公明党の執行部が集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈の変更を容認し、1972年の政府見解を引用した限定的な要件を解釈変更の閣議決定に盛り込む方向で自民党側と大筋で一致したという。
自公両党の解釈改憲による安全保障政策の大転換は、断じて容認できない。戦争放棄をうたう日本国憲法の実質的な破壊行為だ。戦後民主主義と平和国家日本の危機と言っても過言ではなかろう。
自民党の高村正彦副総裁は13日の与党協議で自衛権発動に関する従来の3要件を一部見直し、日本だけでなく他国への武力攻撃が起きた場合も発動を認める新たな3要件の「たたき台」を提示した。
憲法9条で認められる「武力行使」は
(1)わが国または他国への武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される恐れがある
(2)ほかに適当な手段がない
(3)必要最小限度の実力行使
-などの場合に限られるとした。
しかし、72年見解は「幸福追求の権利」が根底から覆される急迫、不正の事態を排除するため「必要最小限度の範囲」で自衛措置を認めたが、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と結論付けていた。法治国家にあるまじき見解のつまみ食い、姑息(こそく)な解釈変更で国民を欺いてはならない。
新要件は1項目の「根底から覆される」との記述の後に「恐れ」の2文字を加えた。「恐れ」の判断を時の政権に委ねれば、米国に追従し集団的自衛権の行使範囲が拡大するのは目に見えている。
過酷な沖縄戦、米軍支配を体験した沖縄からすれば、再びこの国が「戦争できる国」になることも、沖縄が戦争の「捨て石」や軍事標的になることも絶対認められない。
集団的自衛権の行使に慎重姿勢だった公明党の方針転換は理解に苦しむ。公明党は「平和の党」としての矜持(きょうじ)を守り、国民不在の憲法破壊に加担してはならない。
軍事的な消耗戦を選択するのではなく、経済、文化、市民交流などあらゆるソフトパワーを駆使し、戦争を回避することこそ政権、政党の最大の責任であるはずだ。
戦争につながる解釈改憲は認められない。国民も「戦争できる国」を望んでいない。自公両党は冷静さを取り戻し、戦わずして平和を勝ち取る、持続可能な外交、安保政策こそ深く追求すべきだ。
琉球新報 2014年6月15日
安倍晋三政権は、今月末に決める経済財政運営の基本方針(「骨太の方針」)に、法人税の実効税率を来年度から数年かけて「20%台」まで引き下げると明記することを、首相の強い指示で決めました。財源などの詳細は年末までに決めます。国民には今年4月からは8%、来年10月からは10%への消費税の税率引き上げを押し付けながら、大企業を中心に法人税だけは減税しようというのはまったく不当です。しかもその減税を財源の見通しもないのになにが何でも決めてしまうのは、暴走のきわみです。
異常な財政破綻を加速
現在35%前後(東京都は35・64%)の国税と地方税合わせた法人の実効税率を引き下げる法人税減税は、自らの経済政策「アベノミクス」で「世界でもっとも企業が活動しやすい国」をめざすという、安倍首相がこだわり続ける政策です。首相は、大企業に減税すれば設備投資や雇用が増え、税収も確保できるといいますが、大企業が減税分を丸まるふところに入れ、もうけや内部留保を増やすだけで終われば、景気の拡大は実現しません。法人税を減税しても税収が増えるというありそうもない話を、一部の経済学者などは「法人税のパラドックス」などともてはやしますが、まさに「絵に描いた餅」そのものです。
国民の強い反対を押し切って消費税の増税を押し付けるような深刻な財政危機のなかで、大企業だけには税金を負けてやるというのは異常な逆立ち政治です。借金である公債の発行残高は780兆円に上ります。にもかかわらず歴代政府は大企業や高額所得者への減税を続け、消費税などの庶民増税や社会保障の改悪で国民に負担を押し付けてきました。国民の暮らしを立て直さなければ経済も財政も好転しません。間違った政治を根本から正すべきです。
今回の「骨太の方針」をめぐる法人税減税で、これまで以上に異常なのは、財源についての議論がまったく棚上げされたことです。法人税の実効税率を1%引き下げれば約5000億円、10%なら5兆円の財源が必要になります。政府は当初、租税特別措置や政策減税を見直し、法人税の課税ベース拡大で賄うといっていました。ところが財界・大企業からは法人税減税に加え政策減税も恒久化すべきだという声が上がり、課税ベースの拡大は行き詰まっています。
政府は、法人税を払っていない赤字法人にも課税するため、外形標準課税を強化するなどの案まで持ち出していますが、矛盾を深めています。財源のめども立たないのに減税さえ決めればといいという見切り発車は、なりふりかまわぬ暴走であり、つけは結局、国民の負担になります。
大企業いいなりの転換を
安倍政権や財界・大企業は日本の法人税負担が重すぎるといいますが、大企業には手厚い租税特別措置や政策減税があり、実質的な税負担は重くありません。最近もトヨタ自動車が5年間にわたり1円も法人税を払っていなかったことが明らかになったばかりです。
経団連など財界団体は企業献金の再開をちらつかせながら、法人税の税率を「25%」にすると明記することまで迫っています。こうした大企業いいなり政治の根を断つことが、いよいよ急務です。
2014年6月15日(日) しんぶん赤旗
