した8体のCAT、WEの内の1体で、第7位だった。
ES発足後、ヨルド・モネに下賜されたアルク=ベーは、しかし大封時にモネが捕らえられたのと同時にWCLに捕獲され、モネと共にWCLに与する事になり、“ヨォクリサリス”という新たな呼称を与えられた。
昆虫の幼虫かサナギ、あるいはマユのような容姿をしているが、これは実は真の姿ではない。 これは、ぬいぐるみのような無機物で、魔眼質がなくても可視可能な物理実体である。
ヨォクリサリスの本体は、封紙された状態でこのぬいぐるみの中に入っているか、あるいはこのぬいぐるみそのモノに受肉していると考えられている。
そのため、遣い手のささこは常にこのぬいぐるみを大事そうに抱いて行動しているのだそうだ。
どちらかと言うと、Igやシロに近い形式である。
ただ、“考えられている”だけで、実際のトコロは実はWCL内でも定かではない。
このCATは謎が多く、改宗の際も名前が変わっただけで再調整は行われておらず、また元々のフェイズ特化も定かではない。
少なくとも、元々はESに下賜されたWEの内の1体で、現在はWCLのカヴンに所属しているのだから、何らかのフェイズ特化、あるいはスロタラスモルトやライヒェンカチュのような特殊能力があっても良さそうなモノだが、そういった事も一切不明で、あったとしても確認はされていない。
実際、ヨォクリサリスは稼動した実績も皆無で、カヴンに所属しながらも常に待機組で、戦闘等の遊戯には一切参加した事がない。
全く以ってナゾな存在だが、設定未公開のためこれ以上の事は一切不明。
一応、現在公開されている設定では、遣い手のささこと共に『interlude』にも登場するようだが、その役割が何なのかを知っているのは、おそらくカルロサだけだ。
真然名無(ましかり なな)
真名:WC_001:GM/ノート・デュー
年齢:―(AA済)
性別:女
WCLに所属する魔眼質者で、遊戯におけるGM、すなわちカルロサと同じルーラーの立場にある人物。 そのため、ミルハよりも大きな権限を持ち、事実上WCLのナンバー2である。
しかし、このような重職にある人物であるにも関わらず、ノートの人物像は不明な点が多い。
ノートがいつからWCLに与する事になったのか? あるいは彼女の出生など、出自や来歴に関する情報は一切が設定未公開で、定かではない。
さらに、本編に登場する姿も、実はノート自身ではない。 今回の『No.13』の最中、アイや克枝、冬夏と接触したノートと思われる人物は、実はノートが遣うCAT、ジャバンダスウォナッチァの偽装した姿で、言わばノートの影武者である。
ノート本人は、本作の第4章、最後の最後にワンシーンだけ、カルロサと話している姿が描かれているのみである。 その姿を見る限り、まだ年端もいかない少女。 彼女を知らない者が見たのならば、小学生と間違えられそうな幼い姿をしている。
ノートはカルロサに心酔しており、その思考傾向、及び行動は、全てカルロサの意思の下に選択、決定されている。 従って、ノートのやる事成す事は全て、カルロサ本人の意思と言っても過言ではない。
事実、今回の『No.13』では、ノートはWCLの魔眼質者であるアイはもちろんの事、本来は敵である八相七家の道具や克枝、冬夏らとも接触し、暗躍の限りを尽くしているが、これらは全て、今回の遊戯の本来の目的であるミルハのレベルドレイン、すなわち真言とシロを介してミルハに紙魚を打ち込む、という目的のためだけに行われたモノである。
これは、ある意味常に公平であるべきGMという立場を逸脱した行為に見える。
もちろん、それが遊戯を始めた張本人であるカルロサの意図であり、カルロサに心酔しているノート自身の意思である。
ノートの行動は、全てカルロサの意思と同義なのである。
いずれにしても、設定未公開のためこれ以上の事は詳細不明。
一応、現在公開されている設定では、『interlude』にも登場するとの事。 またもや暗躍の限りを尽くすのか?
・GM
GMとは、“ゲーム・マスター(Game Master)”の略である。
1970年代、アメリカで産声を挙げたアナログゲーム、テーブルトークRPG(以下TRPG)は、その先駆者となった『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(注:初版は1974年。 日本では85年に公式邦訳版が発売。 現在も改訂版がリリースされており、2012年現在の最新版は第6版。 ただし、邦訳版は第5版まで。 2001年と2006年にそれぞれ映画化もされている)の大ヒットをキッカケに一大ムーブメントを巻き起こした。
元々、欧米では中世や南北戦争などをモティーフとしたジオラマ模型が定番的なホビーとして定着しており、このジオラマを使って遊ぶウォーシュミレーションゲームが一般的なホビーとして定着していた。
しかし、ジオラマを作るのが大変で、しかもそれを置けるだけの広いスペース(注:ビリヤード台ぐらい)が必要で、さらに基本的に2人対戦で遊ぶゲームのため、ゲームとしてはかなりの初期投資を必要した。
こうした背景から、初期投資を必要とせず、しかもリビングテーブル程度のスペースがあれば多人数でも遊べるTRPGが人気を集めていった。
日本では、80年代に入ってようやく一般にも認知され、90年代には大きなムーヴメントを巻き起こした。
しかし、折からのTVゲームムーヴメントや、90年代後半に爆発的なムーヴメントを巻き起こしたトレーディングカードゲーム(TCG)の人気に圧される形でブームが沈静化し、MMORPGに代表されるネットワークゲームやスマートフォンアプリゲームが一般化した現在は、すっかり意気消沈している。
さて、TRPGは、複数人のプレーヤーによって遊べるゲームだが、ゲームであるコトに変わりはなく、ルールがあって勝敗もある。 従って、これを審判する役割が必要である。
それが、件のGMという役割である。
TRPGでは、プレーヤーがそれぞれ一人につき1体のキャラクターを作成し、これを操る。 GMからは、プレーヤーキャラクターが置かれている状況や背景、物語りが説明され、プレーヤーは自分のキャラクターの行動を決める。
この時、もしもその行動が失敗する可能性を含んだ行動の場合、GMはルールに従ってプレーヤーにサイコロを振らせ、行動の成功/失敗を決める。
これを繰り返し、プレーヤーは示された目標達成に向かってゲームを進めるのである。
すなわちGMとは、ゲームの管理者であり、進行役であり、物語りの司会者でもある。 GMの役割とは、“プレーヤーを楽しませる事”なのだ。
本作の世界観のベーシックには、間違いなくこのTRPGがある。
魔眼質者はプレーヤーで、ステータスの振り分けによって作成されたキャラクターは、=CATである。
そしてノートは、ゲームの管理者であり、進行役であり、物語りの司会者なのだ。
そしてGMの役割とは、“プレーヤーを楽しませる事”なのだ。
……ただし、この場合の“プレーヤー”はミルハや真言たちの事ではなく、遊戯を始めた張本人、カルロサの事を指す点が、本来のTRPGとは大きく異なるので注意が必要だ。
・ジャバンダスウォナッチァ
WCLが保有するCATで、現在の遣い手はノート・デュー。
重架空、ストレインミラージとも呼ばれるが、本編ではどちらも未登場。
本来は他のCATと同じく、実体のない不可視の存在だが、ジャバは封紙されておらず、しかも実体化(注:技名“Evangel:26”)が可能な特殊能力があり、“メガネをかけた金髪碧眼の成人女性”という姿で常時実体を見せている。(注:公開されている設定によると、“受肉した姿”となっているが、それだと後述する“服”の設定が説明出来ないので、本書では飽くまでも“変身”として扱う) 公開されている設定によると、服も実体化したジャバの身体の一部なんだとか。 つまり、服を着ているように見えて実は常時マッパなのである。(笑)
ただし、メガネだけはノートが趣味でかけさているのだとか。(←どんな趣味だよ。 メガネっ娘萌えかよ!?)
本来の姿は、二足歩行するネコ、あるいはネコ耳を着けた女性にも似た姿で、どちらかと言うとミルハやイツワの本来の姿に近い。
出自や経緯などは、設定未公開のため全くの不明だが、遣い手のノートは基本的に自分で動く事はなく、もっぱらジャバにその代行をさせる。
実際、今回の『No.13』ではその最中にダーカや道具、克枝、冬夏らがノートからの接触を受けているが、いずれも直接接触したのはこのジャバで、ノート本人ではない。
ジャバには変身能力以外にも、他のCATと異なり自律型のフェイズ10があるが、その自立性は比較的低く、ベロアのように自分の意思で動く事がない。 どちらかと言うと、これはシロのそれに近いと言える。
そのため、ジャバがノートとして接触したそれぞれの相手と会話しているシーンも多数あるが、これらも全てジャバではなく、ジャバを裏で操作しているノートの言葉である。
糸無き傀儡子(くぐつ)、意図されたロボットであり、遊戯に偏在するノートの影武者。
それが、このジャバンダスウォナッチァというCATなのである。
なお、現在公開されている設定では、ノートと共に『interlude』にも登場するようだ。
・F/7シリーズ
7人の“七腹心”(注:または“人柱”)と呼ばれる遣い手と、真名の頭に“F/7”が付く7体のCATによって構成されるバックアップユニット。
遊戯が行われる箱庭の構築、及びその維持を行うために常時稼動しているCATで、7体が揃って初めて意味を為す。
F/7シリーズは、全てフェイズ5特化型で不正操作を得意とする。 そして、7体が相互接続によりリンクする事で、その効果範囲をほぼ無制限に広げる事が出来る。
F/7シリーズは、
F/7:PHASE:2ex_fr 跫猫(きょうみょう)
F/7:PHASE:3ex_fr 瑕能連火(かのれんか)
F/7:PHASE:4ex_fr 髯婦蒼(ぜんふそう)
F/7:PHASE:5ex_fr 五百枝阿(いおえあ)
F/7:PHASE:6ex_fr 春木盗(はるきどる)
F/7:PHASE:7ex_fr 冬眠鼠(やまね)
F/7:PHASE:5exex_un 不灰(ふはい)
という7体によって構成され、遊戯が行われる地に密かに潜入、一般人に紛れている遣い手によって常時稼動し、主に箱庭の構築を行う“Cry Until the Twilight of the G(ミミル)”や、遊戯の最中、あるいは遊戯終了後に箱庭全体に大規模なリライトを行う“M(ajor) U(pdate)(ム)”を実行するのに用いられる。
遣い手は、全員が地元民に完全に溶け込んでおり、また全員が固有の名前を持たない(注:遊戯の度に変わる)ため、遣い手の捜索、発見はほぼ不可能である。
また、F/7シリーズはフハイを除き、猫のような頭で尾の生えたコケシのような姿をしており、外見からはどれがどれなのか区別が付かない。
遊戯においては、一般人に危害が及ばないようにするため、また不測の事態が起こった時のために常時稼動させている必要があり、ミルハでもこのCATを任意に利用する事は出来ない。
そのためカルロサ、あるいはノートの直属としてミルハたちとは完全に分離しているモノと思われる。
飯窪源四(いいくぼ げんし)
真名:―
年齢:??(未AA)
性別:男
飯窪家の前頭首で、知狡と現実の父。 すなわち真言の祖父である。 本作に登場する数少ない男性キャラクターの一人。
飯窪家は、魔眼質を継承しているため代々女系一族で、男児が生まれ難い家系である。 そのため、源四も入り婿として飯窪家に迎えられたが、出自や経緯、資質などは設定未公開のため詳細不明。
登場シーンもワンシーンのみ(注:1章12節)で、もちろん立ち絵もない。
設定未公開のため、これ以上の事は詳細不明。
ちなみに、源四の妻で知狡と現実の母親、そして飯窪家直系の女性である真言の祖母は、まだ存命だが本編未登場。 立ち絵ドコロか名前すら出てこない。
7.その他
本作には、上記以外にも多数のキャラクターが登場する。 しかも、その多くがストーリー上重要なキャラクターばかりである。
大神雪鳴(おおがみ ゆきなり)
真名:―
年齢:20歳(未AA)
性別:男
真言の親友で大学の同級生。 そして、イツワと共にパラミアキスから萌芽した雄性双体の片割れ。 自称“ゆっきー”。
関東圏に生まれた大神は、かなり早い時期からオウトとしての自覚を持っていたが、それを隠し、一般人として生きる事に徹した。
長じて大学に進学した大神は、元々興味があった情報処理系の学科に在籍し、元々ヲタだった関係から、サークルはマンガ、アニメの研究会に所属した。
が、ココで大神は運命的な“再会”を果たす。
同じサークルに入った真言と知り合い、真言が自身の分かたれた片割れ、黒のイツワである事を覚り接触。 意気投合し、二人は親友同士になる。(注:当然と言えば当然である。 元々は同一の存在だったのだから、意気投合しない方がおかしい。 もちろん、このタイミングで再会した事自体は、偶然を通り越して運命的である事に間違いはないのだが。 この都合の良さが呼び水たる月の雫)
しかし大神は、真言がイツワとしての自覚を持っていない事も同時に覚り、自身がオウトである事、そして真言がイツワである事を隠し、単なる同級生同士の友人同士として付き合う。(注:もちろん、オウトはイツワがWCLと関わりがある事を知っており、自身はWCLと関わるのを嫌っていたため、というのもあるだろう。 読者の中には、「知ってたんなら言えよ!」と思った方もいるだろうが、真言がイツワとしての自覚を持っていない時点でネタバレしても、真言には何の事だか理解出来ないので意味が無い。 だから、大神は魔眼質に関しても霊感能力的な説明に止めた。 大神の選択は至極正しい)
今回の『No.13』の開始後も、そのスタンスは変わらなかったが、幸か不幸か雨山かれおと接触。 恋仲になり、結局WCLと関わる事になる。(注:大神もかれおも、恋仲になった事は大神がオウトであった事とは無関係と言っているが、少なくとも大神には、ある種の打算があったかもしれない。 WCL内ではAAも受けていない新入りで、WCLとカルロサへの忠誠がまだ薄いかれおを抱き込めば、“イザという時”に使えるかもしれないという保険的な打算があった可能性は否定出来ないと思う。 かれおにしても、それは同じである)
結局、遊戯の終盤になって真言の事を見捨てておけなくなり、玄ノ森へ赴いて直接的に遊戯に関わる事になった。(注:ただし、戦闘には一切参戦せず、もっぱら真言のサポート役に徹した。 個人的には参戦して欲しかった……。)
