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白堊スポーツ - since 2004.09.18

母校・盛岡一高や岩手のスポーツ情報、読書感想、盛岡風景などをお伝えします。

一刀斎夢録(上)ー浅田次郎

2018年02月16日 | 読書

評価5
元新選組三番隊隊長斎藤一は大正の世まで生き延びて、警視庁奉職後、東京本郷で女高師の下宿屋を営んでいた。その斎藤が近衛師団中尉梶原に新選組の辿った運命を夜ごとに語る。今や年老いた斎藤一の口から語られる左利きであるがゆえの剣の極意、幕末の動乱、新選組隊士の様々な人間模様が心に浸みる。

浅田次郎の「壬生義士伝」「輪違屋糸里」に続く新選組三部作。前2作を読んだからこそ理解が深まる部分が多く、まとめにはおあつらえ向きの1冊。壬生義士伝の吉村貫一郎も登場。会津藩が一時期転封していた斗南藩(今の青森県むつ市)の藩庁があったのが円通寺で、実は数年前に何も知らずにこの寺を訪れていたことを知りビックリ!

なお、「一刀斎」は斎藤一の逆さ読み。

ピョンチャン五輪が始まったわけですが・・・

2018年02月11日 | その他のスポーツ
今さらだけど、日本のマスコミは「メダル!メダル!」と騒ぎ過ぎ。

五輪で1勝もしていないスマイルジャパン ですら実況で「メダルを視野に」。そりゃ無理でしょうに。なんとなく今回の五輪は鉄板のような気がします。里谷多英 みたいにめちゃくちゃ大舞台に強い選手がいれば別ですが・・・

八月十五日の開戦ー池上司

2018年02月10日 | 読書

評価4
昭和20年8月15日、日本が太平洋戦争の無条件降伏を受け入れたその日、ソ連が北千島最北端の占守島への侵攻を開始した。同時に樺太でも戦闘は継続していた。ソ連の狙いは北海道占領を視野に入れた日本の分割であった。北海道に拠点を置く第五方面軍の檜山司令官は占守島の戦いで時間を稼ぐとともに、米国を介しての戦闘終結に動き出す。
浅田次郎の「終わらざる夏」に続く北千島攻防戦にまつわる物語。フィクションとはいうものの、サイドストーリーを排したストレートな軍記物で戦闘の様子が詳しく記されている。砲弾に粉々に砕ける兵士の描写が惨たらしい。捨て石覚悟で祖国を守った皆さんに合掌。次はシベリア抑留について読んでみたいと思います。
【追伸】
「終わらざる夏」では満州から北千島へ転戦した戦車はガソリンエンジンとなっていましたが、この本ではディーゼルエンジンでした。いつか調べてみます。

かわいい自分には旅をさせよー浅田次郎

2018年02月07日 | 読書

評価2
浅田次郎さんのエッセイ初読み。
帯にあるような「バカで・・・」とか「笑えて・・・」というよりも「深く感じる」がピッタリくるエッセイ。読み慣れた奥田英朗とは大違いで、なかなか味わい深い一冊。これを読んで初めて知ったのだが、浅田さんの娘さんは東日本大震災当時、盛岡の病院に勤務していたとのこと。「だから盛岡のこともけっこう詳しいのか~」と思った次第。以下、盛岡の印象を浅田さんはこう語っています。

「折りあって盛岡の町を訪れたとき、吉村貫一郎という無名の隊士を、私ひとりの英雄にしようと決めた。それくらい、盛岡は美しい町であった。市内のどこからでも間近に望まれる岩手山は寡黙な父であり、北上の清らかな流れは母であり、吹き過ぎる風は友であった。」

【追伸】
どうやら、三島由紀夫にかなり酔心しておられるようです。

七つの会議ー池井戸潤

2018年02月04日 | 読書

評価3
東京建電という中堅メーカーが収めている製品の部品(ネジ)強度をねつ造。しかも、その発覚を恐れてリコール隠し、ヤミ改修へ突き進む。経営トップはその責任を部下へと押し付け保身に走る。定番の池井戸潤作品ながらアクの強すぎる人物が出てこなくて勧善懲悪度が薄い。しかし、トップ自ら悪いことを承知でビジネスやるなんて話しにならんっ!池井戸作品も飽きて来たし、あと1作品で終わりにしようと思います。

ナオミとカナコー奥田英朗

2018年02月03日 | 読書

評価4
全558頁一気読み!
大学以来の友人の直美と加奈子は29歳。直美は大手百貨店のOL、加奈子は銀行員の夫を持つ専業主婦。加奈子は夫・達郎からひどい暴力を受けていて、その事実を親友の直美が知ることとなる。加奈子の先行きを案ずる直美は二人で達郎を殺害する綿密な計画を立てついに実行。しかし、完全犯罪と思われた犯行にほころびが見え始めた時に達郎の妹という強敵が現れ、二人は窮地に追い込まれる。
前篇のナオミの章では犯行までのプランが着実に練り上げられ、後編のカナコの章では一気に土壇場までもつれ込む息もつかせぬ展開。本当に最後の最後までハラハラドキドキ。特に主義主張はないけれど「小説は面白くなくちゃ」という典型的な一冊。ストーリーテラー奥田英朗の面目躍如!

盛岡の街角で

2018年02月03日 | 盛岡風景
大通3丁目の信号待ち。
交差点の向こうで大学生らしきカップルの男の子が何か囁いた。信号が青に変わって、女の子は真っ直ぐこちらへ、男の子は左へ進む。女の子の目には涙・・・振り返ると何度も立ち止まって肩が震えている。嗚咽しているのだろう。最初は素知らぬふりの男の子だったが、歩みを緩めて幾度となく振り返っている。気が気でなくて「行ってあげて」と小さく声にした。でも、男の子は意を決したように行ってしまった。これから二人にどんな人生があるんだろう?「頑張って」と心の中で呟いた。

終わらざる夏(下)-浅田次郎

2018年02月02日 | 読書

評価2
日本がポツダム宣言を受諾した後の昭和20年8月18日未明、千島列島の先端の島・占守島に日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連軍が攻め込んできた。これは連合国との間で正式な降伏文書の調印が行われる前に領土的野心から既成事実を作っておこうとしたとしか考えられない軍事行動である。最新の装備と2万3千の精鋭将兵で迎え撃った日本軍は優位に戦いを進めるも、敗戦国であるため勝利を上げることは許されず8月21日に降伏したのだった。
こうした中、主人公の片岡直哉、富永熊男を始めとする面々が戦闘の中で死んで行く。片岡たちの死はソ連兵の語りの中でたんたんと描かれているだけである。正直言って、片岡、鬼熊の言葉で人生の最期を語って欲しかった。ソ連兵を登場させる必要があったのだろうか?そして、巻末の片岡直哉訳なるヘンリー・ミラー「セクサス」は必要だったんだろうか?私はこの5頁は読み飛ばした。
私が知らなかった千島の終わらざる夏の出来事を知ったことは収穫だったが、作品としては尻切れトンボという感想。この史実を掘り下げるために池上司の「八月十五日の開戦」も読んでみたい。