日本国憲法を守る一点で手をつなぐ「九条の会」が発足10年を迎えました。日本の良心を代表する作家、評論家ら9氏の呼びかけで、その後、全国に結成された「九条の会」は7500を超え、多彩で粘り強い活動は、改憲を許さない国民多数派づくりの中軸を担っています。解釈改憲による集団的自衛権の行使容認へと突き進む安倍晋三政権のもとで憲法をめぐる情勢が重大局面を迎えているいま、地域の「草の根」に根ざした「九条の会」がその力を発揮し、さらに大きく発展することが強く期待されています。
国民世論を大きく動かす
「九条の会」は2004年6月10日、作家の井上ひさし氏や大江健三郎氏、評論家の加藤周一氏ら9人が呼びかけたのが始まりです。小泉純一郎政権が、アメリカが侵略したイラクに自衛隊を派兵するなど憲法が大きな試練に直面しているなかでの旗揚げでした。
「憲法九条を激動する世界に輝かせたい」「九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していく」―。「九条の会」アピールは歓迎され、国民に希望の灯をともしました。9人の旗揚げとともに全国津々浦々に共感と支持の輪が広がり、アピールに賛同して地域・職場・学園につくられた「九条の会」は9条を守る運動の大きなうねりとなりました。
「九条の会」が歩みを刻んだ、この10年、憲法をめぐる情勢は文字通り激しいせめぎあいの連続でした。改憲に異様な執念を持つ安倍首相は第1次政権で改憲手続き法などを強行したものの、国民の批判を浴びて1年たらずで退陣に追い込まれました。第2次政権に復帰直後に掲げた改憲手続きを緩和する憲法96条改定も世論の反対の前に事実上断念しました。
「改憲の風圧」が強まるたび、それをはね返し、改憲勢力の日程を狂わせてきたのが、「九条の会」をはじめとする国民のたたかいです。「九条の会」発足時、「読売」世論調査では「憲法改正」賛成は65%でしたが、今年の同紙調査では42%へ減少、逆に「改正」反対は23%から41%へと増加しました。世論の大きな変化をつくりだすうえで、「九条の会」がかけがえのない役割を果たしたことは明白です。
「九条の会」の特質は、改憲反対の一点にもとづく自主性と多様性です。戦跡をたどり戦争の悲惨さを語り継いだり、お寺と協力して「平和の鐘つき」をしたりするなど地域の個性を生かした創意あふれる取り組みは、息の長い活動の源泉です。首長や地方議員など保守・革新の区別なく広範な人たちの幅広い共同の場として発展を遂げていることは重要です。ここにこそ改憲を許さない国民多数派を結集する道があります。
歴史的なたたかいへ
明文改憲ではなく解釈で集団的自衛権行使を容認し9条を葬り去ろうとする現在の安倍政権の暴走は、国民の大きな怒りをかきたて、矛盾を広げてきています。
10日に2000人が参加した「九条の会」10周年講演会では、安倍政権の9条破壊の暴走を阻むため、全国一斉の共同の取り組みを行うことが提起されました。
いまこそ地域・職場・学園の「九条の会」が歴史的な使命を果たすときです。日本共産党は「九条の会」の一翼を担って、いっそうの発展のために力を尽くします。
2014年6月14日(土) しんぶん赤旗
哲学なきルール撤廃は、野放図な弱肉強食社会を生み出す。ルールの何が重要で何が重要でないか、見極めなければならない。
政府の規制改革会議が約230項目の規制緩和策を安倍晋三首相に答申した。政府は成長戦略に盛り込み、労働基準法改正などを進める構えだが、危険だ。国民の生命と健康を犠牲にしかねない。成長政策としても疑問だ。国民の安全の確保へ、むしろかじを逆に切るべきだ。
答申の目玉の一つがホワイトカラー・エグゼンプション、いわゆる「残業代ゼロ」の導入である。政府は「年収1千万円以上で、高い職業能力を持つ労働者」に限定すると強調する。だが限定は導入時だけで、じきに範囲がなし崩しになるのは目に見えている。
導入を推進する産業競争力会議の竹中平蔵氏は小泉構造改革の中心人物だ。現在の人材派遣法は当初、高度な専門職に限るといって施行したのに、竹中氏の下で派遣対象が拡大した。こうした緩和の結果が今の非正規労働者の激増だということを忘れてはならない。
その正規から非正規への置き換えが、本来は消費性向の高い若年層・子育て層の消費控えを招いた。だから労働規制の撤廃・改悪はむしろ長期の消費退潮につながり、成長政策としても愚策なのだ。
政府は、正当な賃金を払わずに労働者を酷使する「ブラック企業」を追放すると強調していたはずだ。それはポーズだけなのか。
医療面では、保険診療と保険外の自由診療を併用する「混合診療」を拡大するという。すると、自由診療の数十万~数百万円を負担できる富裕層相手の病院ほど繁栄し、保険診療を重視する病院は経営が苦しくなりかねない。
そもそもなぜ混合診療拡大か。安倍首相は「多様な先進医療に迅速にアクセスできるようにする」というが、それなら現行の高度先進医療拡充の方が近道ではないか。
混合診療が拡大すると高い医療費を賄うため民間の医療保険が繁盛する。その市場は米国資本の保険会社が狙う。今の国民皆保険制度が崩壊する懸念もある。米系企業のために国民の健康に必要な制度を壊すのか。
生命や健康は工業製品などと異なり、1回限りの貴重なものだ。労働時間や医療はそれを守るためのルールである。それを、成長を阻害する「岩盤規制」だと見なすこと自体が間違っている。
琉球新報 2014年6月14日
4年に1度となるサッカー・ワールドカップ(W杯)の開幕の笛が鳴り響きました。20回目を迎える今大会はブラジルで64年ぶりの開催となります。日本から見て地球の裏側で繰り広げられるスポーツの祝祭に、胸を躍らせる1カ月になります。
32色のプレーに注目