遊戯終了後は、WCLを離れる事になったかれおと結婚。 子宝にも恵まれ、自身は同人サークルを主催し人気を得る。
設定未公開だが、どうやら『interlude』にも登場するコトになりそうだ。
ちなみに、大神は知り合った相手に勝手に愛称を付けるというクセがある。 自身は“ゆっきー”と呼び、“いーくん”や“萌え店長”、“かれおん”など、大神と接触した人物は必ず彼に愛称を付けられ、その愛称で呼ばれる。
もちろん、これは大神なりの親愛の情の表れである。
アダ名とは、友達が名付け親だからだ。
・茶黒のオウト
パラミアキスから萌芽した雄性双体の内の1体で、現在は大神雪鳴として生きている。
ガロー神蝕事件直後、パラミアキスは黒のイツワ、そして茶黒のオウトという2体の雄性CATを萌芽した。
この2体のCATは、どちらも自立型のフェイズ10を有しており、後にイツワから萌芽する事になるWEの内の1体、ベロアと同じく言語による意思の疎通が可能で、遣い手がなくとも独立して動作可能な特殊なCATであった。
そのため、イツワとオウトは遣い手の居ないまま、しかし自身の意思でLu=Leに与し、その発展に貢献した。
大封時、イツワはミリアムらの逃亡を助けるためにエンリケと一騎打ちになり、死闘の果てにそのフェイズをズタズタにされながらも相打ちになる。 残ったフェイズ10はなんとかエンリケの亡骸に受肉し、ヒトとして転生する機会を得た。
一方オウトは、設定未公開のため詳細は不明だが、ともかく大封を逃れ、逃亡に成功し、以降行方不明となる。 そして、D変調によってイツワと同じく、ヒトとして転生する機会を得た。(注:WCLでは、逃亡後D変調に失敗して消失したと考えられていた。 そのため、オウトの捜索は積極的に行われた事がない。 オウトにとっては好都合だった事だろう)
そして、何度目かの転生の後に依る事になったのが、大神雪鳴である。
D変調によってCATとしての能力はだいぶ薄れており、せいぜい魔眼質を有している事とフェイズ3が残っている程度で、CATとしての本来の姿も保っておらず、戦闘力は皆無に等しいようだ。
元々のオウトの能力、及び現在の大神の能力は、設定未公開のため上記以上の事は詳細不明だが、ともかくオウトはヒトに転生し続け、これからもWCLと八相の果て無き遊戯をその内に入る事なく見守っていく事になるだろう。
あるいはそれは、カルロサが望んで已まない“神の視点”と同義と言えるかもしれない。
そしてそれは、同時に遊戯からの逃れられない呪縛をも意味していると言える。
今回の『No.13』がそうであったように、オウトはこれからも、何らかの形で遊戯関わる事になるだろう。
・D変調と循環七音
循環七音(じゅんかんななおん)とは、CATの状態を表す移相位の事である。
CATは、最初CATとして召喚、あるいは萌芽し顕現するが、これはCATの一つの形態に過ぎず、変調によってDやEへと移相する。
この移相位は、楽譜の音階になぞられて7位、プラス3位あるとされており、すなわち、
ド(Cat/猫)(注:意味そのまま)
レ(Dog/犬)(注:意味そのまま)
ミ(Embryo/萌芽)(注:“Embryo”は“胚”の意)
ファ(Fetus/胎児)(注:意味そのまま)
ソ(Gnosis/認識)(注:“Gnosis”はギリシャ語で認識、あるいは知識の意。 グノーシス主義の語源)
ラ(Ant/蟻)(注:意味そのまま)
シ(Bee/蜂、あるいは蜜)(注:意味そのまま)
♭(:F/変)(注:フラット。 楽譜の変化記号のひとつ)
♯(:S/嬰)(注:シャープ。 楽譜の変化記号のひとつ)
__(:N/本)(注:ナチュラル。 楽譜の変化記号のひとつ。 特殊文字のため表示出来ず)
となる。
ただし、これは上位移相というワケではなく、DがCより優れているとは限らない。 飽くまでも、移相はそのCATの状態を表すモノであり、レベルやランクの高低とは明確に意味が異なる。
また、CATはC、すなわち循環七音の最下位だが、C~Bは繰り返し循環するため、最下位であると同時にBから循環する上位と言われている。
移相のタイミング、あるいは任意/自動、移相する条件などは、設定未公開のため詳細不明だが、ともかく真言はCで、大神はDである。
また、パラミアキスはEで、本作に登場するこれら以外のCATは全てCであり、G以上は今のトコロ(設定未公開のため)確認出来ていない。
またこれは、本編中に出てくる“十中七三分式”とも関連があるとされているが、やはり設定未公開のため詳細は不明である。
西石貴奴(にしいし きぬ)
真名:西石音(にしいし おん)
年齢:18歳(未AA)
性別:両性具有
本作の最重要キーパーソンである貴奴は、真言の幼馴染みである。
玖威家の婿養子を輩出した事もある家系、西石家に生まれた二人の兄妹(注:あるいは姉弟。 設定未公開のため詳細不明)、芽汰と禍を留。 後に芽汰は玖威家の婿養子に入る事になるが、その直前、二人は禁断の交わりを交わしてしまう。
近親相姦―。
その結果、禍を留が身篭ったのが、音であった。
生まれた音は、近親相姦の子というだけでも鬼子であったが、音はそれ以上の存在であった。
生まれた音は、女児ではなかった。
しかし、男児というワケでもなかった。
両性具有―。
その事実に、西石家は激震した事だろう。
西石家は八相七家に数えられているワケではないが、八相七家に近しい家系で、場合によっては八相七家の掟が適用される事もある。 すなわち、“男児が生まれたら産湯に浸かる前に間引くべし”である。 それは、GWの出現を警戒する八相七家において、何よりも厳守されるべき鉄の掟である。
先にも記したように、西石家は八相七家に数えられているワケではないので、本来であるならこの掟は適用されない。 しかし、音は近親相姦の子で両性具有という極めて稀な存在であったため、やはりGWになる事を懸念して間引かれる事が検討された。
……が、これに待ったをかけたのが、八相七家の一人、奇士道具であった。
道具は、既にAAを受けて子を生さない事を決めていたため、音を引き取り、自身の子として(注:タテマエ上は飽くまでも“後見人”、あるいは“保護者代理”。 飽くまでも法律上の問題に過ぎないが)育てる事を進言した。
これが受け入れられ、生後間もない音は道具に引き取られ、芽汰と禍を留の二人が音の実の両親である事実はひた隠しにされた。
数年後、道具はカルロサと結託して幼い真言と冬夏を引き合わせる事になった。 この場で、カルロサは真言と冬夏にCATシロを下賜するのだが、道具はこの場に音を連れていく。 そして、真言に引き合わせた。
さらに道具は、カルロサが去った後、真言と冬夏が“白の城”に封印したCATシロを音と共に掘り返し、別の場所に埋め戻した。
音はこの時の事を後々まで鮮明に覚えており、再会した真言に隠し場所を変えた事を手紙で報せた。
道具の後援で長じた音は、いつの頃からか自身の身体に疑問を抱くようになり、男性体の性徴が残っていた身体を女性体にするため、性転換手術を受ける。
その結果、男性体の“音”ではなく、女性体の“貴奴”が出来上がった。
これと前後して(……かどうかは、設定未公開のため詳細不明)、玄ノ森の隣町に住んでいた貴奴は、しかし高校に進学する事なく働きに出る事を決め、道具の口利きで八相七家の一つ、永久家が経営する玄ノ森にある小さな町医者、長久診療所のお手伝いさんとして就職。 診療所を訪れる町の老人たちのアイドルになる。
しかし、男性体としての資質は失われる事なく、結局貴奴は魔眼質が顕れ、GWとして覚醒してしまう。
そして、これを待っていたかのように道具は、遊戯開始の直前、貴奴にGWとして八相七家の内の三家、すなわち綾目家、永久家、狩屋家の各頭首を襲わせた。 その結果、綾目家と永久家の頭首は死亡。 狩屋家の頭首は、生きてはいるが重症を負う。
またこれが理由となり、ミルハは真言にも前入りするように命じ、真言は本来の予定よりも1ヵ月近く早い帰郷を余儀なくされた。
さらにこれがキッカケとなり、貴奴は真言との十数年振りの再会を果たし、真言の言う“調査”に協力。 シロの隠し場所を変えた事も、手紙で報せた。
遊戯の終盤、姫様やミルハと接触、交戦になった貴奴は重症を負ってしまうが、遊戯終了後の捜索にも関わらず、貴奴の遺体は発見されず、最終的に“行方不明”として扱われる事になった。
現在公開されている設定でも定かではないが、結果的に『interlude』、あるいは“次に遊戯”にて再登場する可能性が残された事になる。
ちなみに、貴奴は劇中、終始語尾に特徴があるおかしな方言(?)を話しているが、これは玄ノ森、あるいはその近隣の方言というワケではなく、克枝語と同じく貴奴独自のキャラクターである。
セリフによるキャラクターの書き分けの一例である。
・GW
GWとは、“Green Wood(グリーン・ウッド)”の略である。(注:スペルミス。 正しくは“Green Woods”と複数形で表記すべき。 単数形だと、“緑の樹”という訳にしかならない)
八相七家には、“男児が生まれたら産湯に浸かる前に間引くべし”という鉄の掟がある。
八相七家は、元々から魔眼質を継承しているために男児が生まれ難い家系だが、過去にも何度か男児が生まれた事がある。 家系存続のために他の血統と交わった事により、本来の血統が薄まってしまったからだろう。
しかし、では八相七家に生まれた男児が、魔眼質を持たない無害な存在になるかというと決してそうではなく、むしろGWとなる可能性が極めて高い危険な存在であった。
そのため、八相七家はGWとなる可能性が高い危険な存在である男児を間引き、危険を最小限に抑える危機管理として上記の掟を定めた。
事実、この掟のために生まれてくるハズだった冬夏の兄(もしくは弟)は間引かれ、やはり劇中で生まれる予定だった克枝の弟も、姫様の手によって間引かれている。
では、そのGWとは、結局どういった存在なのだろうか?
GWという呼称は、主にWCLで用いられている呼称で、八相七家ではGWの事を“身盗りの生やし”と呼んでいる。 この音価をそのままに、表記を変えて“緑の林”。 イコール“GreenWood”、すなわちGWと呼ぶようになった。
ちなみに、語源である“緑の林”は、旧くは盗賊の異称として用いられた語である。
その原語、すなわち“身盗りの生やし”という表記からも分かる通り、GWとは“その身を盗る存在”、すなわち本来の人格とは異なる別人格。 多重人格症(注:正しくは解離性同一性障害)における人格交代にも似た症状を見せ、文字通りその身を“乗っ取って”しまうのである。
そして、その身を乗っ取るのは、なんとCATなのである!
すなわちGWとは、生まれながらにして魔眼質の資質とCATとしての能力を有した、“ヒトの姿をしたCAT”なのだ。
もちろん、基本ベースはヒトなので、遣い手がなくとも独立して動作し、CATとしての能力もほぼ任意で遣う出来る。
しかも、CATがヒトに受肉して成ったというワケではないため、CATだけを切り離して封紙する事も出来ない。(注:少なくとも、テトライでは出来なかった。 3章41節参照)
これが危険でないワケがない。
CATの能力にもよるが、スタンドアローンで制御不可能な兵器は、それが何であれ脅威でしかないからだ。
そのため、八相七家に生まれた男児は往々にしてGWとなる可能性が極めて高いため、八相七家には先の掟が存在し、WCLもGWの出現は歓迎していないが、道具(と、カルロサ)にはこの存在が必要だった。 八相七家ともWCLとも異なる存在であるGWは、遊戯を意図した方向に向かわせるのにうってつけの不確定要素だったのである。
だから、道具は音を引き取り、GWである事をひた隠しにして育て、そして遊戯に投入したのである。
音の場合、八相七家の玖威家と関連がある西石家に生まれた関係から、六相クイの能力が顕現するが、覚醒する能力はどうやら血統と関係があるようで、GWが必ずしもクイの能力を顕現するとは限らないようだ。
設定未公開のため詳細は不明だが、GWは一様に肉体を持っている分、その能力に関係なく、CATとしてはかなり“しぶとい”ハズである。
だから、出現するとウザいので、ミルハもGWの出現はご遠慮願いたいのである。
西石芽汰(にしいし めいた)
真名:―
年齢:??(未AA)
性別:男
音=貴奴の実の父親。
設定未公開のため経緯は不明だが、実の兄妹(or姉弟)である西石禍を留と交わり、その結果として禍を留は音を生む。
音が生まれた直後、事実隠蔽のために音は道具に引き取られ、実の父親である芽汰は八相七家、西部三家の内のひとつ、玖威家に婿養子に入る。
その結果、数年後に価無が生まれた。
音と価無は、すなわち異母兄妹なのである。
本編では、セリフはあるがワンシーンのみの登場(注:2章31節)で、もちろん立ち絵もない。
これ以上の事は、設定未公開のため詳細不明。
西石禍を留(にしいし かをる)
真名:―
年齢:??(未AA)
性別:女
音=貴奴の実の母親。
設定未公開のため経緯は不明だが、実の兄妹(or姉弟)である西石芽汰と交わり、その結果として禍を留は音を生む。
音が生まれた直後、事実隠蔽のために音は道具に引き取られ、実の父親である芽汰は八相七家、西部三家の内のひとつ、玖威家に婿養子に入る。
その結果、数年後に価無が生まれたが、禍を留がその後どうなったかは、設定未公開のため全くの不明。
本編では、道具と芽汰の会話中(注:2章31節)に名前が出てくるだけで、禍を留本人は未登場。 立ち絵ドコロかセリフもない。
これ以上の事は、設定未公開のため詳細不明。
飯岡真魅(いいおか まみ)
真名:飯窪真言
年齢:16歳(という設定)
性別:女装男子
ハチミツぶんぶん潜入に伴い、真言が止むに止まれず女装した時の偽名。 真言曰く、真言と門王水の名前を即興的にごっちゃにした名前なんだとか。
真言の女装は相当に似合うらしく、本編にはヘナ絵(注:しかも後姿のみ!)しか登場しないが、小冊子に掲載されたイラストを見る限り、似合ってるを通り越してミルハが言う通り完全な女子である。
正直筆者は好みのタイプ。(笑)
いやもう男子でも全然イケるね! それはそれでキモチ良さゲフンゲフン。 ……いやいや、そうでなくてね?(´・ω・`)
いずれにしても、近年のマンガ、特に四コママンガでも定番設定になりつつある女装男子、いわゆる“男の娘”だが、本編にイベントカットが出てこないのが悔やまれて仕方がない……。つД`)°。
というワケで、以上キャラクタープロファイルでした。
長かった……。つД`)°。
といったトコロで、今週はココまで。
楽しんで頂けましたか?
