電脳アニメパス

アニメ及び周辺文化に関する雑感

なぜ『宇宙戦艦ヤマト』では毎年のように侵略者がやってくるのか?

2010年02月11日 | アニメ
 『宇宙戦艦ヤマト』の世界では、第1作のガミラス帝国を初めとして、白色彗星帝国、暗黒星団帝国……と、地球は毎年のように強大な侵略国家の危機に襲われています。そりゃ、宇宙に帝国主義的な侵略国家があれば地球に狙いを定めることもおかしくはないけど、毎年のような短期のスパンで銀河系内外からの巨大星間国家が攻めて来るというのは、確率論的に考えたら有り得ないような気がします。

 でも、それは情報の不偏性を前提にした話です。
 全宇宙(……と言っても、あまりに遠いと地球まで侵略に来ること自体が困難だから、銀河系やアンドロメダ星雲を含む局部銀河群の範囲内ぐらいが現実的かな)に展開する巨大な星間国家群と言えども、そこに存在するすべての惑星情報を把握しているってことは無いでしょう。銀河系内でも新興国家のガルマン帝国はともかく、古くから広大な支配領域を持っていたボラー連邦でさえ、ラジェンドラ号との接触があるまで地球の存在は知らなかったということを無視してはいけません。むしろ、大マゼラン雲にいたガミラスが地球を知っていたことの方が珍しいというべきでしょう。

 ガミラスが地球を知ったのは、移住の地を求めて銀河系に手を伸ばしたらたまたま発見したというのが確かなように思いますが、一説には地球人もガミラス人も元々はイスカンダルからの移住者だったとかいう説もありますので、その時の情報が残っていたのかも知れません。(実際、ガミラスがどの程度まで銀河系に支配圏を広げていたのかは不明です。地球までの一直線上しか押さえてないとしたら、最初から目的地は地球だったということになります)

 ガミラスが移住先を求めてわざわざ地球まで攻めてきたということは、ガミラスから見て地球より近い範囲には彼らの移住に適した惑星が無かったということです。ガミラスが地球に求めたのはビーメラ星のようなただの植民惑星ではなく、ガミラス本星に代わる安住の地なのです。
 つまり、地球はガミラスから見れば遥か遠方にも関わらず、地道に兵站を伸ばしながらでも着実に手に入れたいだけの魅力的な価値のある惑星であり、そのような惑星は広大なガミラスの支配領域内にも無い希少な存在というわけです。

 このことは白色彗星帝国の場合にも見て取れます。彼らがどんなルートで宇宙を進軍してきたのかはわかりませんが、地球をオアシスのような惑星だと言ってるから、彼らの進路上に置いても希少な存在なのでしょう。
 そんな希少な存在である地球を、宇宙の彼方からからやってくる侵略者が簡単に発見出来るとは思えません。ま、ボラー連邦のようにたまたま遭遇した(……というよりも彼らにとっては地球はそんなに希少価値のある存在では無かったから無視してただけかもしれない)とか、ディンギル帝国みたいに祖先が地球人だったとかいうケース以外の場合は、外部からの情報取得によりその存在を把握したと考える方が自然です。つまり、ガミラスの地球侵略がその他の星間国家群に地球の存在を知らしめるきっかけになったのです。

 さて、希少価値のある地球の存在を知ると各星間国家はその侵略威力に駆られます。直ちに地球侵略の計画を立て始めるでしょう。しかし、だからと言ってすぐに侵略を始めることは出来ません。足が長くなると兵站を伸ばさなくてはなりませんし、何よりも他の星間国家が侵略しているところに割り込むことは出来ません。
 たとえ、その星間国家が自国よりも弱いにしても、強大な星間国家同士の争いは大規模な消耗戦になり互いに疲弊してしまいます、そこに第三者の介入を許せば共倒れになるだけです。あの白色彗星帝国がヤマトに敗れて零落れたガミラスと友好関係を結んだのも、単に大帝の気まぐれというわけではなく、そういう事情を考えてのことだと考えられます。つまり、地球に対するガミラスの優先権を穏便に譲らせるとともに、第三者に介入の隙を与えさせないためです。けっして地球の戦力ごときに対抗するための同盟ではないでしょう。

 つまり、これらの星間国家群にとっては地球は今すぐにでも手を出したいほどの魅力がある存在ではあっても、先に他の星間国家が手を出してるところにはうかつに介入出来ないというわけです。しかも、その先行する強大な星間国家が敗れたりしてしまうと、その二の舞を踏まないためにも地球に対する戦略を立て直す必要が出てきます。したがって、先行する星間国家との戦いで疲弊した地球を速攻で侵略するというわけにも行かなくなってしまうのです。
 これが、『ヤマト』の世界では毎年のように侵略者がやってくるという状況の理由なのです。

【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #13

2009年02月26日 | アニメ
秋子さんのお家に住まう居候が、
今日も天使のような羽根リュックで
背の高いアーケードを潜り抜けていく。
恐れを知らない食欲を包むのは淡い色のダッフルコート。
空っぽの財布を気付かれないように、
黒い食い逃げの野望は悟られないように、
こっそりと歩くのがここでのたしなみ。
商店街の鯛焼き屋、ここは乙女の戦場。

(ロサ・カニーナじゃないけど、真っ黒なアンコ色の薔薇だろうね)


 第13話「あぶなげな三重奏~trio~」

【ストーリー雑感】

 祐一と名雪の前を通っていく路面電車。ここって路面電車の走ってる町なのか? そんなに大都市とも思えないんだけど。北国で路面電車というと札幌とか函館ってイメージだけど、関西から見たら福井や富山だって北国だからねぇ。ま、昔ながらの市電のイメージってことを考えたら札幌か函館だろうけど、福井や富山も車両が新しくなったのは最近だと思うから、これの原作が出た当時はもっと古い車両が走ってたのだろうけど……
 いくらなんでも札幌みたいな大都会とは思えんから、函館辺りがモデルなのかねぇ。

 舞踏会の後から祐一が変だという名雪にそんなこと無いとはぐらかす祐一だけど、生徒会に呼び出されたと急いでいる北川を見て問い質そうとしてたら、とても何も無かったとは言えないだろ。
 舞が刀を振り回してたから退学にすると言ってるようだけど、それで舞踏会の事件が解決するわけでも無かろうに。
 生徒会室に乗り込もうとした祐一だけど、すでに中には佐祐理さんが来て抗議してる様子。こうなることを予期してたのか、動きが早いね。通学で祐一と一緒になったりもしてるから普段から登校時間が早いわけではないだろうし。
 ガラスが割れた原因はどうでも良くて、要するに前から目障りだった舞をこれ幸いと退学処分にする口実が出来たって感じだな。そこに飛び込む祐一だけど、あれは余興の剣の舞いだったって言い訳はあんまし良くはないと思うぞ。ま、幸い北川が助けてくれたからその場はどうにかなったように見えたけど……