2、3年にも及ぶ厳しい地域予選を勝ち上がった出場32チームが、大舞台に集結します。サンバの国ブラジルの華麗な足さばき、幼少期からしみついたスペインの巧みなパスサッカー、しなやかさと力強さを兼ね備えたコートジボワールなどアフリカ勢のプレー。W杯は民族性や国独自のサッカー観がにじむ「サッカー文化の見本市」でもあります。32色のスタイルが織りなす芸術を、心ゆくまで楽しみたいものです。
豊かで多様に発展するサッカーの流れに反する残念な動きが、大会前に起こりました。欧州では観客が黒人選手にバナナを投げつけ、日本の競技場ではサポーターが「日本人以外お断り」を意味する横断幕を掲げました。
スポーツは肌の色や国籍の違いを超えてつどい、交流してきたからこそ、多くの人々の心をとらえる文化として発展してきました。その根幹を揺るがす人種差別や排外主義に立ち向かうことは、スポーツ界の使命です。
サッカーは世界でもっとも普及が進み、人気の高いスポーツです。全世界を感動と興奮で包むW杯が、2006年ドイツ大会から「人種差別にノーと言おう」のスローガンを掲げてきた意味は大きいものがあります。
ブラジルは20世紀の前半から黒人たちに活躍の場を広げ、W杯5回の優勝を誇る「サッカー王国」の地位を築き上げました。その地で開かれる今大会が、フェアプレーと友情の花を咲かせ、世界の平和と相互理解をうながすものになるよう、願ってやみません。
5回連続出場となる日本代表は、相手に合わせてたたかうのでなく、「主導権を握るサッカー」(アルベルト・ザッケローニ監督)をめざします。組織力を得意とする日本人の特性をいかしながら、息の合ったパスワークと連動する攻めで、試合を支配する心意気です。前回南アフリカ大会で守備に力点を置いてのぞんだ日本にとっては、壮大で意欲的な挑戦です。
その役割を担う才能が育っています。Jリーグの誕生から20年余り。いまや欧州でプレーする選手が代表の半数を超えています。欧州屈指のクラブに在籍する日本人が何人も現れる時代です。ブラジルで躍動するイレブンが、日本のサッカーをさらなる高みへと引き上げてくれるでしょう。
あり方を問う機会に
ブラジルでは各地で開催前からデモやストライキが相次いでいます。教育や医療についての不満が高まり、施設に巨費を投じることに抗議の声が上がっています。国民に受け入れられる大会のあり方が問われています。それは2020年の東京五輪にも、あてはまるでしょう。
大会は来月13日(日本時間14日)の決勝戦まで全64試合です。五大陸6地域からの出場チームが競い合い、高め合うなかで、サッカーの魅力を存分に発信してくれるでしょう。いよいよキックオフです。
しんぶん赤旗 2014年6月13日(金)
安倍晋三首相は、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更の閣議決定を、実質20日までの今国会中に強行しようと、暴走を加速しています。13日の自民・公明の与党協議会に向け、「集団的自衛権」の言葉を明記した閣議決定の文案で合意できるよう強く指示するなど、事態は切迫しています。乱暴極まりない首相のやり方に一片の道理もありません。
密室協議で暴走
歴代の自民党政権は自衛隊創設(1954年)以来一貫して、集団的自衛権の行使は「憲法9条の下で許されない」との解釈を示し、国会や国民に説明してきました。集団的自衛権の行使容認は、半世紀以上にわたり幾度となく繰り返してきた国会・国民への説明を根底から覆し、日本を「海外で戦争する国」へとつくり変える歴史的な暴挙です。
戦後の安全保障政策を百八十度ひっくり返す大転換を一内閣の判断だけで行っていいはずがありません。国会にも説明せず、国民的な議論もせず、与党の密室協議だけで強行しようというのは言語道断としかいいようがありません。
密室協議自体も極めていいかげんです。与党協議が始まったのは5月20日であり、1カ月もたっていません。協議で先にテーマになったのは、武力攻撃に至らない侵害(グレーゾーン)への対処やPKO(国連平和維持活動)での武器使用、多国籍軍への「後方支援」の問題などでした。集団的自衛権について本格的な議論が始まったのは10日になってからです。会期末まで残り10日あまりでまともな検討ができるはずはありません。
首相が今国会中の閣議決定に執着するのは、集団的自衛権の行使容認ありきの国民無視の姿勢を浮き彫りにするだけです。
政府が与党協議会で行っている説明を国会で拒否していることも重大です。政府は3日の与党協議会で、米軍や多国籍軍への軍事支援(後方支援)が実施できる4条件を示しました。日本共産党の井上哲士議員が参院外交防衛委員会で内容をただすと、政府は「与党協議が進められている」との理由で答弁を拒みました(5日)。国会での議論も拒否して閣議決定に突き進むのはもってのほかです。
4条件は、「戦闘地域」で直接の戦闘行為以外のあらゆる軍事支援を可能にするものでした。公明党が4条件に難色を示すと、6日の協議会ですぐさま撤回し、新たな3条件を示しました。自衛隊員の命にかかわる大問題を、こんな節操のないやり方で進めること自体、無責任の極みです。
しかも、3条件は他国軍隊が「現に戦闘行為を行っている現場」では支援活動はしないというもので、自衛隊の活動中に戦闘の発生が予測されるような危険な地域でも軍事支援が可能です。これまで禁じられてきた「戦闘地域」への自衛隊派兵に本格的な道を開くという本質に変わりはありません。
非現実的な想定
自衛隊が「戦闘地域」で活動すれば、相手側の攻撃を招き、それに応戦することは避けられません。日本だけ活動を休止・中断できるというのは非現実的です。
