宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

ホーキング放射とブラックホール・46-1・ホーキング温度はどの場所で定義されているのか?

2021-02-27 13:51:54 | 日記

状況をまとめておこう。ポイントは「ホーキング温度はどの場所で定義されているのか?」という事である。

そうして話の筋道は「ホーキング温度からBHのエントロピーが算出されている」という事になっているが、それは正しいのか?という所にある。

ホーキング温度はホーキング放射が起こっている場所の温度である。そうしてその場所はBHのホライズン上ではなく、いくらホライズンに近いとはいえBHの外側の領域なのである。

そうであればホーキング温度というのはBHの温度ではなくて、BHを取り巻いている真空の温度なのである。そうして又ホーキング放射もその場所からでてくるのであるから、この主張は妥当なものである。

もともとホーキング温度そのものがBHの存在によってその場所から飛び出してくる粒子のエネルギー分布を数えたところから始まっている。

そこから出てくる粒子のエネルギー分布が黒体輻射の放射エネルギー分布ー>プランク分布に等しい形をしている、というところから、ホーキング放射を記述している式の、プランク分布の式で温度に相当している部分を「ホーキング温度」としたのである。

ホーキング温度Th=T =κ/2π  :κはブラックホールの表面重力:πは円周率

κ=1/4M であるので,T =1/(8πM) となる.MはBHの質量

今まで1として扱ってきたプランク定数 (h~) と光速 c,重力定数 Gを復活させると
T =(h~)c^3/(8πkBMG)
となる.(kB はボルツマン定数):( (h~)はプランク定数hを2πで割ったもの)

詳細は http://astro-wakate.sakura.ne.jp/ss2013/web/syuroku/grcosmo_24a.pdf

しかし人々はThを「BHの温度だ」としてあたかもBHが温度を持つ黒体であるかのように理解した。

そうして黒体の熱力学からの類推でBHのエントロピーSを

 S{BH}=A*kB/(4*Lp^2) :Aは事象の地平線の表面積であり、kBボルツマン定数、Lpはプランク長である、とした。

その式はまるでBHのホライズンがエントロピーSを持つかのような格好をしている。

詳細は ブラックホールの熱力学 参照。

そうしてそこからこんな話も展開される事になった。

ブラックホール防火壁仮説I:プロローグ

ブラックホール防火壁仮説Ⅱ:量子情報理論的なブラックホールの年齢 (ペイジ時間の考え方)

あるいは 超弦理論はブラックホールの謎を解けるか?  と言うような『「エントロピー」は微視的状態の縮退度として導出できるはずである。最近、D-brane と呼ばれる非摂動的物体(ソリトン)を使うことにより、弦理論でこのエントロピーの微視的な解釈に成功した。エントロピーを数係数まで正しく微視的に導出できたのは、史上初めてである。』という話にもつながる。(注1)

より具体的な数式運用としては、たとえば 弦理論から見たホーキング 輻射 のようなものもある。

だがしかし現状は『1995年にアンドリュー・ストロミンジャー (Andrew Strominger) とカムラン・ヴァッファ (Cumrun Vafa) は、Dブレーンを基にした方法を使い、弦理論において超対称性を持つ臨界ブラックホールのベッケンシュタイン・ホーキング・エントロピーを計算した[8]ことによってこの状況は変化した。その後、他の臨界ブラックホールや近臨界ブラックホール(英語版) (near-extremal black hole) の多くのクラスに対して同様の計算が行われ、結果はいつもベッケンシュタイン=ホーキングの公式に一致した。しかし、臨界ブラックホールからは一番遠いと思われるシュバルツシルドブラックホール (Schwarzschild black hole) に対しては、そのマクロステートとミクロステートの関係について、弦理論の観点からの評価が期待されている。様々な研究が進行中であるが、解明はされていない。』のである。

これはつまり『いわゆる「ブラックホールノーヘア定理」[7] は、ブラックホールが唯一のマイクロステートしか持っていないことを示唆しているように思える。』ということであり「BHのエントロピーはゼロである」と主張する「ブラックホールノーヘア定理」と「BHがエントロピーを持つ」という主張は真っ向からぶつかっているのである。

以上の引用部分の詳細は ブラックホールの熱力学 を参照。

さてそれで議論は最初に戻るのであるが、BHを黒体とみなし、その表面であるホライズンの温度をTh(ホーキング温度)とし、従ってホライズンからホーキング放射:BHによって生成された素粒子が黒体輻射のエネルギー分布をもって飛び出してくる、という理解の仕方が正当なものであるという立場から出てくるものである。

しかしながら実状は「ホーキング放射はホライズンの少し上の、BHには属していない、通常の真空から放射される」のであって、その場所の温度を示してホーキング温度と呼ぶのであり、そうであればホライズンのホーキング温度はゼロなのである。

それゆえにまたホライズンのエントロピーはゼロであって、従ってBHのエントロピーはゼロという事になり「ブラックホールノーヘア定理」は厳密に成立している、とそういう事になります。

注1:上記論文の中で興味深い論文に言及がある。『・・・この点で最近興味深い研究がなされている [21]。Strominger は超対称性にも弦理論にもよらずに、量子重力理論が存在するという仮定だけを使って、ブラックホール・エントロピーを係数まで含めて正しく導出した。この場合調べられたブラックホールは、宇宙項のある三次元時空でのブラックホールである。ブラックホール・エントロピーの導出は、いかなる量子重力理論も満たすべき条件だからこそ、このようなことが可能なのであろう。』ーー>その48に部分訳掲載

論文はこちら Black Hole Entropy from Near–Horizon Microstates
Andrew Strominger 1998/1/22

追伸:関連して「ホーキング放射はどこから発生しますか?」という話を・その49で行います。

追伸その2:ブラックホール物理と熱力学 エントロピーに関連した参考文献です。

・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

https://archive.fo/18HqX  https://archive.fo/gBBOa

https://archive.fo/A3CfB

 

 

 

 

 

コメント