政策と政局。どちらが大事かと聞かれたら、私も政策と答える。ただし、頭に入れておきたい点がある。政府・与党側が「政局より政策」と口にする時は概して政権が弱まっている時だということだ。
「政局」を辞書で引くと「政界のなりゆき」(広辞苑)などと出ているが、最近の永田町での使用例は「民主党は政局しか考えていない」といったように権力闘争といった意味合いで使われる場合が多いようだ。
だが、語弊を恐れずいえば、政治は権力闘争抜きには語れない。与党が「ここは政局を離れて……」などというのは「頼むから追いつめないで」と懇願しているに等しいのだ。
では、優先するという政策はどうか。例えば早くも迷走気味の定額給付金案は、公明党の主張に自民党が配慮したものだろう。麻生太郎首相や自民党は衆院解散の時期をめぐり、ぎくしゃくした関係を修復し、公明党の選挙支援を期待しているはずだ。これは、まさに政局的判断ではないのか。
政局と同様、「選挙目当て」という言葉も悪いイメージで語られる。でも、政党が選挙で有権者の支持を得ようとして政策を掲げるのは決しておかしな話ではない。むしろ、「選挙目当て」で出したつもりの政策が、逆に支持を失う例が多いことが問題なのである。国民が本当に何を求めているか、政党が分かっていない証拠だからだ。
経済情勢は一段と厳しくなっている。無論、野党も「何でも反対」では支持は得られない。きちんと政策論議で政権と対決し、衆院選で有権者の判断を仰ぐことだ。それなら「すべて政局絡み」とはいわれない。(論説室)
毎日新聞 2008年11月6日 東京朝刊