電脳アニメパス

アニメ及び周辺文化に関する雑感

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2009年度アスカー賞

2010年01月23日 | 雑記
・毎年、1年間で注目した作品や人物に対して勝手に与えてる賞です。
・アスカー賞という名前に特別な意味はありません。
 (以前のはこちら→《2004年度》《2005年度》《2006年度》《2007年度》《2008年度》)

◎TVアニメ部門
 『咲 -Saki-』
 麻雀に萌えという要素を追加して、健全なアニメ作品に仕上がっていたのが、この作品。緻密な麻雀の手は原作によるところが大きいけど、それを誤魔化すことなくアニメ化したスタッフの姿勢も無視できません。ただ、逆に原作の無い個人戦が大雑把で杜撰だったのはいただけませんでしたが。
 ちょうど本格的に麻雀を覚えようかと思った時に始まった作品なので、十分に堪能させてもらいました。

◎劇場アニメ部門
 『宇宙戦艦ヤマト復活篇』
 ま、劇場で観たのは他には『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』だけだし。ヤマトは作られたこと自体が表彰理由なので、作品内容云々は何も関係ありません。ま、毎年作れとは言わないけど、何年に一度ぐらいは作り続けてほしいですね。

◎OAV部門
 該当作無し
 単独のOVA作品として見た作品というのはなく、コミックスの付録の『あきそら』だとか、後は『CLANNAD~AFTER STORY~』の「もうひとつの世界 杏編」くらいですが……原作の杏シナリオは実質的に椋シナリオ+杏シナリオという流れなので、これを24分程度でやってしまうのは「智代編」以上に無理があったような気がします。

◎特撮部門
 該当作無し
 ああいう終わり方じゃなきゃ『ディケイド』にくれてやっても良かったんですが……

◎劇伴部門
 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
 前作同様、旧作劇伴をベースにパワーアップを計ったものがメインだけど……まさか、アスカ絡みで『彼氏彼女の事情』から音楽持ってくるとは予想しませんでしたね。おかげで旧作の尖がったアスカのキャライメージから、少しナイーブなイメージに変わっちゃいました。

◎主題歌部門
 『君の知らない物語』(supercell)
 『化物語』のED曲です。OPの方は単独商品で発売されてないので聴いてませんが、この曲は一時期どこにいっても掛ってるような印象で、すっかり耳に付いてしまいましたね。夜空を見ながら星座の物語を語ってるという歌詞が天文ファンにはロマンティックを掻き立ててくれます。本来なら『宙のまにまに』でこういう曲が出てきてほしかったと思いますが……

◎電波ソング部門
 『熱烈歓迎わんだーらんど』(宮永咲、原村和、片岡優希、染谷まこ、竹井久)
 電波ソングというほど変な歌ではありませんが、クセになるような楽しい歌という点で非常に中毒性が高いのでこの部門に。

◎ボーカルアルバム部門
 該当作無し

◎主演声優部門
 戸松 遥
 一時はどこを向いても戸松、日本にはほかに声優はいないのかというくらいに目に付いた印象でした。『神曲奏界ポリフォニカcrimsonS』のコーティとか、『バスカッシュ』のルージュなんかは以前からの戸松のキャラそのまんまといった感じだったのですが、『GA 芸術科アートデザインクラス』の如月にはすっかり騙されてしまいました。

◎助演声優部門
 小林ゆう
 すっかり際物声優としての地位を確立された小林ゆうですが、そうやって個性が確立されるとサブキャラでも印象が強くなってくるんですね。だから役が変に目立ってくるかというとそうでもなく、堅実に役に徹してる印象です。どちらかというと、アニメよりもネットラジオをパーソナリティとしての存在感が強かった面もあります。

◎新人声優部門
 豊崎愛生
 『ウミショー』辺りから名前は覚えてる人ですが、2009年になって一気に主役級が増えたって感じですね。その代表が『けいおん!』の平沢唯ですが、しばらくは「うんたん」のイメージが消えないんでしょうね。

◎キャラクター部門
 魔法少女 スィーティミリィ(『ファイト一発!充電ちゃん!!』)
 ま、ほかに思い付かなかったので。しかし、こんなエロアニメが真昼間から堂々と放映されてるって、どんな世界ですか。

     ☆ ☆ ☆

 ここもすっかり放置状態ですが、昔のアニメ見てる時間も無いし……。ま、ぼちぼちとネタを探して何か書こうとは思っていますが。
コメント

2008年度アスカー賞

2009年01月02日 | 雑記
・毎年、1年間で注目した作品や人物に対して勝手に与えてる賞です。
・アスカー賞という名前に特別な意味はありません。
 (以前のはこちら→《2004年度》《2005年度》《2006年度》《2007年度》)

◎TVアニメ部門
 『ef - a tale of melodies.』
 テレビアニメの醍醐味が来週はどうなるんだろうかというドキドキワクワクだとするなら、それを一番味わわせてくれたのがこの作品ですね。二部作の原作ゲームの物語を構成を組み直して描かれたアニメの二部作。一期目は日本とオーストラリアの二つの音羽町で同時進行的に展開する二つの恋愛物語をモザイク的に対比して描かれていたトリッキーな作品でしたが、今回の第二期は同じキャラクターたちを過去と現在をモザイク的に対比させながら描かれていました。空間的なトリックを使ったのが第1期なら、時間的なトリックを使ったのが第2期と言えるでしょう。もっとも、空間トリックの方はオーストラリアにまったく同じ音羽町が存在すると明かされるまではわからないわけですが、時間の方は見てればわかっていきますね。同じキャラが出てるわけだし。
 第1期の方は斬新な演出が話題になりましたが、物語の方はあんまり興味をひくものではなかった(千尋の記憶障害もちょうど映画『博士の愛した数式』を見たばかりでインパクトは無かったし)のですが、今回は作品全体のキーパーソンである雨宮優子自身が描かれてることで断然面白かったといえます。
 これだけ丁寧に設計されたアニメも滅多に見ることが出来ませんが、やっぱり一番残念なのは額縁放送なので、作品中に散りばめられた文字とかが潰れて見づらかったことでしょうか。

◎劇場版アニメ部門
 『名探偵コナン 戦慄の楽譜』
 劇場で見たのがこれだけといえばこれだけなんだけど、コナンにしては変に強引でトリッキーな推理とかなくて、素直に見れた映画でしたね。音楽の方もクラシック曲をネタやフリだけで終わらせずに作品中にうまく溶け込ませてたと思います。ただ、こういう小編成の伴奏だけつけた歌物の題材で「フルスコア」なんてタイトルを名乗られてもって感じですね。最近は『題名のない音楽会』とか見ててもガラコンサートが人気みたいですが、「フルスコア」と名乗るなら大編成のオーケストラでも出してもらわないと。(ま、デュエットでもトリオでも、全部のパートが揃った楽譜ならフルスコア(総譜)には違いはありませんが)

◎OVA部門
 該当作なし
 OVAに近いものといえば、買ってまで見たのは『CLANNAD』の最終巻の「智代編」ぐらいだけど、テレビシリーズのクオリティと比べたら作画面であんまし良くなくてがっかりした覚えが。智代はテレビシリーズで見てた方が良いですね。でも『智代アフター』はやらないんだろうな。『こどものじかん』のコミックスを買ったら何か付いてたけど、まだ未開封で見てないし。
 最近はテレビアニメの続編以外に話題性のあるOVAとか聞かなくなったし、ジャンルとしては衰退してるのでしょうか。

◎特撮部門
 該当作なし
 日本の特撮映画の伝統はこのまま消え去ってしまうのでしょうか。

◎劇伴部門
 該当作なし
 テレビアニメのサントラは毎期何作かは意識して買ってるんだけど、肝心の作品自体の(ちゃんとした)視聴が追いつかないからサントラも未聴のままがほとんど。ま、最近はサントラが単体で発売されない作品も多いし、DVDの特典に付くなら付くでそれを大々的に宣伝してくれないと買えないしって状況ですね。
 いまだにサントラのパッケージに作曲家の記載が無いのも多いというのはどういうものでしょうか。ま、店によっては防犯タグでジャケットを隠して収録内容が見えないことがしばしばあるけど、そんな店ではあらかじめ絶対に買うと決めてて他の店で見付からなかったものしか買う気になれないですね。(とくにアニメイト。CDじゃないけど、PCゲームの体験版収録のムック本の1箇所しか無い肝心の作品名の記載場所が18禁シールで隠されてて何の作品のムック本なのかわからないこともあったし。売りたくないのだとしか思えません)

◎主題歌部門
 『マクロスF』「星間飛行」(中島愛)
 いや、1回だけでもOPで使われたから構わないでしょう。個人的には『マクロス』といえば第1作のシリーズだから、『マクロス』の音楽世界といえば80年代的な羽田健太郎の音楽であって、『マクロスプラス』以降の菅野よう子的な音楽世界というのは、『マクロス7』の歌物ばかりで劇伴を排した世界ほどではないにしても、どこか異次元の存在みたいでなじめないんですね。そんな中でいきなし80年代のアイドルソング的なノリで登場したこの曲には心が洗われました。
 『トライアングラー』や『ライオン』とかも嫌いではないんですが、自分の中では『マクロス』のイメージじゃないですね。

 次点は『屍姫 赫』の「Beautiful fighter」あたりかな。実にangelaらしい曲だけど、一聴して素直に気に入ったのは『ファフナー』以来かな。『かんなぎ』の「motto☆派手にね!」とかも好きだけど、主題歌としての意味合いからいうとどうかという気がするし、年初のアニメなんかはもうすっかり忘れてしまって思い出せないのも確か。

◎電波ソング部門
 『恋姫†無双』「やっぱり世界はあたし☆れじぇんど!!」(fripSide NAO project)
 電波ソング系としては『H2O』の「マジカルO・TO・HA・」も捨て難いけど、インパクトとしてはこっちの方が断然上ね。毎週流れてるし。しかし、その割にはあんまし話題にはなってなかったような。ま、番組自体が電波系みたいなものだからEDだけ目立ってたわけじゃないからでしょうけど。

