わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

介護保険見直し はしご外して何が予防ですか

2005-03-25 | Weblog





 

 介護保険制度の見直しについて、政府が国会に提出している改悪法案の審議が始まっています。


 法案は、保険給付を抑えるために、サービスの制限と負担増を柱にしています。






家事サービスを制限


 サービスの制限は、これまで要支援や要介護1と認定された軽度の高齢者が対象です。高齢者をホームヘルパーが訪れ、洗濯や掃除などのサービスを行う「家事代行」型の訪問介護を原則として行わないとしています。


 政府は、“介護予防が大事だから、生活機能を低下させるような家事援助は行わない”といいます。


 しかし、介護度の軽い人への家事援助が生活機能を低下させているという根拠はなく、政府が勝手に決めつけているだけです。


 訪問介護は、高齢者の安心感と生活への意欲を引き出し、在宅生活を維持・継続するうえで不可欠のサービスです。家事援助という、“はしご”を外したら、重度化を招きかねず、介護予防にも逆行します。


 高齢者が要介護状態になることをできる限り防ぐとともに、要介護状態になってもそれ以上悪化しないようにすることは大切です。ところが、対象は軽度の人だけで、中度以上の高齢者にたいする重度化防止策はありません。“予防重視型システムへの転換”は、軽度の人のサービス制限の口実にすぎません。


 介護保険三施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型医療施設)の利用者の居住費と食費を、保険給付から外して自己負担にする問題も、所得の低い高齢者を、施設利用から事実上締め出すことになりかねません。


 政府は、居住費と食費の利用者負担を導入する理由として、“在宅と施設のバランスがとれないからだ”としています。バランスをとって負担を軽くするというならともかく、実態は逆です。


 老人保健施設や療養型医療施設に入所している高齢者は、在宅に復帰する可能性があり、自宅を残したままにしています。自宅以外に施設でも居住費をとられることになったら、二重の負担になります。


 しかも、施設利用者は入所者に限りません。在宅サービスであるショートステイやデイサービスも施設利用であるとして、居住費や食費についての新たな負担を求めています。「バランス」を持ち出すのは負担増のためです。


 政府は、保険の給付が在宅利用に比べ施設入所の方が多いので減らす必要があるといいます。しかし、もともと在宅サービスの利用が抑えられているのです。


 利用料が高すぎるために、在宅サービスを受けている高齢者は、利用限度額の四割程度しかサービスを受けていません。在宅のサービス抑制こそ問題です。






改悪法案は撤回せよ


 現行の介護保険についての国民の不安は、保険料や利用料が重すぎて必要なサービスが受けられない、負担増も続き、施設不足も深刻で解消されないことです。


 政府は、見直しをいうなら、保険料や利用料を支払い能力に応じた負担に改めていくことが必要です。


 在宅でも施設でも安心して暮らせるように、特別養護老人ホームの増設をはじめ基盤整備をすすめるべきです。


 介護不安を拡大し、介護をめぐる国民負担増と給付減のレールを敷く介護保険の改悪法案は、撤回するよう求めます。







2005年3月25日(金)「しんぶん赤旗」





05年度予算成立 くらし壊す増税路線に反撃を

2005-03-24 | Weblog





 

 二〇〇五年度の政府予算が、自公両党の賛成多数で成立しました。


 〇五年度予算で政府・与党は、二段階の過酷な増税計画の第一歩を踏み出そうとしています。


 〇五年度予算は、家計の収入が年間で数兆円規模の減少を続けているもとで、大規模な増税路線の皮切りとなる定率減税の半減を組み込んでいます。


 政府・与党は〇六年度には定率減税を廃止する予定で、増税総額は三・三兆円に上ります。これを含め、今後二年で七兆円もの巨額の負担増を押し付け、さらに〇七年度から消費税を二ケタに増税する狙いです。






日本共産党の追及で


 日本共産党は衆院でも参院でも、増税計画を正面から追及しました。


 大事な論点の一つが、一九九七年の橋本失政の二の舞いになるのではないかという問題です。橋本内閣は消費税増税、医療費値上げ、特別減税の打ち切りによる九兆円負担増を強行し、日本経済を不況の泥沼にたたき落としました。


 参院代表質問で、この点をずばりと突いた市田忠義書記局長に、小泉首相は次のように答えました。


 「企業部門の改善を背景に、景気回復が雇用、所得環境の改善を通じて、家計部門へ波及する」。だから家計の負担を増やしても大丈夫だという認識です。


 衆院予算委で志位和夫委員長は、首相の認識の誤りを、政府自身のリポートを示してただしました。


 かつては企業利益が増えれば賃金も増える「相関」関係があったが、九〇年代に「相関」関係が消え、九五年以降はむしろ「逆相関が強まっている」。こう書いているのは内閣府の『日本経済2004』です。「逆相関」とは、企業の利益が伸びても家計の収入が減る関係です。


 日銀のリポート「雇用・所得情勢にみる日本経済の現状」も、企業が利益を増やしても所得が増えない原因は企業の「人件費抑制姿勢」にあり、人件費抑制姿勢は今後も根強く残ると分析しています。


 大企業はリストラで利益を拡大してきたのだから利益を増やしても賃金は増えない。これからも賃金が増える見込みが立たないと、政府自身のリポートが認めています。


 小泉首相は「企業は随分苦労してきた」「企業も頑張ってきた」と大企業の弁護役に回りました。雇用者に対しては、「雇用者所得にもいい影響を与えるようになってもらいたいなあ」と、「願望」を語るだけです。


 参院予算委で小池晃政策委員長は、負担増で庶民の生活がどうなるのかを具体的に取り上げました。


 これまで税金が天引きされなかった、月十九万円の年金で一人暮らしのお年寄りの場合―。ことし一月からの公的年金等控除の縮小と所得税の老年者控除の廃止で、年五万円も税金が引かれるようになりました。これに続いて所得税・住民税の増税、介護保険料の値上げなど、次から次へと負担が増え、年金が目減りしていきます。