「海外の戦争で日本の若者が血を流す」事態を招く閣議決定を決して許してはなりません。「閣議決定ノー」の声を安倍・自公政権に集中することが急務です。
しんぶん赤旗2014年6月12日(木)
昨年日本で生まれた赤ちゃんは102万9800人となり、2年連続で過去最少を更新しました。合計特殊出生率(女性1人が生涯で産む子ども数の推計値)は1・43へ微増したものの、現在の人口を維持できる水準2・07には及ばず、少子化の流れに歯止めがかかりません。結婚件数も戦後最少の66万594組でした。結婚・出産がきわめて困難な国のままでいいはずがありません。政治は、子育てが安心してできる社会への転換に真剣に力を注ぐときです。
痛切な声にこたえぬまま
欲しい子どもの人数は2人が53・8%、3人が26・9%―。内閣府が3月に公表した既婚者(20~49歳)の意識調査です。未婚者への調査では「結婚したい」と7割以上が回答しています。国民の希望は、はっきりしています。
問題はそれを妨げている現実です。結婚を決心する状況として挙げた回答のトップは「経済的な余裕」でした。子どもを持つ場合の条件の問いには、「子育てできる職場環境」との答えが1位で、「教育にお金があまりかからない」がそれに続きました。当然すぎる願いです。この国民の意識は、歴代政府が「少子化対策」を掲げ始めた約20年前からほとんど変わっていません。若者や子育て世代の痛切な声に政治や社会が正面からこたえず、むしろ深刻化しているところに事態の根深さがあるのです。
非正規雇用は増加を続け、いまや若者の2人に1人です。一生懸命働いても生活は不安定で低賃金におかれています。正規雇用になっても、異常な長時間労働を強いられています。若者を文字通り使い捨てる「ブラック企業」がまん延しています。社会人になると同時に「奨学金返済」の借金を負わされます。
出産前後に半数以上の女性が仕事をやめる現実が続いています。保育所不足が「保活」の激化に拍車をかけています。
今月政府がまとめた「子ども・若者白書」の7カ国比較調査では、「早く結婚して家族を持ちたい」と願う日本の若者(13~29歳)は45・8%と、欧米諸国より高いのに、「40歳になったときのイメージ」についての問いで「結婚している」「子どもを育てている」と答えた割合は最低に転落しました。「自分の将来に希望がある」と答えた日本の若者が6割台にとどまり欧米諸国の8~9割を大きく下回った結果は、日本の若者をとりまく現実が、世界でも過酷なことを浮き彫りにしています。
若者をこれほど粗末に扱い、余裕のない暮らしに追い込み、結婚・子育てに希望をもてない事態を生み出した「雇用破壊」「構造改革」などをすすめてきた歴代政権の責任がきびしく問われます。
願いに逆らう安倍政権
安倍晋三政権は今月閣議決定する「骨太の方針」「成長戦略」に「少子化対策」「人口減克服」などを掲げる予定ですが、「成長戦略」の柱は、若者にさらに犠牲を強いる「雇用破壊」の加速という逆行そのものです。「少子化」「人口減少」を“脅し文句”に不安をあおり、消費税増税・社会保障破壊などの悪政を国民におしつけるやり方に大義も道理もありません。
国民の願いに逆らう政治をやめさせ、若者・子育て世代が未来への展望を持ち、安心できる政治・社会へ踏み出すことが急務です。
しんぶん赤旗 2014年6月11日(水)
榊原定征(さだゆき)東レ会長が新しく会長に就任した財界団体トップの経団連(日本経済団体連合会)が、企業献金への関与を復活・強化する方向で検討中です。
主権者ではなく、選挙権を持たない企業が自民党などに献金するのは、文字通り「金の力」で政治を左右するためです。企業は営利が目的であり、献金で政治がゆがめられれば文字通り贈収賄事件にもつながる犯罪行為です。逆に献金してももうけが増えなければ、経営者は株主から背任罪で訴えられかねません。献金拡大は“百害あって一利なし”で、政治をゆがめる企てはやめるべきです。
法人税減税や再稼働求め
かつては「財界の総本山」と呼ばれた経団連があっせんし、業界団体ごとに事実上企業規模に応じて割り振られていた企業献金は、その後の度重なる金権腐敗事件の中で「政治を金で買う」と批判をあび、経団連も献金のあっせんを中止するなどの対応を余儀なくされてきました。経団連が「政策評価」と称して政党ごとの通信簿をつくり、その評価に応じて企業が献金するというやり方がとられたこともありましたが、民主党政権下でそれも中止、自民党政権が復活したあと、昨年から「政策評価」の復活が検討されてきました。
経団連が関わる企業献金は減少傾向といわれますが、経団連を通じない献金もあり、自民党などの政党が企業献金と税金で賄われる政党助成金の“二つの財布”を持つ実態は変わっていません。
新しく経団連会長に就任した榊原氏は企業献金への経団連の関与を強化するため、「年内に方向性を出したい」と繰り返しています。経団連は前任の米倉弘昌氏が会長時代、政権に復帰した安倍晋三首相との「不協和音」が伝えられたこともあり、榊原氏が会長就任と同時に献金関与の復活を繰り返しているのは、政権との関係を考えてのことなのは明らかです。
榊原経団連が献金への関与を復活し政権との関係を強化してねらっているのは、法人税の減税や、原発の再稼働、「規制改革」など、国民から批判される政策をなんとしても安倍政権に実行させることです。経団連が今回の総会で決めた今年度の事業方針には、国税と地方税を合わせ現在36%程度の法人実効税率を25%程度へ引き下げる、原発の再稼働プロセスを「可能な限り」加速する、雇用などの「規制緩和」、消費税率10%への着実な引き上げなど、まさに財界・大企業の身勝手な要求が盛りだくさんです。