ご意見ご感想、ご質問等があればコメにどうぞ。
来週もお楽しみに!
それでは皆さんまた来週。
お相手は、asayanことasami hiroakiでした。
SeeYa!(・ω・)ノシ
Thanks for youre reading,
See you next week!
-"Sight of OMEGA" Ultimate Analyse #27-
皆さんおはこんばんちわ!
asayanことasami hiroakiでっす!(・ω・)ノ
中国が大変なコトになってきましたね。 天安門に続いて、今度は党本部ですってよ奥さん!
結局のトコロ、中央政府のやり方に反発しているのは、民主化団体だけではないという事で、もしかしたら民主化勢力もこれに便乗して動くかも?
いずれにしても、“話し合いによる平和的解決”というワケにはいかんでしょうな。
だから尖閣諸島なんかにかまってる時じゃないのだよキミタチは!
<今週の特集>
今週の特集コーナーは、『アルティメット・アナライズ』シリーズ第4弾、同人ヴィジュアルノベル『Omegaの視界』の徹底解説連載第27回です。
キャラクタープロファイルはまだまだ続く!
尾張みみみ(おわり みみみ)
真名:WC_B:Ender:333/ファイナ・オル
年齢:―(AA済)
性別:女
遊戯におけるWCL実戦闘部隊、“四重奏団”で魔眼の刺し手を担当する魔眼質者。
まだES体制が布かれていなかった頃のLu=Leに加盟していたオル家に、待望の我が子が産まれた。 両親は、産まれてきた愛娘にファイナと名付け、可愛がった。
……しかしその直後、オル家に最悪の悲劇が訪れた。
ガロー神蝕事件―。
パラミアキスの継承者候補であった魔眼質者、ガロー・ツェロ・ルーが、保管されていたパラミアキスに無断で接触。 神蝕を受け、暴走するという大事件が起こった。
最終的に、暴走したガローをエンドルが休眠させた事によって事件は収束に向かったが、この暴走事件で数名の魔眼質者が巻き込まれ、その中にはファイナの両親も含まれていた。
ファイナは、幼くして天涯孤独の身の上となってしまったのだ。
これを見かねたガローの姉妹、ダーカ・イァンナ・ルーは、罪悪感もあったのかファイナを引き取り、その成長を見守った。
ダーカに見守れながら成長したファイナは、次第に魔眼質者として高い資質を見せるようになっていった。 既にダーカが暴走事件後にESに加盟していた事実を加味すれば、いずれはダーカの後援によってLu=Le内でも比較的地位の高い役職を担っていたのではないだろうか?
しかし、ココで再び悲劇がファイナを襲う。
世に言う大封、カルロサの謀反である。
その結果、ダーカは捕らえられCATを封紙、剥奪された上に、強制改宗されてしまう。 これに伴って、ファイナも同じく捕らえられ、強制改宗を受ける事になった。
こうして、ダーカとファイナはWCLに与する事になり、ダーカには剥奪されたCATが再び下賜され、カヴンに組み込まれる事になった。
そしてファイナは、大封時にイツワとの死闘によって倒れたエンリケに代わる魔眼の刺し手を人工的に生み出す研究機関、エンダーに組み込まれ、その資質を強化されて“Ender:333”という真名を与えられた。
ファイナことEnder:333、和名を“みみみ”と名付けられた少女は、人工的な魔眼の刺し手としてテトライを下賜され、カヴンと共に編成された四重奏団のフォワードとして、以降遊戯の実戦闘部隊として活躍する事になったのである。
かなり早い時期にAAを受けたのか、幼さが残る顔立ちと低身長が外見的特徴。 その姿を初めて見た大神に、“元気ロリ娘”と呼ばれる。(注:2章04節)
また、ファイナは過去に置き去りにされた経験(注:これに関しては本編中には詳しい描写が無く、設定も未公開のため詳細不明)があるらしく、それがトラウマとなっており、“待たされる”という事を酷く嫌うようになった。 そのため、ねこざんまいでの待機中はヒマを持て余し、かれおやダーカの手を酷く煩わせた。(注:3章20節)
ちなみに、和名の“尾張”はオワリ、すなわちエンダーに由来し、“みみみ”はファイナのエンダーナンバー、333に由来するのは説明するまでもないと思うが、……それにしても“みみみ”て……。 ちょいとテキトー過ぎやしませんかえミルハ殿?
・Ender
WCL内に設立された一種の研究機関で、“エンダー”と読む。 “終わらせる者”という意味の造語。
大封時、Lu=Leの魔眼質者たちを次々と襲い、そのCATを封紙、回収した初代の魔眼の刺し手、エンリケは、しかしミリアムらを逃がすためにエンリケの前に立ち塞がったCAT、イツワとの死闘の末に倒れ、その肉体をイツワのイーハに乗っ取られ、事実上エンリケは死んでしまう。(注:ただし、その肉体はイツワによってしばし存続し、最終的に飯窪家の祖となった後にこの世を去る)
そのため、男性魔眼質者にしか遣う事が出来ないIgは、遣い手の無いまま保管され、後に飯窪家の家宝となったが、CATを封紙するためにはIgが必須で、後に繰り返し行われる事になる遊戯の主目的がCATの封紙、回収にあるのであれば、魔眼の刺し手もまた必要不可欠な存在である。
遊戯を開始するには、女性魔眼質者でも遣う事が出来るIgの開発と、このIgを遣える魔眼質者の視出は、WCLとカルロサにとっては急務だった。
そこで設立されたのが、このエンダーという機関である。
エンダーの主目的は、本来は男性の魔眼質者でなければ親和しないという致命的な欠点があるIgを改良し、女性魔眼質者でも遣えるIgを開発する事と、そのIgを遣ってCATの封紙を行う魔眼質者の視出にある。
設立からほどなくして、IgはTYPE・MEGA‐Dの機能限定下位互換版であるTYPE-E、テトライが完成したが、問題はこれを使う魔眼質者の方であった。
設定未公開のため詳細は不明だが、結局テトライを遣える魔眼質者は視出出来ず、可能性のある魔眼質者を強化する、という方針に転換され、魔眼の刺し手を言わば人工的に“製造”するという方向性に改められた。
しかし、開発は失敗を繰り返し、開発チームは試行錯誤を余儀なくされた。
が、その結果、第3世代目(注:エンリケを第0世代とする開発プロセスの世代。 メジャーアップデートのバージョンナンバーの事)にしてようやくテトライを遣える魔眼質者に強化する事に成功の兆しが見え、第3世代33番目の検体であったファイナが、テトライを遣える最初の(?)人工的な魔眼の刺し手として“製造”されたのである。
要するにアレだ。 『ガンダム』に登場する“ニュータイプ研究所(ムラサメ研究所)”だ。 みみみは、言うなればフォウ・ムラサメやエルピー・プルなワケだ。
ちなみに、現在公開されている設定では、みみみはリライトを受けて『interlude』にも登場する。
・Ig:TYPE・E“テトルジャトートリス”
WCLが保有するCATで、現在の遣い手は尾張みみみ。
CATを封紙する魔眼の刺し手に不可欠なCAT、Igは、しかし“男性魔眼質者にしか親和しない”という致命的な欠点があった。 元々魔眼質は男性には発現、継承され難い資質で、現在のWCLはもちろん、八相七家を構成している魔眼質者もその全てが女性である。
この欠点を改善し、女性魔眼質者でも遣えるIgを開発、運用する事は、唯一のIgの遣い手であったエンリケ・ファ亡き後のWCLにとってはまさに急務であった。
そうして、エンダーという研究機関が設立され、Igを遣える人工の魔眼の刺し手の“製造”が始まった。
その過程で開発されたのが、このIg:TYPE・E“テトルジャトートリス”、通称“テトライ”である。
名目上はオリジナルのIg、TYPE・MEGA‐Dの欠点を補った“アップグレード版”とされているが、実際にはTYPE・MEGA‐Dを女性魔眼質者でも遣えるように機能制限した下位互換版、すなわち“ダウングレード版”である。
その通り、テトライには様々な点でTYPE・MEGA‐Dとの相違が認められる。
例えば、その姿。
一見するとTYPE・MEGA‐Dと瓜二つの姿をしているが、TYPE・MEGA‐Dが仮面という形で無機物に受肉しているCATだったのに対し、テトライには実体がない。 Igとしての姿が認められるのは、起動時においてのみである。 またその動作時も、仮面ではなく手甲として動作、遣い手に装備される。
また、TYPE・MEGA‐Dにある遣い手とCATとのリンクを断つ機能もない。 そのため、リンクを断ってCATだけを捕獲、封紙、回収するという事が出来ず、封紙を実行する際はフロクシルやババッカナーリャガーといったカヴンが遣うCATのバックアップを随時必要とする。 封紙の処理速度も、TYPE・MEGA‐Dには大きく劣るようだ。
遣い手であるみみみ自身は、テトライの事を“バグフィックスされた完成版”と呼んでいるが、そんな事はない。 “完成版”であるなら、女性魔眼質者でも遣えるようにした上で、プロトタイプであるTYPE・MEGA‐Dよりも高性能でなければそうとは呼べない。
ならば、現状でそのレベルを達成出来ていないテトライは、やはりTYPE・MEGA‐Dの下位互換版、機能限定劣化版、ダウングレード版と位置付けるのが正しいのではないかと思われる。
現在公開されている設定では、遣い手であるみみみと共にリライトを受けて『interlude』にも登場するようだ。
・四重奏団(カルテット)
そのエンダーと共にカヴンから選出されたメンバーでパーティーを組み、対象の捕獲とCATの封紙、回収を行う4人組の実戦闘部隊。 それが、この四重奏団である。
前記した通り、エンダーはエンリケに変わる魔眼の差し手を人工的に創り出す魔眼質者の強化を主目的とした研究機関である。
しかし、女性魔眼質者でも遣えるように調整されたIg、テトライは、TYPE・MEGA‐Dほどの性能がなく、加えて強化されたエンダーナンバー、特に、元々高い資質を持っていたハズのファイナを以ってしても、エンリケには遠く及ばない性能しか発揮出来なかった。
そこで、不足しているエンダーの能力を補い、複数の魔眼質者で編成されたパーティープレイというシステムが考案された。
その結果生まれたのが、この四重奏団である。
実際に封紙を行うエンダーを中心に、カヴンから選出された3人の魔眼質者とそのCATにそれぞれの役割が与えられ、4人一組で対象のCATを封紙、回収する事を可能にした。
このシステムが考案された事で、テトライとエンダーはようやく人工的な魔眼の刺し手としての真価を発揮し、過去の遊戯において大いに活躍したのである。
……が、4人もの魔眼質者を同時に行動させなければならないという非効率的なシステムのある種のコストパフォーマンスの悪さは否めず、『No.13』では飽くまでもイツワ覚醒までの繋ぎ、あるいはイツワが覚醒しなかった場合のバックアッププランとして運用され、ファイナの勝手な行動による損害もあり、大した活躍の場もないままに遊戯が終了した。
現在公開されている設定では、メンバーもそのままに『interlude』にも登場するようだ。
愛染アイ(あいぜん あい)
真名:WC_STG:Iron/ダーカ・イァンナ・ルー
年齢:―(AA済)
性別:女
カヴンに所属し、遊戯におけるWCLの実戦闘部隊、“四重奏団”では主に場の構築、結界の展開を担当する魔眼質者。 そして、旧Lu=LeにてWEを下賜されたESの一人でもある。
ダーカの生家であるルー家は、Lu=Leの重職を担う高位の魔眼質者を多数輩出してきた名家で、ダーカも先天的に高い資質を有していた。
しかし、ダーカよりも優れた資質を持っていたのが、ダーカの実姉妹であるガローであった。 そのため、ガローは始祖アリス亡き後、複数の魔眼質者によって継承されてきた原初のCAT、パラミアキスの数代目の継承者候補に選ばれるという名誉を賜る。
しかしこれが、悲劇の始まりになるとは誰も予想しなかった。
ガロー神蝕事件―。
ガローは、パラミアキスの継承者を選出するための公式審査の直前、保管されていたパラミアキスに無断で接触。 神蝕され、暴走するという大事件を起こした。
最終的に、エンドルによってガローは休眠させられるが、暴走中に数人の魔眼質者を巻き込むという痛ましい事件になった。
そして、暴走の犠牲となった魔眼質者の中には、生まれて間もないオル家の娘、ファイナの両親も含まれていた。
ダーカは、休眠したガローの責任を取る形でファイナを引き取った。
ファイナを引き取ったダーカは、しかしダーカ自身には何の責任もなかった事が幸いし、ダーカはWEの1体を下賜され、ESに加えられるという名誉を賜る。 しかもこれは、第4位という比較的高位での抜擢であった。(注:恐らく、ガロー神蝕事件によって高位の魔眼質者が亡くなったためと思われる。 設定未公開のため詳細は不明)
ESの一人として、Lu=Leの発展に貢献していたダーカだったが、その日々は突然の終焉を迎える。
世に言う大封、カルロサの謀反である。
ダーカは、ESの一人としてその重要なターゲットになった。
他のESと同じく、劣勢を悟ったダーカは逃亡を試みる。 が、まだ幼かったファイナを擁していた事もあり、逃げ遅れ、ついには捕らえられる。
改宗か殉教か。
捕らえられ、選択を迫られたダーカは、改宗を選択した。(注:筆者の想像だが、ファイナがまだ幼かった事もあり、ファイナの事を優先したためと思われる。 そう考えると、本編中に描かれているファイナに対して異常なほど過保護なダーカの様子にも納得がいくのではないだろうか? また、ダーカに甘やかされて育ったファイナが、あーゆー性格になってしまったのにも説明が付くように思われる)
改宗したダーカには、“WC_STG:Iron”という真名(注:Ironは“アイロン”、または“アイアン”と発音し、“鉄”の意である。 容姿に似つかわしくない真名である)を賜り、和名を“愛染アイ”と呼称された。(注:苗字の愛染=アイゼンも、ドイツ語で鉄の意)
そして、四重奏団を形成するためのカヴンに加えられ、元々アイが遣っていたWEの第4位、マラキタルシシム(改宗後は“v☆”)を下賜され、みみみがフォワードを務める四重奏団に編成された。
今回の『No.13』では、カルロサの密命を受けたノートの接触を受け、ミルハをアッサリ裏切った。(注:本当の主がミルハではなく、カルロサである事を再認識したため) そして、一時的にではあるがミリアムを助ける事になった。(注:4章51節)
しかし、それは飽くまでも本当の主であるカルロサの命令に従ったからであり、ある意味カルロサへの忠誠を示した行動と言える。 ミリアムを助けたのは、飽くまでも形の上でそうなっただけである。
そのため、アイは『interlude』にも重要なキャラクターとして再登場する。
ちなみに、アイがかけているメガネについてだが、いつ頃からかけているのかは、設定が公開されていないので詳細不明。 また、大神はこれを指してアイの事を“ツン眼鏡”と呼んだ。
・Coven(カヴン)
Covenとは、魔女術(ウィッチクラフト)において魔女の集団、団体、集まりを指す語である。
元々は複数人の魔女を指す語として定義されており、人数の定義はなかったが、魔女術が現在の近代魔女術(ウィッカ)に発展したのを皮切りに、“13人構成”という人数の定義が定めらた。
本作に登場するカヴンは、しかし設定未公開のため正確な人数が不明だが、13人もはいないのではないかと筆者は考える。(注:13人ものキャラクターを設定するなんてどれだけ大変な事か!)