既定路線にさせない


 「生活設計がめちゃくちゃになるではないか」と迫られた小泉首相は、「負担できる層には負担してもらわないと」と突き放しました。


 日本共産党の追及で、くらしに対する小泉内閣の冷たい姿勢、負担増の無謀さが浮き彫りになりました。こんなやり方に道理はありません。


 国民の七割が消費税増税に反対しています。消費税率引き上げに連なる増税計画を既定の路線にさせないよう、反撃に立ち上がりましょう。






2005年3月24日(木)「しんぶん赤旗」




内部告発者保護 報復は不正の温存につながる

2005-03-23 | Weblog






 企業や官庁の不正、違法行為を内部告発し、報復されても屈しない勇気あるたたかいが続いています。


 隠された不正を社会的に告発した人たちを保護することは、社会正義を実現し、国民の利益を守るために重要なことです。






不利益な扱いは違法


 警察の裏金づくりや雪印食品の牛肉偽装事件をはじめ、犯罪や違法行為の告発は、ゆがんだ企業経営や行政をただす上で、かけがえのない力を発揮しています。


 来年四月からは、内部告発者を保護する公益通報者保護法が施行予定です。告発を逆恨みして、解雇や不利益な扱いで報復することはもってのほかです。


 運輸業界内のヤミカルテルを告発し、不利益扱いをされてきたトナミ運輸の串岡弘昭さんに、富山地裁が外部への告発は「正当な行為であって法的保護に値する」と救済を命じる判決を出しました。


 串岡さんは、判決が謝罪を認めず、損害賠償も不十分であることを不服として控訴しましたが、三十年にわたり、報復に屈しないで正義を通す姿が反響をよんでいます。


 公益通報者保護法は、告発をできるだけ内部にとどめ、マスコミをはじめ外部への通報の要件を限定しています。といっても要件に該当しない通報も、一般法理が適用され、保護されるというのが法の趣旨です。


 企業や警察の対応を見ても、内部だけの告発では、自浄能力が働かないことは目に見えています。公益を守るための外部への告発を保護し、報復を許さないことは当然です。


 その一方、愛媛県警で裏金づくりに手を貸すことを拒否し、告発した仙波敏郎巡査部長が、あからさまな報復を受けていることは重大です。


 仙波さんは、告発の後突然、配置転換され、警察官の適格性を否定され、仕事は与えられず、給与も大幅減額となりました。著しい不利益扱いです。


 この人事は、現職警察官による告発が続くことを恐れた、見せしめそのものです。しかも、犯罪行為にふたをして、これを温存しようとするものであることは明りょうです。


 公益通報者保護法は公務員も対象です。それ以前に公務員は、犯罪があるとわかれば告発することを刑事訴訟法で義務づけられています。


 不当な免職や不利益扱いがされないよう身分保障がされています。


 昨年の法案審議のさいも、政府は「公益通報を理由として免職その他不利益な取り扱いがなされないよう公務員法制を適用しなければならない」(三月二十四日、参院法務委員会)と答弁しています。警察が告発者に報復するのは言語道断です。


 犯罪を取り締まるべき立場にありながら、この法の趣旨を公然と踏み破ることは、民間企業にも「法を無視してよい」と宣言しているのと同じです。告発を真摯(しんし)に受け止め、うみを出しきることが、国民の信頼回復のために不可欠です。






主社会には不可欠


 アメリカやイギリスでは内部告発者は「警笛を鳴らす人」とよばれ、保護する制度が確立しています。内部告発への報復は、こうした世界と日本の流れに逆らう暴挙です。


 企業や官庁が不正や犯罪を隠し続ければどうなるのか。国民の安全や健康を脅かし、税金のむだ遣いや腐敗、権力の乱用などを招きます。


 正当な内部告発は、民主主義社会の健全な発展にとって欠かせません。公益通報者を保護することは、企業や官庁の責務です。








2005年3月23日(水)「しんぶん赤旗」





福岡県西方沖地震 救援急ぎ、震災対策を万全に

2005-03-22 | Weblog






 「また大地震」、「津波はどうなるか」と緊張しました。福岡県西方沖を震源とする地震で、福岡県福岡市、前原市、佐賀県みやき町では震度6弱を記録しました。津波被害はまぬがれましたが、大きな被害が出ています。福岡県は、福岡市への災害救助法適用を決めました。


 亡くなられた方をはじめ、被災されたすべての人に、心からおくやみとお見舞いを申し上げます。


 被災者への救援を急ぐとともに、復興や今後の震災対策に万全を期すことを、政治の責任として実行していかなければなりません。






大都市と島の被害


 福岡市では、倒壊したブロック塀の下敷きになって女性が亡くなりました。福岡市の市街地では、ビルの壁や窓ガラスが割れて落下する被害が出ています。


 けがをした人は、福岡県、佐賀県、長崎県で約七百人。住家の被害も、全壊・半壊・一部破損で約七百棟にのぼります。博多湾の湾口に位置する玄界島(福岡市西区)では、負傷者九人、住家の全壊十六棟、半壊百五十七棟という大きな被害が出て、約五百人が同市中央区の体育館に避難しました。仕事上どうしても離れられない人以外はほとんど避難したとみられます。島での被害としては、福岡市の能古島で負傷者二人、長崎県壱岐島(壱岐市)で負傷者一人、佐賀県小川島(唐津市)で負傷者一人が報告されています(二十一日午後四時現在、消防庁調べ)。


 この被害状況を見ると、大都市型の震災被害と島での被害に対応する必要があるように思われます。


 地震で倒壊するブロック塀の危険性については、一九七八年六月の宮城県沖地震の際に大問題になりました。この時の死者二十八人のうち、十八人が、ブロック塀などによる圧死だったからです。それ以降、ブロック塀の強度を上げる措置がとられましたが、全国的に見れば、まだ倒壊の危険性のあるブロック塀があることを直視する必要があります。


 福岡市の中心部で、窓ガラスがたくさん割れるビルがありました。倒壊まではしないものの、ビルの外壁や窓ガラスが壊れて落下する危険があることも、かねてから指摘されてきました。大都市ならではの危険にたいし、全国的に対策を強めなければなりません。同時に、福岡市の場合には、ヒビが入って落ちかけているガラスや外壁などがないかどうかをただちに点検し、緊急に危険を取り除く措置をとることが求められています。


 島で大地震の被害を受けた場合、救援や復興で、他の地域とは違った難しさがあります。玄界島の場合も、実質的に「全島避難」に近い形にならざるを得ませんでした。住みなれた島から離れて避難生活をする苦労や、島の復興に特別の援助がいることなどを、行政側が十分にくみとり、適切な対応をしてほしいと思います。






