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福井日銀総裁の進退問題

2006-06-21 14:01:36 | 日銀
日経プロの視点の引用文

太田 康夫 編集委員

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福井総裁に2枚目のイエローカード・信認低下避けられず(6/16)

 国民の目がワールドカップ・サッカーにくぎ付けになっているさなか、日銀の福井俊彦総裁が総裁就任後も、インサイダー取引事件で逮捕された村上世彰容疑者の「村上ファンド」への資金拠出を続けていたことが明らかになった。民間時代に取得した株式も持ち続けている。同氏にとっては副総裁時代に責任を問われた接待汚職事件に次ぐ2枚目のイエローカード(警告)。与党は進退問題につながらないとしているが、民主党などは辞任を求めている。
 福井氏が村上ファンドに1000万円を拠出したのは1999年。富士通総研理事長という私人の立場で、拠出自体に問題はない。問われているのは総裁就任時に解約しなかった点だ。


【就任時の仲間意識】

 就任記者会見で福井氏は次のように述べている。「5年前、日銀の不祥事の責任をとって、退任した。その責任の重さを今も引き続き感じている。首相からは、『その反省を踏まえてしっかり仕事をして欲しい』という答えだった。そのお言葉をしっかり胸に刻んで努力していきたい」

 ところが、同氏は総裁就任時の拠出継続について「私だけが抜けるのが適当かどうかという仲間内の意識もあった」と13日の参院財政金融委員会で述べている。高い中立性が求められる立場でありながら、約3年のあいだ富士通総研の仲間内意識の証しが残った。


【説得力欠く改革激励】

 拠出を続けていたことについて、日銀は総裁がファンドから得た所得をコンプライアンス部署に届けていたとしている。『日本銀行員の心得』の8条「株券等の取得または譲渡および所得等に関し、報告しなければならない」の違反に当たらないとの解釈だ。

 これについては届け出内容がポイントだ。村上ファンドから得た所得と届けていて、コンプライアンス部署は3年間見逃し続けたのか。それとも、特定の名称は伏せてファンドから得た所得額だけを届け出ていたのか。後者の場合だと厳格なチェックは望みようもない。

 また、『日本銀行員の心得』7条には「世間から些(いささ)かなりとも疑念を抱かれることが予想される場合には、そうした個人的利殖行為は慎まなければならない」とある。拠出継続はその精神に反している可能性がある。

 福井氏が村上ファンドに資金を拠出したのは、日本のコーポレートガバナンス改革を激励するためだったとしている。その後、戻った日銀で総裁の好ましくない拠出継続を防ぐガバナンスは働かなかった。拠出についてだけ「コーポレートガバナンス改革の激励」と言われても説得力に欠ける。


【量的緩和解除前の解約】

 福井氏は今年2月、村上ファンドの解約を申し入れている。拠出、保有に問題がないと考えるのなら、任期満了まで持ち続けるべきだろう。

 解約の理由について15日の参院予算委員会で「村上氏の行動が当初の志に沿っているか確信が持てなくなった」ことをあげた。とはいえ、解約も投資行為であり、任期の途中で投資判断を下した事実は重い。

 福井氏はファンドの解約と金融政策を結びつけて考えていなかったのかもしれない。しかし、2月は量的緩和の解除の前で、総裁は解除に前向きの発言をしていた。政策変更のグリップを握りながら、ファンド解約を申し入れるのは軽率だ。


【株式保有の不透明さ】

 福井氏は15日の参院予算委で、民間時代に社外重役を務めていた会社の株式を就任後も保有し続けていることも明らかにした。

 日銀は2002年10月から、大手銀行などが保有する株式を買い上げ始めた。福井総裁は就任早々、この買い入れ上限を2兆円から3兆円に引き上げることを財務相、金融庁長官に申請し、認可を得ている。

 買い入れ対象は格付けがBBB格以上の上場企業。総裁は保有銘柄を公表していないので、買い入れ対象に総裁保有株が含まれていたかどうかは分からない。含まれていれば上限引き上げは、総裁が保有する株式の株価をあげる材料のひとつになりうる。

 日銀は株式買い入れを金融政策には当たらないと位置づけている。このため、通常の金融政策の決定とは異なり、決定に至った議事要旨は公表していない。決定にあたってほかの審議委員が総裁保有株の件を知っていたかどうかも不透明だ。


【進退問題の視点】

 総裁の進退は中央銀行の信用が保てるかどうかを基準に考えるべきだ。

 福井氏を擁護したい人は「立派な仕事をしてきた人が急に代われば、混乱する」と指摘する。ただ、立派な仕事はファンドへの拠出などするはずはないとの信認があったからできたわけで、その前提が崩れて立派な仕事が続けられるかどうか。

 むしろ信認が揺らいでいるのに続投すれば、経済政策そのものへの不信感が高まり中長期的にはより大きな影響が出かねない。とりわけ市場の自己規律が維持できるかどうかが心配だ。規律の必要性を訴えるべき立場の人の規律が問われると、規律は根付くはずもなく金融資本市場の質は劣化する恐れがある。

