インターネットの競売サイトで、サルコジ仏大統領の人形が「クリスマスプレゼントに最適」と売り出されている。「もっと働き、もっと稼ごう」などのサルコジ節が印刷された布製の「呪いのサルコジ人形」に購入者が針を刺す仕様だ。大統領は回収を求めて裁判に訴えたが、販売継続が認められた。
そのサルコジ大統領に最近、「恥を知れ」とかみついたのが環境保護NGO(非政府組織)だ。議長を務めた今月の欧州連合(EU)首脳会議で地球温暖化防止対策の合意を取りまとめるため、温室効果ガスの排出削減緩和を狙う産業界に譲歩しすぎた、というのが理由だ。
譲歩を迫ったポーランドには環境NGOから抗議の意思を込め、当てつけに石炭4トンが贈られた。発電量の約95%を石炭による火力発電に頼るポーランドの要請で、EUが電力部門に配慮する措置を認めたからだ。NGOの落胆は理解できる。
だが、EUが野心的な目標を掲げ、低炭素社会に向けて世界の先頭を走る構図に変わりはない。そもそも、環境保護にだけ目を奪われて自国の失業者を増やしたり、不況を招いては政治家失格のそしりを免れない。大切なのは、ころ合いだと思う。「これならできる」と産業界をその気にさせる努力も必要だ。
地球の体調は良くない。だからといって食べ物を口にせず、無理なダイエットを続ければ社会が衰弱する。今、必要なのは「環境か産業か」の二者択一でなく、「環境も産業も」の社会の実現を目指して知恵を絞ることだ。いつまでも、雪のあるホワイトクリスマスを楽しむためにも。さもなければ、呪いは私たちに降りかかる。(ブリュッセル支局)
毎日新聞 2008年12月22日 東京朝刊