全国どこにも例外なし


 地震はどこで起きるかわかりません。「私たちのところは大丈夫」と言えるところはありません。


 二〇〇〇年以降を見ただけでも、日本でおきた震度6以上の強い地震は、福岡県西方沖地震で八回目です。震度7を記録した昨年十月の新潟県中越地震では、いまだに避難が続き、豪雪による被害の拡大が心配されています。


 地震の発生を止めることはできませんが、被害を小さくすることはできます。知恵と力を合わせ、震災対策を前進させていきましょう。






2005年3月22日(火)「しんぶん赤旗」





家計負担増 こんなやり方許せますか

2005-03-21 | Weblog

 





 小泉内閣が今後の二年間で国民にかけようとしている負担増は七兆円に上ります。


 負担増のメニューはさまざまです。大多数の世帯にかかわる所得税・住民税の定率減税の半減・廃止。国立大学の授業料値上げ。年金課税の強化。介護保険の利用者負担増。新たに約二百万軒の中小零細業者と農家に消費税の納税義務を課す消費税の免税点引き下げ…。


 その一部を見るだけで今回の負担増の無謀さが浮かび上がります。しかも、自民、公明、民主の三党は消費税増税を前提にした社会保障の見直し協議の開始で合意しました。






わが家の負担増は


 「わが家の負担」がわかるよう、日本共産党のホームページは、世帯のタイプと収入別の試算を掲載しています。


 例えば年金生活の高齢夫婦で、年金の月額が夫婦合わせて二十五万円、都内に在住する世帯の場合―。すでに実施された医療費値上げを含めて、年間の負担増は約二十三万円におよびます。もしも消費税が10%に増税されたら、それだけで年十万円の負担増です。


 小泉内閣には、負担増が家計にどんな影響を与えるのか、真剣に考えた形跡さえありません。国会で共産党議員が試算を示すと、自民党席から「こんなに上がるのか」と驚きの声が上がるほどです。


 庶民のくらしには無頓着な一方、政府は、大企業や大企業の役員クラスの負担には配慮を惜しみません。


 谷垣財務相は言います。「法人税の引き下げはグローバル化のなかでやらなければならない」。「法人税率、所得税の最高税率の引き上げをやれば、日本は空洞化する」(衆院予算委、二月七日)


 小泉首相ものべています。「所得の50%以上が(税金に)取られるのでは、働く意欲がなくなる」(参院予算委、三月四日)


 あたかも、日本の税制が大企業や高額所得者に厳しいかのような発言ですが、現実はまったく反対です。


 法人税率は何度も引き下げられて主要国で最低水準です。手厚い優遇措置を受ける日本の大企業の負担は、実際には、税率で比べる以上に軽くなっています。


 GDPに対する法人所得課税の負担率で比較すると―。イギリス3・5%、フランス3・4%、イタリアは3・6%。日本は1・9%です。韓国3・1%、タイ2・9%、マレーシア6・6%と、アジアの中でも低い負担です。


 首相の発言には大きなごまかしがあります。日本の所得税制は単純な累進課税ではなく、「超過」累進課税です。どんな高額所得者も、最高税率37%が適用されるのは千八百万円を超える部分の課税所得に対してだけです。所得の全体に最高税率がかけられるわけではありません。






高所得者に甘い税制


 給与収入が三千万円の人の所得税の実効税率は、日本は20・3%にすぎません。ドイツ35・7%、イギリス34・9%、フランス32・9%、アメリカ23・8%と比べて最低です。


 所得税は、配偶者特別控除の廃止などによって、ぐっと低い所得層にも課税されるようになっています。所得税の課税最低限は夫婦と子二人の四人世帯の場合、日本は三百二十五万円です。これに対してアメリカ三百四十七万円、フランス三百九十万円、ドイツ四百九十六万円です。


 日本の税制は大企業にも高額所得者にも甘く、低所得者に厳しいのが実態です。もっぱら庶民に負担増を求める議論に道理はありません。





2005年3月21日(月)「しんぶん赤旗」




イラク戦争2年 無法を続けさせてはならない

2005-03-20 | Weblog

 





 米英軍によるイラク戦争開始から、二年になります。ブッシュ米大統領は開戦後四十日あまりで「大規模戦闘の終結」を宣言しましたが、いまも占領と戦争状態が続いています。






許されない焦土作戦


 米英は、イラクのフセイン政権が大量破壊兵器をもっている、国際テロ組織アルカイダと結びついている、と偽り、イラク戦争を強行しました。二年間に、自国と国連の調査報告でもこのうそが明白になり、イラク戦争が先制攻撃の侵略戦争であることは隠しようもありません。


 国連憲章と国際法を踏みにじる侵略戦争こそ「国際の平和と安全」を脅かすものです。世界的に批判が強まり、米英両国でも戦争批判が多数を占めるようになりました。二年前とくらべ、イラク戦争への賛否が逆転しています。


 ホワイトハウスではこんなやりとりがありました(十五日)。


 記者「米大統領はどう記念するのか」
 報道官「イラク解放が始まる日程を決めるまでにはもうちょっと時間がいる」
 記者「イラク侵略じゃないか」
 報道官「イラク人は連合軍の犠牲に感謝している」
 記者「米軍は居残り、まだ戦闘を続けている」


 米国でも、占領軍の「犠牲」と撤退時期、いわゆる「出口」が問題にならざるをえない現実があります。


 二年間に死亡した米兵は千五百十三人、負傷米兵は一万一千三百四十四人にのぼります(十八日の米国防総省発表)。最多時の派遣米兵約十五万人というなか一万三千人近くの死傷者は、米軍が激しい敵意と抵抗にあっていることを示しています。


 恐怖にとりつかれた米兵がむやみに発砲し、イラク人や外国からきた民間人を殺傷する例があとを絶ちません。人質状態から解放されたイタリア人女性ジャーナリストを米兵が銃撃した事件も起きています。


 イラク人の死者は、十万人以上ともみられています。不法な侵略と軍事占領はイラク人の生命と人権を奪い、治安を極度に悪化させる根本原因になっています。


 昨年秋、米軍はファルージャを総攻撃し、全壊40%、大破20%、重大な損壊40%と、家屋を破壊し尽くしました。断じて許されない“焦土作戦”です。生きのびた約三十万市民もほとんどが避難を強制されました(国連難民高等弁務官事務所)。