 いつものように校庭に来てる栞。同じクラスに「美坂香里」というやつがいると言ったら、お姉ちゃんと同じクラスなのかと反応してる栞だけど、それを聞いてるのか聞いてないのか、香里は一人っ子だと言ってたと続ける祐一。すると、いきなしこの学校にいるのは姉と同姓同名の人だと言い直してる栞。反応が露骨過ぎね。間違いなく香里が姉ですと言ってるようなものだけど……
 階段の踊場から祐一と楽しそうに話してる栞を見ている香里。いったい何を考えてるのかねぇ。で、その後ろを舞と佐祐理さんが通っていくのだけど……その直後に昼食のシーンがあったけど、その少し前にチャイムが鳴ってたところをみたら、祐一は授業中抜け出して栞に会ってたのか? でもそんなとこだと教師にすぐ見付かるだろうに。

 昼食を終えた佐祐理たちに絡んで来てる生徒会長。佐祐理が舞を庇うのを理解できないとか言ってるけど、佐祐理が親友だからと答えたら言い返す言葉が無いか。いや、こういうやつには親友なんて呼べる人間はいないんだろうけど。
 舞が今度問題を起こせば退学は間違いないと言い、そうなったら舞を庇った佐祐理にも何らかの処分があるとでも言いたげな様子だけど、舞ににらみ付けられたらビビッてるのがちんけな小悪党って感じだな。
 どうでもいいけど、生徒を退学にするとかしないとか言うのは学校側が判断することであって、生徒の代表である生徒会がどうこういう話じゃないだろ。そりゃ、生徒を庇って学校側の処分に抗議することはあるだろうけど、率先して生徒を処分する生徒会って、どんな権限の強い生徒会なんだ? ま、アニメとかじゃ珍しくはないみたいだけど……

 放課後の校庭で竹刀を振ってる祐一。自分も戦うことでさっさと魔物を退治するとか言ってるけど……
 そんな祐一の練習に物を投げつけてる舞……はいいけど、消火器なんか投げるなよ。立派な器物破損で自分から退学時期を早めてるようなものじゃないか。どうでもいいけど、消火器って竹刀で折れるのか? どう考えても竹刀の方が折れてしまいそうな気がするんだけど……

 帰宅途中に出会ったあゆ。自分も学校帰りだとか言ってるけど、学校はどこかといわれたら森の方にあるって、どこの森だ? まだ探し物は見つからないと言ってるけど……
 魔物退治にあゆを連れて行く祐一だけど、そんな怖がりを連れて行くって……いじめっ子だな。どう考えても足手まといにしかならないから舞に嫌がられると思うんだけど。
「舞さんは不思議な人だね」
 いや、お前の方も負けないくらい不思議な人だと思うぞ。
 前に舞が真琴の居場所を教えてくれたから、今度はあゆの探し物の場所を教えてくれないかと頼んでる祐一だけど……舞の答えは自分が教えたら意味がないってこと。なんかあゆの正体も事情も全部察知したような反応なんだけど、本当か?
 で、用が済んだら追い返されてるあゆ……哀れね。ま、いても怖いだけだし、本当に足手まといにしかならないからね。

 あゆが帰った後、答えの意味を問い質す祐一。自分は待てなかったのにずっと待ってるあゆは強いと言う舞。はぐらかされたようで怒る祐一だけど、その時、魔物の気配が。
 魔物と戦い始める舞。何とか1体をしとめるけど、出るなという指示を無視して飛び出した祐一に不愉快な様子。今日はもう出ないと言ってさっさと立ち去っていく舞に、怒ってる祐一だけど……

 翌朝。相変わらず寝ぼけてる名雪。トイレで着替えようとしてるのはともかく、祐一の目の前で平気で着替えるつもりだったのか? いや、作品に描かれてないだけで、それが日常光景かもしれないけど。
 おや、ピロってまだ水瀬家にいるのね。

 昼休み、機嫌の悪そうな祐一を訝しむ佐祐理さん。舞と喧嘩中だという祐一だけど、肝心の舞の反応は、
「祐一がそう言うなら、そう」
 こういうやつだから祐一は怒ってるんだろうけど、まったく本人に伝わってないんじゃ怒ってる意味が無いわな。
 祐一に訊かれて自分たちが仲良くなったきっかけを話し始める佐祐理さん。いや、佐祐理さんの話だけだと意味がわからないから映像で想像するしかないんだけど、舞が弁当を揚げてた犬は、その前に追い払ってた狂犬と同じ犬なのか? で、佐祐理さんも弁当をあげたら2人とも昼食がなくなったから学食で牛丼を食ったのが舞の牛丼好きの始まりだって話ね。(いや、そこまでは言ってないな)

 放課後、こっそり佐祐理さんに呼び出された祐一。さては魔物退治のことを気付かれてるのかと怪しんでた祐一だけど……明日は舞の誕生日だからプレゼント選びに付き合えって話だったのね。
 女の子らしいプレゼントということで町で一番大きなぬいぐるみを買うことにしたのはいいけど、1分の1スケールのオオアリクイって……どうみても女の子が喜ぶプレゼントとは思えないぞ。舞はどうか知らないけど。そりゃ3年も不良在庫になってるのも当然だね。なんか今にもシルクハット被ってステッキ持って「バカめ」とか言いそうだし。だいたい、ぬいぐるみに1分の1スケールとか、等身大フィギュアでもあるまいに。
 結局、3年というのにつられて買ってしまってる佐祐理さん。ま、金持ちのお嬢様の経済感覚は庶民にはわからないし。それにしてもそのオオアリクイ、そのまま1人で持ち帰ったのか、佐祐理さん。ある意味、勇者だな。

 で、また夜の学校。佐祐理の他に友人はいないのかという問いにずっと前に1人いたという舞。そいつはいなくなったとか言ってるけど……ま、どうせ7年前の祐一とかいう話なんだろうね。
 この日も襲ってきた魔物。同時に現れた2体のうち1体を引き受けてる祐一だけど、辛うじて時間稼ぎできてる程度だね。しかし、魔物は祐一を狙ってるという舞。それで祐一が何者か怪しみ始めた舞だけど……。それはいいけど、これまでは何か特定のものとか狙って現れてたのか?


【サブタイトル解題】

 トリオはマーチ曲等の複合三部形式の中間部を指したりもしますが、ここでは三重奏のこと。複合三部形式の中間部の方は、もともとこの部分が3パートの楽器で演奏されることが多かったことから、三重奏のトリオの名前で呼ばれるようになったみたいです。
 今回のサブタイトルとしては、素直に祐一、舞、佐祐理さんの3人を指してると考えて良いでしょう。実のところ、今までは舞と佐祐理さんの結びつきに比べると祐一が少し距離を置いた感じで、完全なトリオではなかったんですね。祐一が舞に対して怒ったことでようやく3人対等の立場になれたって感じです。
 でも、その関係は魔物の話を佐祐理さんが知らないということで、あやふやな力関係になってしまって、一歩間違えば崩れ去ってしまいそうです。そこが「あぶなげな三重奏」ということなのでしょう。


