わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

論文クーデター=広岩近広

2008-12-02 | Weblog

 わが国は、まぎれもなく軍事費大国である。防衛庁は昨年、防衛省に格上げされた。自民党の憲法草案では自衛隊は自衛軍にすると明記されている。そうした実態から憲法を変えて軍隊を持てる国にすべきだ、との声が出るのである。

 ここで私が強調したいのは、軍隊と自衛隊は根本的に異なるということだ。軍隊について今春、作家の半藤一利さんからこう聞いた。「統帥権が独立していないと国防の徹底は図れませんから、軍隊は三権の外にあるべきだと考えたがるものです。行政、司法、立法から独立するので、軍隊の権限は原則として自由です」。戦前の日本軍がそうだった。

 しかし自衛隊はちがう。自衛隊は行政組織のなかにあるので、政府の制約を受ける。政治の指示に従わねばならない文民統制(シビリアンコントロール)下におかれる。半藤さんはこう強調された。「自衛隊を軍隊にするのは反対です。なぜなら、どの国もクーデターは軍隊が起こしているからで、自衛隊を武装クーデターを可能にする軍隊組織にしてはなりません」

 日本が先の戦争に突き進んだ原因は軍隊の暴走だった。その反省にたっての文民統制下の自衛隊である。ところが文民統制の危うさが露呈された。

 いうまでもなく田母神俊雄・前航空幕僚長の懸賞論文問題だ。これは言論の自由とは別問題で、政府見解と異なる発言をしたいのなら、立場を返上してから行うべきところを文民統制に挑戦するかのようにやってのけた。しかも、かの懸賞論文の応募総数の約40%が自衛官だった。私は「論文クーデター」の疑念がぬぐいきれない。(編集局)




毎日新聞 2008年11月30日 東京朝刊

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
田母神氏の発言 (ttt)
2008-12-02 23:11:37
私はあの論文は氏の歴史観を述べ自衛隊員の立場を国民に理解していただこうと書いたと思います。
論文クーデターなんてとても考えられません。
論文の内容には賛成しかねる所もあります。断定的に書かれていること、事実と確定されていない事項を断定して記載されている等が不満です。
政治家、マスコミが論文を封じ込めようとしていることが言論弾圧になると思います。
戦前軍人には選挙権がありません。だから政治に積極的に行動したとも言われます。
あの論文を封殺することこそ陰湿な考えが生まれる種になる。クーデターの謀議をしたのであれば即懲戒免職ですが、歴史観を述べたくらいで更迭とは。
戦争に善悪を問うのは日本だけでしょう。ドイツの民族抹殺は戦争ではありません。
返信する
tttさんへ (ブログ発信者)
2008-12-13 11:29:59
tttさん、こんにちは。コメントを下さってありがとうございます。

確かに、歴史観を述べるのは自由であるべきで、それを封殺しようとするのには違和感を覚えて当然だと思います。

でも、日本国憲法の下にある自衛隊の「長」が、憲法に反した方針を他者に教化しようとすることはまちがっています。田母神さんは、ですから更迭されて当然だと思います。

それともうひとつ、「戦争」というものに善悪を問うのではなく、戦争を引き起こした責任はぜひ問われなければならないと思います。なぜなら、戦争は、戦争を行う両陣営で、多くの国民の犠牲を生み出します。ところが日本国憲法は、政府によってもたらされる戦争によって、国民ひとりひとりの暮らしと財産が蹂躙されてはならない、と決めています。ですから、戦争を容認するような発言を行う人が、自衛隊の指令者であるのはふさわしくありません。
返信する
思うこと (ttt)
2008-12-14 16:17:28
戦争を引き起こした責任者の裁判が無かった事を問題にされて見えますが、敗戦直後に、東久邇は当時一億総懺悔と話している。又、幣原は戦争責任の裁判について、国民の間で血で血を洗うようなことはしたくないと終戦直後に話している。
仮にその様に裁判が行なはれても当時の外地でB級、C級の戦犯が処刑されており水に流す事をよしとする日本人では裁判は大問題でしょう。
そして東京裁判(極東軍事裁判)が始まりA級戦犯28名の裁判が始まりました。占領下ではどうしようもない時代です。
講和条約発効後改めて日本人による裁判を行えば良かったのでしょう。
ですが当時GHQが日本人の思想改造を完了しており戦前は暗黒時代と否定されました。
21万人が公職追放され戦前は全否定です。
追放された後に社会主義者の人たちが入りました。
だから憲法学者は憲法9条を大切にするのだと思います。今弁護士裁判官が世間の人より左の人が多いのはそのためです。

今の日本は世界の常識、いや人類の常識に逆らっていると思います。
戦争は何時の時代にも起きていました。負けた者が衰退し、勝利したものが歴史を作り繁栄していったと思います。

先日ある講演会を聞きに行き、自然は真理を教えてくれると地球物理学者が発言されました。
子供には自然に接して真理を学ぶ重要性を話されました。
永い人類の歴史も一面では真理であると話されました。
人類は争いが絶え間なく続いています。
他国の侵略に備えて軍備を持つことは常識になっています。国民ひとりひとりの暮らしと財産が蹂躙されてはならない為にも軍備を持ち備えることが重要ではないかと思います。

日本の一部の人は軍備が無く話し合いで解決をすることが出来ると言っています。
人類の歴史が真理であれば今の日本は逆の発言がなされていると思います。

歴史に逆らう事を教育では盛んに教えられています。
チベット民族のように衰退していく運命になるか、世界から賞賛の言葉があるのか歴史がどうなるのか不安です。

中国の海洋調査船が日本の領海内で9時間以上も調査をし中国の領有権が有る地域と発言されています。

マスコミもあまり取り上げずにいます。これを中国の砲艦外交と言わずなんと言えばよいのか。

田母神論文の何処に憲法違反があったか理解できません。
歴史観を述べて簡単に思想改造が出来るとは思えません。大人は簡単に考えを変える事はありません。
幹部自衛官の教育は40前後と思いますからその様な改造は考えることが出来ません。

小中高での教育で洗脳されることが思想教育と思います。
私はGHQの洗脳と日教組の反戦教育に多くの人が感化されていると思っています。



返信する
tttさん、ちょっとお時間ください (発信者)
2008-12-22 00:45:06
tttさん、詳細で広汎な知識に裏打ちされたご意見を聞かせてくださってありがとうございます。

今週中にじっくりお答えを書いてみたいと思います。不勉強な者ですので、ちょっとお時間をいただけますか。必ずお返事いたします。
返信する

コメントを投稿