◎ボーカルアルバム部門
 『CDで聞いてみて。~ニコニコ動画せれくちょん~』
 ニコニコ動画の人気曲を集めてCDにした1枚。まとまりが無いと言えばまとまりが無いカオス的な選曲だけど、10年ぐらい経ってから聴いて当時の熱狂を思い出してみるのが一番有用な使い道かも知れません。
 『みくみくにしてあげる♪【してやんよ】』を高音質で聴きたいけどCDが出てないとか、『エアーマンが倒せない』も単独で同人CDを探すのもどうかとか思う向きには便利な一枚だったのも確か。ま、ニコニコ動画の存在価値を世間にアピールするには少しは役立ったんじゃないでしょうか。

◎主演声優部門
 能登麻美子(小山田耕太/『かのこん』)
 少年役としては過去に『GIRLSブラボー』の雪成とかもあるんだけど、ちずる役の川澄綾子との絶妙な間合いとか、斬新な演技が感じられました。作品自体は地上波放映も無いし、ネット配信も後半は(年齢制限を口実に)有料に切り替えられたりして商売的にあざとさを感じられたりしましたが、見続けたいという欲求がそれを上回るぐらいの魅力を見せてくれました。
 一方でヒーリングボイスの第一人者としての地位は相変わらず不動で、いつもどこかで能登麻美子という状況が続いてくれているのはうれしいですね。最近は「あなた、最低です!」というのも話題みたいですが。

◎助演声優部門
 川澄綾子(源ちずる/『かのこん』)
 主演に能登を挙げたら、助演はこの人を挙げなくてはいけないでしょう。堀江由衣のように強力なバックを持たない限り、流行り廃りの激しい声優界でテレビアニメのヒロイン役を10年以上も持ち続けているというのは凄いものがあると思います。やっぱりアイドル的なマルチ展開に走らずに声優としてキャラを演じることに専念している人だから、それが成果として現れて来てるってことでしょう。
 もっとも川澄綾子というと、まほろさんとかセイバーとかストイックなヒロイン像が代表的なイメージだから、ちずるみたいな極端にエロエロなキャラというのはギャップ感がありましたね。

◎新人声優部門
 戸松遥(ララ/『To LOVEる』他)
 前年のコーティー辺りから出てきた人だけど、名前を意識し始めたのは2008年になってから。でも、あっという間に主役級を何作も重ねる人になっちゃいました。役柄としてはナギとかエムエムの方が良いのだろうけど、ララのイノセントな能天気なキャラなんかは(下手っぽくはあっても)新人時代にしかできないものだろうから、とりあえず代表作として上げておきます。
 次点は『マクロスF』ランカ役の中島愛あたりかな。

◎キャラクター部門
 石動乃絵(『true tears』)
 アニメに変なキャラは付き物ですが、一番現実的な存在感を示してくれたキャラというとこの人を除いて挙げられないでしょう。そんな彼女と真面目に向き合ってくれる主人公がいて、物語が始まっていきます。

 次点は『H2O -FOOTPRINTS IN THE SAND-』の田端ゆいかな。高飛車なお嬢様キャラというのはどんな作品にでも出てきますが、実は農作業でしっかり働いてるという頑張り屋さんは彼女ぐらいなものでしょう。(ま、ここは村全体が貧しいところみたいだから、それが当たり前の姿なのかもしれませんが)
 他にはざんげちゃん(1回100円)もけっこう好きですけどね。

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2007年度アスカー賞

2008年01月05日 | 雑記
・毎年、1年間で注目した作品や人物に対して勝手に与えてる賞です。
・アスカー賞という名前に特別な意味はありません。
 (以前のはこちら→《2004年度》《2005年度》《2006年度》)

◎TVアニメ部門
 『ひぐらしのなく頃に解』

 バッドエンドを綴った出題編を中心とした前作とは打って変って、解答編にあたる今作は主人公たちの意思によって打ち破られていく運命と、その背後に潜んでいた真相が次第に暴かれていくことで、(原作未プレイ者にとっては)次の展開がとっても気になる、次回が待ち遠しい作品に仕上がってました。それだけにシリーズ中盤の秋頃の事件で放映打ち切りに遭遇した地方の人たちの無念さは痛いほどよくわかります。
 特に『祭囃し編』の序盤はすべての首謀者である鷹野の生い立ちから生み出された激しい執念が描かれることで、それまでの部活メンバーがいきなり事件に巻き込まれるという展開とは一転して、強い意思による対決が描かれていたのが印象的でした。

 次点は『ななついろ☆ドロップス』。お供のペットの方が主人公という、ちょっと変わった魔法少女の物語かと思ったら、終盤でその主人公が魔法の禁忌を破って動かなくなっちゃうという波乱の展開。ここで完全に物語の主役はすももになっちゃうわけだけど、結局のところ2人の物語だったって話。本来はマルチヒロインの作品をすもも1人に絞ったことによる収穫みたいなもの。
 甘酸っぱく切ない恋心を描いてくれた作品でした。

◎劇場版アニメ部門
 『劇場版CLANNAD』

 ま、原作厨には非難ごうごうなんだろうけど、1本の映画として(渚ルートだけだけど)『CLANNAD』の物語を描いたという点では完成度は高いと思います。この作品の持つ映画としてのダイナミズムなんかはけっして京アニのTVシリーズなんかでは味わえないものだし、出崎監督らしいリアリティも素敵です。
 音楽もテーマソング以外は新曲ですが、『だんご大家族』の歌は既製BGMを用いたTVシリーズのしんみりとした曲よりも、賑やかなこっちの方が好きですね。

◎OVA部門
 該当作なし

 ネットでの先行配信で『こはるびより』とか見てみましたが、あんまり興味がわくような作品はありませんでしたね。『Anime-TV』がキッズステーションからカミングスーンTVに引っ越しちゃって地元のCATVでは見られなくなって以来、OVA関係は何が出てるのかもさっぱりわからなくなっちゃったし、これだけTVアニメがあふれかえってたらレンタルショップに行く暇もないし……

◎特撮部門
 該当作なし

 『電王』は列車が走る時にレールが敷かれていくCGは凄いと思うけど、それだけだし、『ULTRASEVEN X』は特撮番組とは認めたくないし、『怪奇大作戦 セカンドファイル』って話もあるけど、これは録画したけどまだ見てないし……

◎劇伴部門
 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(鷺巣詩郎)

 2、3の新作を除けば旧作の音楽のリメイクに過ぎないんだけど、同じテーマモチーフの曲でも場面ごとにアレンジの違う曲を用意したり、明らかに鑑賞用途を意識したクオリティでの演奏・録音がなされている点では単なる映画のサウンドトラックというより、『宇宙戦艦ヤマト』における『交響組曲』の位置付けに対応するような存在だと言っていいかもしれません。
 オーケストラの演奏も良いけど、ピアノの響きが格別なんですね。

◎主題歌部門
 『ロミオ×ジュリエット』「祈り~You Raise Me Up~」(LENA PARK)

 既製の洋楽のカバーなんだけど、この1年のアニメソングで一番印象に残った曲といえばこれですね。
 大元はアイルランド民謡の「ロンドンデリーの歌」とかいうのが原曲で、それに別の歌詞を付けた「ダニー・ボーイ」をベースに、シークレットガーデンという2人組みのミュージシャンが作ったのが「You Raise Me Up」で、それを日本語訳したのがこの曲とのこと。
 ところで、この作品、サントラ盤は出ないのかと思ったら、なんかようやく発売が決まったみたいですね。

◎ボーカルアルバム部門
 『I've/SHORT CIRCUIT II』

 いわゆる電波ソング系エロゲ主題歌のベスト盤。ボーカルはKOTOKOと詩月カオリがメイン。メジャー系で出てるKOTOKOの曲と比べるとまるで別人と思えるくらい弾けてるのが素敵です。お気に入りは「ねぇ、…しようよっ!」、「Mighty Heart~ある日のケンカ、いつもの恋心~」、「めぃぷるシロップ」あたりかな。

◎主演声優部門
 釘宮理恵(ハヤテのごとく!/三千院ナギ)

 釘宮病という言葉が流行ったぐらい、釘宮理恵一色の1年でしたね。いや、能登はあいかわらずだし、『涼宮ハルヒ』の余韻で平野綾の活躍もあったわけだけど、声優として声が耳に付いたという点では彼女が一番かな。
 ツンデレの代表格のように扱われている彼女ですが、思えば『灼眼のシャナ』の第1期の頃から今の形が出来上がっていたわけで、今年はその延長上の作品が固まってしまったってことでしょうか。
 『りぜるまいん』の頃から比べると、同じロリ系の声でも確かに風格は備わって来てますね。

◎助演声優部門
 伊藤静(ハヤテのごとく!/桂ヒナギク)

 アニメじゃ完全にヒロイン扱いのヒナギクを演じる伊藤静。『灼眼のシャナ』でもシャナの後見人ともいうべきヴィルヘルミナ役を演じていて、釘宮キャラに対するお姉さん的な存在を感じさせています。
 もっとも、初めて名前を覚えたのが『ToHeart2』のタマねえ役なので、個人的にはどっちかというとお姉さんというより姉御肌のイメージがある声優さんです。その路線で行くと、『スカイガールズ』の一条瑛花なんかも忘れられないキャラですね。

◎新人声優部門
 結本ミチル(ななついろ☆ドロップス/秋姫すもも)

 『はぴねす!』の準なんかもやってるから丸っきりの新人さんってわけでもないんですが、知名度的には『ななついろ☆ドロップス』でのメインヒロイン役というのは大きいでしょう。
 すももの初心でぎこちなく切ない恋心をうまく演じてくれたように思います。これからの活躍に期待したいですね。

◎キャラクター部門
 初音ミク

 なんだかんだといって、1年の後半を色々と騒がせてくれたキャラクターです。大昔に伴奏データと歌詞だけ作ったけど身近に歌ってくれる女の子がいないからそのままになってた曲に歌を吹き込んでくれた素敵なボーカリスト。3Dキャラになってネギを振るのは良いけど、足を広げて変な踊りを踊ってる動画はあまり好きくないですね。