【使用BGM】

01.「Last Regrets」
  OP
02.「凍土高原」
  生徒会に抗議する佐祐理
03.「pure snows」(ピアノアレンジ)
  姉のことを話す栞
04. 「Last regrets -acoustic version-」(末尾)
  佐祐理を脅す久瀬
05. 「日溜りの街」(アレンジ版)
  あゆと鯛焼き
06.「冬の花火」(アレンジ版)
  あゆは強いと言う舞
07.「兆し」
  魔物の出現
08.「少女の檻」(アレンジ版)
  立ち去る舞に叫ぶ祐一
09.「雪の少女」
  名雪の朝
10.「pure snows」
  舞と佐祐理の馴れ初め
11.「彼女たちの見解」
  プレゼント選び
12.「兆し」
  魔物の出現
13.「風の辿り着く場所」
  ED
14.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 珍しくアバンタイトルに音楽が付いてません。ま、いつもは回想ナレーションが入ってるわけですけど、今回はいきなし本編が始まってるということもありますが。
 舞シナリオが進行している影で、栞シナリオとあゆシナリオもちょっとずつ進行してるわけですが、それに対して動きが無いのが名雪だけど、とりあえず「雪の少女」が使われて存在をアピールしてる感じです。ま、出番だけならいつも十分にあるんですが。
 今回はアレンジ曲の使用が目立ってた感じかな。でも、アレンジ版はサントラ曲とは曲調が違うからよっぽどうまく使わないと違和感が顕著に感じられるんですね。作品に比べてポップすぎるとか。「雪の少女」もそういう意味では使いにくい曲だと思うんですが……


【オオアリクイのぬいぐるみ】

 舞台のモデルが実は福井だとか富山だとかいう珍説で引っ張ってもいいんだけど、面倒だから今回はオオアリクイのぬいぐるみについて考察してみましょう。

 そもそもこのオオアリクイ、売ってた店が怪しげですね。見た感じ、とてもおもちゃ屋だとかファンシーショップだとかには見えない、古ぼけた骨董品屋みたいな店。函館辺りが舞台だったらもうちょっとマシな店がありそうな気がするんですが。ま、意外と大きなぬいぐるみって売ってる店が限られるのかも知れませんが、単に祐一も佐祐理さんも店を知らないという話なのかも知れません。祐一は余所者だし、佐祐理さんはどっちかというとプレゼントされる方がメインの人って気がしますから。

 それにしても、1分の1スケールのオオアリクイって、誰が何を考えて作ったぬいぐるみなんでしょうねぇ。店の人によると3年前に入荷したまま売れ残ってたって話ですが、そりゃよほどの物好きじゃなけりゃ買おうとは思わないでしょうね。委託販売でもなけりゃ基本的には店の買取だから返品も利かないだろうし。
 この手の商品はメーカーとか問屋から押し付けられたりするものじゃないと思うから店の判断で入荷したものでしょうけど、売れると思ったのでしょうかねぇ。単に店のじいさんの趣味だとかいうのが一番もっともらしい答えだとは思いますが。

 実はこの作品世界ではオオアリクイが主人公のアニメ番組が流行っていて、これはそのキャラクターグッズだったとかいう設定があるのかも知れませんが、少なくともこの作品の現在時間ではそんなに人気は無いみたいですね。ま、『だんご大家族』ほどの国民的人気のある番組ではなかったということですか。

 オオアリクイといえば、「主人がオオアリクイに殺されて1年が過ぎました」とかいうスパムメールが流行ってたことがあったみたいですが、時期的にはこれがネタ元の一つなのでしょうか。あれ? 原作もオオアリクイだったのかなぁ? それじゃスパムメールは関係ないですね。ピンクのクマのぬいぐるみだったら別の作品になってしまいますし。

 しかし、これを舞の誕生日プレゼントというのはどうなのかなぁ? ま、舞が佐祐理さんからのプレゼントを嫌がったりはしないでしょうけど、舞が自宅で巨大なオオアリクイのぬいぐるみと戯れてる光景を想像したら、なんか不気味な感じがしますが。そもそも舞の部屋ってどうなんでしょう? 少し前に『とらドラ!』でみのりんの部屋がとても女の子の部屋とは思えないとかいう話題があったのですが、あんな部屋にオオアリクイが鎮座してたら怖いような。
 もっとも、舞の部屋は意外とかわいらしいものであふれてそうな感じがしないでもないですけど。
 実のところこのオオアリクイって、単に佐祐理さんの感覚が少しずれてるということをあらわすための小道具なのかもしれません。いや、ふつう女の子があんな格好でぬいぐるみを背負って持ち帰らないでしょ。車を使うか、祐一が持っていってやるかというところだと思いますが。それとも、佐祐理さんとこってよっぽど躾が厳しいのかな?


【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #12

2009年01月17日 | アニメ
遥か昔、
羽根リュックを背負った食い逃げ少女と、
鯛焼き屋のおじさんとの間に、
大きな戦いがあった。
それは、
あらゆる鯛焼きを消化する食欲の力、
「うぐぅ」をめぐる戦いであった。

(京アニの新シリーズですね)


 第12話「異形の円舞曲~waltz~」

【ストーリー雑感】

 今回の冒頭ナレーションは堀江由衣かな。
 一度に二つ三つは当たり前だとか言いながら、クレーンゲームで2000円もすってる幼い頃の祐一。最近はせこい店が多いから、あんまし取れそうな機械は少なくなったけど、この頃はどうだったんだろうな。
 ふと夢から覚めて廊下に出たら、そこには何かに驚いたあゆが。そういや、真琴の代わりに居候してるんだっけ。しかし、涙を浮かべながらオバケの話を怖がってる表情がかわいいね。

 クソ寒い夜中なのにベランダで星を見てるあゆ。高所恐怖症だからと下がってる祐一に自分も高いところは苦手だと言ってるけど、全然そんなふうには思えないな。ま、ベランダぐらいなら平気だと本人も言ってるけどね。しかし、名雪に憧れてるとか言ってるあゆだけど、自分と同い年だとは知らなかったのか? ま、あゆの年齢感覚は5年前のままなのかも知れないけどね。
 しかし、名雪とは違うあゆの良い所って……
  ・電車に子供料金で乗れる
  ・何年経っても昔の服が着れる
  ・お子様ランチを注文しても恥ずかしくない
 実際、あゆの外見で小学生として扱ってくれるのかな? 祐一は昔と同じ姿ぐらいに感じてるみたいだけど、回想シーンのあゆと今のあゆじゃかなり違いがあるから、客観的には中学生とは間違われても小学生には見てもらえないと思うけど。ま、羽根リュックをランドセルと勘違いされたら別かもしれないけど。パジャマ姿見てても多少は胸が出てるみたいだし。

 5時37分にケロピーを連れて寝ぼけながら起きてきた名雪。陸上部の朝練にしても早そうな気がするけど……と思ったら、出掛けたのは7時53分。起きてから出掛けるまでに2時間以上も掛かるのか、こいつは。いや、食卓の上で寝てたような気がするけど。
 ふと気付いたけど、雪国の玄関は二重構造になってるのか? それにしても、休みたいときに休んで良いし、好きな時間に登校して好きな時間に帰って良いって……そりゃすでに学校とは呼ばないと思うぞ。さて、この後、秋子さんはあゆをどう扱ったんだろうか、とても気になるね。