国民の反対にもかかわらずこうした政策が実現されるとすれば、企業献金が政治をゆがめるものでしかないことがいよいよ明白になります。
企業献金は全面禁止こそ
国民の圧倒的多数は、国民に消費税の増税を押し付ける一方での大企業減税や、東京電力福島原発事故も収束していないなかでの原発再稼働などに反対しています。国民のくらしを守るルールが弱く、大企業の利益を守るばかりの「大企業本位」の政治の異常も浮き彫りになっています。
国民のくらしをよくするためにも、財界・大企業の献金で政治が左右されるような事態は一刻も放置できません。主権者である国民の政治参加の権利を広げていくため、政治をゆがめる企業献金は拡大ではなく、全面禁止すべきです。
しんぶん赤旗 2014年6月10日(火)
環太平洋連携協定(TPP)交渉は、断続的に開かれる日米協議が注目を集めています。政府は「一進一退」としますが、重大なのは、農産物輸入関税の大幅引き下げを前提に、具体的条件を詰める交渉になっていることです。
安倍晋三政権は4月の日米首脳会談をへて、交渉は「8合目」(甘利明TPP担当相)と進展ぶりを印象づけながら、「国益を実現する」と強調することで、その“交渉力”に国民の期待をつなごうとしています。しかし、米国は日本の足元をみながら条件を引き上げており、この協議が日本農業の破壊に導くことは明らかです。
関税撤廃迫る米国
「動物性たんぱく質の安定供給を担っているのに、円安で飼料代が高止まりするなど、経営は厳しい」―九州で養豚に携わる男性は、関税を引き下げ外国から輸出攻勢がかかったら、養豚をあきらめる業者が続出するといいます。
甘利担当相が「方程式合意」と呼ぶ日米「合意」後の交渉は、関税引き下げの度合いや、輸入急増時に実施する緊急輸入制限(セーフガード)の発動条件など、輸入拡大の途上での激変緩和措置をめぐる綱引きにすぎません。生産者は、関税引き下げをめぐる協議の報道に強い懸念を抱いています。
しかも、米国の豚肉生産業界は、あくまで日本に関税を撤廃させるよう米政府に再三迫り、先月末には、撤廃しないなら日本を外して交渉をまとめるべきだとする声明まで出しました。これにはコメ、ムギ、乳製品の関連団体も歩調を合わせています。
安倍政権は米側の“譲歩”に期待をかけるものの、業界の圧力とともに、TPPに米議会の支持をとりつけなければならないオバマ政権は、協議の都度したたかに日本を攻撃しています。
TPPは、例外なき関税撤廃をはじめとした新たな貿易体制をめざすものであり、もともと交渉に乗り出すべきではありませんでした。政府は、安全で安心できる食料を国民に提供する責任をこそ果たすべきです。先進国で最低水準の食料自給率の抜本引き上げが求められているのに、日本農業を崩壊に導くTPPに躍起になるなどもってのほかです。
TPP交渉についての国会決議は、コメ、ムギ、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物の5項目で再生産を可能にすべきであり、それができないなら「脱退」するよう政府に求めています。日本共産党の紙智子議員は3日の参院農水委で、「日本が追い詰められる一方の協議だ」と指摘し、撤退を「真剣に検討すべきだ」と政府に迫りました。政府が国会決議を本気で尊重するなら、撤退しかありません。
各国でも批判あがる
企業が国家を訴えられるようにする企業対国家の紛争処理(ISD)条項が示すように、米国が主導するTPPは、米系多国籍企業の利益確保を目的として、各国の経済のあり方やルールをさらにゆがめるものです。
後発医薬品を制限する知的財産権などをめぐり、アジアやオセアニア、米国内からもTPP反対の声があがっています。そのもとで交渉は米国などの思惑通りには進まず、“漂流”の可能性も語られています。守秘義務をたてに、国民を欺く安倍政権を追い詰めることが必要です。
しんぶん赤旗 2014年6月8日(日)
日本共産党は、政策提言「ブラックバイトから学生生活を守ろう」を発表しました。「自分のことが書かれている」「待たれていた提言」「普段はこの党の存在を気にかけていないが、初めてまともな発言をみた気がする」など、反響が広がっています。
ブラックバイトは、学生アルバイトなどに正社員並みの過度な責任やノルマを課し、違法・無法な働き方を強いる悪質なバイトです。若者を酷使し使いつぶす「ブラック企業」が社会問題化した昨年夏ごろから「バイトもブラックだ」との声が広がり、マスメディアも注目するようになりました。
“ただ働き”が横行
「『夕方から週4日』の契約だったが、朝のシフトに入れと言われ、週5、6日働かされている」(スーパーのレジ)、「店の鍵の管理を任され、休日でも鍵の開け閉めのために出勤。その分は無給」(喫茶店)、「辞めたいと言ったら求人広告費を給料から差し引くと言われた」(飲食店)―。学生の実情も働く権利も無視した働かせ方、“ただ働き”などの違法・脱法行為が横行しています。
ブラックバイトはなぜ広がったのでしょうか。
一つは、非正規雇用が拡大し、かつては正社員が行っていた仕事を非正規労働者に肩代わりさせる動きが進んだことです。チェーン店などでは、一つの店舗に正社員が一人か、あるいは正社員が複数の店舗を掛け持ちしている例が珍しくありません。そうした職場では、学生バイトが「バイトリーダー」「時間帯責任者」などの役職名をつけられ、シフトの管理・調整、新人育成など正社員並みの仕事と責任を負わされています。
