Sankei Web%u3000%u7523%u7D4C%u671D%u520A%u3000%u91CF%u7684%u7DE9%u548C%u89E3%u9664%u3000%u53CD%u5FDC%u3055%u307E%u3056%u307E%u3000%u7523%u696D%u754C%u3001%u9AD8%u8A55%u4FA1%u3068%u8B66%u6212%u5FC3(03/10 05:00)ー産経新聞記事
新聞、TVが日銀の量的緩和の解除について報道している。量的緩和とは何なのか?其れを解除すれば、どんなことが起こるのか?専門的な問題でありすぎて難しく、さっぱり分からないというのが正直なところである。日本経済ばかりでなく我々の身近の生活に大きく影響する問題であるようである。この機会に勉強して、自分なりに理解を深めたいとあれこれ読んだり、聞いたりしたが、未だしっくりしないところだが、今のところ、理解したつもりの内容をしたためてみた。
1985年のプラザ合意で円高が進行し、円高不況が起こり、その対応策として、金利を下げて、流動性を高めた結果、バブルが起こった。危機的なバブルに陥ったために、其れを退治するために金利引き締めを行ったが、治療が遅すぎたためか
大量に投与した薬が利きすぎた為か、平成大不況が起こり、デフレスパイラルに陥り、その対応策
として、ゼロ金利政策を続けた。その結果景気が回復したかに見えたので、5年ほど前速水前日銀総裁がゼロ金利政策をやめたが、またもや、景気が中折れして株価が下がり世間から批難を浴びた。そこで、日銀は今更ゼロ金利への復帰すすのもするのもいかがなものかと、対策として日銀の当座預金勘定に高めの目標値を設定し、銀行の手元資金量を増やした。その後、5年間にも亘り日銀はその目標値を当初の5兆円から31兆円まで増やし続け、市場に資金をジャブジャブと流した。このような量的緩和策は、世界的にも異例のものであるといわれてきた。しかし、それにより経済は徐々に復活し、やっと物価も多小なりとも上がりだし、株価も明るさが出始め、一部の土地も上がりだした。過去の鉄を踏まないように、大病になる前に予防的に、金利調整で経済調整が出来るような環境を整えておきたいとの趣旨で、当座預金勘定を31兆円から通常の6兆円に減らすことを決定した。これが量的緩和の解除というらしい。日銀としては大きな舵取りをするわけで、9人委員からなる日銀政策委員会が慎重に議論を重ねた決定である。
与党や政府関係者は、量的緩和政策の解除にこれまで頑なに抵抗していましたが、景気の回復してきた状況の中で、流れが変わってきた。与党および政府の首脳陣も大企業の経営者もおおむね賛成している。
そこで、私の素人的な疑問だが量的緩和政策が本当に景気回復に役立ったのであろうか。日銀が銀行から国債や手形を買い取り、その金が当座預金として活用されないまま寝ているわけで、景気に影響したとは思えない。銀行があまった資金を融資しようにも、国債以外に運用できない状況で、実際には市場には資金需要がない。銀行が貸したい一流企業は潤沢なる資金があり、資金を求める中小企業には、信用限度から貸せないのが実情である。景気がよくなったのは、リストラで企業体質が強くなり輸出が伸びたからで、資金が増えたからではないないのではないか。
ところで、量的緩和政策が解除されると、家計にはどのような影響があるでしょうか。
日銀の福井総裁は、量的緩和政策の解除とはいっても、直ちに金利を引上げることを意味するわけではなく、当面はゼロ金利を維持するという趣旨の発言をしました。そうなると、量的緩和政策を解除しても金利は上がらないというシナリオも想
定されますが、金融市場では、既に量的緩和政策解除を織り込んで金利が上昇し始めています。すでに10年もの国債の流通利回りも上昇しています。日銀の総裁が金利が上がるとは限らないといってのに、市場では金利が上がりつつある。実際にはどうなんであろう。
いずれにしても、金利が上昇し始めると家計部門になんらかの影響があるのは明らかなのですが、其れはプラス効果かマイナス効果か、どちらでしょうか?