 登校途中で舞&佐祐理に出くわしてるけど、今日が舞踏会の当日だったか。しかし、上級生の舞を相手に相変わらず偉そうな口の利き方だね。
 相変わらず雪の積もった中庭でカップアイスを食ってる栞。見てるこっちが凍えそうになるから、頼むからやめてくれ。せめて暖房の効いた部屋で食ってくれよ。勧められた祐一だけど、さすがに躊躇するわな。しかし、常備薬を持ち歩いてるのはいいけど、何種類もビンごとってのは引くぞ。

 栞と別れた後、栞のクラスメイトの女の子に呼び止められてるけど、栞は一学期の始業式からずっと休んでるって話。ま、祐一が出会ってからでもかなり長期間休んでるのに風邪というのを鵜呑みにしてるのは暢気としか言いようが無いね。しかし、彼女、どうして栞のこと知ってたんだろ? 始業式から休んでるってことは高校に入ってからずっとってことだけど(その割には入学式とは言ってないよね。中高一貫性の学校なんだろうか?)、中学時代から知ってるってことかな……とか思ったら、始業式の日に倒れたって話ね。で、その子は栞が最初に話し掛けてくれた相手だったから印象強く覚えてたってか。
 その子の口から栞の苗字が「美坂」と教えられた祐一だけど……

 舞踏会の衣装だといってプレスリーみたいな格好をしてる北川。なんか勘違いしてると思うけど、こんなのが実行委員でちゃんと舞踏会やれるのか?
 2年になってから感じ変わったという香里。ちょうど栞が倒れたという頃だな。香里を追いかけて栞が妹だろうと確かめる祐一だけど、妹なんかいないという無碍な返事。親友の名雪も香里の家族のことは何も知らないみたいだし……。でも名雪って2年になってから香里と親しくなったのか? それ以前ならそんなに香里のガードは固くなかったと思うんだけど。

 昼休みに佐祐理からタキシードを受け取った祐一。放課後、普通に帰宅してるんだけど、舞踏会は夜になってから出直すのか。近所のやつらはいいけど、遠距離通学者は大変だろうな。いや、さすがに間に合わないぐらい遠けりゃわざわざ帰宅してから出直したりはしないだろうけどね。
 時代劇を見ながらうとうとしてる祐一。また幼い頃の光景だけど……名雪にせびってるのは冒頭クレーンゲームで使い果たした分のお金か。しかし、この幼い名雪がなかなか凛々しくていいね。結局、名雪からせしめた1000円でリベンジしてあゆにくれてやったのか。この天使のクレーン人形があゆの探し物だって話だな。

 案の定、寝過ごして舞踏会に遅刻する祐一。そこにいた舞のドレス姿に思わず見とれてるけど、褒められたらツッコミを入れてるのがおかしい。ま、舞らしい照れ隠しではあるけどね。しかし、本当にあの格好で壇上に上ってるのか、北川。誰からも相手にされてないというか、香里がいないから自棄になってるのか。
 舞に皮肉を言いに来た生徒会長の久瀬だけど、自分を知らないからって転校してきて間が無い祐一を胡散臭がってるとは、ろくなやつじゃないな。ま、生徒会長とかクラス委員長を歴任するやつってのは、本当にまとめ役として信頼されてるやつか、こういう自己顕示欲の強い政治家タイプの生徒なんだけど、得てして後者の方が多いんだね。それでいて自分を前者だと主張するから始末が悪い。
 舞に嫌味を言う久瀬にむかっ腹を立てて料理を自棄食いする祐一。舞に踊って来いと言ってるけど、さすがに北川は(あの格好だし)拒否するだろ。で、祐一と踊りたいというけど……モンキーダンスしか踊れないと言ってた割にはちゃんとエスコート役はこなしてるな。
 しかし、いきなし魔物が襲撃してきて舞踏会場はメチャクチャ。おまけに佐祐理が叩き飛ばされてるって最悪の状況。舞は剣を取り出して魔物と戦い始めるけど……そんな物騒な物、会場に持ち込んでたのか?(と言っても学校の体育館だから、たまたま近くに隠し場所があっただけかもしれないけど)
 でも、いくら奮闘しようとも魔物の姿は舞にしか見えてないからねぇ。傍目には乱心して剣を振り回してる凶暴な女だとしか映ってないんだよな。
「やってくれたな、川澄さん」
 会場の惨状を見て久瀬が舞に文句を言ってるけど……被害の大半は舞が剣を取り出す前に起こってるだろ。まさかそれを見てなかったとか言うんじゃないだろうな。


【サブタイトル解題】

 今回は捻りが無くてストレートなサブタイトルですね。「異形」は魔物のことで、「円舞曲」は舞踏会で掛かってるワルツのことです。もっともワルツそのものを指してるというよりは舞踏会の婉曲表現だとは思いますが。
 3拍子の舞曲としてはワルツの他にもメヌエットとかスケルツォとかありますが、メヌエットとかは基本的に舞台で踊り子が踊るための音楽なのに対して、ワルツは舞踏会でダンスを踊るための音楽という感じですね。
 ところで、これ「異形」を魔物じゃなく舞自身と解釈することもできるんです。つまり久瀬のような連中から見た、舞が踊ってる光景なんですけど……作り手がそういう解釈を望んでいると考えるのは穿ち過ぎでしょう。


【使用BGM】

01.「約束」
  あゆの声による夢の光景。
02.「Last Regrets」
  OP
03.「冬の花火」
  クレーンゲームをする幼い祐一
04.「pure snows」
  サブタイトル~ベランダのあゆと祐一
05. 「2 steps toward」
  登校中の舞と佐祐理
06. 「笑顔の向こう側に」
  栞とアイスクリーム
07.「冬の花火」(アレンジ版)
  栞の同級生
08. 「Last regrets -acoustic version-」(末尾)
  妹を否定する香里
09.「冬の花火」
  名雪に金をせびる幼い祐一
10.「ワルツ」(『眠れる森の美女』より)
  舞踏会(現実音楽)
11.「ワルツ」(『眠れる森の美女』より)
  舞と祐一のダンス(現実音楽)
12.「兆し」
  魔物の襲撃
13.「少女の檻」
  剣を振るう舞
14.「風の辿り着く場所」
  ED
15.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 川澄舞編が本格的にスタートってことで舞のテーマである「少女の檻」もいよいよ本格的に使われ始めた感じです。(今までは第4話で1回流れただけだから)
 でも、今回印象的なのは「冬の花火」でしょうか。真琴編では普通に現実シーンの音楽として使われていたものが、今回は回想シーン2つと、アレンジ版が栞のクラスメイトのシーンに使われています。クラスメイトの話も始業式の日に倒れた栞の記憶がメインと考えれば、過去関係のシーンにしか使われてないんですね。
 舞踏会の音楽はチャイコフスキーの『眠れる森の美女』から文字通りの「ワルツ」。ま、魔物を追い続けてることで現実を見失ってる舞を「眠れる森の美女」に見立てた選曲なんでしょうけど、同じ曲を続けて使うというのは実際の舞踏会の選曲としてはどうかと思うところですが……