コメント

2006年度アスカー賞

2007年01月05日 | 雑記
・毎年、1年間で注目した作品や人物に対して勝手に与えてる賞です。
・アスカー賞という名前に特別な意味はありません。
 (以前のはこちら→《2004年度》《2005年度》)

◎TVアニメ部門
 『ゼーガペイン』

 ま、巷では『涼宮ハルヒの憂鬱』とか話題になっていましたが、『ハルヒ』は原作読んでたからあんまし物語的にわくわくするような部分はありませんでしたね。この原作をどう料理してくれるかという通の楽しみ方としては十分に満足させてくれましたけど。
 その点、『ゼーガペイン』は完全オリジナル。次にどういう話になっていくのか既存知識抜きで毎回わくわく楽しませてくれました。生物としての人類が滅びてサーバー上の幻体として辛うじて生き残ってるという、まったく予期しなかったような画期的なSF設定。『ノエイン』にしろ、この『ゼーガペイン』にしろ容赦の無い設定がマニア心をくすぐってくれますが……これ、夕方の普通のアニメなんですね。ま、あの『エヴァンゲリオン』だって容赦ないといえば容赦ありませんでしたけど……

◎劇場版アニメ部門
 該当作なし

 劇場で見たのは『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』だけなので……
 10周年記念作ということで、劇場版では過去に2回、いい役をさらっていった怪盗キッドが3度目の登場って出してきてますけど……はっきり言って、キッドを絡める意味があったのかは疑問ですね。
 探偵たちとか言ってるからゲストでなんか凄い探偵でも出してくるのかと思ったら、結局のところ毛利のおっちゃんと(コナンと)服部と白馬ってところ。それ以外の探偵って単に数合わせだけだし。白馬の正体がキッドってのはそもそも捻りも何も無いし。
 事件だって、そりゃ遊園地で爆発が起こったら大変だろうけど、それを防ぐってだけで、現実の事件は過去に起こった事件だけってのは企画側にすれば捻ったつもりなんだろうけど、見る方からしたら退屈で面白くないんですね。

◎OVA部門
 該当作なし

 これは記憶に残るようなのは何も見てないや。

◎特撮部門
 『日本沈没』

 とりあえず各所に散りばめられた旧作へのオマージュには感服しますが、やっぱりラストの展開は反則ですねぇ。小野寺は殺すわ、日本は生き残るわ。いや、アイデアとしては良いんだけど、旧作ファンとしてはどうしてもペシミスティックなカタストロフィを期待しますからね。
 しかし、この映画で一番衝撃的だったのは、物語早々に山本首相が阿蘇山の噴火に巻き込まれて死んでることですね。ま、東京大地震のカタストロフィが無いんじゃ、旧作の丹波哲郎の山本首相のような見せ場は無いですからね。
 それにしても、旧作も新作も、大阪の沈むところ描いてくれないねぇ。どっちも沈んだ後の光景が出てくるだけだから……

◎劇伴部門
 『Fate/stay night』(川井憲次)

 何曲かゲーム版の音楽を引き摺ってる部分もありますけど、それでも随所に川井憲次っぽさが十分に堪能できる音楽かな。ただ、アニメ本編は作品自体があまり抑揚の無い淡々とした作りで、音楽が十分に活かされていたようには思えませんでした。
 ただ、最終回の「la sola」あたりはけっこう印象的で忘れられないシーンに仕上がってましたね。
 川井憲次といえば『ひぐらしのなく頃に』もそうだけど、1枚目を聴いただけではもう1つパッとしなかった感じ。でも、2枚目のCMに使われてる曲、すごく印象的に耳に残ってるんですが……

 『ゼロの使い魔』もなかなかだけど、まだ見てる途中だし……。『ARIA』は前作からの曲がやはりメインだから今年の範疇じゃないですね。『BLOOD+』はハリウッドの大作的な曲作りはいいけど、いかんせんTVアニメの音楽としては異質というか、型はずれ。『ザ・サード』も良いんだけど、決め手に欠ける感じかな。

◎主題歌部門
 『涼宮ハルヒの憂鬱』「冒険でしょでしょ?」(平野綾)

 ま、これははずせんでしょ。
 何と言ってもOPの躍動感をダイナミックに仕上げた映像とのマッチングが最高。これだけゾクゾクする主題歌って「残酷な天使のテーゼ」以来でしょうか。個人的には無理やりチアガール姿で踊らされてるみくるのやけっぱちな仕草の辺りが最高ですね。

 次点としては「ひぐらしのなく頃に」。これだけサスペンス感を煽りながら毎回聴いていて飽きない曲も珍しい。さすがに I've は違いますね。あと、『ゼーガペイン』のED「リトルグッバイ」もはずせないところです。

◎ボーカルアルバム部門
 『川田まみ SEED』

 今年、一番気に入ってよく聴いたアルバムといえば、これでしょうか。『灼眼のシャナ』のOP「緋色の空」から始まってバリバリの I've サウンドがまるまる1枚詰まってるわけですが、最後まで全然テンションが落ちないですね。
 アルバム関係は京ぽん2に転送して聴くのが多いんですけど、今年買ったボーカル系のアルバムで転送したまま消さずに残ってるのって他には『桃井はるこ momo-i quality』ぐらいですか。なんか忘れたころに元気付けに聴きたくなるというアルバムです。

◎主演声優部門
 平野綾(涼宮ハルヒ)

 いや、この人を挙げずにはいられないでしょう。『天使のしっぽ』の頃はまさかこんな大バケするような人とはさすがに予想もしてなかったですけど。いろんな意味でその後もハルヒを引きずってるようですが、もう一皮剥けて大成してくれることを期待したいところです。
 時点としては沢近愛理に代わるツンデレ・スタンダードを確立したシャナ(灼眼のシャナ)、ルイズ(ゼロの使い魔)役の釘宮理恵。ロリキャラ声優からツンデレ声優への飛躍の年でしたね。

◎助演声優部門
 清水愛(涼水玉青)

 やはり『ストロベリーパニック』はこの人の怪演なくして成り立たなかったでしょう。お約束とはいえ、期待通りのことはこなしてくれます。玉青役は先に配役のきまったPS2版の人がスケジュールの都合で出られなくなった代役みたいですけど、逆に今じゃ清水愛じゃない玉青の方が違和感あると思います。いろんな意味で渚砂役の中原麻衣とは名コンビ。これからも怪しいキャラをこなしていって欲しいですね。
 『ストパニ』だと千華留役の人もなかなかだったんだけど、もうひとつ物語り上での重要性が無いキャラでしたからね。あのカルメン役みたいなのをもっと早くからやってて、もっと作品に絡んできてたらなぁ……

◎新人声優部門
 花澤香菜(カミナギ・リョーコ)

 子役で以前にも声優経験はあるみたいですが、本格的なレギュラー役はこれが初めてということで、リョーコはいろんな意味で初々しさがにじみ出ていた新鮮なキャラでしたね。
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『電脳アニメパス★はてな島迎撃基地』開設

2006年07月02日 | 雑記
 はてなダイアリーの方で『電脳アニメパス★はてな島迎撃基地』を開設しました。

 こちらの『電脳アニメパス』本館に対する別館扱いになりますが、ここには書かない何か別のものを綴って行きたいと思います。
 とりあえず、ここでは感想が当分先になってしまう夏のアニメ新番組について、流し見段階での簡単な印象とかを逐次書いておきます。
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涼宮ハルヒの撲殺 雛見沢村連続怪死事件(後編)

2006年06月03日 | 雑記
 それはただの始まりに過ぎなかった。
 翌朝、俺が目を覚ました時には同じ部屋で寝ていたはずの古泉の姿が無かった。この時は特に何も考えなかったのだが、ハルヒに声を掛けて警察を呼ぶために近所に電話を探しに向かった俺は、道端で探し当てた公衆電話ボックスの中で古泉が首を掻き毟って死んでいたのを発見した。
 俺は気が動転しながらも、そこにある電話で警察を呼ぼうとしたのだけど、電話は不通状態だった。やむなく近所の家の電話を借りに向かったが、どの家もまるで不在のように閉まりきっていて電話を借りることは出来なかった。
 長門が言ってたように、この村が変なのは確かだ。でも、これがハルヒの意思で改変された世界だとは俺には思えない。とりあえず古泉のことをハルヒに伝えないと……
 俺は急いで前原屋敷に戻ろうとしたが、途中で女の子に声を掛けられた。名前は知らないが、野球をしていた子供たちの1人だ。
「そのバット、無くさないでね」
 バット? 俺はそんなもの持ってないぞ……と思いながらふと視線をおろすと、俺の手にはグリップに悟史と書かれた例の金属バットが握られていた。このバット、確かハルヒが持ってたはずじゃ……
 怪訝に思いながら俺が顔を上げると女の子はどこかに消えてしまってそこにはいなかった。そして、バットには大量の血痕が付着していた。

 前原屋敷に戻った俺を待ち受けていたのはさらに衝撃的な出来事だった。ハルヒはどこかに出かけたのか不在で、そこには撲殺死体となった長門の姿があった。俺が呆然と立ち尽くしていると、そこにハルヒが帰ってきた。
「キョン、あんたいったい何やってるのよ!」
 ハルヒの目には脅えるような非難の色があった。そして、なぜか俺を避けようとしている。
「近寄らないでよ、人殺し!」
 大声で叫ぶハルヒに、俺が長門を殺したと誤解されてることを知った。違う、違うんだ。俺は必死でハルヒの誤解を解こうとしたが、俺の手に握られてる血痕の付いたバットはハルヒを恐怖させるに十分だった。
「あたしはキョンが殺人鬼だなんて知らなかったわ。みくるちゃんを殺したのもあなたね。夕べ、キョンが立ち止まった場所の近くで、みくるちゃんは殺されてたわ……」
 ハルヒは涙を浮かべた怒り顔を俺に向けた。俺は懸命に弁解したが、ハルヒの疑いは収まらなかった。
「キョンが犯人じゃないというなら、そのバット、私に寄越しなさい!」
 俺は言われるままにハルヒにバットを渡した。無論、怒り狂ったハルヒがそのバットで俺を殴ってくる可能性もあったが、それは怖くはなかった。朝比奈さん、長門、古泉の3人が殺されてるという現実、その方がよっぽど受け入れがたく、そんなことを認めるぐらいなら死んでしまいたかったからだ。
 ハルヒと俺は黙り込んだ。明らかにハルヒは俺を警戒していたが、そうかと言って俺から離れて一人にはなりたくない様子だった。時間だけが刻々と過ぎていった。