さて、本作に登場するカヴンは、単に魔女の集団という以上の意味がある。
WCL創設後、カルロサは倒れたエンリケに代わる魔眼の刺し手を“製造”するため、エンダーという機関を設立したが、エンダーによって製造されたIgと魔眼の刺し手は、しかしエンリケに劣るモノでしかなく、単体での運用は難しかった。
そこで、エンダーを補佐し、エンダーを魔眼の刺し手として機能させるためのバックアップ要員を育成、編成する目的で設立されたのが、件のカヴンという機関である。
カヴンに組み込まれた魔眼質者は、それぞれにエンダーを補佐するのに必要な特化能力を有したCATを下賜され、遊戯毎に選出され、“四重奏団”という実戦闘部隊を構成するパーティーを組む。
四重奏団は、その名の通り4人編成のパーティーであるため、必然的に編成されるエンダーを除き、四重奏団に編成されるカヴンは、常に3人である。
その3人は、先にも述べたようにエンダーの補佐を行うためのCATを下賜されており、それぞれに明確な役割分担がある。
ただし、四重奏団に編成されるカヴンは、どうやら遊戯毎に流動的に編成し直されるらしく、固定メンバーというワケではないようだ。(注:設定未公開のため詳細不明)
今回の『No.13』では、エンダーを努めたファイナとの相性からか、個人的にファイナと関係の深いダーカ・イァンナ・ルー(場の展開、結界構築と防御を担当)、セマ・ルグルヴァ(主にprot-einの作成を担当)、そしてロヴェス・ネヘハ(対象の捕縛を担当)が編成された。
四重奏団は、遊戯毎に定められたターゲットに攻撃を仕掛け、そのCATを封紙、回収するのがその主な任務である。
従って、遊戯開始時は所定の場所で待機し、指揮官であるミルハの命令で目的地に向けて出撃。 四重奏団がターゲットのCATを封紙、回収に成功すれば遊戯は終了となるため、常に遊戯終盤にしか活躍の場が無い。
特に、今回の『No.13』では、本来の魔眼の刺し手であるイツワが覚醒し、ミルハと直接戦闘になったため、四重奏団は大した活躍の場も無く遊戯が終了した。
しかし、『No.13』の終了に伴い、イツワがD変調したため、再び不在になった魔眼の刺し手の代替として、『interlude』では再び活躍の場が与えられる模様。
・WE:4=マラキタルシシム(v☆)
WCLが保有するCATで、現在の遣い手は愛染アイ。 元々は、Lu=Leが保有しESメンバーに下賜されたWEの内の1体で、第4位だった。
ガロー神蝕事件直後、パラミアキスから萌芽した8体のCAT、WEの内の1体で、ESへの加入を賜ったダーカに下賜されたCATが、このマラキタルシシムである。
何かに喩えようもない独特の風貌を見せる姿をしているが、この外見は言わば“服”で、CATの本体は口のようにも見える裂け目から見えている双眸の方である。 言われてみれば、衣服の下に除く4本足と尾は、確かに猫のそれである。
……が、それにしてはやけに首が長過ぎないか?
首長族ならぬ首長猫?(笑)
それはともかく、マラキタルシシムは元々からフェイズ2特化型で、場の展開、無関係の一般人を巻き込まないようにするための結界の構築を行う“PPP(Pass us, Please don't catch me, Peekaboo)”や、あらゆる攻撃を防ぐ鉄壁の盾、不可侵領域を展開する“V_al-kyrie☆”を得意とし、極めて高い防御力を有する。 その通り、遣い手であるアイが編成されているパーティープレイによる魔眼の刺し手、四重奏団のおいては、場の展開と封紙中に無防備になり易いエンダーの護衛を担当する。
この他に、フェイズ5、7、9にも比較的高い能力を有しているが、本編中にはこの辺りの詳しい描写が無いため、その実力の程は未知数である。
大封後、遣い手と共にWCLによって捕獲、封紙、回収されたマラキタルシシムは、同じく捕獲されたダーカと共に改宗を受け、その呼称を“v☆”(注:ファイ(ヴ)スタァ、ぶいっ☆、ヴァーチュラクドスターなど複数の読み方があるが、単純に“ヴィ・スター”と呼んでしまって構わないと思う)に改変され、元々の遣い手であったアイに再び下賜された。
現在公開されている設定では、『interlude』にも同じくアイのCATとして登場するようだ。
酒井アルコ(さかい あるこ)
真名:WC_HTG:Call=R=W/セマ・ルグルヴァ
年齢:―(AA済)
性別:女
カヴンに所属し、遊戯におけるWCLの実戦闘部隊、“四重奏団”では主にprot-einの生成、特にAnchorの作成と投錨を担当する魔眼質者。
設定未公開のため出自は不明だが、WCL創設後にその資質を視出され、カヴンに配属。 CATババッカナーリャガーを下賜された。 今回の『No.13』では、アイ、サクラと共に四重奏団に配属される事になった。
薄く開かれた目と無感情な無表情のため、思考が読めない様子から大神には“おっとり不思議ちゃん”と言われたが、実際にはそんなコトはなく、思った事をハッキリと言う性格で、言動もごく普通。 電波っぽい思考は全く見られず、サクラと共に変人揃いのWCL内では比較的ニュートラルな常識人である。
これ以上の事は、設定未公開のため詳細不明。
なお、アルコは『interlude』にも登場する。
・ババッカナーリャガー
WCLが保有するCATで、現在の遣い手は酒井アルコ。 名前が長いため、“ババ”と略して呼称される事が多い。(注:酒露婆神、バカスモウター、ニャ=ダバロ=ウルルゥなど、他にもいくつか呼称が確認されているが、本編にはいずれも未登場)
ベロアにも似た容姿で、体格に合わない長い尾が特徴的だが、それより何よりババの容姿を特徴付けているのは、その両手に備えられた一対の大砲である。
ババは本来、フェイズ4に特化したCATで、その通り四重奏団ではprot-einの生成(注:技名“L-aterna M-agika & S-urrealisme”)を担当する完全な後方支援型である。
特に、対象に打ち込んでその所在を把握するための発信機の役割を担うprot-ein、Anchorの作成を得意としているが、八相のように射手が他にいないため、Anchorの射出はババ自身が行う。(注:技名“PBGJ”)
そして、その時に利用するのが、両手の大砲なのである。(注:先ほど記した異称の一つ、“バカスモウター”の“モウター”は、電気モーターではなくMortar=迫撃砲の意と思われる)
しかし、その役割に専念しているためか、遣い手のアルコはprot-einの開発にそれほど積極的ではなく、本編中にもAnchor以外のprot-einを作成、または使用する描写は無い。
他に、フェイズ1と2にも比較的高い調整がされているが、やはり本編中にはこれを裏付ける描写が無く、実力の程は未知数である。
現在公開されている設定では、『interlude』にも登場するようだ。
木加サクラ(こが さくら)
真名:WC_MP:Sheckle/ロヴェス・ネハヘ
年齢:―(AA済)
性別:女
カヴンに所属し、遊戯におけるWCLの実戦闘部隊、“四重奏団”では主に対象の捕縛を担当する魔眼質者。
設定未公開のため出自は不明だが、WCL創設後にその資質を視出され、カヴンに配属。 CATフロクシルを下賜された。 今回の『No.13』では、アイ、アルコと共に四重奏団に配属される事になった。
大神には“暴力女”という失礼極まりない印象を持たれたが、浅黒い肌と厚い唇、ダイナマイトなスタイルという、かれおとはまた違った魅力がある容姿。 しかし、どうやら本人はまだ不満らしい。(注:3章20節参照)
言動、及び思考は、アルコと同様に比較的ニュートラルな常識人と言える。
これ以上の事は、設定未公開のため詳細不明。
なお、サクラは『interlude』にも登場する。
・フロクシル
WCLが保有するCATで、現在の遣い手は木加サクラ。
絞首様、クリオネゴとも呼ばれるが、本編ではどちらも未登場。
ペイルホワイトにも似た容姿をしているが、決定的に異なるのは背中から伸びた尾である。
注連縄に付いている紙垂にも似たこの尾は、対象を絡め捕るための鎖として機能する。
そのため、フロクシルは対象の捕縛に特化しており、フェイズ1と7、次いで2と5に高い調整がされている。(注:これらのフェイズを組み合わせる事で、捕縛の鎖として機能しているモノと思われる)
そしてその通り、四重奏団では対象の捕縛を担当しており、中~遠距離の対象を捕縛する“BOND-AGE”と、近距離の対象を捕縛、あるいは近距離の攻撃を防御するオートガード機能でもある“口中六角”(注:頭部が割れて6本の触手が飛び出し、捕縛、あるいは防御を行うらしい。 本編未登場)を得意とする。
今回の『No.13』では、ミルハの召集を受けて四重奏団一同で玄ノ森に到着した瞬間にイキナリ音に接触。 交戦となり、フロクシルはその一部を音のクイに喰われて損傷してしまうという失態をやらかした。
現在公開されている設定では、『interlude』にも登場するようだ。
五六禅(ごろく ぜん)
真名:WC_CTL:Zenon/ヤーマ・マーヤー
年齢:―(AA済)
性別:男
WCLに所属する魔眼質者で、CATペンパラミータの遣い手。 そして、ねこざんまいに常駐するミルハの執事兼雑用係。 そのため、真言も一度だけだが会った事がある。
出自や経過は設定未公開のため不明だが、本作に登場する数少ない男性魔眼質者の一人だが、テトライすら下賜されていない事から、その資質は比較的低いモノと思われる。
WCLに加入、もしくはAAを受けたのが遅かったのか、容姿はおおよそ初老の域に差し掛かっていると思われる外見で、その外見通り常に沈着冷静。 落ち着いた大人といった印象がある。
真言のバイト先でミルハが店長を務める古本屋、ねこざんまいに常駐するミルハの執事兼雑用係という立場もあってか、誰に対しても丁寧な、それでいてやや古風な敬語を話す。
設定未公開のため、これ以上の事は詳細不明だが、現在公開されている設定では、禅は『interlude』にも登場するようだ。
ちなみに、“禅”とは仏教用語の“禅”に由来する。
正確には“禅定(ぜんじょう)”といい、サンスクリット語の“dhyaana”の音写と意訳を合わせた複合語。 精神統一による瞑想によって心理を観察する事、またそれによって心身ともに動揺のない、安定した状態を指す。
そして、この禅定によって心を乱されない力を定力、あるいは禅定力と呼ぶ。(注:だから、ペンパラミータの設定があのようになった。 詳細は下記参照)
実は、“三昧”の同義語なんだそうな。(注:“三昧”も本来は仏教用語で、同じ事を何日間も続ける修行を指す語。 常坐三昧、法華三昧など。 これが転じて、放蕩三昧や贅沢三昧といった、“~しっぱなし”という意味で用いられるようになった)
また、真名の“Zenon(ゼノン)”は、禅の英語訳(zen)に引っ掛けた名前で、ポーランドなどの東欧系の男性名。
・ペンパラミータ
WCLが保有するCATで、現在の遣い手は五六禅。
五波羅密、梵四有弥栄、Dharma・Karmanとも呼ばれるが、いずれも本編未登場。
数字の8にも似た容姿で、頭部には後光にも似た輪を有する。 他のCATと比較して、比較的ヒトに近い容姿と言えるかもしれない。
出自、経緯については、設定未公開のため詳細不明だが、少なくとも禅に下賜されて以降は、遊戯に実戦投入されたという記録がないようだ。 今回の『No.13』でも、結局使われないままに終わっている。
それというのも、ペンパラミータは極めて特殊なCATで、フェイズ6特化型の十全のCATであるにも関わらず、喰った対象の能力を消化吸収する事が出来ない。 また、フェイズ6以外のフェイズにもほとんど調整がされていないらしく、能動的に攻撃する事が出来ない。
ないない尽くしのCATだが、ペンパラミータにはこれを補って余りある極めて特殊な能力がある。
なんと、ありとあらゆる攻撃をフェイズ6によって“一時的に”吸収、無効化し、さらにこれを相手に反射する事が出来る(注:技名“みずは凡に還る”)のだ!