 ファルージャなどでスンニ派住民の多くが投票できないなか、一月末の暫定議会選挙では有権者の六割程度が投票しました。代表的な演劇人、ハイダル・メナサル氏は「イラク人は自らの力で国づくりができることを証明しようとした」と本紙に語っています。過半数の議席を獲得した「統一イラク同盟」のハキム師は十六日の初議会で、米軍と「多国籍軍」を撤退させる意向を語りました。






占領軍、自衛隊を引け


 イラクから占領軍を撤退させイラクの人々の主権を回復する見通しを明確にすることが、ますます重要になっています。イラクで米軍の無法を終わらせるため、中東と世界の平和のために、不可欠です。


 イタリアの首相が九月からの自国軍撤退を表明したのに続き、ブルガリアの国防相が六月に撤退開始と表明しました。三十七カ国だったイラクへの派兵国は半減します。自衛隊は、「多国籍軍」で米軍の無法に加担する立場に組みこまれています。いますぐ撤兵させるべきです。


 イラクに平和と正義を、占領軍と自衛隊は撤退せよ、の世論と運動を大きく広げていきましょう。






2005年3月20日(日)「しんぶん赤旗」





非核「神戸方式」 核艦船の入港を止めた30年

2005-03-18 | Weblog





 

 ちょうど三十年前の一九七五年三月十八日、神戸市議会は、「核兵器積載艦の神戸港入港拒否に関する決議」を採択しました。


 これにもとづき、神戸市長は、神戸港の管理者として、核兵器を積載していないという証明書を提出しない軍艦の入港を拒否する措置をとることになりました。原爆の恐怖を知る日本の自治体が、市民と核兵器は共存できないとの見地を鮮明にした歴史的措置です。






非核三原則の実効措置


 非核「神戸方式」が実施される前年の七四年秋、アメリカのラロック元海軍提督が、米艦船による日本への核兵器持ち込みをあきらかにしました。「核持ち込みはない」との日本政府の説明がウソであることがはっきりするなかで、自治体として可能な非核の措置が検討されました。


 神戸市の行政措置は絶大な効果を発揮しました。フランスやイタリアなどの軍艦が非核証明書を提出して入港する一方、六〇年の日米安保条約締結から決議まで四百三十二隻入港していた米艦船は、決議後は入港の申請すらやめました。核の存否をあきらかにしない政策のためです。


 非核「神戸方式」は、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則を実効あるものにする力をもっています。


 政府は、日米安保条約の事前協議制度が、「日本側が知らないうちに核兵器が持ち込まれたりするようなことがないようにするため」(外務省『新しい日米間の相互協力・安全保障条約』)の規定であり、米側から事前協議の申し出がないのは核持ち込みのない証拠といってきました。しかし、事前協議は一度もありません。六四年、米原潜(シードラゴン)が初めて日本に寄港し、次いで、六八年に原子力空母エンタープライズが寄港する計画が表面化しました。唯一の原爆被爆国である国民の反核世論と運動は一気につよまりました。これを抑えこむために六七年、佐藤首相が「核抑止力維持」などとともに示したのが非核三原則です。七一年十一月の沖縄返還協定採決のさいに衆院本会議で決議され、その後政府が、「国是」というまでになりました。非核三原則にもとづいて核持ち込みの協議の申し出があれば拒否すると説明しました。


 ところが、事前協議制度には国民をあざむく密約がありました。日本共産党が入手した「米陸軍参謀部資料」には、日米両政府が、六〇年一月六日に、「合衆国艦船の日本領海や港湾への立ち入り」は事前協議の対象外だと合意したことを示す文書がありました。事前協議などあるはずがありません。核兵器が持ち込まれていたことは、いまや明白です。


 神戸市が、非核「神戸方式」の実施によって非核三原則を忠実に履行し、核兵器持ち込みを拒否してきたことはきわめて重要です。


 今年は、被爆から六十年。核兵器の廃絶を求める世界的な世論と運動が高まっています。三十周年となる非核「神戸方式」が、あらためて注目を集めています。






ますます大事になる


 歴代の米政府は核使用政策をすすめてきました。とくに、ブッシュ政権は核使用の敷居を低くし、先制攻撃戦争で核兵器を使用する政策をすすめています。日本への寄港の回数が激増している米攻撃型潜水艦に核弾頭つき巡航ミサイルを再配備する方針もきめています。


 日本への核持ち込みを拒否する非核「神戸方式」はますます重要になっています。






2005年3月18日(金)「しんぶん赤旗」




人権擁護法案 市民の言動まで規制する危険

2005-03-17 | Weblog

 

 

 

 

 

 政府が今国会に再提出を予定している人権擁護法案について、世論の批判が高まり、自民党内でも異論、反対の声が噴出しています。

 

 法案は、いま国民が求めている迅速な人権救済には役立たず、国民の言論、表現の自由を脅かす根本的な問題、欠陥をもっているからです。

 

 

 

 

 

恣意的な運用の恐れ

 

 法務省の外局につくられる人権委員会が、不当な差別や虐待など人権侵害の救済にあたるといいます。

 

 官庁や企業による不当な差別的取り扱いを規制するのは当然ですが、法案は、市民の間の言論・表現活動まで規制の対象としています。

 

 何を差別的とするのかは、裁判でも判断が分かれる微妙な問題です。

 

 ところが差別の定義はあいまいで、人種などを理由とした「侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動」というものです。何を差別的と判断するかは委員会まかせです。いくらでも恣意(しい)的な解釈と適用が可能です。

 

 なかでも相手を「畏怖(いふ)させ、困惑させ」「著しく不快にさせるもの」は「差別的言動」、助長、誘発するものは「差別助長行為」として、予防を含め停止の勧告や差し止め請求訴訟ができる仕組みです。

 

 市民の間の言動まで「差別的言動」として人権委員会が介入し、規制することになれば、国民の言論・表現の自由、内心の自由が侵害される恐れがあります。

 

 「差別」を口実とした市民生活への介入といえば、かつて「解同」(解放同盟)が一方的に「差別的表現」と断定し集団的につるし上げる「確認・糾弾闘争」が問題になりました。「糾弾」は学校教育や地方自治体、出版・報道機関、宗教者などにもおよび、校長の自殺など痛ましい事件が起きました。

 

 「糾弾闘争」は現在でも後を絶っておらず、今回の法案は「解同」の運動に悪用されかねません。人権擁護法案どころか逆に、人権侵害法案となることが心配されます。

 