よく、家計部門が保有する金融資産は1400兆円程度と言われます。この数字は、ある意味で常識のようになっていると思いますが、問題は、そのうちのどの程度が金利を生む預金や債券であり、また住宅ローンなどの借入はどの程度あるかということです。
日銀のホームページの「資金循環の統計の解説」によれば、次のようになっています。
2005年9月末現在
<家計の金融資産 (自営業者を含む)>
・ 預金 731兆円
・ 証券 228兆円
・ 保険・年金準備金 387兆円
・ その他 108兆円
合計 1454兆円
<家計の負債 (自営業者を含む)>
・ 借入 323兆円
・ その他 57兆円
合計 380兆円
家計部門の金融資産の規模は1454兆円であるのに対し、負債
の規模は380兆円しかありません。ということは差し引き1074兆円の純資産(金融資産に限る)を保有しているということであり、借入者としての性格より貸付者としての性格が勝るということです。即ち、金利が上昇すれば、それによって利子収入が増大すると考えられます。
こうして考えると、家計部門は圧倒的に金利の上昇によって家計が潤う効果の方が大きいことが分かります。
そうであるとすれば、日銀や政府関係者は、何故、金利の引上げに二の足を踏んできたのでしょうか。
それは、金利の引上げによって家計部門の所得が増大することは確かですが、それによる消費の増大効果と、金利引上げによって企業部門の設備投資や家計部門の住宅投資が抑制される効果を比べた場合、これまでは後者の方の影響が大きいのではないかと考えられていたからだと思います。
しかし、景気の回復が着実になり、企業の投資マインドが旺盛になると、金利が多少上がった程度では、投資意欲が削がれることはあまり考えられません。また、家計部門の住宅投資にしても、金利の先高感から却って拡大することも考えられます。
そのような効果を考えると、デフレから完全に脱却したとはいえないからという理屈で量的緩和政策の解除には慎重であるべきだという論理展開には、それほどの説得力は感じられず、むしろ、消費を拡大させ、デフレ脱却を確実なものにするためにも多少の金利引上げは適当であると考える方が筋が通っているとも考えられる。
さらに、金利を多少なりとも引き上げ、金利メカニズムが機能するような環境を整しておくことが、いずれ発生するかもしれないインフレに対する準備となり、結果的にインフレを回避することによって息の長い景気回復を実現する土壌になるとも考えられる。確かに、Greem Spanは金利調整で長く米国経済を安定的に発展させた実績がある。
以上はにわか勉強で得た知識と悪い我が頭脳をくっしてのの論理であるが、量的緩和の解除の意味合いについて未だにしっくりしないものがある。与党政治家や大企業の経営者はおおむね賛成だという。しかし、金利が上がれば苦しめられる借金の多い中小企業経営者やローンを抱える一般庶民や、デフレのお陰で助かっている低所得者や年金生活者の声は、全く報道に反映されていない。
何はともあれ弱い立場の視点から緩和解除問題を、分かりやすく解説している専門家もいないし、新聞もない。
日銀政策委員会のメンバーは下記の通り、東大出身者に偏っているのには驚かされる。
日銀政策委員会のメンバー
福井俊彦(第29代総裁)
S.10年生、大阪府立大手前高校卒、東大卒、日銀プロパー。イラク戦争が勃発した2003年3月に総裁就任。大阪出身だけに阪神タイガースファン。
武藤敏郎(副総裁)
S.18年生、東大卒、大蔵省出身。かつて大蔵省の過剰接待問題で降格の憂き目に遭うものの見事復活。
岩田一政(副総裁)
S.21年生、東大卒、経済企画庁出身。
須田美矢子(審議委員)
S.23年生、東大卒、専修大や学習院大で経済学教授。現メンバーの中で最古参。2001年4月に審議委員就任しており、ちょうど今月で任期満了だが再任される予定。
中原眞(審議委員)
S.12年生、東大卒、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)出身。趣味は映画、散歩。
春英彦(審議委員)
S.12年生、東大卒、東京電力出身
福間年勝(審議委員)
S.12年生、広島大学卒、三井物産出身。
水野温(審議委員)
S.34年生、早稲田大学卒、野村證券やドイチェ証券やクレディスイスファーストボストン証券などで、債券(金利)市場参加者としてのキャリアがある。
西村清彦(審議委員)
S.28年生、東大卒、東大で経済学教授など。量的緩和策を“モルヒネ(劇薬)”にたとえる。ネット上でフォトギャラリーを持つなどユニークな一面も。