すなわち、相手の攻撃力が高ければ高いほど、ペンパラミータも受動的に高い攻撃能力を得る事が出来るのである。
一見便利なこの能力は、しかし遊戯においては決定的な戦力差を生む要因ともなり得るので、バランスブレイカーになる懸念から実戦にはほとんど投入された例が無く、常にバックアップとして配置されるのみである。
一説には、ミルハの全力攻撃さえも反射可能と言われており、敵(注:この場合は八相)の手に渡るリスクを回避するための後方配置とも考えられる。
また、この極めて特殊な能力のため、ペンパラミータはルーラー・オンリーに指定されているとも言われている。(注:遣い手の禅は、これを否定しているらしい)
白雨カゲロウ(はくう かげろう)
真名:WC_NK:AntLion/イヴァ・ザラストラ
年齢:―(AA済)
性別:男
WCLに所属する魔眼質者で、CATコモンマイトサスの遣い手。 NKのA。
禅と同じく、本作に登場する数少ない男性魔眼質者の一人だが、やはりテトライすら下賜されていない様子から、その資質はそれほど高くないモノと思われる。(注:カゲロウは、コモンマイトサスをリンカブル・フォームによって遣っているらしい)
禅よりは年若いように見えるが、青白い顔色とこけた頬、三白眼の眼つきなどのマイナス要因により、不健康で年齢よりも老けた印象が残る風貌と言える。
もちろん、AA済みなので年齢など飽くまでも見た目だけのモノでしかないが……。
ただ、その容姿に反して(?)、言動や思考は禅と同じく落ち着いた大人といった印象で、決して悪くはない。
中身を見てもらう前に容姿で損しているタイプ。(笑)
いずれにしても、設定未公開のためこれ以上の事は詳細不明。 現在公開されている設定では、『interlude』にも登場するらしい。
ちなみに、真名の“AntLion(アントライオン)”は、そのまま昆虫のカゲロウ(注:正確にはウスバカゲロウ科。 この幼虫が、いわゆるアリジゴク)の意。
・NKナンバー
NKナンバーとは、WCLが行う遊戯において、言わば“事後処理”を行う特殊部隊の呼称である。
メンバーはほとんど固定だが、どうやらカヴンから選出されているようだ。
遊戯の最中、無関係な一般人などに何らかの被害が及んだ際、これを隠匿、隠滅を含めた不正操作を行う事に特化したCATとその遣い手によって構成され、遊戯の痕跡を失くすのが、その主な目的である。
要するに、いわゆる“掃除屋”である。
証拠の隠匿、隠滅の方法はCATと遣い手によって様々だが、今回の『No.13』では、対象の記憶の強制消去を行うCAT、コモンマイトサスとその遣い手である白雨カゲロウ(A)。 対象の完全な隠滅を行うCAT、ライヒェンカチュとその遣い手、八重洲うら(B)。 そして、対象に対する制裁を行うCAT、スロタラスモルトとその遣い手、水小月シカネ(C)がNKナンバーとして派遣された。(注:この3人をまとめて、“NKのABC”と呼ぶ)
しかし、NKナンバーが動くという事は、=カルロサによって定義された遊戯のルールが正しく守られなかった事でもあるため、これまでの遊戯でもNKナンバーが動いた記録はほとんどない。 実際、今回の『No.13』でも、動く事なく遊戯が終了した。
NKナンバーの稼動は、同時に遊戯に致命的なミスが出た事と同義であるため、カルロサやミルハにとっても彼らの稼動は“無いに越した事は無い”と考えているのかもしれない。
・コモンマイトサス
WCLが保有するCATで、現在の遣い手は白雨カゲロウ。
誘裂圧、アトビサリとも呼ばれるが、どちらも本編には未登場。
鳥類にも似た二本足と長い首、小さな頭部という姿をしているが、このCATを特徴付けているのは、なんと言っても小さな頭部とは不釣合いなほどの、長く伸びた巨大なアゴである。
この容姿からも分かる通り、コモンマイトサスはフェイズ6特化型で、対象を喰う事が出来る。 が、ペンパラミータと同じく消化吸収は出来ない。
コモンマイトサスは、フェイズ6の他にフェイズ5にも高めの調整がされており、喰った対象に不正操作を行う事(注:技名“視る眼コレを”)が、その主な役割だからである。
とはいえ、不正操作自体はタマズサほど高性能ではなく、むしろ不正操作の能力は極めて低く、また雑である。
主に、対象の記憶を強制消去、すなわち“記憶を喰う”事によって不正操作を施すのだが、ほとんどの場合、対象は廃人化してしまうと言われている。
そのため、どちらかというと遊戯中に誤って関係してしまった部外者への措置、というよりは、不正行為や裏切り行為を行った同胞に対する処罰(注:Lu=Le、及び八相におけるベロアの存在に近い)の意味合いが強いように思われる。
いずれにしても、ペンパラミータと同じくコモンマイトサスも今回の『No.13』を含めた過去の遊戯において、ほとんど稼動した記録がないため、その実力の程は未知数である。
現在公開されている設定では、遣い手であるカゲロウと共に『interlude』にも登場するそうだ。
水小月シカネ(みおづき しかね)
真名:WC_NK:-cide/??
年齢:―(AA済)
性別:女
WCLに所属する魔眼質者で、CATスロタラスモルトの遣い手。 NKのC。
今回の『No.13』の期間中、ねこざんまいに常駐した待機組の中でも極めて“特殊”な人物。
容姿や服装が多少ハデ、という程度で見た目的にはそれほど“特殊”な印象はないが、思考が極めて愉快主義。 自己中心的とは言わないが、自身の価値観に絶対的な自信を持っており、その価値観に合わない対象に対しては決して容赦しない。 また、容赦しない事を楽しんでいるトコロがあり、なおの事タチが悪い。
不愉快な事に対してストレスを感じ、それが一定以上溜まるとスロタラスモルトが発動(本人曰く「漏れちゃった」)するが、それを抑制するような意思はシカネにはない。
彼女だけは、みみみ以上に“機嫌を損ねたらコワい”存在と言えるだろう。
出自、経緯などは、設定未公開のため詳細不明だが、現在公開されている設定では、『interlude』にも登場するようだ。
ちなみに、シカネの真名は設定上も未公開、というか“不明”になっており、仲間内でも“シカネ”と呼ばれている。
また、ナンバーである“-cide”は“genocide(ジェノサイド=大量虐殺)”の略と思われる。
・スロタラスモルト
WCLが保有するCATで、現在の遣い手は水小月シカネ。
全雑魚自動鏖殺、死なない蛸とも呼ばれるが、やはり本編ではどちらも未登場。 遣い手のシカネなどは、略して“スロ”と呼ぶ事がある。
半球状の胴体の下部から手足や触手が無数に伸びるという、異称に違わぬタコのような容姿のCAT。
他のNKナンバーが遣うCATと同じく、スロは極めて特殊なCATで、基本的にはフェイズ5特化の不正操作能力がメインだが、記憶操作やリーディングなどは全く出来ない。 もちろん、他のフェイズへの調整も微々たるモノなので、遊戯や戦闘においては十全のCATとは思えないほどの役立たずである。
しかし、スロにはこの役立たずぶりを補って余りある極めて特殊な能力がある。
それが、異称にも示されている“全雑魚自動鏖殺(ぜんざこじどうおうさつ)”である。
“鏖”は、それ一文字で“みなご(ろし)”と読む事が出来る。 このCATは、その通り皆殺し、大量殺戮を可能にするCATなのである!
遣い手が何らかの理由(注:ほとんどの場合は、シカネの個人的価値観により“不快に思った”がその理由になる)によって刑の執行(注:正確には“制裁”。 そのため、刑罰は死刑とは限らない。 技名:Other Hitman's Prutty kittens)が決定すると、スロの指1本につき15発。 片手で合計75発。 両手で最大150発(!)のAnchorが対象に打ち込まれ、6日間の“執行猶予”が与えられる。(注:ただし、Anchorの命中数は両手合計でも常に最大75発に制限されている)
が、この執行猶予は飽くまでも刑の執行を先送りにしているだけで、猶予期間が終われば自動的に刑が執行される。 また、猶予期間中に再犯を犯すと、猶予期間の終了を待たずに即時刑が執行される。
すなわち、“刑の執行”そのモノは、Anchorが打ち込まれた時点で既に決定事項なのである。
刑が執行された後、Anchorは即座にリロードされ、次の射出に備えられる。
またこの能力は、スロがアイドリングの状態でも常に発動可能で、対象の選定も含めて全て全自動で行われる。 ほとんどスタンドアローンで制御不可能なICBMのような危うい“兵器”である。
そのため、スロはルーラー・オンリーに指定されており、飽くまでも遊戯が失敗、あるいは極めて憂慮すべき事態になった時のみに有効になるよう、厳しく使用制限されている。
実際、『No.13』でも遣い手であるシカネ本人が「漏れちゃった」と称する例を除き、スロが遊戯に使用された描写は一切無い。
大神も、このCATだけはご登場を遠慮したい旨を素直に打ち明けている。(注:3章39節)
といったトコロで、今週はココまで。
楽しんで頂けましたか?
ご意見ご感想、ご質問等があればコメにどうぞ。
来週もお楽しみに!
それでは皆さんまた来週。
お相手は、asayanことasami hiroakiでした。
SeeYa!(・ω・)ノシ
Thanks for youre reading,
See you next week!
・キリアケ
麒麟朱、切開、または霧明とも表記する。
WCLが保有するCATで、現在の遣い手は知狡と現実。(注:主に現実) 実は“PHASE:ALL:V(ersatile)”という真名を持つ。
キリアケの来歴は、設定未公開のため一切不明だが、ペイルホワイトと同じく大封時に封紙、回収されたLu=Le保有のCATだったのではないかと思われる。
キリアケは極めて特殊な汎用型CATで、十全ではあるがどれかのフェイズに特化しているワケではなく、基本ステータスは完全なフラットである。
が、このステータスは遣い手によって任意に、しかも随時書き換えが可能で、用途によって特定のフェイズに特化させる事が可能という、極めて利便性の高いCATである。
しかし、フェイズ10(イーハ)の自立性が高く、これによってシロ並みのセミオート動作を可能にしているのは確かだが、勝手に動作する傾向が強く、時には遣い手の言う事を聞かなくなる事も。
そのため大変扱い難く、利便性は高くても有用性が低いCATという、なんだかよく分からない仕様になっている。
それもあって、知狡は飯窪家の頭首としてキリアケを遣っていたが、親和性の低さは否めず、遣い手である知狡の著しい体力、精神力消費を伴った。
しかし、本来の遣い手である現実とは極めて親和性が高く、『No.13』の終盤では、ミルハの全力攻撃を防御し、損傷した真言の身体を瞬時に回復させるなど、汎用型らしい高性能振りを発揮した。
白猫のような外見を有しており、十全のためフェイズ9もあるが、その翼は不可視のままで一定の形状を取って見えるという事がないのだそうな。
といったトコロで、今週はココまで。
楽しんで頂けましたか?
ご意見ご感想、ご質問等があればコメにどうぞ。
来週もお楽しみに!
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-"Sight of OMEGA" Ultimate Analyse #26-
皆さんおはこんばんちわ!
asayanことasami hiroakiでっす!(・ω・)ノ
先日の事―。
ウチの軒先で、こんな光景に出くわしました。(↓) ザ・バトル・オブ・カマキリ!!
マジモンのリアル・ムシキング!!!
発見した時点で既にこの状態でしたが、両者がっぷり四つに組んだまま全く動かず、立会いの上手争いから奥襟を掴むも帯に手が届かず届かせずボディを攻めようにも右ストレートが得意の左フックでかわされこう着状態に。 嗚呼、そして馬肥ゆる秋の天高く輝く陽光は、東江戸川三丁目の向こうへと沈んで行くのであった……ッ!!(←なんのこっちゃ?)
