マグロチャンピオンの料理道場

人気バラエティー番組、TVチャンピオンの「マグロ料理人選手権」優勝者が、本格料理を分かりやすく教えるブログ。

海外の寿司について思うこと

2008年03月11日 | 寿司・お造り
jjkenさんからのコメントもあり、今日は海外の寿司について思うことを書こう。

筆者は今から25年程前に、南米のべネズエラという国の首都カラカスの日本料理店で働いていたのだが、当時はまだアメリカでもそれほど寿司が認知されていない状況で、ましてベネズエラ人が寿司を食べるなど考えられないような状況だった。

お店に来て寿司を食べるお客さんは、ほとんどが日本人の駐在員か、または日本に行って寿司を食べたことのある外国人のエグゼクティブだった。

若いアメリカ人の当時ヤッピーとか呼ばれていた連中が、昼間からビールを飲んで寿司を注文するのだが、日本では商談でも昼間からビールを飲むという習慣は無かった時代で、アメリカ人は凄いなと憧れのように感じたものだ。

ただ、寿司(生魚)は、当時は彼らにも抵抗があったようで、決して美味しそうに食べてはいなかった。「俺はこういう店でいつも寿司を食べているんだ!」と、ちょっと背伸びをしているようにも見えた。

そのアメリカが今は、もの凄い寿司ブームと聞く。

全世界に寿司店なるものが約2万軒あるそうだが、その半分の1万軒がアメリカにあるそうだ。

日本の寿司バーがアメリカに渡り、「カリフォルニアロール」や「ドラゴンロール」それに「スパイシーツナロール」と言ったアメリカ独自のロール寿司も数々生まれ、中にはソフトシェルクラブを唐揚げにして巻いた、「スパイーダーロール」なるロール寿司もあるが、高価な生魚以外の材料も使うことで価格も安くなり、ヘルシーなイメージも加わり、寿司ブームが起こったのだろう。

ただし、ウナギとアボガドをマヨネーズと一緒に巻いた、「ドラゴンロール」のどこがヘルシーなのかと疑問もあるが、いろいろな寿司が世界に広まって行くのは良いことなのではないかと思う。



うちの店では、寿司は写真のように、すべて白い器に持っているが、それは皿を白のキャンパスとしてとらえれば、自分の好きなデザインをすることができるからで、特にマグロの赤色が一番冴えると思う。

ロール寿司も20種類程あるので、別の機会にまとめて紹介したいと思う。

さて、タイのバンコクだが、前の店でも寿司カウンターがあり、寿司のメニューもあったので、あまり他店を食べ歩いたことはないが、OISHIグループというタイ人向けの日本料理店を展開している会社の「SHABUSHI」という廻転寿司の店には勉強の為に何度か行ったことがある。

「SHABUSHI」という店名は、「しゃぶしゃぶ」と「すし」を掛け合わせた造語のようで、店内では文字道理、カウンターに座って廻転寿司のレーンから流れてくる「握り寿司」と「しゃぶしゃぶの具」の皿を選んで、しゃぶしゃぶはカウンターに1席に1個づつ埋め込まれた小鍋で調理するのだが、いつも店内はタイ人と海外からの観光客でいっぱいだ。

もちろん、握り寿司のネタにはマグロなどは無くて、サーモン、とびっこ、カニかま、海老、玉子、イカなどしか廻ってこないし、しゃぶしゃぶの具も、レーンの最初の方に座らないと肉にはありつけない有様なのだが、本当にいつもお客さんで賑わっている。

価格は確か90分の食べ放題で200バーツ(600円)程だったと記憶しているが、この価格で寿司としゃぶしゃぶが食べられれば、タイの若者も行けるだろう。

このOISHIグループは、今ではペットボトル飲料(お茶)や、お菓子の分野にも進出していて、特にペットボトルのお茶はタイでのシェアの1/3になったと聞く。

タイのお茶を4年ほど前に最初に飲んだ時にはビックリだった。とにかく歯に染みる程甘いのだ。

しばらくして、このOISHIグループが甘いお茶と、甘く無いお茶のペットボトルも商品化してくれたので、今ではタイ人も甘く無いお茶を飲む人が多くなっている。ところが、日本のメーカーがタイで販売しているお茶はあまり好まれていないようだ。やはりマーケティングがへたなのだろう。
日本の味そのままを海外に広めるより、食では現地に合う物に変えることも必要なこともあるだろう。

筆者が大連の今の店に来てから、約1年程で今ではある程度の繁盛店にすることができたが、最近、大連にも日本料理店の出店ラッシュで、わずか4000人程しかいない日本人駐在員と家族で150軒以上の日本料理店はさすがに多過ぎるだろう。

もっと、中国人が普通に来てくれるようなカジュアルな店を来年には出したいと考えている。(その前に、東京の店のOPENが5月中旬になったようなので先だが。)

日本料理の良いところは残し、アメリカで寿司が広まったように、中国人の大好きな日本料理を広めたい。

ただし、無駄なパフォーマンスだけはやりたくないと思っている。

アメリカでは服に電飾を付けて踊りながら寿司を握っている店があると聞く。

少し前まで、うちの店の寿司カウンターのスタッフにも、体をくねって大きなパフォーマンスをしながら寿司を握る中国人スタッフが居たが、何度注意しても直らないので辞めてもらった。

寿司カウンターのスタッフには、『お客様を見て寿司を一口で食べられなかったら次ぎからは、少し小さめに握るように。また、箸で召し上がるお客さんの握りは固めに、手で食べているお客さんの握りは柔らかめにするように』何度も言ってはいるが、やはり大陸的な考えの中国人には、パフォーマンスの方がお客さんも喜ぶし、何よりその方が自分もカッコいいと思う連中が多いようだ。
まだまだ、先が長いと感じてしまう。

今日は、jjkenさんのコメントでタイがとても懐かしく感じた。

ありがとう。。。