【あゆの良いところ】

 本編中で名雪を羨むあゆに祐一が挙げたものですが、じっくり検証してみましょう。ここでは幼い頃の事故で眠ったままのあゆの本当の姿を知ってることを前提とします。

(1)電車に子供料金で乗れる

 あゆ自身が嬉しくないと言ってるのは、実際の生活上であゆにとって電車に乗る機会はあまり無いからなのでしょう。ま、雪国の大きく無さそうな地方都市ということを考えると、都会のように公共交通機関が発達してないので余計に乗る機会が無いのでしょう。祐一が何気なく話題に出してるのは、祐一は都会に住んでたから電車は身近なものだったということで、別に他意は無いと思います。
 事故で眠ったままの現実のあゆも別に成長が止まってるわけじゃないから、もう小学生と偽って乗るのは無理でしょうね。成長しても身長は小学生並みという話もあるかもしれませんが、小学生と高校生じゃ顔付きが全然違います。(ま、欧米人から見たらアジア人の子供は見分けが付かないかも知れませんが、駅員さんとかは普通に日本人ですからねぇ)
 ま、自動改札なら顔を見られなければ大丈夫かも知れませんが、そこは交通機関未発達の地方都市です。自動改札なんてコストの嵩む物を導入してるわけはありません。

(2)何年経っても昔の服が着れる

 これはあゆ自身が言ってるように、祐一から見たらいつまでも小さいままでも、あゆ自身は成長してるから同じ服を着続けることは出来ません。現実のあゆのように病院で眠ったままなら最低限の衣服で済みますが、そうでなけりゃ子供の成長期って服代が嵩むんでしょうね。
 じゃ、成長期が過ぎて大人になったら何年も同じ服が着られるかというと……背丈は伸びなくなっても大人は横方向に成長するんですね。(おい)

(3)お子様ランチを注文しても恥ずかしくない

 あゆはこれにはメリットを感じたみたいですが、実際はどうなんでしょうね。傍目には年齢を誤魔化しにくいというのは電車代のところで言ったとおりですが、それは駅員さんが絶えず不正乗車がないか注意深く見張ってる場合の話です。デパートの食堂とかでは、(レディースサービスとか特定の客層向けの限定サービスでもない限り)誰が何を注文しようと構わないわけですから、そんなに注意を払ったりしないでしょう。
 そりゃ、いかついおっさんがお子様ランチを注文したら変に思うでしょうし、周囲の客が笑うかも知れませんが、小柄な女の子が注文したぐらいじゃ、あまり気に留めないと思います。だから問題は自分が恥ずかしく思うかどうかなんですね。
 じゃ、実際に今のあゆがそのメリットを享受できてるかというと、おそらくお子様ランチを食う機会なんか無かったでしょう、なんせ鯛焼きを食い逃げしていたくらいですから。多少は小銭を持ってた真琴と違って(これもどうやって手に入れたのかは謎なんですが)、あゆは正真正銘の文無しだったと考えたほうがいいですね。
 でも、メリットと受け取ってるということは、あゆ自身は(おそらく現実のあゆの無意識の願望として)お子様ランチを食べたいと思ってるのではないでしょうか。おそらく事故が起こったときのままの嗜好なんでしょうけど。


【後書き】

 ずいぶん間が開いてしまいましたが、なかなかじっくり見る時間が無いし、中途半端で中断すると続けにくいんですね。時間だけじゃなく気力も要るから、生活環境とかバイオリズムとか好条件にならないと手が付けられないです。
 ま、放映期間中にリアルタイムでやってると、無理してでもモチベーションが上がってくるんでしょうけど、もう2年も遅れてたら、さらに遅れてもどうでもいいやって感じです。
 取り掛かった以上は最終回までやりたいけど、まだやっと半分までたどり着いたところですね。気力が持てば良いんですが……


アニメのアイキャッチの素敵な働き

2008年09月17日 | アニメ
 アニメのアイキャッチといえばAパートとBパートの間の中CMを挟む区切りの存在です。CMの付かないDVD等のパッケージメディアでも残ってるから、アニメにとっては無くてはならない顔と言っても良いでしょう。CMの無いNHKやWOWOWの有料放送の作品だと区切りがある必然性は無いのですが、民放での再放送なども見越してアイキャッチが入ってる場合が多いです。
 アイキャッチの付き方は作品によってそれぞれで、まったく無い作品も、CMの前後両方に付く作品も、片方しか付かない作品もあり、また話数によって変わる場合も多々あります。民放番組の場合は視聴者は実際に中CMを目にしますし、パッケージメディアの場合はAパートとBパートでチャプターが区切られてることが多いので区切りは簡単です。しかし、区別が付きにくいのは放映メディアで中CMが入らない場合です。
 WOWOWの有料作品の場合はきっちり両方にアイキャッチが付いてる構造の作品が多いので区切りは前後のアイキャッチの間になります。最近の作品が無いので近い例で『REIDEEN』なんかは連続していてわかりにくいけど、別タイプのアイキャッチが続いていることがわかります。
 それに対して、近年のNHK作品はアイキャッチが1個という形が定着しています。するとそのアイキャッチは前後どちらについてるアイキャッチなのかがわかりにくいのですね。
 BS2の『アリソンとリリア』の場合、しばしばAパート最後の音がアイキャッチまで続いています。逆にアイキャッチとBパートの音は確実に途切れています。つまりアイキャッチはAパートの最後にくっついてるというイメージですね。
 また教育テレビの『テレパシー少女蘭』の場合はAパートとアイキャッチの間の音は確実に切れてるのに、アイキャッチからBパートに音が続いてる場合があります。こちらのアイキャッチはBパートの頭にくっついてるというイメージです。

 このようにNHKやWOWOWのオリジナル作品はアイキャッチが入ってる場合が多いので、CMが無くてもAパートとBパートの区切りは簡単に出来ます。では、CMも無くてアイキャッチの無い場合はどうでしょう?
 CS系の専門チャンネルの場合、アニマックスはきっちりCMが入るので苦労はしませんが、その他のチャンネルだと中CMが無いことも多いのでアイキャッチが無いとどこが区切りかは探すのが面倒だったりします。
 キッズステーションはOPと本編の間のCMはありますが、その後は最後までCMが入らない形態が多いです。『魔法遣いに大切なこと~夏のソラ~』の場合、AパートとBパートの区切りと思われる部分はフェードアウトとフェードインで処理されてるので比較的見付けやすくなっています。
 しかし、そういう作品ばかりではありません。TBSチャンネルは作品の頭から終わりまでいっさいCMが入りません。アニメではありませんが、現在放映中の『ウルトラマンガイア』のAパートとBパートの区切りを見つけようとするとちょっと骨が折れます。アイキャッチが無いのは言うまでも無く、フェードアウト・フェードインもありません。サーチで見ただけではどこで区切れるのかはわかりません。物語の流れ、シーンのつなぎ、音の区切れなどから判断するしかないのです。

 そんなわけで、普通に放送で見てたらCM前後の目印ぐらいにしか思わないアイキャッチなのですが、実はCMが入って来ない時の方が重宝するというという存在なのです。


アニメの次回予告はなぜエンディングより後になったか?