もう一つは、多くの学生がバイトからの収入を途絶えさせることができない状態にあることです。仕送りも少なく、借金となる奨学金にも安心して頼ることができません。バイト先に不満があっても辞められないのが実情です。
大学教育にも大きな障害をもたらしています。「授業中にもバイト先からトラブルを知らせる連絡が入り、集中できない」「多くの学生がバイトをびっしり入れていて、シフトの変更もききにくいため、ゼミ合宿の日程が決められない」などの実態が大学教員から指摘されています。
ブラックバイトは、日本社会全体にとっての大問題です。学生の立場の弱さや、働くルールを知らないことにつけこむ悪質さも許されません。
政策提言は、解決のために政府の責任ある取り組みを求めるとともに、学生自身が学び、声をあげること、社会的な世論と運動で包囲することを呼びかけています。
北海道議会では党議員がさっそくブラックバイト問題をとりあげ、道の労働相談窓口を学生向けに充実させていくとの答弁を得ました。
包囲する世論を広げ
全国各地で「バイトの権利を知らせるリーフを学生・高校生に届ける」「大学当局と懇談し、セミナー開催や相談窓口の設置を求める」「ブラックバイトなくせデモをやる」「学費軽減・奨学金充実の運動を強めたい」など、多彩な取り組みが計画され始めています。
違法・無法な働き方をなくし、若者の未来をひらく運動を、大学や地域、社会のすみずみから起こしていこうではありませんか。
しんぶん赤旗 2014年6月7日(土)
安倍晋三内閣は、政府の規制改革会議が5月22日に提出した「農業改革に関する意見」をしゃにむに具体化しようとしています。その内容は「非連続的な農業改革を断行する」と「意見」がいうように、農業協同組合や農業委員会制度の解体的な「改革」や営利企業の農地所有の解禁など、家族経営とその組織を基本として進めてきたこれまでの農業政策のあり方を根本から覆すものです。
農政を根本から覆す
農業委員会の見直しで「意見」は、市町村農業委員会の公選制を廃止し、行政庁への意見・建議を業務から除外するなど、農地所有者、農家の参加を排除し、市町村長の任命による少数からなる委員会に改変するとしています。それは、独立の行政委員会である農業委員会を市町村長の下請け機関に変質させるものです。
農業生産法人の見直しでは、農業と農業関連の事業を主とするとしてきた事業要件をなくし、役員の過半が農業に従事するとしてきた要件を、「1人以上が農作業に従事」すればよいとしています。これは、営利企業による農地の利用や所有を大幅に認め、大企業などが農業生産法人として農地、農業に進出する条件を格段に広げるものです。
農業協同組合では、中央会組織としてのJA全中(全国農業協同組合中央会)を廃止し、全農(全国農業協同組合連合会)は株式会社化する、単位農協の事業から信用、共済事業をとりあげ、委託、窓口業務に限定するなどとしています。系統組織の解体であり、総合農協という日本の農協運動の大事な特徴を壊すものです。
この提案は、安倍首相のいう「企業がもっとも活動しやすい国」を農業分野で実現し、農家の経営や地域社会を維持するうえで大事な役割を担ってきた制度や組織を解体するものとなっています。
しかも、日本共産党の紙智子議員の質問に後藤田正純農水副大臣が認めたように、農協や農業委員会の解体は「関係者から要望は出されていない」(5月22日、参院農水委員会)のであり、農業関係者を無視して、規制改革会議を構成する財界代表の従来の主張を盛り込んだ極めて異常な内容です。
農業の現場は、農産物価格の低落や担い手の高齢化などの困難を抱え、農政の転換を切実に求めています。それは、関税の撤廃・削減が焦点になっている環太平洋連携協定(TPP)交渉からの脱退であり、輸入圧力や価格競争で下落が続く米をはじめとする生産者価格の安定や、地域農業の担い手の確保です。この農民の声に農協組織や農業委員会が応えることをこそ、政治が支援すべきです。
地域農業の再生に逆行
今年は「国際家族農業年」です。これまで築いてきた家族経営とその共同の再生こそが喫緊の課題です。「意見」はそれに逆行し、家族経営と農民の自主的な組織を破壊し、財界が進めようとする農業と農地を営利企業のもうけの場にする構想です。安全な食料の確保と食料自給率の向上をはじめ国土・環境の保全と農村社会の維持・発展、国民生活の向上にとっては“百害あって一利なし”です。
政府は、「農業改革」の名の下に財界がごり押ししようとしている農協や農業委員会つぶしを、ただちにやめるべきです。
しんぶん赤旗 2014年6月6日(金)
政府は、集団的自衛権の行使容認に向け憲法解釈の変更を検討している与党協議会で、米軍など多国籍軍への「後方支援」を実施する際の新たな基準案を示しました。自衛隊の「後方支援」について「非戦闘地域」に限るとした従来の制約を取り払い、「戦闘地域」でも活動を可能にする重大な内容であり、本格的な「戦地派兵」に道を開くものです。
武器・弾薬の提供も
政府はこれまで、他国の軍隊に対する補給、輸送、医療などそれ自体は直接の武力行使ではない「後方支援」であっても、他国の軍隊の武力行使と「一体化」する活動は、海外での武力行使を禁ずる憲法9条の下で許されないとしてきました。「後方支援」も他国の武力行使と密接にかかわる場合には日本が武力行使をしたとみなされることがあるという考え(いわゆる「武力の行使との一体化」論)に基づくものです。
このため、米国のアフガニスタン報復戦争やイラク侵略戦争を支援する目的で自衛隊を派兵した際も、派兵の根拠法(特別措置法)に、他国の武力行使との「一体化」を避けるためとして、自衛隊の活動は「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域(非戦闘地域)に限るという規定を設けました。「戦闘地域に行ってはならない」という最低限の“歯止め”です。
