エドワード・リディーさんは米国有数の大会社で最高経営責任者(CEO)をしている。彼の今年と来年の年俸は1ドルだ。当たり前だろう。15兆円もの公的資金を得て再建中の保険会社、AIGのトップなのだから。
けれどAIGには、当然ではなかったみたいだ。公的支援の決定後、1部屋1泊10万円以上のゴルフ・リゾートを会合で1週間使い、4400万円も払ったことが発覚。猛批判に遭った末、渋々決めた1ドルである。
総額3兆円超の公的支援を求めている自動車の「ビッグスリー」も同じ。先月「公的資金なしではつぶれます」と議会にすがりに来た際、CEOがめいめいの自家用機で飛んできたので、出直してこい、と言われた。やむなく今週のワシントン詣では自社製ハイブリッド車で、年俸も1ドルに大幅カットした。
彼らに共通するのは、こうなったのが、金融危機とか経営環境のせいだと訴えている点だ。被害者顔で、反省の色ナシ。これまで得た何百億円という財を、進んで返上したトップは米国では見当たらない。
あのリーマン・ブラザーズのリチャード・ファルドCEOは会社が倒産しても豪邸や別荘をいくつも持っている。議会の公聴会で下院議員が聞いた。「国が経済危機でも、あなたにはこれまで手にした480億円がある。これは公平か」。CEOは、480億円ではなく310億円だと訂正したうえで堂々と言った。「私に退職金はない」
彼らが私財を手放し3LDKに引っ越しても景気はよくならない。でも、まじめに働いてきた日本人も多く職を失っているのだ。もっと態度で示すものがあるでしょう、と言いたくなる。
毎日新聞 2008年12月5日 0時01分