言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

需要供給と価格の関係

2009-07-03 | 日記
伊東光晴 『ケインズ』 ( p.180 )


 需要の増加と、物価と、生産物の数量とは一義的な関係で結び合わされている。
 たとえば有効需要が一〇㌫増加したとしよう。この場合、もしも生産数量が八㌫増加するならば物価は約二㌫の増加で止まる。また生産数量の増加が四㌫であるならば、物価は約六㌫騰貴する。

 いま需要額をD、その増加をΔD、供給数量とその価格をO、P、またそれぞれの増加をΔO、ΔPであらわすと、需要と供給は等しくなるから
   D = PO
そこで両辺の増分をとると
   ΔD ≒ PΔO + OΔP
そこでこの両辺を同じDまたはPOで割ると
   ΔD / D ≒ ΔO / O + ΔP / P
となる。つまり、需要の一〇パーセント増加は(ΔD/D=0.1)、生産数量の増加率ΔO/Oと価格の騰貴率ΔP/Pの和に等しい。

 一九三〇年代のアメリカの不況がなぜ今までより長期で深刻であったか。それは独占の力が物価の下落をくい止めようとしたのがひとつの原因であった。需要が三割下ったとき、物価の下落を一割でくい止めようとすれば生産数量は二割落ちて失業は増大する。もしも独占の力がなければ価格は二割も下り、生産数量は一割しか落ちないかもしれない。したがってそれを生産するに必要な労働量もそれほど少なくならなくてすむ。


 「需要 ( 金額 ) の増加率 ( ΔD/D ) 」 が、「供給 ( 数量 ) の増加率 ( ΔO/O ) 」 と 「価格の騰貴率 ( ΔP/P ) 」 の和になると記されています。



 これは、「価格が上昇するのは、需要の増加か、供給の減少かのいずれか、あるいはその両方がみられるとき」 であり、「価格が下落するのは、需要の減少か、供給の拡大か、あるいはその両方がみられるとき」 である、と述べているにすぎないのですが、数式として、関係式が得られていれば、以後、考察がしやすくなると思います。


 なお、引用部分末尾の 「もしも独占の力がなければ価格は二割も下り、生産数量は一割しか落ちないかもしれない。したがってそれを生産するに必要な労働量もそれほど少なくならなくてすむ」 は重要かと思います。これは、

  「独占がなくなれば ( 弱まれば ) 、仕事は増える」

ことを意味しているからです。