……結局、このまま数時間(!)動かず、夕方になって雨の気配が出てきたせいか、気付いた時にはもういませんでした。(^ ^;)
しかしまあ、秋は夏の虫たちにとって恋の季節。 子孫を残すためにこういうバトルが見られるのも、今の時期ならではなんでしょうね。
秋ですねぇ~~~。
……ってゆってる間にもう冬の気配が忍び寄ってるけどね。(笑)
<今週の特集>
今週の特集コーナーは、『アルティメット・アナライズ』シリーズ第4弾、同人ヴィジュアルノベル『Omegaの視界』の徹底解説連載第26回です。
まだまだ終わらんよーっ!?
玉梓選律(たまずさ せんりつ)
真名:センリ
年齢:―(AA済)
性別:女
八相七家、玉梓家の頭首で、五相タマズサの遣い手。 呼称は様々で、克枝は“センの字”と呼び、道具は“西の刀自”、あるいは“裏刀自”、“西の仕切り”、“西部仕切り”など。 そして、ミリアムは“センリ”と呼ぶ。
八相七家は、大きく2つのグループに分ける事が出来る。 すなわち、玄ノ森に居を構える三春家、綾目家、狩屋家、永久家の四家と、関西に居を構える玉梓家、奇士家、玖威家の三家である。
玄ノ森の四家を“東部四家”と呼び、関西の三家を“西部三家”、あるいは“西國三家”と呼ぶ。
また、東部四家は三春家が統括し、同時に八相七家全体を統括しているが、西部三家を統括しているのが、選律が頭首を務めている玉梓家なのである。
しかし、実際には魔眼質が無い三春家の現頭首、のぎかはただのお飾りで、実質的に八相七家を統括しているのは選律である。
ちなみに、ミリアムとベロアは西部三家が擁護しており、普段は玉梓家が庇護している。 そのため、ミリアムとベロアは、春先の祭の時期にのみ、西部三家を引き連れて玄ノ森を訪れる、というのが通例である。
AAを受けているため、外見は10代の少女。 関西、特に京都辺りの訛りがある方言を話す。
選律は、八相七家でも最古参で、その出自は八相七家の創設よりも以前、大封時にまで遡る事が出来る。(注:選律の出自に関しては、現在公開されている複数の設定資料、及び本編の描写などによってマチマチで、実は統一されていない。 “ミリアムらが日本で最初に出会った魔眼質者”という記述がある一方、それよりも以前の大封直後に“日本に逃れてきた”という記述もある。 “ナゾの人物”と言えば聞こえは良いが、明らかにテクニカル・エラーである。 本解説では、様々な記述から独自の解釈を行い、後述する“策謀”が説明出来る設定を支持し、以下の解説を論述する)
大封前夜。 Lu=Le内でもESに与していたセンリは、ミリアムやドレミリアの臣下として働いていたと思われる。 そして、大封が起こるとミリアムやドレミリアを援護し、その逃亡を助けた。 また、自身もガローを伴ったエンドルと共に逃亡に成功。 大封を逃れる。
が、この時から既に、センリは策謀を巡らし始めていた。
センリは、共に逃亡したエンドルとガローに不正操作(注:これがタマズサによるモノなのかどうかは、設定が公開されていないので定かではないが、不正操作自体はフェイズ5によるモノで、十全のCATならば程度の差こそあれ可能は可能なので、センリが元々遣っていたCATによるモノと思われる。 タマズサは、飽くまでも八相創設後に下賜される事になるCATで、この時点ではミリアムとドレミリアが回収、保管しているハズなので。 元々遣っていたCATに関しては、設定未公開のため詳細不明)を行い、休眠させ、その存在を“行方不明”とし、その実は自身で庇護する事にした。
何らかの方法でミリアムやドレミリアらの所在を掴んだ選律は、日本にて二人と合流。 二人には、ガローとエンドルの事を“逃亡中にはぐれた”と報告したのである。
この選律の行動にどのような意図があったのかは不明だが、恐らく“イザという時”の切り札にしようと考えていたのではないだろうか?
そして、図らずもその“イザという時”が、間もなく訪れた。
日本での定住を決めたミリアムは、この国で複数の魔眼質者を視出し、彼女らを集めてLu=Leの再興とWCLの打倒を悲願とする新組織、八相七家を創立する。 そして、集まった魔眼質者にドレミリアとセンリを加えた7人に、幸運にも回収に成功した元イツワのフェイズを封紙したCATをそれぞれ下賜した。
しかしこの時、センリ(和名:選律)に下賜されたのは、順位の低い五相タマズサであった。
リデルの血統というだけで、資質の低いドレミリアよりも。 後に卑尊に継承される事になるナガヒサや、道具に継承される事になるキサムラでもなく、下位の五相である。
もちろん、選律自身の資質がタマズサに良く親和したであろう事は想像に難しくなく、飽くまでもCATとの相性によって下賜されたのだろうが、Lu=Leの崩壊をその眼で視、そしてミリアムとドレミリアの逃亡を助けた実績から考えれば、選律にとってこの不当な順位は、屈辱以外の何モノでも無かったコトもまた、想像に難しくない。
これに、“イザという時”が訪れた事を悟った選律は、長い時間をかけて策謀を巡らし、時が満ちるのをただひたすらに待ち続けた。
そして、その時がようやく訪れた。
本作の遊戯、『No.13』の直前、カルロサはノートを通じて選律に接触。 選律の思惑を探った後、その思惑の成就をエサに裏工作を開始した。
選律は、庇護していたエンドルをノートに託し、自身はタマズサの不正操作能力を駆使して価無に後催眠(注:予め暗示をかけておき、何らかのキッカケによってその暗示が表に出るように仕掛けた催眠術の事)をかけ、さらには祭の直前、冬夏にも同様の不正操作を施した。
そして、価無にベロアを襲わせ、冬夏にはミリアムを暗殺させようとした。
しかし、結果的にこの策謀は失敗に終わり、選律の裏切り行為を知ったベロアによって、断罪の断頭台にかけられる事になった。
ベロアの慈悲により、命までは取られなかったが、選律は魔眼質を剥奪され、今後はフツーのヒトとして余生を過ごす事になった。
ちなみに、エンドルと共に選律が庇護していたハズのガローがその後どうなったかは、設定未公開のため詳細不明。
・策謀の理由(ワケ)
上記したように、選律は自身の思惑のためにノートの口車に乗り、ミリアムとベロアの暗殺を試みた。 結果的に失敗に終わったこの暗殺は、しかし選律にとってどのような意味があったのだろうか?
それこそが、選律の思惑であり、策謀の理由である。
先にも記したように、選律はカルロサによる大封と、それに伴うESの壊滅、Lu=Leの崩壊を間近で見ている。 そして、八相七家の創設時から、WCLによる遊戯を何度も何度も経験し、その経過を見てきた人物である。
ミリアムを除けば、選律は一連の成り行きを最初から見ている唯一の人物である。
しかし、そのように長い時間を過し、最古参としてミリアムとベロアを庇護し、八相七家の実質的なリーダーとして同組織を牽引してきたにも関わらず、タマズサとの親和性が高いという理由だけで、八相七家の五位という低い地位に甘んじなければならなかった選律は、いつの頃からかある考えに至った。
そう、八相七家は、新たな次元へと至る時が来たのだと……。
そのためには、旧時代の“遺物”を排除しなければならないのだと……。
旧時代の遺物とはそう、ミリアムとベロアの事である。
結局のトコロ、なんだかんだと理由を並べ立てたとしても、八相七家はミリアムの個人的な復讐のために存在している。 ミリアムが、Lu=Leと自身を裏切ったカルロサ(と、ミルハ)に復讐したいがために組織された、言わば私設軍隊に過ぎないのだ。 そこには大儀などなく、Lu=Leの再興は飽くまでも復讐を果たす過程で間接的に達成されるセカンダリー・オブジェクティブに過ぎないのだ。
これを悟った選律は、ミリアムとベロアの暗殺を策謀した。 旧時代の遺物を排除し、八相七家を再編し、カルロサもミルハもWCLも関係ない、本当の意味でのLu=Le再興を目指す集団。 それこそが、本来あるべき八相七家の在りようである。
もちろん、その過程にはこれまで通り、WCLとの衝突は避けられないだろうが、イザとなれば極めて高い資質を持つ魔眼質者、エンドルを目覚めさせればいいし、それでもダメなら、諸刃の刃になるだろうが、ガローを覚醒させるというテもある。 WCLに対抗出来るだけの戦力は(ミリアムやベロアにはナイショで)持っているのだ。
そして、再興した新生Lu=Leのリーダーには選律自身が就任し、同組織を治める。 何故ならミリアムとベロアがいなくなれば、資質の上でも経験の上でも、選律以上の魔眼質者は八相七家にはいないからだ。(注:この論法、何かに似ていないだろうか? そう、『ひぐらしのなく頃に』における秘密結社、“東京”の内紛と全く同じなのだ。 秘密結社“東京”は、戦後の日本を裏から操ってきたフィクサーによって構成された組織で、作品中の最大の謎であった“雛見沢症候群”を核兵器に代わる大量破壊兵器として利用しようとしていた。 東西冷戦華やかなりし頃の日本が、非核三原則を掲げながらもアメリカやソ連に対抗するには、代替兵器が必要だったからだ。 しかし、同組織内にこれに反対する者たちが現れ始めた。 戦争を知らない、戦後生まれの若い世代である。 彼らは、まさに戦時中の軍国ナショナリズムを未だに引きずっている長老たちを排除するため、野村と名乗る女に命じて鷹野三四に接触。 裏工作を進め、雛見沢大災害を発生させるという計画を立てた。 これにより、長老たちはその責任を問われて東京を追い出され、東京は若い世代によって新しい時代に向かう日本を牽引する組織として活動する事になる。 ……というのが、『ひぐらしのなく頃に』という作品における物語りのバックボーンである。 ……ね? 全く同じでしょ? 結局のトコロ、どちらも“世代交代”が必要だったのだ。 ただし、どちらもやり方がよろしくない。 東京は犠牲が大き過ぎるし、選律は返り討ちに遭う可能性が高過ぎる。 どちらも、失敗して当然のハイリスクな作戦だったのだ。 しかも、野村と同様、ノートは二重スパイだし、ね。)
やり方はどうであれ、選律は選律なりに、本当の意味でのLu=Le再興を果たしたかったのである。
・五相タマズサ(玉梓)
八相七家が継承するCATで、元々はイツワから切り離されたイツワのフェイズ5。 現在の遣い手は、玉梓家の頭首である玉梓選律。 克枝には“タマ様”と呼ばれている。
6本の枝を揺らす花のようにも見える外見は、他のCATとは異なりおおよそ“ネコ”というイメージからかけ離れている。 しかし、五相タマズサは紛れも無くCATであり、魔眼質者には往々にして“ネコ”と認識され、CATが何なのかを知らなかった真言も、五相タマズサを見て直感的に“ネコ”と認識した。
タマズサは、元々は声や音を司るフェイズで、これを触媒として対象を操る事を可能にした“不正操作”能力に特化したCATである。
いわゆる洗脳、あるいは暗示、催眠術の類である。
本来は、遊戯に無関係な一般人を巻き込まないようにするため、あるいは巻き込んでしまった時の記憶操作などを目的とした用法が主で、どちらかと言えば遣い手同士の戦闘よりは、F/7シリーズに代表される箱庭構築の目的で使用されるのが常であった。
実際、タマズサによる不正操作は、ファイア・ウォールによって弾かれてしまう程度の強制力しかないため、十全のCATには全くの無力であった。
しかし、無力なのは十全のCATに対してのみで、十全ではないCAT、すなわちファイア・ウォールを標準実装していない五相タマズサ自体を含めた八相七家のCATには、一般人並に有効である。
このセキュリティホールを利用し、選律は価無に“瑞ノ随ニ童名転バセ(みつのままにわらわなころばせ)”というキーワードによって発動する後催眠や、冬夏に“籠眼ノ子眼捕リ(かごめのこまどり)”という不正操作を施し、旧Lu=Leの亡霊とも言うべきミリアムとベロアを暗殺しようとした。
また、選律は八相七家創設当初から、AAを受けて代替わりする事なく玉梓家の頭首であり続けているため、周囲の人々に継続的な不正操作を度々施し、無用のトラブルを避けているのだとか。
今回の『No.13』終了直前、遣い手である選律を失った五相タマズサは、道具によって回収され、カルロサの意向によりルーラー・オンリーに指定され、保管される事になった。
・神使八乃舞(みづはのめ)
または“みつはちのめ”。 通称“ハチミツぶんぶん(命名:オレ)”。
冬夏たちが通う玄ノ森の高校で、毎年春の入学式直後に新入生を対象に行われる学校行事。 異国風の衣装を身に纏った在校生たちが、創作言語の歌詞の歌を歌い、舞い踊るのを新入生たちが観劇するという内容。 完全な学校内行事で、新入生の父兄はもちろん、学校に勤務している教師たちですら、同席を禁止されている秘祭的な行事である。
……というのはタテマエで、実際には八相七家の都合で行われている祭の一環である。
選律が遣うCAT、五相タマズサは、歌、すなわち音によってその能力を増幅させる事が出来るという能力がある。
これを利用し、新入生の中に魔眼質者がいないか捜索するのが、この行事の本来の目的である。
確かに、一人ひとり面談して捜索するよりも、この方が手間が省けて何かと都合が良い。
部外者の同席が禁止されているのは、検索結果に間違いが生じないようにするための予防措置かと思われる。
また、小学校や中学校ではなく、高校の新入生を対象にしているのは、魔眼質の発現には二次性徴が必要なためと思われる。
CATは、その動作に随時“エサ”を必要とし、その“エサ”とは女性の月経(注:いわゆる生理。 または“月のモノ”)の血液、いわゆる“メンス・ブラッド”である。
そのため、魔眼質は本来女性にのみ発現する資質なのだが、逆に言えば、魔眼質は月経が始まるのと同時に発現するとも言える。
だから、ある程度の個人差がある二次性徴が確実に来ており、月経が始まっている高校生以上を対象にするのが確実だからと思われる。