 報道機関による「過剰取材」の部分を凍結しても、「差別」を口実にした出版・報道の事前の差し止めなども可能です。メディアへの介入・規制の危険に変わりありません。

 

 国民の「言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」という憲法第二一条に抵触するような法案では、到底認められません。

 

 また、人権擁護のため、もっとも必要な公権力や大企業による人権侵害の救済にはまったく無力です。

 

 人権委員会が法務省の外局では、同省の管轄下にある刑務所などの人権侵害を救済できないことは明らかです。警察や防衛庁による思想・信条の自由やプライバシーの侵害がしばしば発生していますが、勧告・公表など特別救済の対象外です。

 

 大企業で横行する人権侵害も、厚生労働省など行政にまかせて、救済の対象にしていません。

 

 メディア規制の条項を凍結しても、「いつでも解除できる」とメディアを脅すことになります。

 

 メディア規制条項を許さず、報道被害の問題は、報道機関の自主的な取り組みを基本とすべきです。

 

 

 

 

 

根本からやり直しを

 

 法案には、日本ペンクラブ言論表現委員会・人権委員会をはじめメディアにかかわる六団体も「安易に表現の自由への規制を法制化しようとするもの」として反対しています。

 

 こんな法案は国会に提出すべきではありません。国民的合意ができる人権救済の仕組みをつくるため、議論を根本からやり直すことです。

 

 

 

 

2005年3月17日(木)「しんぶん赤旗」

 

 

 

 


東富士演習場 米軍優先使用の保証「密約」

2005-03-16 | Weblog





 

 日本に返還したあとも米軍が東富士演習場(静岡県)を「毎年最大二百七十日、優先使用する」―こんな日米両政府の「密約」がありました。日本共産党の紙智子参議院議員が、米政府解禁文書をもとに国会質問でとりあげました。


 東富士演習場は一九六八年に自衛隊の演習場になりました。返還前に政府は、「自衛隊が主人公、米軍はお客様になる」と説明していましたが、米軍が「主人公」のままです。二〇〇一年は沖縄米海兵隊が百九十日も使用しています。「密約」を裏付けています。






日本の要請で秘密に


 日米両政府は、六八年七月、「使用転換及び使用条件の変更にかんする協定」を結びましたが、全容は秘密のままです。今回あきらかになったのは、米側作成の「東富士演習場の解放にかんする協定案」とその付属「了解合意覚書」。「最終案」と報告されており、これが、日米政府協定になったとみられます。


 「協定案」は、米軍が、返還後も共同使用の形で東富士演習場を優先使用できると明記したばかりか、東富士演習場と北富士演習場(山梨県)が使用できないときには、日出生台(ひじゅうだい)(大分県)を使用できることまで明記しています。


 付属の「覚書」では、米軍に「毎年、最大二百七十日間に及ぶ富士演習場区域の使用の優先権」を明記。さらに、優先使用の期間内は演習場の65%を使用、年間三十日間は東富士と北富士の全演習場を使用できるとも規定しています。当時高まった演習場返還運動を無視できず、表向きは自衛隊の基地を一時的に米軍が共同使用するという形にして、矛先をそらすためでした。しかし、国税を使い、自衛隊が管理・整備した演習場を、米軍がいつでも必要なときにやってきて、長期に優先使用するのですから、米軍の「専用基地」と実質的には同じです。


 ひどいのは、日本政府が、二百七十日間の優先使用を隠しとおすために、米政府に、協定本文ではなく秘密扱いの付属「覚書」に書きこむように頼み込んだことです。在日米軍司令部の米太平洋軍司令部あて書簡は、日本側が「合意内容の公表は遅らせたいと何度も口にした」とのべています。事実がもれて返還運動を刺激することをおそれたのです。国民をだますなど言語道断です。


 二百七十日間の優先使用は、「一年のうち半数以上米軍が使用するというのでは主客転倒となる」(七一年二月二十七日衆院予算委員会 中曽根防衛庁長官=当時)との政府統一見解にも反します。「東富士のごく一部」なので「主客転倒に当たらない」(外務省『日米地位協定の考え方(増補版)』)という言い分は通用しません。


 「密約」が示すことは、米軍いいなりでは米軍基地の全面返還はできないということです。共同使用では、米軍基地も自衛隊基地も、国民の手に取り戻すことはできません。東富士演習場の地権者団体である「東富士演習場地域農民再建連盟」がキャンプ富士への米軍海兵隊部隊の移転に反対するのは当然のことです。






世界で日米共同作戦


 米政府は、米軍事態勢再編のなかで、基地の共同使用を拡大強化しようとしています。「戦闘から平時までのあらゆる作戦任務で、同盟国とともに行動できる能力を強化する」(〇四年十一月十五日ファイス米国防次官)ためです。


 世界で共同作戦をするための基地強化と自衛隊の海外派兵態勢づくりに反対しましょう。





2005年3月16日(水)「しんぶん赤旗」



国民投票法案 憲法改悪の手段でしかない

2005-03-15 | Weblog







 自民党の中山太郎衆院憲法調査会長の呼びかけで、自民・公明・民主三党の憲法問題担当者が、国民投票法案をテーマにした三党の政党間協議の機関を設けることについて話し合っています(十一日)。各党に持ち帰ったうえで最終結論を出すとしていますが、民主党も「協議できるのが望ましい」(枝野憲法調査会長)という態度です。


 自公民三党が、憲法改悪の手段でしかない国民投票法案の制定で足並みをそろえようとしていることは、見過ごしにできません。






国民が抑えてきた悪巧み


 自民党と公明党の与党協議会は、昨年十二月、「日本国憲法改正国民投票法案」の骨子を了承し、成立に向けた手順で合意しています。国会法を「改正」して、衆参両院の憲法調査会に法案審査権を付与し、そこで国民投票法案を審査し「成立を図る」という内容です。自民党は、通常国会での国民投票法案成立に執念を燃やし、公明党も「異論はない」(神崎代表)と同調しています。


 改憲勢力は、国民投票法制定の緊急性を、次のように強調します。


 “憲法第九六条の「改正」手続きとして「国民投票」が規定されているのに、国会が、国民投票を実施する法律を制定しないのは怠慢だ”