政府が今回示した新基準案は、この「非戦闘地域」「戦闘地域」という区分けを廃止します。その上で、
(1)現に戦闘を行っている他国部隊に対する支援
(2)戦闘行為に直接用いられる物品や役務の提供
(3)他国部隊が現に戦闘を行っている現場での支援
(4)他国部隊の個々の戦闘行為と密接な関係がある
―という四つの条件すべてに該当しなければ、他国部隊の「武力の行使との一体化」とはみなさないとします。一つでも該当しない場合は実施可能ということです。これはもはや何の歯止めにもならない大転換です。
例えば、(3)「他国部隊が現に戦闘を行っている現場」=「戦闘地域」であっても、(2)「戦闘行為に直接用いられる物品、役務の提供」に該当しない水や食料の補給、輸送協力、負傷兵の医療などであれば実施できます。燃料や武器・弾薬の補給も、それが備蓄のためなら、(4)「個々の戦闘行為と密接な関係がある」には当たらないので可能となります。「戦闘地域」でのあらゆる「後方支援」が事実上、制約なく行えることになります。
日本共産党の志位和夫委員長が衆院予算委員会(5月28日)での質問でいち早く警告したように、アフガン、イラク戦争に際しての自衛隊派兵法にあった「戦闘地域に行ってはならない」という“歯止め”が外されることの危険性は明らかです。
攻撃され応戦は必至
「後方支援」であっても自衛隊が「戦闘地域」まで行けば、相手側から攻撃され応戦することになるのは必至です。「日本が再び戦争をする国になることは断じてあり得ない」という安倍晋三首相のごまかしはいよいよ成り立ちません。
憲法9条が禁じる武力行使に踏む込み、「日本の若者が海外の戦場で血を流す」事態は絶対に許されません。
しんぶん赤旗 2014-06-05-wed.
安倍晋三内閣提出の医療・介護総合法案の参院審議が始まりました。法案についての誤った説明文書を配布するという厚生労働省の前代未聞の大失態によって、当初より10日以上遅れの異例の審議入りです。ところが政府・与党は短時間審議での採決をたくらんでいます。医療と介護の仕組みを壊し、患者・家族の安心を揺るがす重大な改悪案を、ずさんなやり方で強行することは許されません。
データ数字に重大問題
医療・介護総合法案は、消費税増税・社会保障「一体改悪」路線を具体化したものです。社会保障の基本を「自立・自助」とする安倍政権の姿勢にもとづき、医療でも介護でも、個人や家族に負担と責任を押し付け、国が手を引く方向が鮮明となっています。
参院審議入りと同時に、介護改悪案の根拠のデータに重大な問題があることが、日本共産党の小池晃参院議員の追及で発覚しました。介護保険導入後初めてとなる一定所得以上の人のサービス利用料を2割負担に引き上げる問題で、厚労省が示した数字が、高齢者の生活実態からかけ離れていました。意図的な数字を根拠に2割負担が過重になるはずの収入の高齢者まで“大丈夫”と描いていたのです。負担増と利用抑制にかかわる問題でゆがめたデータをそのままに、法案を押し通す道理はありません。
要支援1・同2の高齢者の訪問介護・通所介護を、国の責任で行う介護保険サービスから外し、市区町村がそれぞれ行う「事業」に丸投げする改悪案の問題点も浮き彫りになっています。これは介護保険の公的費用を無理やり抑え込むのが最大の狙いです。
厚労省は「適切なサービスは維持される」と繰り返しますが、肝心の地方自治体からは「担えない」という声が続出しています。そのうえ、政府の「モデル事業」として、法案の内容を先取りして実施している自治体では、国民から必要な介護サービスを奪っている実態が大問題になっています。
全国13の「モデル事業」の一つ、東京都荒川区では、要支援1の80代の女性が10年以上受けてきた介護保険の「生活援助」を無理やりやめさせられ、ボランティアの「家事援助」に切り替えさせられました。同区内の別の要支援1の女性は、足腰の痛みからつえなしでは歩けないのに、デイサービスから「卒業して」と繰り返し迫られました。高齢者の健康や暮らしの実態を見ない乱暴なやり方です。
要介護認定で「要支援」と認定された人たちは介護サービスが必要とされ、それを受ける権利があると行政が認めた人たちのはずです。その人たちに「介護保険から卒業」を強要することは、重大な権利の侵害にほかなりません。
徹底審議で廃案に
厚労省作成の「モデル事業」の資料では、市区町村ごとにつくった「多職種の会議」などを通じて、介護利用者の「サービス終結」を判断し、「卒業」させる仕掛けが明記されています。医療・介護総合法案で、こんなやり方を全国の自治体に広げれば、高齢者の暮らしは成り立ちません。
法案には、特別養護老人ホーム入所要件を「要介護3以上」へ原則化することなど介護関連だけでも重大問題が山積です。徹底審議で廃案に追い込むことが必要です。
しんぶん赤旗 2014年6月4日(水)
安倍晋三首相の集団的自衛権の行使容認に向けた検討表明を受け、安全保障法制に関する自民・公明の与党協議が続いています。協議は、政府が集団的自衛権行使などを必要とする例として示した「事例集」が検討のたたき台となっています。その中の大きな焦点が、自衛隊による米軍などへの輸送、補給、医療といった兵たん活動(後方支援)を「戦闘地域」で行う問題です。「後方支援」であっても「戦闘地域」で行えば、戦闘に巻き込まれ、自衛隊員が“殺し、殺される”事態になることは明瞭であり、極めて重大です。
首相のごまかし暴露