「こんにちわ~~。お客さん、いますか?」
 沈黙を破ったのは玄関から聞こえた声だった。やがて足音とともに緑髪の少女の姿が現れた。俺たちにこの前原屋敷を紹介してくれた魅音である。
「困りますね、お客さん。最後は2人で殺し合ってくれないと……」
 魅音の顔はたちまち狂気に変じた。ハルヒの背後に立った魅音はポシェットから注射器を取り出すと、それをハルヒの首筋に突き刺した。
「な、なによ、これ!?」
 抗う暇も無いままに注射を打たれたハルヒの様子が明らかに変わってきた。
「フフフ……」
 狂気に変じるハルヒの顔。
 ゆっくりと立ち上がりバットを振り上げたハルヒは……魅音を一撃で撲殺した。
「キャーっ!」
 その後で別の悲鳴が聞こえた。そこには斧を持ったレナが突っ立っていた。ハルヒは即座に突進し、そして瞬時にレナも沈黙した。
「キョン、帰るわよ」
 バットを持ったままハルヒは俺に近付いてくる。
「あたし、気付いたの。この雛見沢村のことを……」
 そう言いながら一歩一歩間合いを詰めて来るハルヒ。
「よ、寄るな! 近付かないでくれ!」
 さっきまではハルヒに殺されたってかまわないと思っていた俺だが、急に恐怖心に襲われ、死にたくないという心が頭を支配した。
「何を恐れてるの。3人を殺した悪魔は退治したのよ。安心しなさい」
 血の滴るバットを引きずってハルヒはどんどん近付いてくる。
「いやだ、俺は死にたくない!」
 いや、確かに3人を殺したのはあの魅音とレナという少女たちかも知れない。しかし、その2人をハルヒが何の躊躇も無くあっさり殴り殺す光景を目の当たりにした俺は、次に殺されるという恐怖心を払うことが出来なかった。それに、さっき魅音に打たれた注射は何だったんだ? ハルヒの様子がおかしいのはあれからだ。
「あのね、オヤシロ様のタタリって本当にあったのよ」
 狂気の笑みを浮かべるハルヒはもう俺のそばまで迫っていた。バットを振り下ろせば届きそうな距離だ。俺はとっさにハルヒをかわし、その場から逃げ出した。
「お願い、キョン。あたしから逃げないで……」
 一度振り返った俺は狂気に笑うハルヒの目から涙が流れたように見えたが、けっして立ち止まろうとは思わなかった。

 それから俺は走り続けた。奇妙なことに、村には誰一人、住人の姿が見えなかった。昨日、子供たちがいた分校にも、巫女さんを見掛けた古手神社にも。それどころか、それらの建物はもう長い間人が使っていないかのように朽ち掛けていた。
 バス停の標識もすっかり錆付いていて、しかも時刻表に記されていた最新のダイヤ改正日は昭和58年4月1日になっていた。バス停の待合所にもうボロボロになった古新聞が置かれていて、それの日付も昭和58年6月23日のものだった。そして、辛うじて判読できる見出しには「雛見沢村全滅!未曾有の大災害」「奇跡の生存者は少年1人」と書かれていた。
 その新聞の脇に1冊だけ真新しい本が置かれていた。どこかで見たような……と思ったら、それは来る時に長門が読んでいた本だった。挟まれた栞を手に取ると、そこにはこう書かれていた。
「この世界はニセモノ。出口はどこかにあるはず」
 それは長門が俺に残したメッセージだった。
 そうだ、外の本当の世界に出られたらハルヒだって元に戻るかも知れない。それにはハルヒも一緒に連れ出さないと……
 俺は再び前原屋敷に駆け戻った。しかし、家の中にはハルヒの姿は無かった。俺は長門の遺体に礼を言い、まだ近くにいるであろうハルヒを探しに飛び出した。
「!」
 俺は玄関の前に人影を見て、慌てて立ち止まった。それはハルヒだった。
「あたしを1人にしないで……」
 ハルヒの目はもう完全に虚ろだった。ハルヒの頭には斧が深く刺さっていて、大量の血液とは別に白い液体が噴出していた。俺は息が止まって、目の前の光景を唖然と見つめるしかなかった。
「2人でどこか別の世界に行きましょ、キョン」
 フラフラとしながらバットを構えたハルヒは、それを俺に向かって振り下ろした。俺はただ自分の意識がだんだんと薄れていくのを感じていた……

      ☆ ☆ ☆

「こら、早く起きなさいっ! キョン!」
 俺はハルヒに起こされる声を聞いて目が覚めた。
「2人だけの世界なんだからもう少し寝かせてくれ、ハルヒ」
 そう言ってそのまま眠り続けようとした俺だったが、ハルヒに蹴飛ばされて目が覚めずにいられなかった。
「何であたしがキョンと2人だけの世界にいなきゃいけないのよ! ボケてないで、さっさと帰るわよっ!」
 ハルヒはそういうと大きな荷物を俺に押し付けた。ハルヒの他にも、殺されたはずのSOS団の3人の姿もそこにあった。
「ここはどこだ?」
 周囲を見渡せば見たことも無い光景が広がっている。そして目の前には大きな湖があった。
「ここは雛見沢湖ですよ」
「雛見沢湖? 村は……雛見沢村はどこにいったんだ?」
 古泉は下を指差した。
「かつての雛見沢村は、今はダムの底です」
 ダムの水はそれほど澄んでなかったので湖底の状況など伺えなかったが、浅瀬になってる部分に鳥居らしきものの一部が見えた。古手神社があった場所かもしれない。
「ネットのガセネタに踊らされるとは、このあたしも不覚だったわ」
 珍しくハルヒの声が落ち込んだように聞こえたのは気のせいだろうか。どうやら俺たちはネットで話題になっていた雛見沢村連続怪死事件の解決のためにハルヒに連れられてやってきたのだが、肝心の雛見沢村はすでにダムの底だったと話らしい。それどころか、昭和50年代に起こったという連続怪死事件そのものがデマだったと話なのだ。
「昭和54年頃にダム建設をめぐって雛見沢村の住民たちが反対運動を起こしていたことは確かなようですが、その後、多額の補償金によって反対派は次々に取り崩されていって、昭和58年にはほとんどの住民が村を出て行ったため、ネットで騒がれてるような怪死事件は起こる余地なんか無かったというのが実情なんです」
 古泉は雛見沢村の顛末を語った。最後まで村に残っていた一部の徹底抗戦派の村民たちも昭和58年6月22日の夜に起こったガス災害事件により全滅。一部の元住民がオヤシロ様のタタリだと騒ぎ出したものの、反対にダム建設は進行し、昭和60年には村は水没したという話だった。
 ダムの一角に雛見沢村ガス災害の犠牲者が祀られていたが、その中には俺の記憶に残る少女たちの遺影もあった。園崎魅音、竜宮レナ……
 いったいあれは何だったんだろうか? ミステリーを欲したハルヒの作り出した世界なのか、それとも今いるこの世界こそが惨殺事件の末にハルヒが作り直した世界なのか? もっとも、あっちでは死んだはずの3人はもとより、ハルヒ自身も何事も無かったような態度だった。もちろん、すべては俺が夢で見た幻だったという可能性が高い。
「夕方も近いし、こんなところにいつまでもぐずぐずしてられないわ。さぁ、さっさと帰るわよっ!」
 そう言って帰り道を指し示すハルヒの手には、例の悟史と名前が書かれた古ぼけた金属バットが握られていた……

(了)

涼宮ハルヒの憂鬱 Episode01(限定版) KABA-1502涼宮ハルヒの憂鬱 Episode01(限定版) KABA-1502
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涼宮ハルヒの撲殺 雛見沢村連続怪死事件(前編)

2006年06月03日 | 雑記
「SOS団ミステリーツアー第2弾は、この雛見沢村よっ!」
 俺たちを山奥の辺鄙な村に連れ出してきたハルヒは、視界に開けた民家の点在する村を指してそう言った。
「この村は昭和50年代に謎の連続怪死事件が起きて、それがいまなお解決していないって話よ。SOS団の存在を世間に思い知らしめるには絶好の材料ね」
 いつものようなハイテンションでハルヒはそういうと俺たちを見回した。昭和50年代といえば、今から20数年も昔の話である。そろそろ時効になっててもいい頃だ。事件直後の記憶の生々しい時でさえ迷宮入りしたような難事件が、今頃のこのこやってきた高校生たちに解決できるわけは無いだろ。
 案の定、ハルヒの言葉に朝比奈さんも古泉も困っているようだった。
「どうせまた、おまえが裏で何か仕掛けてるんじゃないのか?」
 俺は前回のミステリーツアーを企画した古泉にそう言って何か情報を掴もうとしたのだが……
「とんでもない。今回は僕も知りませんでしたよ。涼宮さんは目的地すら教えてくれませんでしたからね」
 どうやら今回は完全にハルヒの気まぐれでやってきたらしい。そうなるとハルヒの期待しているようなミステリー的なイベントが起こる確率は現実的にいってかなり低くなるのだか、そうなれば逆にハルヒの意思によってそういうイベントが引き起こされてしまう可能性が高いということである。そっちの方がずっと危険だと古泉は言った。