 自民党憲法調査会長の保岡衆院議員は「国民への冒涜(ぼうとく)」だとまで言っています。


 日ごろ、憲法に悪口を言い、背を向けている改憲勢力が、「国民投票」だけは憲法の規定を急いで具体化せよというのは、ご都合主義です。


 国民投票法が必要になるのは、改憲のときだけ。憲法を守り、憲法にもとづいた政治を行うなら、国民投票法はいりません。だから、以前は、公明党でも「現憲法は十分に国民に定着しており、すぐに改正の手続法を作らなければならない必然性はない」といっていたほどです。


 現在も、憲法改定についての国民の合意はなく、国民投票法制定の必然性はまったくありません。


 むしろ、国民が自民党などの憲法改悪のたくらみを抑えてきたからこそ、国民投票法が制定されていないという事実に注目すべきです。


 自民党などの最大の狙いは憲法九条の改悪です。「戦力不保持」規定を取り払って軍隊を持ち、アメリカとともに海外でたたかえるようにする。そのため、国民に「国防の責務」を課し、国民の権利や自由に制限を加える―。改憲して再び危険な道に踏み出そうとすることに、多くの国民が反対するのは当然です。


 平和を望む国民の良識の力が、改憲のための国民投票法制定を許しませんでした。これは、「国会の怠慢」ではなく、貴重な国民的成果です。保岡氏の言葉は、国民への「逆恨み」でしかありません。



 

 

 

国民を冒とくしているのは


 国民の意思に反して国民投票法案を一方的に強行しようとする態度こそ、「国民への冒涜」です。

 

 国民投票法案の「骨子」は、投票の成立要件は定めずに「有効投票の過半数」で改憲できるようにすることや、改憲の是非を問う運動や報道を厳しく規制する内容を盛り込んでいます。「主権者」としてもっとも重要な、憲法を決める国民の権利・権限を切り縮める内容です。憲法の規定を具体化するかのように装ってはいても、実際は、平和原則をこわす九条改憲と、国民主権原理のじゅうりんにつながっています。


 国会の憲法調査会の変質と国民投票法案提出を許さないため、批判の声を大きくしていきましょう。






2005年3月15日(火)「しんぶん赤旗」




児童虐待の防止 相談体制を強めて命を救う

2005-03-13 | Weblog






 児童虐待の相談体制を強めるために、児童福祉法施行令が改正されることになりました。四月一日の施行です。


 改正されるのは、児童相談所に配置されている児童福祉司の配置基準です。現行の人口おおむね「十万―十三万人に一人」を、「五万―八万人に一人」に変更します。児童福祉司の受け持ち人口を半分にし、人員の大幅な増員となります。






相談は10年間で16倍に


 児童福祉司は都道府県と政令指定都市が採用する職員です。児童相談所で、児童の福祉にかかわる相談に応じ、専門的指導にあたります。


 しかし、児童虐待の相談は十年間で十六倍に増えているにもかかわらず、児童福祉司は一・六倍にしか増えていません。児童相談所がかかわりながら、虐待を受けた児童の命を救えないケースが後を絶たず、児童福祉司の増員が急務です。


 政府は、この事態に地方交付税の措置で対応してきました。二〇〇四年度は「人口六万八千人に一人」の児童福祉司を配置できるよう地方交付税で算定してきました。しかし、地方交付税の使途は、地方の裁量にまかされており、六割以上の自治体がこの水準に達せず、自治体間の格差も広がっていました。


 児童福祉法施行令の改正によって、すべての都道府県と政令指定都市は「人口五万―八万人に一人」以上の児童福祉司を配置しなければなりません。


 二〇〇四年五月時点で、児童福祉司一人が受け持つ人口が「八万人」を超えているのは十五都県三政令都市もあります。全国児童相談所長会が要望していたのは、「五万人に一人」の児童福祉司の配置です。この基準を満たすのは、青森、宮城、鳥取の三県と京都市だけです。全国で積極的なとりくみが必要です。


 相談体制を強化するうえで、児童相談所の増設は欠かせません。国の基準は、人口五十万人に最低一カ所です。しかし、この基準を満たしているのは、都道府県・政令都市の三割にすぎません。


 その点で、青森県(人口約百四十八万人)が、児童相談所を二十五万人に一カ所にまで増設、児童福祉司も二万九千人に一人まで増員して、児童虐待の防止に効果をあげていることが注目されています。


 青森県では、一九九九年と二〇〇〇年に幼い女児が虐待で死亡する痛ましい事件が相次ぎました。これを受け、支所を含め四カ所(一九九七年)だった児童相談所を六カ所(二〇〇二年)に、十六人だった児童福祉司を五十七人に増やしました(〇四年は五十一人)。


 増員によって、複数体制での調査と四十八時間以内の安否確認で、事態が深刻になる前に対応ができるようになりました。保護者への子育て相談、学校・保育所・保健所との連携といった予防的とりくみも充実させています。職員の研修に力をいれ、専門職として息の長い活動を保障しています。その結果、虐待相談の件数が〇二年を境に減少するようになっています。






国際的にはまだ少ない


 今回、児童福祉司が増員されることになったとはいえ、日本の基準は国際的にみれば遅れています。


 日本の児童福祉司にあたるソーシャルワーカー一人当たりの担当人口は、イギリスが六千人、ニューヨーク市が四千人弱、カナダ・オンタリオ州は三千人弱です。


 今回の改正は世論の反映です。さらに相談体制の強化を求め、児童虐待防止の力としていきましょう。

 

 

 

 

 

2005年3月13日(日)「しんぶん赤旗」





農業・新基本計画 自給率向上へ実効ある政策を

2005-03-12 | Weblog

 

 

 

 

 

 食料・農業・農村基本計画の見直しをすすめていた政府の審議会が、九日、新基本計画(案)を答申しました。この計画は、食料・農業・農村基本法にもとづいて、十年程度を見通した政策の基本をしめすもの。五年ごとに見直すことになっています。前の計画は、基本法制定後の二〇〇〇年三月に閣議決定されたものでした。

 

 

 

 

 

危機招いた農政そのまま

 

 新基本計画は、焦点になっていた食料自給率目標について、達成の期限を二〇一〇年から一五年に先送りしてカロリーベースで45%と前計画と同じ水準にしています。そして、カロリーベースより高めに出る生産額ベースの自給率目標を併記しました。自給率目標を達成する取り組みとして、消費者には国産食料の消費拡大を、農業者には大規模経営に生産の大部分を集中する農業構造改革を強調しました。

 