首相は、集団的自衛権行使のため憲法解釈変更の検討を表明した記者会見(5月15日)で「日本が再び戦争をする国になるといった誤解がある。しかし、そんなことは断じてあり得ない」「自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してない」と強調しました。国会答弁でも「アフガン戦争において武力行使を目的として戦闘に米軍とともに参加するということはない」と繰り返しました。こうした首相のごまかしは、日本共産党の志位和夫委員長の衆院予算委員会(28日)での質問で崩れました。
志位氏はイラク戦争やアフガン戦争に際して自衛隊派兵の根拠になった特別措置法に規定された「武力行使はしない」「戦闘地域に行ってはならない」という二つの“歯止め”は、集団的自衛権の行使容認によって外されてしまうと追及しました。首相は、直接の戦闘行動ではない「後方支援」について「戦闘地域に行ってはならない」との“歯止め”を残すと言わず、逆に「戦闘地域」の考え方の見直しにまで踏み込みました。
狙いは、政府の「事例集」からも明らかです。「戦闘地域」である多国籍軍の補給拠点に自衛隊が行くことができないイラストを示し、米国などの要請を受けても自衛隊の活動は「非戦闘地域」に限るという「制約」があるとし、「後方支援の分野で積極的な役割を果たすことができなくていいのか」と見直しの必要を強調しています。
「後方支援」であっても「戦闘地域」で活動すればどうなるか―。志位氏が質問で例に挙げたアフガン戦争でのNATO(北大西洋条約機構)軍の実態は悲惨な結果を物語っています。
アフガン戦争に際し、NATO軍は米国の要請を受けて集団的自衛権を行使し参戦しました。NATO諸国が集団的自衛権の発動として決定した支援は直接の戦闘行動ではなく「後方支援」でしたが、今日までに21カ国1031人の犠牲者を出しています。「戦闘地域に行ってはならない」という“歯止め”がなかったためです。
“歯止め”がなくなる
「事例集」は、「武力行使はしない」「戦闘地域に行ってはならない」という二つの“歯止め”のうち後者だけの見直しを示唆しています。しかし、「戦闘地域に行ってはならない」という“歯止め”は、「武力行使はしない」ことを担保しているものです。それを見直せば、「武力行使はしない」という文言は残ったとしても事実上、空文化してしまいます。「米国の戦争のため日本の若者が戦地に送られ、血を流す」ことを阻む世論と運動が急がれます。
しんぶん赤旗 2014-06-03 (火)
財務大臣の諮問機関・財政制度等審議会が「財政健全化」についての報告書をまとめました。日本財政を「改善」する基本方向を示したとしていますが、もっとも強調されているのは、社会保障費の大削減路線です。「社会保障給付の増加が財政の健全性にとって脅威となり続ける」とあからさまな敵意を示しています。国民の安心を支える社会保障費が増えることを、ここまで「目の敵」にする方針は異常というほかありません。
暮らし破壊に追い打ち
報告書は、6月に安倍晋三内閣が決める「骨太の方針」に向けて出されたものです。社会保障制度にたいする国の財政支出を「我が国財政の悪化の最大要因」と決めつけるなど、社会保障費削減の必要性に多くの記述を割いて力説しているのが最大の特徴です。
昨年の報告書には、軍事費について「厳しい財政」への考慮を求める記述がわずかでもあったのに、今年の報告書では軍事費コスト減についての指摘は項目ごと消え去りました。軍拡をすすめる安倍政権の姿勢の露骨な反映です。
社会保障費削減のなかでもとくに、やり玉に挙げたのが、世代人口が多い「団塊の世代」(1947~49年生まれ)の高齢化問題です。2025年に「団塊の世代」がすべて75歳以上になる時代に向けて、医療、介護、年金などあらゆる分野で、いっそう強力な給付削減と負担増を求めています。
医療費については「適正化への取組みが形骸化」しているとして、都道府県ごとに「支出目標」という上限の設定を提言しました。必要な医療を無理やり抑え込む乱暴きわまるやり方です。患者の窓口負担に一律一定額を上乗せする「受診時定額」の導入を執拗(しつよう)に求めるのも、多くの患者を公的医療から締め出す狙いからです。
介護では「保険外サービス」の活用強化を求めました。国会で審議中の医療・介護総合法案の改悪内容にとどまらず、いっそうの制度破壊に拍車をかけるものです。
年金では「支給開始年齢の引き上げ」や、支給額の大幅カットなどを示しました。生活保護では、住宅扶助や子どものいる世帯への加算の減額を強く要求しました。いま全国各地で年金削減や生活保護費減額は不当だとする審査請求や裁判が相次いでいるのに、その怒りの声に耳を貸さず、さらに減額を迫るのは、逆行しています。
消費税率を8%に引き上げた直後の報告書で、社会保障を破壊する方針をここまで列挙したことは、「消費税増税は社会保障の充実のため」という口実が成り立たないことを浮き彫りにしています。
所得増やす経済改革こそ
高齢化による社会保障費増は、国民の暮らしや、健康と命を守るための必要な支出です。むしろ日本の社会保障費の対GDP(国内総生産)比は欧州諸国より、きわめて低い水準です。それを「脅威」とみなして削減に突き進むことは、憲法25条にもとづく暮らしを保障する政治とは無縁の姿です。
必要なことは、軍事費などムダの一掃と、大企業への応分の負担による社会保障再生・拡充です。同時に国民の所得を増やし、内需主導の経済成長による経済改革をすすめることです。それは財政危機打開につながります。安倍政権の消費税増税・社会保障解体政治からの転換こそ重要です。
しんぶん赤旗 2014年6月2日(月)