阪神大震災の発生直後、人命救助、衣食住、そして復興が優先され、壊れた建物が急ピッチで解体された。
その中で「飛散するアスベスト粉じんから子どもたちを守ろう」と異文化コミュニケーターのマリ・クリスティーヌさんや市民団体、学生ボランティアらは防じんマスクを配り続けた。
配布については、行政機関や多忙な自治体は取り合ってくれなかった。マスクの確保も、建設業関係者が大量に購入し、困難を極めた。それでも、なんとかかき集め、着用の必要性を訴え続けた。当時、「マスクプロジェクト」と呼ばれた。
あれから来月で14年。再び「マスクプロジェクト」が先月、神戸大人文学研究科の研究集会を機に立ち上がった。
発起人はマリさんや支援団体「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(03・5627・6007)事務局長の永倉冬史さんらで、95年以降の震災でもマスク着用を訴えてきた。
その経験から、子ども用の粉じんマスクをあらかじめ備蓄しておくことが大切だと痛感し、今後の目標とする。いざというときは近隣の自治体などから即座に配布し、安全を守る考えだ。
今年2月には、阪神大震災で建物解体に携わった中皮腫患者が、労災認定を受けた。中皮腫の多くは、石綿吸引後20~60年で発症するため、今後、被害の顕在化が懸念される。
マリさんや永倉さんらは震災がないときから、マスク備蓄を進め、子どもたちに着用方法などの指導をしながら、予防のための環境教育をしようとしている。「平時からの備え」として注目したい。(科学環境部)
毎日新聞 2008年12月21日 大阪朝刊
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