 農業生産対策や農業の担い手対策では、アメリカや財界の要求する輸入自由化、市場任せをさらにすすめ、政策対象を重点化・集中化するとしています。経営安定対策の創設や株式会社の農業参入を含む法人化などを条件に、事実上、中小農家や産地の排除につながる政策の推進を鮮明にしました。これらは、新計画の中でもとくに重大な問題です。

 

 前基本計画の策定以来、BSE(牛海綿状脳症)の発生、輸入農産物からの残留農薬の検出や産地の偽装など、食をめぐる事件が続出しました。輸入野放しと価格政策の放棄による生産者価格の暴落で大規模経営を含む多くの農家と産地が打撃をうけています。主要国で最低水準の食料自給率(40%)は、目標に近づくどころか低下傾向が続き、農業従事者の高齢化や農村集落の崩壊もすすみました。

 

 その点は、答申も「食の安全にたいする信頼が大きく揺らいでいるほか、農業者の高齢化と減少による生産構造の脆弱(ぜいじゃく)化等危機的な状況が深化」していると、認めています。

 

 原因はどこにあるのでしょう。自民党農政は、農業貿易の拡大を最優先し、助成政策による増産を否定するWTO(世界貿易機関)農業協定を全面的に受け入れ、国境措置(輸入規制や安全確保)や価格政策を放棄するようにしてきました。これが問題だということは、多くの関係者が実感していることです。

 

 見直さなければならないのは、多くの生産者に大きな打撃を与えている輸入野放し、生産や価格を市場任せにした政策です。ところが、答申は従来の政策をいっそう強化することを前提にしています。これでは、自給率目標も農業の多面的機能も保障できません。

 

 

 

 

 

生産を担っているのは

 

 国民が、それぞれの立場で努力することはもちろん大事です。新計画が展開している、食料の安全性確保や地産地消の推進、農業の多面的機能を発揮させることは当然です。

 

 しかし、国政にもっとも求められているのは、適切な国境措置や生産者価格の下支えなど、国が本来果たすべき政策の確立です。

 

 ほんのわずかしかない大規模経営や法人経営だけを優遇するのでなく、現実に生産を担っている多くの農家と産地が意欲をもてるようにしてこそ、担い手の確保も生産の拡大も可能になります。

 

 農政を抜本的に転換し、農業を基幹産業にふさわしく再建し、日本の自然的・社会的な条件を本当に生かした食料・農業政策の確立をめざすことが、ますます重要になっています。

 

 

 

 

 

2005年3月12日(土)「しんぶん赤旗」

 

 

 


日韓の歴史問題 未来を開くため必要なことは

2005-03-11 | Weblog






 韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領が、歴史問題で「韓日協定(日韓条約)と被害補償問題では韓国政府にも不十分さがあった」とのべつつ、「日本政府と国民」にも「真剣な努力」をよびかけました。日本の植民地支配に抗した「3・1独立運動」(一九一九年)の記念式典でのことです。


 これにたいし、「日韓関係を阻害する発言だ」(「読売」三日付)などと批判する論調もあります。「謝罪」も「賠償」も、歴代首相の表明と一九六五年の日韓条約で「解決ずみ」であり、むし返すのは不当だというのです。このような主張に妥当性はあるでしょうか。






戦争責任どう果たすか


 歴史問題を解決する根本は、かつての天皇制政府による侵略戦争と植民地支配の誤りを明確にし、日本の戦争責任をはっきり認め、あたえた被害を誠意をもって償うことです。日本軍国主義の誤りを二度と繰り返さない立場から、歴史認識を共有し、未解決の問題を解決していかなければなりません。そうしてこそ、韓国とも日本が平和な未来をともに築く道が開けます。


 韓国では最近、日韓条約締結時の外交文書の公表など、歴史の全面的な見直しが進んでいます。その中での次のような大統領発言でした。


 「北東アジアの未来をともに開くべき運命共同体」の日韓両国は「協力して平和定着と共同繁栄の道に進まなければ、国民の安全と幸福を保障できない」のだから、「真実と誠意を持って両国民間の心の障壁を崩し、真の隣人に」なろう。「歴史問題を外交的争点にしない」考えに変わりはないが、「一方的な努力だけでは解決できない」ので、「日本政府と国民の真剣な努力が必要だ」。


 実際に、日韓条約や一連の外交交渉で歴史問題がすべて「解決ずみ」だといえる状況ではありません。


 日本政府が、朝鮮半島出身の「従軍慰安婦」問題に「政府の関与があったと認められた」(官房長官)といったのは、一九九二年七月です。しかし、被害者に政府としての賠償はせず、一九九五年に「慰安婦」のためとして「アジア女性基金」をつくっても、「政府補償が必要だ」という意見はうけいれませんでした。


 「慰安婦」や強制徴用された人々が、日本政府・企業に賠償と謝罪を求めた裁判だけで二十件を超えます。すべて、一九九〇年代以降です。


 強制連行されて犠牲になった人々の遺骨は、まだ日本各地の寺院に預けられたままになっています。


 そのうえ小泉政権からは、明白な歴史的事実を無視、わい曲した言動が後を絶ちません。中山文部科学相が「教科書から従軍慰安婦とか強制連行とかいう言葉が減ってきて本当によかった」と発言(昨年十一月)。下村文科政務官は教科書検定で近隣アジア諸国に配慮する「近隣諸国条項」まで批判しています(六日)。


 世論と運動でこうした逆流を克服することは、日本国民の課題です。






日本自身の課題として


 「韓流」ブームなど、韓国との交流は広がってきました。私たちが歴史の真実を直視し、歴史認識を共有していくことは、韓国の人々との信頼、協力関係をさらに広げ、「未来志向」の日韓関係の土台をしっかりさせていくために不可欠です。


 それは日本を、二度と戦争を起こさない、平和で民主的な国にするための努力と一体のものです。憲法の平和、民主原則を実際に生かし、国連憲章にもとづく平和秩序をこのアジアから広げていく努力を、日本の進路にすえなければなりません。






2005年3月11日(金)「しんぶん赤旗」




東京大空襲60年 耳を傾け、歴史と向き合う

2005-03-10 | Weblog






 

 サイパン、グアムといえば、若い世代には、リゾート地として知られています。成田空港から南へ約二千五百キロ、三時間半飛べば着きます。


 しかし、六十年前の様子は、まったく違っていました。一九四五年三月九日深夜から十日未明にかけ、サイパン、グアムなどの米軍基地から飛来した大型爆撃機B29約三百機が、人家の密集した東京の下町を無差別爆撃。現・江東区・墨田区・台東区を中心にした地域は、焼夷(しょうい)弾攻撃によって火炎地獄になりました。死者十万人以上、被災者百万人以上という、大変な犠牲が出ました。東京大空襲です。