2008年08月14日 | アニメ
 先日、ネットを眺めてたら『ドラゴンボール』の予告がEDの前にあるのに疑問を持ってるような書き込みを見付けました。そういえば、昔のアニメの次回予告はEDの直前に付いてるのが普通でした。これが今のようにEDより後に流れるようになったのは90年前後ぐらいからだと思います。だから、それ以降に物心付いたようなお子様にとっては予告はEDより後にあるのが常識みたいなものなんでしょうね。
 では、なぜ予告は後回しにされるようになったのでしょうか? これにはアニメを巡るビジネスやライフスタイルの変化が関係しているように思います。

 予告がEDの前にあった時代、アニメはお茶の間にある家族共有のテレビで団欒の中で見るのが普通でした。時として激しいチャンネル権争いが見られた時代です。辛うじて次回予告まで終わったらEDなんか無視されて、気の短いお父さんや兄弟たちにさっさとチャンネルを変えられてしまうのもよくあった話。また、それを見透かしたように5分程度の短いニュース番組とか天気予報とかが裏番組にあったものです。
 さて、バブル景気によって国民経済が向上すると、やがて大事な番組はビデオに録画して見たり、個々に専用のテレビを持ったりするようになってきました。すると、途中でチャンネルを変えられたりすることも無く、アニメを番組枠の最後までちゃんと見れるようになってきたのです。

 一方、アニメブームによってアニメがビジネスになることがわかってくると、アニメソングを歌手のプロモーションに使うことが多くなってきました。ところが、EDにタイアップ曲を用いてもチャンネルを先に変えられてしまっては意味がありません。熱心な番組の視聴者なら次回予告までは必ず見るだろうからと、そこで「見せたい」EDを「見たい」予告より先に持ってくるようになったというのが大きな要因なのでしょう。
 その皮切り的な作品は『シティーハンター』でしょうけど、これはEDのイントロが本編に被ってるという特殊な形態の先駆けでもありました。(当時は『火曜サスペンス劇場』等の2時間ドラマのEDに倣ったとかで「聖母たちのララバイ」方式とか言ってたけど、今となっては珍しくはない形態ですが)
 そんなわけで90年頃を前後してアニメの次回予告はEDよりも後というのが普通になってしまったわけです。今では「見せたい」後CMまで「見たい」予告より先に流れてるのも珍しくはないけど、さすがに本編終了後のCMの置き方は番組枠によって様々ですね。

(思い込みの記事であり、取材等による裏付けは一切ありません。あしからず)

【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #11

2008年06月26日 | アニメ
北国の少女・月宮あゆは力を二つ持っている。
一つは「うぐぅ」。いかなる相手にでも不服を言える絶対拒絶の力。
一つは羽根リュック。鯛焼き屋のおじさんの追跡を逃れるための彼女の翼。
食い逃げ犯というコードネームを使い、月宮あゆは動き出す。
秋子さんの手料理を食べるために。そして、何か忘れてしまった大切な探し物を見付け出すために。
その行動がいかなる結果を生んでいくのか、今はまだ誰も知らない。

(元ネタは某日曜夕方の深夜アニメの1作目の方ですね)


 第11話「光と影の間奏曲~intermezzo~」

【ストーリー雑感】

 今回の冒頭ナレーションは田村ゆかり。ま、今回から舞シナリオに突入だからそう来るのが妥当だわな。
 真琴の部屋を片付けたみたいで、マンガの本とかも積んであるんだけど、しばらくこのままにしておいて良いかと聞いてる祐一。名雪は真琴がいつ戻ってきても良いようにとか言ってるけど、それは無いだろ。
 今日は部活を休むとか言ってる名雪に挨拶していく後輩たち。ま、陸上部の後輩ってことだろうね。
 久々に登校した祐一。制服姿の北川に今日も同じ服だなとか言ってるけど、それって空しくないか?
 久しぶりといえば栞もかなり久しぶりね。完全に真琴と接触の無いキャラだから真琴シナリオでは真っ先に出番が無くなってたからな。嫌がる栞に無理やり帰れとか言ってるけど、風邪じゃないんだから家に帰ったところで治るってもんでもないんだけどね。
 しかし、お腹が鳴ったから何か食わせてやると言われて、アイスを注文するか? ま、流動食しか咽喉を通らないのかもしれないけど。それにしても、雪の積もった真冬の寒空で、屋外でアイスを食うなんて常人には真似できないな。
 昼休み、いつもの階段のところで佐祐理さんたちと昼食を食おうとした祐一だけど、2人の姿は見えず。何か舞が職員室に呼び出されたという噂を聞いたら、職員室の前には佐祐理さんが。夜中に校舎を壊したとかで怒られてるみたいだけど……。そういえば廊下にみかんのダンボール箱を貼り付けてる窓があるけど、これが舞の仕業だってか。
 舞の人気を出させようと名雪に相談する祐一だけど、名雪が示したのは学園舞踏会の張り紙。ドレス着て舞踏会に出れば女の子っぽく見えるってか。忘れ物をしたと教室に戻る名雪に昇降口で待ってると言いながら、張り紙を勝手に剥がして舞のところに持っていく祐一。
「これを見ろ!」
「近過ぎて見えない……」
 おまいら漫才コンビかい。ドレスを持ってないという舞に、そこらから借りるあてを探してどうしても参加させようとしてる祐一と佐祐理さん。本人の意思はお構い無しですか、そうですか。
「うそつき」
 名雪と待ちぼうけは付き物だな。

 苺サンデーで機嫌を直した名雪にドレスのことを訊く祐一だけど、秋子さんも持ってないだろうって話。ま、庶民に舞踏会なんか縁が無いからねぇ。
 で、そこに現れたのがやはりひさびさのあゆ。いや、こいつにドレスのことなんか訊いても無駄だろ。
「そんなことではいつまでも、うぐぅ、のままだぞ」
 散々な言われようだな。で、祐一の態度に反発して意気投合してるあゆと名雪だけど……おいおい、おまえら面識無かったのか? 真琴でさえあゆとは会ってるのに……と思ったら、名雪はいつも朝寝坊で寝てたからかい。朝練で不在とかじゃないのね。
「私のことも、なゆちゃんで良いよ」
 ま、名雪の名前なら「名雪」って呼び捨てにされることの方が多いだろうから、自然とちゃん付けで呼ばれるような名前に憧れてたのか?
 で、あゆを連れて帰宅したら、ピロが帰ってきてたって話だけど、それを一目見て鯛焼き盗んだ猫だと言ってるあゆ。やっぱし、あのときの猫はピロだったのか。いや、あゆの記憶力が信用に足るものだという保証は無いけど。
 晩飯を食ってってもいいけど家の人に電話しろと秋子さんに言われて電話を掛けるあゆだけど、空しくコール音が続くだけ。家の人はみんな旅行に行ってるって思い出したと言ってるあゆだけど、何かとってつけたような弁解だな。結局、家の人が戻ってくるまで水瀬家にいて良いってことになってるけど……要するに真琴の身代わりだな。それにしても名雪の喜びようが尋常じゃない気がするけど。