 永遠に繰り返すかと思った夏休みの最後を抜けて新学期が始まってしばたくたった9月の3連休、いきなりハルヒに召集をかけられた我がSOS団は、目的を告げずに先導するハルヒに引っ張られて、この雛見沢村にやってきたというわけだ。
 麓の興宮町のファミレスで遅めの昼食を取って、日に何本も無いバスに乗って村に着いたのは午後の4時過ぎ。9月と言ってもまだ傾きかけた日差しは強く、森の中からヒグラシの鳴き声が盛んに聞こえていた。
「しかし、何も無い村ね」
 村の中を歩きながら一望したハルヒは退屈そうにそう言った。
「毎年6月に行われる綿流しという祭りが唯一の大きなイベントだそうですから、それ以外の季節だとただの過疎の村ってことになりますね」
 いつの間にそんなこと調べたのか、相変わらずハルヒの機嫌を取るように古泉は話をあわせている。そういえば、麓のファミレスで携帯電話でいろいろ調べ物をしてたようだったな。しかし、その携帯電話もこの雛見沢村では圏外で使えない。もう組織の手助けも借りられないはずだ。
「じゃ、まずどこから調べようかしら?」
 ハルヒはもうすっかり探偵モードである。例によって集合に一番遅くやってきたという理由で荷物持ちをさせられている俺の苦労をよそに、どこか勝手な方向にどんどん進んでいく。
「それじゃ、古手神社はどうですか?」
 用意良く答える古泉。
「綿流しの祭りの中心となる神社だそうですし、連続殺人事件もなぜか綿流しの晩に起ってたということですから、手掛かりが得られる最も有力な場所でしょう」
 こいつが調子よくハルヒに合わせるからどんどんハルヒのペースで進んでいってるような気がするのだが、俺としては調査の前に休憩したいところである。
「大丈夫ですよ。神社というからには木陰があって休める場所があるはずですから」
 古泉はそう言って爽やかな笑顔を俺に向けた。

 古手神社は村の高台にあった。当然、荷物持ちの俺の疲労は加速度的に増大することになり、神社に着いたときはもうへとへとだった。これでしばらく休めるのかと思ったのだが、鬼のようなハルヒは情け容赦が無い。
「ちょっとキョン、あたしたちに休んでる暇なんて無いのよ」
 そのまま神社周辺の調査に連れ出されることになってしまった。
 1時間ばかりあちこち調べまわってた俺たちだったが、いきなりやってきたばかりの余所者に20数年前の事件に関する手掛かりなど見付けられるはずもなく、また神社の人にでも当時のことを聞こうとしたのだが、あいにくと神社にいたのはここの娘さんらしいかわいらしい巫女さんただひとりだった。
「そろそろ日が暮れてくる頃ですし、村の中心に戻りましょうか」
 古泉の提案でハルヒは古手神社周辺の調査を諦めて戻ることになった。いや、村の中心に戻るのは良いけど、今晩の宿はどうするつもりなんだ?
「こんな辺鄙な村なんだから、旅館の1軒ぐらいあるでしょ」
 ハルヒは楽観的だったが、そう都合よく出来てないことを俺たちはすぐに思い知ったのだった。
 俺たちは古い小さな木造校舎の、村の分校らしきところで子供たちがキャッチボールをしてるところを通り掛った。
「君たち、この村に泊まれる旅館あるかな?」
 ハルヒは子供たちに尋ねていた。
「麓の興宮まで降りないと、この村に旅館は無いよ」
 子供たちのリーダーらしき、年長の緑髪の少女が言った。
「仕方がありませんね。麓まで降りますか……」
 古泉がそうハルヒに提案しかけたのだが、それを遮るように少女は言った。
「お姉さんたち、車で来たの?」
 首を振るハルヒ。
「それは困ったわね。今日はもう町に行くバスは無いよ。今から歩いて降りても、途中で真っ暗になって危険だし……」
 なんかとてもまずい状況らしい。
「仕方が無いわね。神社の境内で野宿でもしましょ。ちゃんと人数分の食糧も用意してきたし……」
 やけに重い荷物だと思ったら、そんなものが入ってたのか。
「それはまずいわ。綿流しの夜以外によその人が暗くなってから神社の神域に入ったらオヤシロ様のタタリがあるわ……」
 急に少女の表情が深刻そうに変わった。
「オヤシロ様だかなんだか知らないけど、SOS団がそんな非科学的な原因で神社での野宿を諦めたら名折れよ!」
 ますますやる気を出してる神をも恐れぬ罰当たりなハルヒに、少女がきつくにらみつけた。一瞬、ハルヒがひるんだ。
「そういえば、例の連続怪死事件、この村ではオヤシロ様のタタリだということになってるようですね」
 タタリで連続殺人事件?……なんだかハルヒが望むミステリー的な状況になってきたんじゃないかと俺は感じ始めた。しかし、この時すでに後戻りできない状況になっていたとはSOS団の誰もが気付いてなかったのだ。
「かぁいい!」
 突然、緑髪の少女の背後から別の少女の声がした。
「お姉さんのメイド姿、かぁいい!」
 少女は朝比奈さんのメイド姿に見とれてるようだった。
「魅音ちゃん、あたし、このお姉さん、お持ち帰りするね!」
 少女はそう言って朝比奈さんのメイド服のすそを引っ張る。朝比奈さんはどんな対応をしたらいいか戸惑ってるようすだ。
「あ、そうだ。前原屋敷なら泊まれるよ。ね、レナ」
 魅音とか呼ばれた緑髪の少女はもう1人の少女を見てそう言った。
「でも、その前に……泊めてあげるには条件があるの」
 魅音が出した条件は野球の練習を手伝ってほしいってことだった。ハルヒが二つ返事で引き受けたことは言うまでも無い。

 前原屋敷と呼ばれた建物は村の中心から少し外れた場所に立っていた。築20年以上って感じで、それでも村の中では新しい建物だった。以前、ある事件で所有者の息子が死んでしまい、両親もすぐによそに引っ越して行って建物だけが残ってるという話だったのだが……
「その事件って、連続怪死事件の最後に記されてる、少年による少女2名撲殺後自殺事件のことじゃないですかねぇ」
 仮の宿にたどり着くなり古泉はハルヒの用意してきた連続怪死事件の資料を調べてそう言った。無論、当時のことだから少年による凶悪犯罪も実名報道はされておらず、すべては推測なのだが……
「すると、この家で少女2名の撲殺が行われたって話ね」
 殺人事件が行われた場所だと聞いて朝比奈さんなんかは完全に震え上がって脅えているのだが、ハルヒは逆である。ますます意欲に湧いてきた様子だった。
「この家に泊まることになったのも何かの奇遇よ。天はあたしたちが事件を解決することに手助けしてるのよ。与えられたチャンスは最大限に生かすしか無いわ!」
 ハルヒは手にした金属バットを前に突き出した。おいおい、そのバット、さっきの子供たちのバットじゃないのか? グリップの先に悟史って名前が書いてあるし……
「握り心地が良いから持ってきてしまったみたいね。ま、明日にでも返しに行けば問題ないでしょ」
 ハルヒは悪びれも無くそう言った。
「それより、キョン。交霊術出来る?」
 いきなり何を訊いて来るのかと思ったが、もちろん俺にそんなことが出来るわけは無い。
「残念ね。この家に漂ってる犠牲者2人の霊と話すことが出来たら事件の解決に役立つかと思ったのに」
 そんな20数年前の殺人事件の犠牲者の霊なんて、とっくに成仏してるだろ……というか、成仏してくれてないと困るぞ。
「ま、続きは食事の後にしましょ」
 霊なんて聞いて余計に怖がってる朝比奈さんを有無を言わさず引っ張って、ハルヒは俺の運んできた食材で夕食の準備を始めた。
 とりあえず夕食を終えた後、俺は長門に連れ出された。
「この村、何かおかしい」
 長門はポツリと言った。どうやら長門の生みの親である情報思念体との連絡が、村に入ったとたんにばったり途絶えてしまったというのだ。
「涼宮ハルヒによる世界の変革が始まってしまったのかも……」
 いくらなんでも、まだこの状況でそれは無いだろと俺は思った。この雛見沢村に来たのだっていつものハルヒの気まぐれでやってきた場所にしか過ぎないのだし……
「でも、気まぐれで世界を変えられるのが、涼宮ハルヒ」
 その長門の指摘に、俺は背筋が寒くなってきた。

 激しい物音で目が覚めたのは夜中過ぎのことだった。
「いやぁ! やめて……やめてくださいっ!」
 遠く、恐らくこの前原屋敷の近くで女性の声が……いや、これは朝比奈さんだ。俺は慌てて飛び起きると屋敷から飛び出し、声のする方向に走り出した。すぐ後からハルヒと古泉も追ってきた。
 しかし、俺が懸命に走っても朝比奈さんの声に追い付けない。やがて声が途切れて、追いかける手掛かりは失われた。
「いったいどうしたというのよ?」
 ハルヒは俺をにらみつけるように言った。
「あんたが夜中に突然ドタバタと飛び出していくから付いてきたんだけど、説明しなさい!」
 どうやらハルヒも古泉も朝比奈さんの悲鳴は聞こえなかったみたいだ。俺は朝比奈さんが何者かにさらわれた様子があることを伝えた。
「そういえば、みくるちゃんの姿が見えなかったわね」
 俺たちはこれからどうしようか考えた。このまま知らない土地で夜中を探し回るより、朝になってから警察を呼んだ方が良いだろうということになったのだけど……
 俺たちが前原屋敷に戻ろうとし始めたとき、朝比奈さんの声が消えた方向から1人の人影が歩いてきた。もしかしてと期待はしたのだが、残念ながら朝比奈さんではなかった。夕方、分校で見たレナとかいう少女だった。
「それはオヤシロ様のタタリですよ」
 レナの顔には狂気に似た笑いがあり、その手には血のような液体の滴る斧が握られていた。レナはそのまま通り過ぎていったが、俺たちは背筋が凍り付く思いで何も声に出せなかった。
 まさか、朝比奈さん……俺は最悪の可能性を考えずにいられなかった。

(続く)