本来、五相タマズサは不正操作に特化したCATだが、微力ながら広域走査の能力も持っている。 そこで、この能力を歌と舞によって増幅し、一定空間内に集まった人々を一斉走査しようというのが、この行事の目的であり意義なのである。
同時期に行われる祭に合わせて西部三家の頭首も玄ノ森を訪れるため、この来訪に合わせる形で入学式直後というタイミングで行われている。
玖威価無(くい かな)
真名:―
年齢:??(未AA)
性別:女
八相七家、六相クイの継承者。
玖威家の前頭首と音の父親で西石家の嫡男(?)であった西石芽汰との間に生まれた価無は、音の腹違いの妹である。
しかし、その事実は本人に知らされる事なく、また八相七家内でもこの事を知っている者はほとんどいない。 唯一、例外的にこの事実を知っているのが、音の育ての親である道具であるが、詳細は後述とする。
価無は早熟な子供だったらしく、まだ幼女の面影が残る年齢(注:正確な年齢は設定未公開のため不明。 筆者は、小学校高学年と考えている)ながら、つい最近“月のモノ”が来た事によって高い資質を発揮し、母親である前頭首から、既に六相クイを継承しているほどの実力者である。
また、その関係から妙に大人びた言動が目立ち、同年代の男子に興味を示さないトコロがある。
しかし、その外見は年齢通りの紛れもない少女のソレであり、普段は黒猫の姿になっているベロアを、まるで縫いぐるみのように抱きかかえて喜ぶ歳相応な一面も垣間見せる。
とはいえ、その幼児性がアダとなり、選律に都合良く利用されてしまう。
玄ノ森に来る直前、価無は選律によって不正操作(注:“瑞ノ随ニ童名転バセ”。 キーワードによって発動する後催眠)を受け、祭の最中にこれが発動。 ベロアを襲う。
早熟とは言え所詮はお子様。 汚いオトナに良いように利用されたワケだ。
しかし、結果としてこの襲撃は失敗に終わり、価無はベロアによって六相クイを回収されるが、一応生存している。
現在公開されている設定ではまだ不明だが、『interlude』にて再登場する可能性も。
・六相クイ(玖威)
八相七家が継承するCATで、元々はイツワから切り離されたイツワのフェイズ6。 現在の遣い手は、玖威価無。
元々がイツワのフェイズ6であるため“喰う”、すなわち他のCATを捕食し、その能力を消化吸収する能力に特化したCATである。
主に“枯野原ノ鬼(からのはらのおに)”という発現によって対象を喰らい、対象の能力を我が物とする。
ただし、クイそのモノは十全ではない単一フェイズのCATであるため、例えば一相アヤメを喰らったとしても、クイ自身にアヤメに相当するフェイズが無いため、その能力を消化吸収出来ない、すなわち“消化に悪い”。 クイというフェイズは、飽くまでも十全のCATである事が前提で、対象の能力を消化吸収する事で自身のステータスアップを行うためのフェイズなのである。
もちろん、たとえ消化吸収出来なくても、対象そのモノは喪失するので、六相クイも戦力としての利用価値は十分にある。
銅鐸(どうたく)を2つ合わせた、……というか、ヒョウタンのような形状の胴体に長い尻尾を持ち、体格に不釣合いなまでの大きな口を有している外見が特徴的である。
今回の『No.13』終了後、ベロアによって回収されたが、現在公開されている設定では、『interlude』で再登場するか否かも、あるいはその時再び価無に下賜されるか否かも不明である。
狩屋克枝(かりや かつえ)
真名:―
年齢:17歳(未AA)
性別:女
八相七家、七相カリヤの遣い手。 実は本作のサブヒロイン。
八相七家のお膝元、玄ノ森の狩屋家で当時の頭首、狩屋寧子の娘として生まれた克枝は、同じく八相七家の綾目家に生まれた姫様と同い年である。
そのためか、幼少の頃から姫様の事を(一方的に)強く慕い、友情を越えた同性愛的感情すら垣間見せるほどである。
しかし、姫様のような幼少期の経験はなく、碁石松原の浜辺にも行っていない。 そのため、帰郷した真言とは全くの初対面であった。(注:1章20節参照)
それもあってか、運命的な再会を果たした姫様の突飛な行動もあって、克枝は真言を(やはり一方的に)嫌うようになる。
が、姫様にベッタリなのも相変わらずで、姫様は真言を慕っているため、板挟みになった克枝は姫様に嫌われたくないため仕方なく、真言とも平等に接するようになっていく。 また、姫様の真言に対する積極的なアプローチと情報開示にも、驚きと戸惑いを見せながらも否応無く協力するようになる。
しかし、こうした度重なる接触にともない、克枝の心は次第に解きほぐされ、真言に対して心を開いていくようになる。 途中、真言にムネを揉まれる(!)というハプニング(注:3章26節)もあったりもしたが、終盤近くでは臥せってしまった姫様に心を痛め、気を紛らわすために真言に頼る。 そして克枝は、真言に対する想いを打ち明ける。(注:4章18節参照。 ココに至るまでの克枝の態度の変化の描写は非常に素晴らしく、賞賛に値する。 克枝のセリフだけを一つずつ、最初から最後まで丹念に比較しながら読むと、克枝の態度が少しずつ柔らかくなっていくのが分かる)
これ以降、克枝は真言に対する想いを隠す事がなくなり、クライマックス直後には(冬夏と共に)人目もはばからず真言に抱きつく場面も。(注:4章51節)
いずれにせよ、克枝は冬夏と共にノートの接触(注:4章50節)を受け、CATを剥奪された上で八相七家から分離。 その呪縛を解かれた。
しかし、その呪縛は尾を引き、現在公開されている設定では、『interlude』にも重要なキャラクターとして再登場する可能性が残された。
ちなみに、克枝は終始おかしな発音の独特の言葉=克枝語を話しているが、それは飽くまでも親族や姫様、真言などの親しい間柄の相手に対してのみで、学校などの公の場では、非常に丁寧な標準語を話す。
また、真言に対してはトゲのある言動が目立つが、やはり学校等の公の場では、成績優秀で陸上部でも活躍し、教師からの信頼も厚い才女だというが、本編にはそれを垣間見せるシーンはあっても、そういう一面をハッキリと描いたシーンは一つもないためビミョーにマユツバクサい。(笑)
・七相カリヤ(狩屋)
八相七家が継承するCATで、元々はイツワから切り離されたイツワのフェイズ7。 現在の遣い手は、狩屋克枝。
ヒョウタンの両端(←シャレやないで?)から枝が伸びたような形状の弓という、かなり特殊な外見が特徴的なCATだが、実際には武器としては使用出来ない。
フェイズ7は、本来は受肉したCATの肉体そのモノを司るフェイズで、その外見も弓というよりはむしろまんま骨付きの“マンモスの肉”である。
それもあって、発現する能力も自身、あるいは他のCAT、及びその遣い手の肉体的限界を定めているリミッターを解除する能力(注:これを“限解(げんげ)”と呼ぶ)に特化しており、八相七家では一相アヤメと同じく実戦闘を任されてはいるが、七相カリヤ自体はフォワードに出る事なく、一相アヤメをサポートするポジションになる。
リミッター解除の能力自体は対象を選ばず、一時的、あるいは断続的に能力値を上昇させる事が可能で、アップデート率も任意にコントロールする事が可能なようだ。
しかし、やり過ぎると対象の意識が肥大化した能力に追いつかず、自我を失ってしまう事がある。
いわゆる“狂戦士化(バーサーク)”である。
用法、用量を正しく守るのが、ドーピングの鉄則なのである。(笑)
これとは別に、形状通りの弓としての能力も狩屋にはある。
主に、四相キサムラによって生成されたアンカーを対象に打ち込む事に用いられ、物理距離の離れた対象に対しても投錨が可能になっている。
ただし、設定未公開のため正確なトコロは定かではないが、命中率と命中精度は遣い手に依存している可能性がある。
三春のぎか(みはる のぎか)
真名:―
年齢:??(未AA)
性別:女
八相七家、三春家の現頭首。
ただし、魔眼質を持っておらず、CATが遣えないため、二相ミハルは継承しておらず、既に娘の冬夏に継承者の座を譲っている。
元々、三春家は大封時に逃亡に成功したESの一人、ドレミリアが祖となっており、ドレミリア自身が資質が低かったために、現在においてもその気質が子孫であるのぎかや冬夏に残っている。
しかし、ドレミリアは始祖アリスの血を引く人物であり、よって三春家は(その血脈はかなり薄くなっているが)八相七家の中で唯一、始祖アリスの血統を受け継ぐ家系なのである。
それもあって、三春家は八相七家の中でも第二位という高い地位を与えられており、名目上のリーダーになっている。
しかし、その資質から言って、この不当とも言える高位は、後に選律や道具に禍根を残す事になった。
ともあれ、のぎかはその地位に相応たらんとするが故に、高慢で自己中心的な性格のキッツイおばはんで、しかしその地位が名ばかりなモノでしかない事に無自覚なのでなおの事タチが悪い。
いつも忙しそうにしているが、実際には全くの蚊帳の外で、(魔眼質が無いため)遊戯や祭にも一切参加しておらず、もっぱら“表向きの祭”の方を取り仕切るのが仕事(注:要するに雑用係)だが、やはり本人はその事に気付いていない。
綾目在夜(あやめ ありや)
真名:―
年齢:??(未AA)
性別:女
綾目家の三女で、姫様の妹。
正確な設定年齢は、設定未公開のため不明だが、恐らく中学生ぐらいの年齢かと思われる。
二人の姉があんな(注:前記、及び後述参照)なので、……かどうかは分からないが(笑)、年齢不相応に気立ての良い少女。 一相アヤメの継承者として色々と忙しい姫様に代わって、家業である土産物屋、嘉多里辺茶屋を手伝っている。
本作では、飽くまでも脇役の一人としてワンシーンにのみ(注:2章27節)登場しているに過ぎないが、『interlude』では、姫様に代わって重要なキャラクターとして再登場する。
一部のファンからは、「目がコワい」とよく言われる。
確かに。(笑)
しかも、『interlude』でも健在。(笑)
しかし、ファンは多いらしく、某お絵描き投稿サイトでは在夜のイラストが多数投稿されている。 ……ネタにし易いからですかね?(笑)
綾目運(あやめ はこ)
真名:―
年齢:??(未AA)
性別:女
綾目家の長女で、姫様の姉。
正確な設定年齢が不明だが、恐らく大学生以上、あるいは成人している年齢かもしれない。
今回の遊戯、『No.13』の開始直前、WEの出現によって狩屋家の前頭首(注:後述)が襲撃を受け負傷。 同様に、永久家の頭首であった卑尊の母親と、綾目家の前頭首であった姫様や運らの母親も襲撃を受け、死亡してしまう。
そのため、運は亡き母親に代わって家業である土産物屋、嘉多里辺茶屋を切り盛りする事になった。
魔眼質の資質に関しては未知数だが、どうやら一相アヤメの継承者が妹の姫様になった事を疎んでいるらしい。 ある程度の資質はあるようだが、『interlude』以降の再登場も今のトコロ不明。
本作では、姫様や在夜の口から名前が出てくるだけで、運本人は本編未登場である。
狩屋寧子(かりや ねいこ)
真名:―
年齢:??(未AA)
性別:女
狩屋家の前頭首で、克枝の母親。
今回の遊戯、『No.13』の開始直前、WEが出現し襲撃を受けるも、臨月を迎えた身重の身体ながら一命を取りとめ、負傷はしたが母子共に健在である。 襲撃の直前に、既に七相カリヤを娘の克枝に継承しており、CAT未所持だった事が幸いしたか?
魔眼質は、本来女性にのみ継承される資質であり、特に八相七家は、その関係で女系一族ばかりである。 そのため、寧子の腹に宿っていた胎児も女児である事が予測されたが、意外にも男児であったため、八相七家に生まれた男児は往々にしてWEとなる可能性が高く、八相七家には“男児は産湯に浸かる前に間引くべし”という残酷な風習がある。
そのため、産まれてくるハズだった寧子の息子、克枝の弟は、出産直後(あるいは出産直前)、一相アヤメの継承者である姫様の手によって、無情にも間引かれた。(注:3章45節)
ちなみに、真言とは長久診療所で一度会っている(注:1章36節)が、立ち絵が無い。
まあ、本編にはこのワンシーンのみの登場でそれ以降は登場しないのだが。
6.WCL
Lu=Leの残党狩りとCATの回収という表向きの大義名分を掲げ、その実は司書長であるカルロサの支配欲を満たすためだけに設立された新組織。 それが、このWCLである。
雨山かれお(あめやま かれお)
真名:WC_Sc:KaleidoScope
年齢:??(未AA)
性別:女
CAT、フェンリロスの遣い手で、後に自身が発見、回収した九相コトハネも継承する事になるWCLの魔眼質者。 チノの部下。 愛称は“かれ”、または“かれおん”。
出生、及び経歴は設定未公開のため不明だが、ともかく近年になってその資質を視出され、WCL加入。 CATフェンリロスを下賜され、行方不明になっていた元イツワのフェイズ9、九相コトハネの捜索を命じられる。
その命に従い、そしてフェンリロスの能力を遺憾なく発揮したかれおは、関東近辺で九相コトハネを発見、回収に成功し、ミルハの下に持ち帰った。
これが鏑矢となり、『No.13』が開始される。
遊戯開始後は、待機のためねこざんまいに集まったWCLメンバーの世話を命じられるが、遊戯開始直後に真言の親友である大神と酒の席で接触。 大神がオウトである事を即座に見抜き、その監視も命じられるが、大神と意気投合し恋仲にまでなったかれおは、親友である真言を助けようとする大神に協力し、アッサリとWCLを裏切る。
近年WCLに加入したばかりの新人で、本作に登場するWCLメンバーの中では唯一AAを受けていないメンバーだが、これが逆にWCL、及びカルロサへの忠誠心が薄い原因となり、結果的に裏切る事になったようである。
遊戯終了後は、WCLを離れる事になったが、『interlude』にも再登場しているため、WCL内でどのような扱いになっているのかは筆者は知らない。
かなりのナイスバディ。 ってゆーかむしろ挟まれたい。(←何に!?)
