marcoの手帖

永遠の命への脱出と前進〔与えられた人生の宿題〕

世界のベストセラーを読む(649回) "20年4月9日今日は洗足木曜日! カミュ小説「ペスト」から

2020-04-09 09:29:34 | 日記

◆長くなりそうなので647回に記載の退任牧師からの講演資料の紹介は来週以降と致します。今回、採用も多く文字も小さめ・・・。 

コロナが騒がれる以前から僕がブログで紹介してきたカミュの「ペスト」について、今朝NHKニュースで140万部も売れていますと。小説はペスト発生によりロックダウン(都市閉鎖)が発生した彼の故郷アルジェリアの一都市が舞台だったから。この小説の後半に医師リューと「手帳」記者タルーの会話がでてくる。そのタルーの語る会話の一部に最もカミュの不条理の哲学と言われる彼の思いが語られているし、僕がいつも思うカトリックでなければ、彼の語る内容は、それがまさにプロテスタントで使徒パウロの思いにも近いものだったろうと思ったりしたものだ。

◆「神」という言葉の概念、その方を理解してしまっているというゴミのような人の先概念がいかに不自由を自分に課しているかも知られるだろう。パウロは、キリストの霊に遮られ、西へ向かった。人の言葉である哲学の国、当時のマケドニアへ、そしてローマ法という人の世界を律する当時、世界の道はローマへ続くと言われたその国に導かれそこで殉教した。これがいかに大きな出来事となったか。西洋哲学史などを学びは、その根源である一人のあの十字架にかかった男の解明からの 人間の言葉、その理解、その歴史、その人と人の世界のありようの解明の歴史でもあったと言えるだろう。それは、まだ続いているし、書かれたことがどう解釈しようが現に世界におこりつつあるように思われる。(※今、僕は東へ向かった神を信じていた集団が日本に来ていたことに関心を寄せている)

◆生きていると言われたあのイエスという男は、キリスト歴’20年の今晩は、弟子たちの足を洗ったとされる。明日が十字架にかかった金曜日となる。イエスは言われた「こんなに共にいたのに分からないのか。私を見たのは父を見たのである。私の姿は見えなくなるが、聖霊を送ろう、それがあなた方にすべてを教えるであろう」と。*********以下、新潮文庫 カミュの「ペスト」から記者タルーの医師リューへの語り

「ーーーーただ、僕はこういうことだけを知っているーーーー今後はもうペスト患者にならないように、なすべきことをなさねばならないのだ。それだけがただ一つ、心の平和を、あるいはそれが得られなければ恥ずかしいから死を、期待させてくれるものなのだ。これこそ人々をいたわることができるもの、彼らを救えないまでも、ともかくできるだけ危害を加えないようにして、時には多少いいことさえしてやれるものなのだ。そうして、そういう理由で、僕は、直接にしろ間接にしろ、いい理由からにしろ悪い理由からにしろ、人を死なせたり、死なせることを正当化したりする、いっさいのものを拒否しようと決心したのだ。・・・同じ理由でまた、この疫病からも僕はなんにもあらためて知るところはないし、あるとすれば、君たちのそばで、そいつと戦わねばならないということだけだ。僕は確実な知識によって知っているんだが(そうなんだ、リュー、僕は人生についてすべて知りつくしている、それは君の目にも明らかだろう)、誰でもめいめい自分のうちにペストを持っているんだ。なぜかと言えば、誰一人、まったくこの世に誰一人、その病毒を免れているものはないからだ。そうして、ひっきりなしに自分に警戒していなければ、ちょっとうっかりした瞬間に、他のものの顔に息を吹きかけて、病毒をくっつけてしまうようなことになる。自然なものというのは病菌なのだ。そのほかのものーーー健康とか無傷とか、なんなら正常と言ってもいいが、そういうものは意志の結果で、しかもその意志は決してゆるめてはならないのだ。りっぱな人間、つまりほとんど誰にも病毒を感染させない人間とは、できるだけ気をゆるめない人間のことだ。しかも、その為には、それこそよっぽどの意志と緊張をもって、決して気をゆるめないようにしなければならんのだ。実際、リューずいぶん疲れることだよ・・・

・・・僕は、あらゆる場合に犠牲者のが側に立つことに決めたのだ。彼らの中にいれば、僕はともかく捜し求めることはできるわけだーーーどうすれば第三の範疇に、つまり心の平和に到達できるかということをね。」

リューは、そして心の平和に到達するためにとるべき道について、タルーに何かはっきりした考えがあるか、と尋ねた。

「あるね。共感ということだ」・・・「結局」と、淡々たる調子で、タルーは言った。「僕が心をひかれるのは、どうすれば聖者になれるかという問題だ」

「だって君は、神を信じてないんだろう」とリュー。

「だからさ、人は神によらずして聖者になりうるかーーーこれが、こんにち僕の知っている唯一の具体的な問題だ」*****

◆関連 2月2日の休息、518、628、636、637、649回・・・一日も早い終息を祈ります。  Ω