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涼宮ハルヒの乱入 SOS団VSホスト部

2006年05月23日 | 雑記
「ここが桜蘭高校ね。無意味にでかくてむかつく学校だわ。この涼宮ハルヒ様がやってきたからには、庶民の実力を思い知らせてやるわ!」
 俺たちの目の前には見るだけにわが国でも有数のお金持ち学校と言わんばかりの、巨大なキャンパスにそびえてる豪華な校舎があった。
「目指すは第3音楽室よ。みんな付いてらっしゃい!」
 いつものテンションで俺たちを引っ張っていくハルヒだったが、もちろん初めて来た学校の第3音楽室とやらがどこにあるのか、本人にわかってなかったのは言うまでも無い。無数の教室のドアを次々に開けまくるハルヒがさすがに疲れだしたのを見た古泉が、近くを通り掛った女生徒から場所を確かめて目的の場所にたどり着いたのは、校門に入ってからおよそ1時間も後のことだった。
「あったわ、ここよ!」
 第3音楽室の表示を見たハルヒは勝ち誇ったように言った。
「どんな迷宮の中に隠れてても、このあたしからは逃げられないわよ!」
 いや、別に迷宮でもないし、逃げてもいないだろ。
「目にもの見せてくれるわ、桜蘭高校ホスト部!」

 それは数日前のことだった。部室のパソコンでなにやらネットサーフィンしていたハルヒが、いきなり勝ち誇ったように笑い始めた。
「さすがにあたしね。100パーセントじゃないというのは納得いかないけど、ダントツで1位というのは気持ちが良いわ」
 オレはハルヒが何のことを言ってるのか、パソコンのディスプレイを見て確認しようとした。そこにはアニメ感想率調査とかいう企画の感想率新番組好感度の二つの調査の結果がブラウザで開かれていた。光希桃 Anime Stationとかいうサイトの企画らしいが、その両方で『涼宮ハルヒの憂鬱』が1位になっていたのだ。
「しかし、このコメントにある《Wハルヒ》とかいうのは何よ?」
 ハルヒの顔は俺に向けられていた。いや、俺に振られたってわからんぞ。
「さっさと調べなさいっ! キョン」
 やれやれ。何でハルヒのネットサーフィンのフォローまで俺がせにゃいけないのかわからんが、ここでハルヒの機嫌を損ねたらまた古泉のヤツが余計な気を回した行動に出てくるだろうから、ここはおとなしく従っておこう。
「《Wハルヒ》というのはだな、おまえの他に、この調査で2位になってる『桜蘭高校ホスト部』とかいう作品の主人公も藤岡ハルヒという名前だから、2人合わせて《Wハルヒ》ってことだ」
 俺は調べた結果をありのままにハルヒに報告した。その時点でこうなることは十分に予測できた。むしろ必然だと言った方が正しいだろう。
「あたしと同じ名前なんて生意気よ。アニメ界にハルヒは2人も要らないわ。どちらが本物のハルヒか、行って思い知らせてやろうじゃないの!」
 名前なんて単なる偶然のわけだし、どちらが本物かクソかも無いと思うが、言い出したら聞かないハルヒのことである。SOS団を率いて桜蘭高校ホスト部への殴りこみとなったしだいである。
 ちなみにこれまでのところ出ては来てないけど、朝比奈さんも長門もちゃんと付いて来ている。

 ハルヒが開けた扉の向こうにいたのは、爽やかな営業スマイルの男子生徒たち。なんだか古泉がご団体さんでいるような感じで近寄りたくない空気である。そのうち何人かがハルヒ、朝比奈さん、長門の3人をエスコートしようとやってきたが、明らかに俺と古泉は邪魔者扱いである。いや、頼まれたってこんなところ来たくは無いんだが。
 そんな時間も長くは無く、エスコートしようとするホスト部員の手を振り払ってハルヒが言った。
「ここに藤岡ハルヒって子はいる?」
 ホスト部員たちは一斉にある一点に視線を向けた。そこには童顔のかわいらしい男子生徒がいた。
「オレがそうですが……」
「いきなりハルヒを指名か?」などと騒ぎ出すホスト部員たち。しかし、ハルヒの目は明らかに敵意に燃えていた。
「あなたがニセモノね」
「ニセモノ?」
 相手の少年は怪訝そうな表情をした。そりゃそうだろう。突然やってきたよその学校の生徒にニセモノ呼ばわりされたら、誰だって意味不明である。
「あたしが本物のハルヒ、涼宮ハルヒよっ! これからあたしたちSOS団と勝負して、あたしたちが勝ったらその名前、即刻、変えなさいっ!」
 おいおい、いくら同じ名前の人間がいるのが気に入らないからって、むりやり他人に名前を変えろってか。
「むりやりじゃないわ。あたしたちが勝負に勝ったらって言ってるでしょ!」
 どうせ言っても無駄だろうが、名前の問題なんておもいっきし個人的な話だと思うが、何で俺たちまで巻き込まれなくてはならないんだ? それに、勝負って何だ?
「ここはホスト部でしょ。ホスト勝負よ! 一定時間内にどちらが多くの女の子からの指名を受けるか、それでいいでしょ?」
 それは完全に敵のフィールドというやつでは。だいたいホスト勝負なんて誰が女の子を接待するんだ?

 俺の疑問などハルヒは聞かなかったように、いつものごとく勝手に話を進めてしまった。SOS団のメンバーが5人だからってホスト部も5人の互角で勝負しようと言い出した時点から負けが決まったようなものである。
 女の子を接待するホスト勝負、当然ながらホストとして機能するのは男だけだ。SOS団の男子部員は俺と古泉の2人だけ。対するホスト部は5人全員が男子である。これじゃ1人あたりの勝負が互角でも合計すれば2対5の大差である。
「まったく、何やってるのよ、キョン」
 まるで負け模様の原因は俺のようにハルヒは怒鳴ってくる。まぁ、その怒りは分からなくも無い。規定時間の約半分が過ぎたが、俺の指名数は0。つまり、勝負が始まってから俺はずっと退屈を持て余しているというわけだ。それに比べて古泉は持ち前の爽やかな笑顔ともの珍しさで女の子たちにアピールして、個人の指名数では良い勝負をしている。もっとも、俺に古泉と同じだけの指名数があっても大負けなのには変わりはないが。
「仕方が無いだろ。向こうは専門家、こっちはまったくの素人で、オマケに人数でさえ負けてるんだから。まともな勝負にしたかったら、逆にハンデでももらっとくものだろ」
 俺がそう言うと、ハルヒは不機嫌そうに口を尖らせた。
「人数ぐらい気合でカバーしなさいよ」
 無茶は言わんでくれ。
「向こうは男子だけで5人調達できることを忘れていましたね」
 ニヤニヤしながら古泉が言った。こいつは何が嬉しいのだか、絶対に笑顔を絶やそうとはしない。ある意味、ホスト部の連中と同じ種族では無いかと疑ってしまう。
「4人……」
 長門がポツリとつぶやいた。
「何か言ったか? 長門」
 俺は聞き返した。
「向こうの男子は4人。藤岡ハルヒは生物学的には女子」
 な、何だって? 藤岡ハルヒが女子ってことは、男装してホストやってるのか?
「ふふふ……」
 それを聞いたハルヒが目を輝かせ、笑みを浮かべていた。見てはいけないものを見てしまったようだ。何か悪い予感がするのだが……
「後半はあたしたちも出るわよ、みくるちゃん!」
 そう言ってハルヒは朝比奈さんを引っ張ると、持ち前の行動力と強引さで、即座に男子の制服を調達してきた。
「さあ、これに着替えて!」
 さっそく朝比奈さんに男装させようとしているハルヒ。必死で抵抗しようとする朝比奈さんだが強引に更衣室に引っ張られ、ハルヒの思いのままに着せられてるのはいつものことである。ところが……
「キョンくん、見ないでください……」
 恥ずかしそうにうつむいてる朝比奈さんは確かに男子の制服を着てはいたのだが、その姿は男装というには程遠いものだった。ナイスバディの朝比奈さんを男装させようなんて考えがそもそも間違いだったのだ。隠し切れない胸のふくらみはかえってエロさ満点である。
 ごめんなさい、朝比奈さん。この光景は目に焼け付いて消えません。
「仕方が無いわね……」
 さすがにハルヒも朝比奈さんを男装させることは諦めたみたいだ。
「代わりに有希が着なさい!」
 今度は長門を引き込んで更衣室にこもった。
「さあ、準備はOKよ!」
 更衣室から出てきた長門とハルヒは、それは見事なまでの男装だった。
「おお」
 敵であるホスト部の連中も驚いているようだった。

 後半戦。俺と古泉に加えて男装したハルヒと長門を加え4人になった我がSOS団ホストであるが、ハルヒの作戦は功を奏してみるみる指名数を上げていった。古泉の指名数は前半よりややペースが落ちたものの高水準をキープ。後半参加のハルヒと長門は謎の美少年という触れ込みで、どんどん女の子たちの関心を引いていた。とくに長門の人気は異様と言えるほどだった。
 男装したと言ってもいつもの無口な態度が変わったわけではない。情報思念体の生体端末に営業スマイルがどうこう言ったって無駄だろうが、その愛想のなさがかえってミステリアスさが感じられて良いとは、人間の感覚も様々である。
 ああ、一つ言い忘れていたが、前半に引き続き指名数において俺がまったく貢献してないことは言うまでもない。
 しかし、いくら俺以外のホスト3人が指名数を稼いでいると言っても合計すればホスト部の5人と互角程度。おまけに前半の借金は膨大なものがある。このままでは負けは確実だと思った俺は、ふと長門と目を合わせてしまった。
 意味もなくうなずく長門。いや、俺の意図を察知したとでも言うのか、いきなり呪文を唱え始めた。おいおい、こんなとこで力を使うのかと思った俺だが、このままホスト勝負で負けてしまったらハルヒがどんなことしてしまうか心配なのは確かだ。ここは長門に任せるしかない。
 長門が呪文を唱えた途端、第3音楽室に足を踏み入れた女の子たちはすべてSOS団の方にやってくるようになった。誰一人例外もなく。おかしい、明らかにおかしいとホスト部の連中は疑ってるはずだが、目に見える妨害工作をしているわけでもないのでクレームはつけられない。
 こうして来る女の子来る女の子を3人だけで接待できるわけでもなく、オマケながら俺にも何回か指名が来た。ホストの体験がどうだったかというのはここに書いてるスペースも無いが、とにかく疲れる仕事だったのは確かである。
 こうして、時間いっぱいギリギリでSOS団の指名数は呪文前のホスト部の指名数を上回った。いや、上回ったはずだった。