一般市民を殺傷する作戦


 四四年秋から本格化した米軍の空襲は、当初、軍事基地や軍需工場などを狙っていました。しかし、東京大空襲は、一般市民を無差別に殺傷し、都市を壊滅させることを狙った作戦でした。


 主に焼夷弾を使ったのは、民家がほとんど木造であることに目をつけて、木と紙の中にマッチを落とすようにして大火災を引き起こすためでした。しかも、最初に逃げ道をふさぐように周辺部を攻撃して炎の壁をつくり、逃げ惑って集まった人々の上に焼夷弾の雨を降らせて、より多くの市民を殺傷しました。


 東京大空襲以後、全国の都市が、無差別攻撃を受けました。大都市への空襲は三月だけでも、十三日の大阪大空襲(死者約四千人)、十七日の神戸大空襲(死者約二千六百人)、十一、十九、二十四日と三度にわたる名古屋大空襲(死者合わせて約三千人)などがあります。


 もちろん、都市への攻撃はこれだけではありません。東京にたいするB29の空襲は、百回以上にのぼり、市街地の半分が焼失しました。大阪も、B29百機以上の大規模空襲だけで八回、小規模の空襲を含めれば五十回以上にもなります。


 戦争といえども、非戦闘員の一般市民を無差別に殺傷することは禁じられています。東京大空襲や広島、長崎への原爆投下などで、一般市民を無差別に虐殺したことは、許されないことです。日本軍も、中国侵略の中で重慶市への大規模無差別爆撃を行ったりしましたが、「戦争だったから仕方がない」といって済まされる問題ではありません。


 政府は、戦死者を確定する作業はしても、空襲で亡くなった一般市民の名前を確認する作業はしていません。自治体が、空襲犠牲者の名簿を作っているところもありますが、東京大空襲の犠牲者名簿は完全ではありません。






戦争のない未来へ


 悲惨な事態を、二度と引きおこさないためにも、被災者の痛切な声に真剣に耳を傾け、歴史の事実に正面から向き合いたいものです。


 東京大空襲で肉親を失ったのに、遺骨さえ見つからず、今なお深い苦しみと悲しみの中にいる人もいます。孤児になり、戦後も、餓死寸前の悲惨なくらしを余儀なくされた人もいます。つらすぎる体験だったために、語ろうにも語れないできた人たちも少なくありません。


 しかし、戦後六十年ということで、東京大空襲をはじめとする戦争の体験、戦争の悲惨さを後世に語り継ぐ活動が多彩に行われています。そこには、今のきな臭さへの警戒感が反映しているように思われます。一般市民への無差別攻撃が繰り返されているイラク戦争。憲法九条を改変して、日本を「戦争する国」に逆戻りさせる動きもあります。


 戦争のない未来に向けて、逆流を阻止していきましょう。






2005年3月10日(木)「しんぶん赤旗」





もんじゅ 無駄と危険を増殖させる愚挙

2005-03-09 | Weblog





 

 核燃料サイクル開発機構は、福井県知事の了解を受けて、高速増殖炉「もんじゅ」改造の準備工事を始めました。一九九五年十二月のナトリウム漏れ・火災事故以来、運転停止していたのを、二〇〇七年度中に再開しようというのです。無駄と危険を増殖させる愚挙です。






国民の批判を無視


 改造は、事故の原因となった温度計の交換とナトリウム漏れや蒸気発生器破損への若干の対策などに限られます。これらの事故対策だけで安全が確保されるものではありません。


 「もんじゅ」は、核燃料にプルトニウムを利用することや、冷却材にナトリウムを使うことから、既存の原発とは異なる危険性を持ちます。ナトリウムは空気や水と激しく反応するため、取り扱いが極めて難しいものです。九五年の事故では、その危険性の一端が現実になりました。


 また、プルトニウムは、ウランよりもけた違いに強い放射能毒性をもち、核兵器にも転用できる危険な物質です。プルトニウムを取り出すための再処理も、強い放射能を持つ使用済み核燃料を溶かし出すことによる大きな危険をともないます。


 それだけに、「もんじゅ」の危険性に対する国民の不安と開発への批判が大きく高まったのは当然です。「もんじゅ」再開反対署名は二十二万人にのぼりました。運転再開に向けた改造は、こうした批判をまったく無視するものです。


 なにより政府の安全審査そのものが問われています。〇三年一月の名古屋高裁金沢支部判決は、「もんじゅ」の設置許可を無効としました。ナトリウム漏れ事故、蒸気発生器破損事故、炉心崩壊事故のそれぞれについて、審査に「重大な瑕疵(かし)」があるとし、審査の「全面的なやり直し」を求めました。改造についても、「審査の瑕疵」を「是正するに足るものではない」と断じています。


 政府は、この判決を不服として上告しましたが、最高裁の審理はこれからです。そうしたなかで改造を強行し、運転再開への既成事実をつくろうというのは、許されるものではありません。


 高速増殖炉は、発電しながらウランをプルトニウムに転換し、消費した以上のプルトニウムをつくるとされています。ウラン資源の利用効率が「一〇〇倍以上」(〇三年版「原子力白書」)になる「夢の原子炉」といわれました。しかし最近の原子力委員会の資料でも、プルトニウムが二倍に増殖するだけで四十六年かかることがわかっています。


 にもかかわらず、「もんじゅ」には、これまでに八千億円以上の資金が投入されてきました。関連経費を含めれば、約一兆八千億円になります。今後は、改造費だけで百七十九億円、運転再開後の維持費に十年で約二千億円が必要です。研究開発の全体では一兆円規模となります。高速増殖炉開発を続けることは、さらなる税金の無駄遣いです。






改造・再開は断念を


 世界を見ても、日本より先行して高速増殖炉開発に取り組んだアメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどでは、ナトリウムの取り扱いを含めた技術的困難や経済性の問題から、開発をやめています。日本政府の立場は、世界の流れにも逆行しています。


 「もんじゅ」の改造と運転再開はきっぱり断念すべきです。危険な核燃料サイクル政策を根本的に見直し、安全優先のエネルギー政策へと転換することこそ必要です。






2005年3月9日(水)「しんぶん赤旗」