 名雪たちと一緒に風呂に入らせてもらえないからって、夜の学校に赴く祐一。毎度のごとく魔物と戦ってる舞。真琴のことを訊かれたので語ってたみたいだけど……

 翌朝、朝食を作ったあゆだけど、悲惨な出来。おかげで遅刻しそうになった名雪と祐一だけど、走った結果は10分の余裕。それを奇跡と呼んだ祐一だけど、それを聞いて奇跡はそんな安っぽいものじゃないときつく語る香里。ま、栞の絡みなんだろうけど……
 授業中から熟睡して、昼休みになっても起きない名雪。よく教師に怒られたりしないものだね。そんなところにいきなし佐祐理さんが祐一を呼びに来てるけど……要するにドレスが借りられそうだという話。ま、祐一よりはまともな人脈を持ってるって話だね。
 その夜、舞に牛丼を差し入れる祐一。無愛想な舞に「はちみつくまさん」と「ぽんぽこたぬきさん」を押し付けてるけど、舞の反応を見るまもなく魔物が出現。牛丼が口に入ったまま斬りかかる舞だけど、逃がしたって感じね。

 とりあえず、真琴がいなくなっただけで以前の日常に帰ったって感じだけど……


【サブタイトル解題】

 間奏曲とは文字通りの意味で、多楽章構成の楽曲の楽章間とかオペラの幕間に演奏される楽曲です。あくまでメインの楽曲の間の小休止とか口直しとかいう位置付けの曲なので、軽く聞き流したり、興奮を鎮めたりするような小品が多いようです。また、次の楽章への前奏曲として用いられることもあるようです。
 「影」というのが舞(の魔物退治)を指してるのは間違いないと思いますが、それと対立させてる「光」とは何でしょうか。
 今回を真琴シナリオと舞シナリオの間の小休止だと考えるなら、舞と対峙する「光」というのは、あゆなり栞なりの陽性のヒロインのことかも知れません。また、今回を舞シナリオの序章だと考えるなら舞と対峙する「光」は佐祐理さんを示すものだと考えられるでしょう。


【使用BGM】

01.「約束」
  舞の声による夢の光景。
02.「Last Regrets」
  OP
03.「朝影」(アレンジ版)※
  真琴の部屋の片付け
04. 「笑顔の向こう側に」
  栞とアイスクリーム
05. 「雪の少女」
  3人の昼食会~放課後
06. 「パッヘルベルのカノン」(ピアノ演奏)
  百花屋の店内BGM
07. 「日溜まりの街」
  あゆと名雪
08.「朝影」(アレンジ版)※
  水瀬家に住み着くあゆ
09. 「Last regrets -acoustic version-」(末尾)
  夜の舞と真琴の話
10. 「木々の声と日々のざわめき」
  あゆの作った朝食
11. 「2 steps toward」
  3人の昼食会~夜の牛丼
12.「風の辿り着く場所」
  ED
13.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 「朝影」のアレンジ版はアレンジアルバム『recollections』に入ってるのと、イベント販売のマキシシングル盤に収録されてるのがあって微妙に違ってるんですが、Aパート冒頭ではマキシシングルに収録されているのが使われてます。
 一方、Bパートの方は少しボサノバ掛かった感じのアレンジですが、これはKeyのコンピレーションミニアルバム『Ma-Na』に収録されてるバージョン。
 久々に日常が戻ったという感じで、各キャラクターのテーマも復活しています。しかし、舞と佐祐理さんとの昼食会で「雪の少女」を掛けるのは思いっきり反則ですね。ま、そのまま放課後の名雪の出番まで続いてはいるんですが……


【水瀬家の居候問題】

 自分の家に電話したけど不在で、名雪が「留守なんじゃ…」とかつぶやいた途端、取ってつけたように家の者は旅行で不在だと言い出したあゆの言葉を疑いもせず、居候を認めてる秋子さん。いくら真琴がいなくなって寂しいからって安易な気がします。
 それにつけても疑問に思うのは、こいつらの食い扶持をどうやって工面してるかということですね。祐一の分は両親からちゃんと出てるだろうとは思いますが、真琴にしろ、あゆにしろ出してくれるような人はいません。
 母子家庭で名雪一人を食わせて行くだけでも大変だと思うのですが、秋子さんは経済的な負担は感じていないのでしょうか? ま、こいつらは学費が掛かるわけじゃないから、主に食費だけあればいいといえばそうですが。でも、真琴には小遣いまで渡してたようですが……

1.真琴もあゆも小食

 男である祐一や陸上部員の名雪に比べたら、真琴もあゆも小食だから経済的にあまり負担を感じないという説です。
 確かに真琴も(祐一と同い年だと自称する)あゆも小柄だし、真琴に関してはどうみても中学生以下としか考えられない言動をしています(それでよく働きに出させたものだけど)から、食事の量が少なくて済むという可能性は考えられます。しかし、ご飯の量は少なくても一品物のおかずは人数分必要だろうから、小食はあまり影響しないような気がします。
 それより、真琴は小遣いをもらって豚まんを食ってるくらいだから小食かどうかも疑わしいものですし、小遣いの分だけ余計に掛かってます。風呂を味噌汁にした真琴も、朝食を真っ黒にしたあゆも、その分だけ経済的損失も与えているわけですから、これが負担にならないと考えるのは嘘になるでしょう。

2.祐一のおこぼれ

 実は祐一の家庭は裕福だったので、相沢家から仕送られてくる祐一の生活費は実際に必要な額よりかなり多くなってるという説です。そこで、余った分で水瀬家の家計の赤字を補填したり、真琴やあゆを食わせてるのではないかという話ですね。
 祐一の偉そうな態度はそういう経済力を背景にしたものではないかと考えられないこともないですし、秋子さんが祐一の言うことに反対したりもせず何でも聞くのもそれが理由ではないかと……
 でも、秋子さんの場合は相手が祐一じゃなくても1秒で「了承」って気がしますから、とくに経済的な負い目を感じてるということも無さそうな気がします。

3.死んだ夫に多額の保険金を掛けていた

 作品中では夫と死別したとかは明確には語られてないので、単に離婚しただけだとか、最初から未婚のシングルマザーだったとかいう可能性もあるのですが、割と堅実な秋子さんの生活から考えると、夫とは死別という可能性が高そうです。
 単純に夫の遺産が多くて経済的に不自由してないとも考えられますが、名雪や秋子さんの年齢を考えると夫の死亡時年齢も高く、そんなに財産を貯められる状態だったとも思われません。もちろん、資産家の息子だったりしたら話は別ですが、現在の水瀬邸が一般的な民家であることを考えると、普通のサラリーマン家庭だったと考えた方が良いでしょう。(夫の死後、家屋の管理が面倒なので転居したという可能性もありますが)
 ここでキーになるのは秋子さんの職業です。出勤時間が遅いことや、夕方には帰宅してることを考えるとパートタイム勤務なのは間違いありませんが、出勤時にスーツ姿で出掛けてるところを考えたら、スーパーなどで働いてるわけでもないようです。真琴に保育所を紹介した時のような人脈の広さも職業で培ったものだと考えてみると、その有力な候補として考えられるのは保険外交員です。
 水瀬邸は都会のように地価は高くないとしても町の中の住宅地の一角にある家だから、住宅ローンを組んだとしても若いサラリーマンの給料で簡単に買えるような買物では無いでしょうから、夫の生存中から共働きで働いていたものと考えられます。保険外交員として手っ取り早く売上げ成績を増やそうと思えば、身内から契約を取っていくのが常套手段です。もちろん、身内の需要には限りがありますし、保険外交員としてのスキルが上がればそんなものに頼らなくても良くなります。しかし、秋子さんも手馴れないうちは身内に頼っていたのでしょう。
 そんなわけで、けっして保険金目当ての殺人を目論んでいたというわけでもないのですが、夫に掛けられた保険はいつしか高額のものになっていて、夫の死によってそれが転がり込んできたために、自分が働きながら名雪を育てても、居候の1人や2人が増えたぐらいで負担を覚えないだけの蓄えはあったということです。