「引き分け? それどういうことよ!」
 結果を聞いたハルヒは不服そうだった。
「ちょっと、キョン。あんた計算間違いしたわけじゃないでしょうね!」
 ハルヒの怒りは俺の方にも向かってきそうな気配である。しかし、計算に間違いはなかったはずだ。長門が呪文を唱えた時点での双方の指名数は何度も確認してるし、それ以降、入ってきた女の子はみんなSOS団を指名している。ホスト部の指名数が増えてるはずは無い……
「ご、ごめんなさい。私が悪いんです……」
 いきなり謝って来たのは朝比奈さんだった。
「私がホスト部に協力してしまったのが悪いんです……」
 ひたすら申し訳なさそうに頭を下げる朝比奈さん。そのままでは話がよくわからないので、とにかく謝るのをやめさせて事情を聞いた。概ね、次のような話だったらしい。
 ホスト部に指名が来なくなり、もうすぐタイムオーバーってときに、暇そうにしていた朝比奈さんに同じく対決には参加して無いホスト部の副部長がお茶を飲まないかと誘ってきたらしい。対決ももうすぐ終わりだし断るのもどうかと思った朝比奈さんは軽くOKしてしまったが、そのままホスト部のエリアに連れられた朝比奈さんは、誰とお茶を飲みたいか5人のメンバーから選べと聞かれたらしい。それでつい選んでしまったのがホストの指名にカウントされてしまったってことだ。
「そ、それって、インチキよっ!」
 ハルヒは敢然と抗議に行こうと立ち上がったが、俺はそれを押し留めた。
「何よ、キョン。あんたもホスト部の味方をするわけ?」
 納得いかないように睨み付けるハルヒ。
「ちょっと落ち着け」
 それから俺は朝比奈さんに向き直って訊ねた。
「ひとつ聞きますが、ホスト部は先輩の指名通りの人がちゃんと一緒にお茶を飲んでくれたんですか?」
 朝比奈さんはこくりとうなずいた。ホスト部のメンバーに1人、とても高校生とは思えない幼くてかわいい感じの男の子がいたのだが、朝比奈さんが指名すると彼がやってきて世間話をしながら一緒にお茶を飲んでくれたという・
「ホスト部はちゃんと接待してるってことだ。カウントは仕方ないな」
 俺はハルヒがそれを認めるように、そう言い聞かせた。カウントを認めても引き分けだ。負けたわけじゃないんだからハルヒのプライドも傷付かないだろ。それに、下手に勝って、藤岡ハルヒの名前を変えさせるってことになったら、そっちの方が大変だ。
「そうですね。ここは引き分けで良いじゃありませんか。涼宮さんの素晴らしさはホスト部のみなさんも身に沁みてわかったことでしょうし」
 古泉もそう言って俺に同意した。
「有希はどうなのよ? わざわざ男装してまで頑張ったのよ。引き分けなんて悔しくないの?」
 いや、無理やり男装させたのはおまえだろ。
「私は引き分けでいい」
 長門はポツリと答えた。
「そういうことだ。おまえも引き分けで我慢しろ、ハルヒ」
 まだ何か納得いかない様子のハルヒだったが、思い直したように口を開いた。
「仕方ないわね。今日のところは藤岡ハルヒが女だったことに免じて引き分けで我慢するわ。男なら絶対に許さないところだったんだから……」
 何はともあれ、ハルヒの許容範囲が多少は広がったみたいで、それはめでたいことである。もっとも、藤岡ハルヒの正体なんて例の感想率調査の『桜蘭高校ホスト部』のコメントを見ればわかってたはずなんだが、それを指摘したらハルヒの機嫌を損ねることは目に見えていたから、このことはずっと黙っておくことにしよう。

(了)

 あっ、こんなの書いてる暇があったらアニメを見なきゃ……
 これのホスト部から見たバージョンがあればおもしろいかも……

涼宮ハルヒの憂鬱 朝比奈ミクルの冒険 Episode00(限定版) KABA-1501
涼宮ハルヒの憂鬱 朝比奈ミクルの冒険 Episode00(限定版) KABA-1501

桜蘭高校ホスト部(1) VPBY-12614
桜蘭高校ホスト部(1) VPBY-12614

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第8回アニメ感想率調査2006春

2006年05月18日 | 雑記
 光希桃Anime Stationさんところのアニメ感想率調査の結果がぼちぼちと出ています。厳しさランキングでは相変わらず微妙なところにいますけど、終了番組に関しては、うちの評価結果はあの通りで間違いではありません。
 プッシュ気味に書いたのが『ノエイン』『おゆい』『LAP』というところで、逆にボロクソに書いたのが『半月』と『タクロア』。評価理由等はコメントから読み取ってください。
 集計結果では『マイメロ』と『化猫』の高評価が意外な感じでした(あと『GPO・緑の章』もね)。ま、蓼食う虫も好き好きですからね。いや、『マイメロ』も『化猫』も見た人が高評価なのはわかるんですけど、そんなに見た人が多いのかなって感じ。

 問題は感想率調査と新番組なんですが……特に感想率調査の数値はゴメンなさい。これ、投票したのは調査開始直後なんで、アニメの放送としては4月の第4週が終わった時点ですね。ところが、膨大な新番組の海に溺れて、この時点で視聴完了してたのは第2週の分までです(と書いてる現在も第3週を見終えたばかり)。
 つまり、この投票の数値は第2週までの実績(一部、見たら消す作品とかHDDに編集結果が残せないからその週のうちに必ず見る作品は第4週分までカバー)と、保存用の作業の時に感じた手応え等から出した予測値なんですね。この時はGW中に第3週分は見終えるだろうし、第4週分もこんな感じかな、と思ってたんですが……
 見通しが甘かったというか、GW中はむしろ普段よりもアニメが消化できなかったって感じでどんどん後伸ばし。何とか第3週分までは予測通りに進行したけど、さすがにこれ以上消化を遅らせる物理的余裕が……

 そんなわけで、感想率調査とか新番組の「見切り」「継続」の区分は4月第3週分までのデータだと思ってください。(って、それじゃ『ツバサ・クロニクル』は入ってこないんだけど、ま、これは責任持って視聴&感想を続けますのでご容赦を。一応、これは保存用の編集前にある程度流し見してますし、前シリーズからの継続だから)
 もっとも、4月第4週まで持ってきたところで、締め切りギリギリまで粘ってるサイトだと5月第2週分まで勘案した結果になってるんでしょうけど、この辺の差異は投票期間の幅による揺らぎの範疇なので、知ったことではありません。
 投票できる時間のうちに投票しておいたということなので……

 ……というところで4月第4週分からは削れるものは削っていく方向です。ま、いつもの「見切り」基準で切れるのってあと数本ぐらいしかないから、残りは泣く泣く削っていくしか無いんだけど……目標は最低半減、できれば1/3まで減らせれば少しは健全な生活に戻せるかなというところ。無理だろうけど……
 とりあえず、「見たいものみんな見て書きたいこと書く」というスタンスはやめて、1週間なら1週間の期間内に「見れた番組だけ見て書けることだけ書く」というスタンスに変えていかないといけないのかなぁ。でも、絶対にやめられない作品とかもあるし。

☆長期継続的に書き続けてる作品☆
 『名探偵コナン』(第1話から)
 『ウルトラ・シリーズ(旧作、ファミリー劇場)』(『ウルトラQ』から)
 『ウルトラ・シリーズ(新作)』(継続しては『ガイア』から)
 『仮面ライダー・シリーズ』(『クウガ』から)

☆新番組以前の作品(シリーズ)☆
 『Fate/stay night』
 『ケロロ軍曹』
 『BLOOD+』
 『ブラック・ジャック21』
 『ふしぎ星の☆ふたご姫Gyu!』
 『ふたりはプリキュアSplash Star』
 『蟲師(地上波未放映版)』

☆新番組で外せない☆
 『涼宮ハルヒの憂鬱』
 『ひぐらしのなく頃に』
 『ストロベリー・パニック』
 『Soul Link』
 『西の善き魔女』
 『ラブゲッCHU ~ミラクル声優白書~』
 『砂沙美☆魔法少女クラブ』
 『ザ・サード ~蒼い瞳の少女~』

……これくらいなら何とかなりそうだけど……

☆続編ものは外せない☆
 『ツバサ・クロニクル』
 『スクールランブル二学期』
 『ARIA The NATURAL』
 『ああっ女神さまっ それぞれの翼』

☆やっぱし見たいかも☆
 『うたわれるもの』
 『吉永さん家のガーゴイル』
 『いぬかみっ!』
 『ZEGAPAIN -ゼーガペイン-』
 『錬金3級 まじかる?ぽか~ん』
 『シムーン』
 『彩雲国物語』
 『夢使い』
 『xxxHOLiC』
 『RAY THE ANIMATION』
 『桜蘭高校ホスト部』

……とか言ってると、結局「見切り」出来るのは……

☆従来から見てるけど優先度が低い☆
 『BLEACH』
 『ポケットモンスターAG』
 『MAJOR』
 『ワンピース』

☆もうちょっとかなという新番組☆
 『女子高生 GIRL'S-HIGH』
 『ガイキング』
 『NANA』
 『.hack//Roots』
 『ガラスの艦隊』
 『きらりん☆レボリューション』
 『ひまわりっ!』
 『BLACK LAGOON』
 『ウィッチブレイド』
 『姫様ご用心』
 『TOKKO 特公』
 『魔界戦記ディスガイア』
 『エルゴプラクシー』