 実際に信認が維持できるかどうかは、村上ファンドの実態にかかっている。インサイダー取引はよくないが、「知って買ったわけではない。でも聞いちゃっている」程度の話なら辞任を迫るのは酷だという議論が経済界にはある。

 ただ、東京地検特捜部が村上ファンドの事務所などを家宅捜索し、ファンドの出資者やそのお金の投資先を洗い出している。常識に照らして悪質な内容が出てくれば、結果的とはいえ資金拠出でファンドを支援した責任が問われ、残りの任期の信認の維持は難しくなるだろう。

 サッカーの場合、同じ試合でイエローカードを2枚受けるとレッドカードとなり即刻退場を命じられる。ワールドカップではイエローカードが2枚累積すると次の試合は出られない。ルールが明確なところが、サッカーが国際的に好まれる大きな理由のひとつだ。日本の金融も見習うべき点は多い。


量的緩和の効果についての検証

2006-05-04 07:38:08 | 日銀
コラム:Biz-Plus
 去る3月9日、日銀は5年間に及ぶ量的緩和策の「解除」に踏み切った。量的緩和策については福井俊彦総裁自ら「異例な措置」といっているが、実体は「異例(unusual)」というより「異常(extraordinary)」な措置といってよい。世界的にも前代未聞であることが「異常」だという意味ではない。平成デフレは世界的に戦後類を見ないデフレ現象だったのだから、前代未聞の金融政策が採られたこと自体は誤りではない。しかし、量的緩和策のデフレへの効果が皆無とはいえないまでも明確でないとすれば、やはり「異常」な政策といわねばならない。

「異常」な量的緩和策を総括する

 「解除」後の現在、日銀は「ゼロ金利政策」を続行しているが、この政策がいつまで続くか、効果はどの程度見込まれるのかといった今後の金融運営の基本を考えるにあたって、ここで過去5年間の量的緩和策の効果を検証しておく必要がある。

 前代未聞の量的緩和策の狙いは何だったか。日銀が準ゼロ金利政策に踏み切ったのは、公定歩合を1%から0.5%に引き下げ、相前後して誘導水準を公定歩合以下にした1995年9月のことだ。だが、その後もデフレ圧力が減退しないため、日銀は99年2月に翌日物の市場金利(コールレート)の誘導水準をゼロ近傍にするとの「真正ゼロ金利政策」に踏み切った。金利水準はゼロ以上の世界だから、当局としては最後のダメ押しの政策である。

「ヘリコプターマネー論」を具体化

 しかし、その後も日本経済にはデフレ圧力が執拗(しつよう)に居座り、内外からゼロ金利政策を超える、さらなる金融政策を要求する声が高まった。その理論的唱導者が当時プリンストン大学教授だったB・バーナンキFRB議長だ。彼の主張は一言でいえば「ヘリコプターマネー論」である。このヘリコプターマネー論の核心とは、物価水準がゼロ以下にとどまる状況では中央銀行は目標とすべき物価水準を掲げ、それが実現するまで通貨をあたかもヘリコプターから無制限にばらまくがごとく供給せよ、といった歴史的に全く未知な「異常措置」の採用だ。

 むろん、「ヘリコプター日銀号」が空からやみくもに日銀券をばらまくなどありえない。だから、現実的かつ具体的には二つの手段が考えられる。一つは、市中銀行への大量の資金供給を通じて民間部門に通貨供給する銀行チャンネル。もう一つは、日銀引き受けの形で政府から直接、国債を大量購入し、民間に通貨供給する財政チャンネルだ。後者の日銀引き受けによる国債大量発行は作家の堺屋太一氏や小渕恵三元首相らが景気対策として主張してきたが、第二次世界大戦における戦時国債の乱発が戦後のハイパーインフレを招いた反省や財政節度の観点から少数派。だから、現実的には前者しか方策はない。

 2001年3月に、日銀はゼロ金利政策のデフレ脱却効果がほとんどないことにかんがみ、ついに前者の量的緩和策に踏み切った。大量の日銀通貨を市中銀行が日銀に持つ日銀当座預金に積み上げるというものだ。市中銀行は準備預金として法的に6兆円の日銀当座預金を持たねばならないから、日銀は市中銀行にこれを上回る日銀通貨を供給することにした。金額は30~35兆円だ

量的緩和の解除ー金融機能の復権

2006-04-03 09:44:27 | 日銀
asahicom:日銀復権への1086日 量的緩和解除した総裁の長い日々-AERA発マネー-ビジネス

バブル経済の崩壊、引き続く経済停滞から、経済を取り巻く社会構造が急激に変化し、いよいよ日本再生の動きが出始めている。金利調整機能が経済の舵取りに効果を発揮すれば、ひいては日本の将来の経済、産業、社会の健全な成長に及ぼす影響は大きく、今回の決定は非常に重要であることを認識すべきである。