視力が悪いらしく、メガネやコンタクトを着用している。
元々が日本人でないのか、終始カタコトのヘンな日本語を話す。
ちなみに、真名の“KaleidoScope(カレイド・スコープ)”は、“万華鏡”の意。
・フェンリロス
WCLが保有する十全のCATで、現在の遣い手は雨山かれお。
大封時、Lu=Leの魔眼質者は大半がCATを回収された上で拘束され、改宗を迫られた。 その結果多くの魔眼質者が改宗し、後のWCLに加わる事になった。 その中には、ESメンバーであったダーカ・イァンナ・ルーやヨルド・モネらも含まれていたほどだった。
しかし、拘束された魔眼質者の中には、頑なに改宗を拒み、その場で果てる事を望んだ者も少なくなかった。 そんな殉教者の中に、ESメンバーであったヴィヴ・アヴァとイサリーの二人もいた。 二人はLu=Leと始祖アリスへの忠誠を貫き、改宗は不可能である事を悟ったカルロサの慈悲により、二人は殉教を赦された。
こうして、ヴィヴとイサリーの二人が遣っていたWEのCAT、すなわちWE:5=デュナムとWE:6=プロンはWCLが保有する事になったが、この2体のCATは、直後にカルロサの実験材料に用いられた。
複数のCATを融合し、新たなCATを生み出す検体に用いられたのだ。
この実験の結果生まれた新たなCATが、後にかれおが遣う事になるCAT、フェンリロスである。
WE:6=プロンを筋骨隆々にしたような外見を有し、その背にはWE:5=デュナムの名残りと思しき翼を持つ。 WE:6=プロンの最大の特徴であり、強力な武器であった口は縫い合わされ、その攻撃力は著しく低下している模様。
実際、フェンリロスはフェイズ2、及びフェイズ5の特化型で、直接的な戦闘よりは後方支援ユニットであり、特に広域捜索=“Goggle/Cat's(ゴグル/キャッツ)”に極めて高い性能を示す。 その捜索範囲は、遣い手の資質にもよるが、ほぼ無制限と言っても過言ではないほどのようだ。
また、WE:5=デュナムの“雫エミュレーター”の能力も僅かながら持っているらしく、広域捜索との併用により、かれおは長い間失われたままになっていたイツワのフェイズ9、九相コトハネを見事発見した。 発見したのは、“偶然にも”関東近郊だった。(注:この都合の良さが呼び水たる月の雫)
ただ、フェンリロスは遣い手を選ぶ傾向が強く、しかもナゼかD調寄りの調整(注:循環七音のD。 Cの次の段階。 またこの変調が、かれおの“裏切り”の遠因となった可能性が指摘出来る)が行われていたため、極めて扱い難いCATになってしまい、生み出されてからの長い間、親和する魔眼質者がなかなか出現せず、放置されたままだった。
しかし、『No.13』の開始直前、かれおというフェンリロスに親和可能な魔眼質者がようやく視出された事で、フェンリロスはかれおに下賜され、『No.13』の鏑矢を放つ役目を遣わされた。
その後、フェンリロスは回収に成功した九相コトハネとも融合し、天駆ける翼、魔女が騎乗せし箒としても機能するようになった。
高性能なCATながら、扱い難く親和する魔眼質者も他にいないため、『No.13』終了後もかれおがそのまま所有している模様。
・九相コトハネ(異羽)
イツワから分離したフェイズ9。
元々は大封時の戦闘中、エンリケによってイツワから切り離された単一フェイズだが、その直後から行方不明になってしまい、八相七家もWCLも長い間捜索を続けていたCATである。
しかし、『No.13』の開始直前になってようやく、かれおによって発見、回収された。
CATのフェイズ9は、元々が天駆ける翼、魔女が騎乗せし箒としての飛行能力であり、コトハネも飛行能力に特化したCATである。 そのため、その姿も翼の形状を有している。
現在は、発見者であるかれおが遣うCAT、フェンリロスに融合されているが、フェンリロス自体は十全のCATであり、元々からフェイズ9を有している。 そのため、コトハネの融合は実は全く以って意味が無かったりする。
千野チノ(せんの ちの)
真名:WC_Sc&T0:ThousandBrains
年齢:―(AA済)
性別:女
WCL内におけるミルハの片腕であり、かれおの直上の上司で、CATペイルホワイトを遣う魔眼質者。
髪は短く目付きと顔色が常に悪い上、マスク(注:風邪用の方。 被る方ではない)を常用しているため表情が読めない。
他に、外見的特徴として比較的背が低いというのがあるが、スタイルは出るトコしっかり出ていて体のラインが出るタイトめの服装を好むため、誰かさんと同様、やはり「私、脱いだらスゴいんです」的な体型ではないかと思われる。
チノがいつ頃WCLに加盟したかは、設定未公開のため定かではないが、大封前からLu=Leの魔眼質者だったワケではなく、大封後、あるいはWCLの創設と前後して視出された魔眼質者であるように思われる。
が、それでもWCLとの関係は長く、しかも深い。 実際、ミルハの片腕として活躍している描写からも、チノがミルハに信頼されている付き合いの長い部下である事が伺える。
しかし、そんなチノですら、真言に対してある種の愛情を抱き、感情移入するようになってしまったため、最終的にミルハを裏切り、真言や大神に(消極的にではあるが)手を貸す。
これが原因になったのか、『No.13』終了後はその任を解かれ、WCLからも放逐された模様。
途切れない喋り方で思考と言語出力を同時進行(注:思考のマルチタスク=千の知能)するクセがあり、よく分からない物言いになる事が多い。 ミルハとのミーティングではそうでもないが、真言との会話では特にその傾向が強くなるようだ。
しかし、声はキレイなカンジで、声帯模写が異様に得意。
また、遣っているCATの能力もあって、“察する”のが得意。
ちなみに、真名の“ThousandBrains(サウザンド・ブレイン)”は、“千の知能”の意。
・ペイルホワイト
WCLが保有する十全のCATで、現在の遣い手は千野チノ。
このCATの経歴は、設定未公開のため全くの不明だが、WCL創立時には既にWCLが保有していたようなので、恐らくは改宗、あるいは殉教したLu=Leの魔眼質者から回収されたCATではないかと思われる。
眼を閉じた眠り猫のような頭部と手足の無い胴体に翼が生えたような、海洋生物のクリオネにも似た姿をしており、頭上の光輪と継ぎ目にも見える同体に走る線が特徴的である。
ペイルホワイトは十全のCATだが、特にフェイズ5に特化しており、そのため広域捜索(注:“Crunch the Numbers”。 ただし、精度と範囲ではフェンリロスに劣る)と強制改宗(注:“F E=mi”)の能力を持つ。
特に強制改宗能力は極めて強力で、動作時は祈りの形に組んだ手のようにも見える同体を左右に開き、対象の頭部に覆い被さり、思考に直接接続。 通常のCATのフェイズ2によるファイアウォールを突破し、強制干渉を行う。
そのため、このCATは遊戯におけるバランスブレイカーとなり得る可能性が極めて高いが、遣い手であるチノ自身が善意と良識によりそれを望まないため、これまでにも必要最低限の操作が行われたのみである。
ちなみに、一般的な情報収集のための動作の際は、閉じた眼を開く程度の動作で対象の思考をスキャンする事が可能である。
本編中には詳しい描写が無いが、どうやら『No.13』終了後もチノが所有している模様。
飯窪知狡(いいくぼ ちずる)
真名:―
年齢:??(未AA)
性別:女
真言の伯母で飯窪家の現頭首。 加えて、玄ノ森で営業している旅館、六母屋の経営者。
真言の生家である飯窪家は、大封時に死闘の末エンリケに受肉したイツワが、依代であるエンリケの肉体を以って祖となった家系である。 すなわち、男性魔眼質者で雄性イーハのCATが、その先祖になっているワケだ。
しかし、多くの魔眼質者の家系がそうであるのと同じく、飯窪家も魔眼質を継承しているが故に女系一族で、直系の男児はこれまで生まれた事がなかった。
そのため、飯窪家はこれまで、長女が頭首を継承し婿取りを行う、というのが慣習として続けられ、現在まで存続している。
その結果、前頭首と飯窪源四との間に生まれた長女が、知狡である。
知狡の魔眼質は決して資質が低いワケではなかったが、飯窪家がカルロサより下賜され、代々継承してきたCAT、キリアケとは親和性が低く、キリアケ継承者の役目は妹の現実に譲る事になった。
しかし、知狡は飯窪家の長女であり、現実が知狡を差し置いてさっさと結婚、真言を産んで飯窪本家を出奔してしまったため、知狡は長子継承の慣わしに従い、母親から飯窪家の頭首を継承。 同時に、飯窪家が経営する旅館、六母屋の経営も引き継いだ。
出会いの無い職場のためか、現在に至るも結婚せず独身のままである。
しかし、甥である真言に対しては非常に甘く、知狡なりのやり方で可愛がっている。
が、その感情移入がアダとなり、『No.13』の終盤では、WCLとミルハに対する忠義立てとの間で板挟みになり、どうしたら良いのか分からなくなってしまう。 そのため、知狡は妹の現実に助けを求め、現実に問題の解決を頼むのである。
マジメが服を着て歩いているような性格で、常にスーツ等のパリっとした服装を好み、真言やミルハの冗談をイチイチ真に受けるクセがある。
しかし、その外見は極めて年齢不詳で、真言の伯母というからには最低でも40代に届こうかという年齢のハズなのに、ややもすると20代前半にも見えるほど若い外見が特徴。
旅館の経営者だが、未婚のためか腕を振るう相手がいないため、料理の腕が絶望的に無い。 しかも、本人がそれを無自覚なので、タチの悪いコトこの上ない。 真言とミルハも、玄ノ森に到着した初日に、図らずもこれを認識する事になった。(注:1章14節)
飯窪現実(いいくぼ あらみ)
真名:WC_Re:AliS(CE)M
年齢:??(未AA)
性別:女
真言の実の母親で飯窪家の次女。 知狡の妹である。
初代の魔眼の刺し手であったエンリケの血を引く飯窪家は、その再出現が命題として課せられており、いつ再出現してもいいようにIgや具足を家宝として継承している家系である。
しかし、実際には魔眼の刺し手となり得る直系の男児がこれまで生まれなかったため、飯窪家の頭首が代々継承していたのは、Igや具足とは別に下賜されたCAT、キリアケであった。
しかし、キリアケは利便性の高い、遣いようによっては最強CATの一つに数えられるほど高性能だが、遣い手を選ぶ傾向が極めて強く、資質の高低に関係なく、相性が悪いとマトモに遣う事すら出来ないという致命的な欠点があるCATであった。
そのため、キリアケを継承したのは、飯窪家の長女であり頭首を継承する事になった知狡ではなく、その妹の現実であった。
現実の資質は詳細不明だが、キリアケとの親和性は極めて高く、クライマックスでは(紙魚によって弱っていたとはいえ)ミルハの全力攻撃を完全防御するほどの高性能を発揮した。(注:4章51節)
現実は、ある男性(注:設定未公開のため詳細不明)と恋仲になり、若くして結婚。 直後に身篭ったのが、飯窪家待望の、そして初の直系の男児であった真言である。
真言を出産後、現実はしばしの間玄ノ森に止まるが、真言が小学校に入学する前に関東に転居し、そのまま現在に至る。
知狡と同様、現実は真言がイツワの転生である事を承知しており、イツワ自身とWCL(注:主にミルハ)との間で既に密約が成立している事も承知していた(注:この密約があったから、飯窪家はWCLに与する事になった)が、それでも真言は自らの腹を痛めて産んだ最愛の息子であり、真言の存在が失われる事には反対だった。
そこで現実は、真言をミルハの近くに置き、真言がミルハを篭絡するように仕向けた。 真言が、ミルハを口説き落とす事を期待したのだ。 だから、真言の大学中退もアッサリOKする。 真言とミルハが長時間、長期間一緒にいられる事になるからだ。
結果として、この現実の期待は失敗に終わる事になったが、真言が失われる事なく存続している結果には満足しているようだ。
非常に奔放な性格で、真言はもちろん知狡さえも手を焼くほど勝手気ままなトコロがある。 知狡ほどではないが、見た目が非常に若い。 また、料理の腕もよろしくない。 ……やはり、知狡ほどではないが(笑)。
ちなみに、現実の夫、すなわち真言の父親に関しては、設定未公開のため詳細は全くの不明。 仮にも真言の父親なのだから、それなりの資質を持っているモノと考えられるが、真偽の程は不明である。
また、現実が飯窪の姓を名乗っているという事は、婿取りしたのだろうと想像出来るが、次女である現実が婿取りしたのはナゼなのだろう?(注:幼少期の真言が“いいくぼまこと”と名乗っているので、真言の姓は最初から“飯窪”で、離婚によって姓が戻ったとは考え難い。 夫婦別姓の可能性は否定出来ないが、姓が戻らない死別でないコトだけは確か)
to be continued...