……という程度になってしまうのかなぁ。ただ優先度が低いけど見続けてる作品というのは、ほとんど感想書かずに、ながら見してる作品で、あんまり感想書く作品の視聴時間の圧迫には繋がってないのは確か。
 重点的に感想を書いてる作品というのは作品に集中しながら感想書いてるし、時には同じシーンを何度も見直したりしてるからそれ相応の時間が必要なのね。そういう意味では毎回感想を書く対象から外してしまえば、見切らずに済む作品が増えるのも確か。
 あと、今週から始まる次の2作品がどうなのかも問題だし……

 『機神咆吼デモンベイン』
 『神様家族』
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西暦2021年のアニメ事情

2006年04月01日 | 雑記
 無限に広がるアニメ界。雑種多様な光に包まれた世界。死んでいく作品もあれば、生まれてくる作品もある。そうだ、アニメは生きているんだ。
 しかし、我々を包む日本のテレビアニメは滅亡の危機に瀕していた。アニメファンの懐具合は干上がり、萌え系アニオタや腐女子は死滅した。コアなアニオタはその生存権を地下に求めて細々とアニメを見ていた。
 そのアニオタを嘲笑うかのような目が宇宙にある。我々の受信アンテナを隔たるところ14万8000メートル。新東京タワー、地上デジタル放送アンテナこそテレビアニメを危機に追いやる悪魔の手先なのだ。

 時に西暦2021年。20世紀の終わり以来、着々と日本侵略を始めていたデジタル放送化の魔の手はついに地上波テレビ放送にまで及んだ。西暦2011年のアナログ停波は人々の反対虚しく強行され、いまやデジタル受信装置なくしてアニメは見れなくなった。
 日本のカルチャー産業を支えていたアニメの勢いは急速に弱まり、産業全体が斜陽化を余儀なくされ、そして10年が過ぎた……

 ここはとある大学アニメサークルの部室。深刻そうな表情のアニオタが何人か集まっていた。
「ダメだ。このテレビではもうアニメは見れない」
「妥協するのですか、会長」
「このままでは何も見れなくなるだけだ。デジタルテレビを買おう」
「会長、古代が資金拠出を拒否しました」
「沖田さん、僕は嫌です。ここで妥協してしまっては壊れていったアナログテレビたちに申し訳がたちません」
「明日のアニメのために今日の屈辱に耐えるのだ。それがアニオタだ」
「アニオタなら、戦って戦って戦い抜いて、1作品でも多くのアナログ作品を見て死んでいくべきじゃないんですか?」
「古代、わかってくれ……」

 2011年のアナログ停波とともに日本国内でのアナログテレビの販売は禁止され、市場には高価な大画面デジタルテレビとワンセグ用の小さな携帯端末ばかりになってしまった。辛うじてアジア製の普及価格帯のテレビもあったが、それらはすべて法律で最新の著作権管理技術に対応していないアナログインタフェースの搭載は禁止されていて、旧来のアナログ機器に繋いで見ることは出来なくなった。
 一方、レコーダーの類も次世代DVDの登場とともに最新の著作権管理技術に対応していない旧世代のDVDソフトの再生機器は生産禁止となり、新たな機器は旧ソフトの再生機能はサポートしなくなった。
 買換え需要を見込んだソフトメーカーはここぞとばかりに古いソフトを次世代DVDにして一斉に売り出したが、そんなに一度に需要が出るわけもなく、しかもその大半が「HD収録だから」という理由で(しかもその多くはSD素材を単にアップコンバートしただけの画質の劣悪なものだったりしたのだが)旧ソフトの2倍近い価格で出てたので売れるわけもなく、利益の出ないソフトメーカーは次々に倒産、アニメ市場は冷え切っていった。
 大画面デジタルテレビにしろ、次世代DVD専用機などの高価なビデオ機器にしろ、それらは生涯賃金も退職金も受給年金も高くてテレビ以外に娯楽を持たない団塊の世代以前の需要を当て込んだものだったのだが、数年経てば事情は変わり、それらの金持ち世代の購入ブームは去って、残ったのは生涯賃金も受給年金も低く終身雇用さえ保証されてないから退職金も無いそれより若い世代ばかりで、これらの世代はテレビ以外にも娯楽は多く、テレビごときにそんな大金を掛けてるわけにもいかないのが当然であり、この方面の市場もまったく冷え切ってしまい、大画面テレビに特化していた大手家電メーカーの幾つかも倒産した。

 それまでに多くのコレクションを抱え込んでいたアニオタたちは、新しいテレビやレコーダー等ではそれらが再生できないため、古いアナログ時代の機械を使い続けるしかなく、それらは年を経るにつれて中古市場価格も跳ね上がり、ヴィンテージ品扱いされるようになった。しかしながら、アニオタの過酷な使用環境にあっては製品寿命の到来も早く、特に色の再現性に優れたブラウン管方式のテレビなどは意外と早くに市場からその姿を消していってしまった。
 アナログ方式のテレビが次々と寿命を迎えていく中で注目を集めたのはアナログキャプチャー機能搭載のPCである。もちろん、アナログ停波とともにこの方面の機器も新機種が出て来なくなったが、PCのデジタル放送への対応が比較的遅かっただけに多くの製品が出回っており、またキャプチャーカードもしくは外付けのキャプチャーユニットと関連ソフトさえあればPCを買い換えても使い続けられるために、アニオタの需要を満たすだけの供給は比較的確保されていたと言える。
 経済的事情や居住環境の事情から大画面デジタルテレビや高価な次世代DVDレコーダーを買えないアニオタたちにとっては、現行のデジタル放送でさえPC内蔵のデジタルチューナーを使って見るのが当たり前になっていたので、この頃にはアニメはPCで見るものという常識が出来上がっていた。

 HD化需要を誤認したソフトメーカーの不振等はいきおい新作アニメの製作数の減少につながり、2006年当時は有り余るほどあったアニメの新作も、2021年現在では1シーズンの2~3本あれば幸運といったところにまで減っていた。
 新作が無ければそのぶん再放送が増えるようになったのであるが、高画質を売りにしたデジタル放送の手前、いまさらHD中心の放送を減らすわけにも行かず、かといってSD素材のアップコンバートで誤魔化すわけにもいかないので、放送デジタル化の間でHD素材の作品が粗製濫造されていた2006年前後の大量アニメ時代の作品がその中心になっていたが、内容的にバリエーションが乏しく、人気のある作品はほとんど無かった。そんな状況でも人気の出た一部の作品は続編を作られることもある。『灼恨のンャナW 宿命のフレイムヘイズ』や『ブタコイ アナザー・オルタナティブ2021』はその代表的な例である。
 『灼恨のンャナW』は原作の未アニメ化エピソードをアニメ化した続編で、15年ぶりにンャナを演じる針宮理恵のツンデレ演技に注目が集まっている。
 『ブタコイ アナオル2021』は『双変』の6組の双子がそれぞれタイムスリップしながら各時代を舞台に起るエピソードを綴った1話完結の連作もので、前作との直接的な関係は無く、ただ双子たちに関わるキャラクターとして各時代に双葉恋犬郎という名前のキャラ(デザインは毎回違うが声優は同じ)が登場しているだけ。残念ながら前作の声優さんが(廃業した人とかもいて)集められなかったので双子のキャスティングは一新されている。ただ、掘江由衣、小清氷亜美ら一部の旧作キャストがゲストキャラとして出演するとのことで、特に数年ぶりにアニメ出演の仕事がもらえた落会祐里香は当人のブログではしゃぎまくってるとのこと。

 当然ながら、著作権に配慮した地上デジタル放送は以前のアナログ放送のように簡単に録画コレクションできる環境ではなくなっている。高価な次世代DVDレコーダーではコピーワンスこそ廃止されたけど、それで録画したメディアは同様の著作権技術に対応した高価なレコーダーやプレーヤーでしか再生できなく、PCで見ることなんてもってのほか。すでに一般のアニオタからはアニメを録画保存するという文化は無くなり、それはブランク・メディアの売れ行き不振にもつながり、そのことがメディア価格を吊り上げ、さらに録画に対する敷居を高くしているというイタチゴッコである。
 大半のソフトはネット上で配信されてるとは言え、多くの作品は配信期間が限られてる上に料金が高くて利用者は少ない。いきおい、不正録画されたファイルが、海外のサーバーや、これまたウイルス対策ソフトとのイタチゴッコで絶えず進化し続けてるP2Pソフトなどで配布されている状態が続いており、貧乏なアニオタはこれらを利用しているようである。
 いうまでもなくコアなアニオタや金持ちは高価なHDソフトに金をはたいてはいるけど、それらは社会的には無に近いような一部でしかなく、十分な市場を形成しているようには思えない。2021年の日本では勝ち組・負け組の階層差が顕著化しており、アニオタであること自体が負け組の象徴であるから、アニオタ一般は非常に貧乏であるから、以前のようにアニオタを当て込んだ商売は成り立っていないのが現実。したがってソフト化も一部の売れ行きが見込める作品に限られている。

「アニメ文化はなぜ死んだ?」
「コピ厨だからさ」
 かつて1年戦争と呼ばれたアナログ時代のアニメ文化を取り戻すためのアニオタたちのネットでの戦いも、何も取り戻すことは出来なかった。

 夕陽を浴びて死んだような深い眠りについているアニオタの録画コレクション。ソフトとしての寿命の尽きるその日を果たして待つだけなのだろうか。明日への希望は無いのであろうか……

「アニオタのコレクションは、たかが何十年で消えてしまうようなちっぽけなものじゃないはずだ。この宇宙いっぱいに広がって永遠に続くものじゃないのか?
 オレはこれから自分のコレクションをそんなコレクションに変えにいく。これは挫折ではない。
 しかし、世の中には現実の温かい血の通う世界でアニオタのコレクションを守る者もいなくてはならない。君たちは生き抜いて、明日の素晴らしいアニオタのコレクションを築き上げてくれ」

「両舷全速。目標、新東京タワー。○○○発進!」

 そこにすでに言葉は無かった。人々は固唾を呑んで彼の行方を見守った。彼の目には走馬灯のようにアニメの美少女たちが微笑みかけてきた。

 西暦2201年、一人のアニオタが永遠の旅に旅立っていった。
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