【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #10

2008年06月05日 | アニメ
 元号が平成に変わる頃、健康に悪影響を与えるメタボを取り締まるためスイーツ良化法が制定された。
 鯛焼き屋はスイーツ良化隊の激しい検閲から嗜好の自由を守るため武装化。両者の戦闘は激化の一途をたどった。
 そして平成XX年、その戦いに食い逃げ犯として飛び込んだアホな少女がいた。

「うぐぅ、祐一くん、酷いよ……」

(表現の自由を守るために児ポ法と戦うアニメの第5話より)


 第10話「丘の上の鎮魂歌~requiem~」

【ストーリー雑感】

 夕方になって出掛ける祐一。寂しそうに見送る真琴はすでに言葉も話せず「あう~」と鳴くだけ。相手になってる秋子さんも大変だね。で、祐一はどこに出掛けたのかと思ったら、校門の前で美汐を待ってるって……学校サボっててよくそんなとこで待ってられるものだね。
 で、美汐に頼んで真琴に会ってもらう祐一。今更って気がしないでもないんだけど、経験者に委ねたら多少は回復すると期待でもしたのかな。確かに自分の(と思い込んでる)と祐一の名前は思い出したみたいだけど……。それでもそれは一時的で、次に熱を出したらお終いだと語る美汐。残酷だね。
 真琴を連れて一家揃って外食に出掛ける水瀬家。ま、これが最後の思い出ってとこなんだろうね。そしてプリクラ。原作の『CLANNAD』で芽衣ちゃんとプリクラを撮るシーンがあったのはさすがに時代遅れって気がしたけど、『Kanon』の場合は原作の時点だとそういうことは無いんだろうね。でも、この京アニ版の時点では「いつの時代じゃい!」って感じなのは確かだけど……。しかし、4人揃って映るのはさすがに相当な無理がありそうだね。
 帰って庭で花火してる時の真琴の表情が良いんだけど、これが笑顔の見納めってか。で、その晩、ついに運命の発熱が……
 翌日、再び言葉を失った真琴に好きなマンガを読み聞かせてやる祐一。で、マンガの通りに結婚しようとか言い出したかと思ったら、真琴を連れ出して外へ。見送る秋子さんが泣き崩れてるんだけど、この時点でそれは気が早過ぎるような気がするぞ。そして門の外には美汐が。
 こいつ、学校サボってるのはいいけど、いったいそこで何時間待ち続けるつもりだったんだ? ま、結局、美汐は祐一たちを見届けると途中から学校に行ってるけど……名雪に何を伝言頼んだんだと思ったら、出て来て真琴と付き合えってか。
 真琴を連れて物見の丘へ登る祐一。草原で豚まんを食わせてるけど、すでに自分の手でつかむことすらできないのか。
 夕方になって結婚式を始める祐一。ウェディングドレス一式は無理だからってヴェールだけを被せてるんだけど……本物のウェディングドレスのヴェールなのか、似たようなので間に合わせたのかよくわからんね。
「これで真琴の願いは成就したと信じた」
 いや、勝手にそう思われても……というか、何かいきなし語り口がキョンになってるのは気のせいか?
 結局、強風に飛ばされていったヴェール。途端に泣きじゃくり始めてる真琴。で、鈴で誤魔化してるのはいいけど、そりゃいい加減飽きるぞ。そして真琴が眠ったとたん、鈴だけを残して消滅……世の中には質量保存の法則というのが働いてるから、いくら真琴が軽くても女の子1人分の質量が消失したら、それと引き換えに莫大なエネルギーが発生することになるんだけど……

 校舎の屋上にいる祐一にところにやってきて語り掛ける美汐。この町の半分くらいは真琴と同じような存在なのか知れないって物騒なこと言ってるんだけど、そこで画面に映ってくるのがモブキャラじゃなく祐一の周囲の人間ばかりだってのが意味深だね。ま、祐一視点に立って考えたら、見も知らない他人を思い浮かべるよりは身近な人間を思い浮かべるのが自然ってことだろうけど……
 物見の丘のキツネたちがみんな真琴たちのような力を持ってたら奇跡が起こせるかもしれないという美汐。空からお菓子が降って来たらとか少女趣味というかメルヘンチックなことを言うんだけど、それに対して「地面に落ちたお菓子なんて汚いだけだろ」とか身も蓋も無いこと言ってる祐一。そんなこといえばお菓子の家なんてただのゴミだろ。(そもそも地面の上にじかに建ってるし、ヘンゼルとグレーテルにしたって土足で踏み入ってるからね)
 奇跡が起こせるとしたら何を願うって……真琴の復活ってのは月並みだね。復活したところでまた同じ別れが繰り返されることになってもって気がするけどねぇ。ま、奇跡は別の形で起きるんだけど……


【サブタイトル解題】

 鎮魂歌とか鎮魂曲というと一般的には沈静で儀式的な葬送の音楽をイメージすると思われますが、レクイエムの本来は死者のためのミサの音楽全体を指し示すものであり、そこには死者が最後の審判を得て楽園に復活する経緯のすべてが盛り込まれてきます。
 例えばヴェルディの『レクイエム』では怒涛のように畳み掛ける激しい「怒りの日」の部分が有名ですが、レクイエムの中にはこういう音楽も含まれてきます。これは「鎮魂」というイメージには程遠いものですが、そもそも西洋の死の概念に肉体と魂の分離は存在していないのでレクイエムに「鎮魂」という意味はありません。楽園に復活するのは生前の肉体も含めた死者なのです。(だから西洋では罪人とか悪質な伝染病患者以外は火葬にしたりはしません。肉体を焼いてしまうと復活できないからです)
 もっとも、ここで用いられているのは日本で一般的な鎮魂歌のイメージでしょう。物見の丘で消え去っていった真琴の冥福を祈る歌です。


【使用BGM】

01.「Last Regrets」
  OP
02.「凍土高原」
  真琴と会う美汐
03.「風を待った日」
  祐一の名を思い出す真琴
04.「残光」(ピアノアレンジ)
  水瀬家の団欒
05.「冬の花火」
  庭で花火~真琴の発熱
06.「残光」(アレンジ版)
  マンガを読み聞かせる祐一
07.「生まれたての風」(アレンジ版末尾)
  物見の丘へ
08.「残光」
  結婚式
09.「冬の花火」(アレンジ版)
  鈴とじゃれる真琴
10.「Little Fragments」(アレンジ版)
  真琴の回想
11.「生まれたての風」
  春になれば……
12.「風の辿り着く場所」
  ED
13.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 アバンタイトルに音楽が入ってないのは初めてかな。今回もキャラクターテーマの類は皆無。真琴がこれだけ弱ってりゃ「the fox and the grapes」なんて使えたものではありませんが。
 目立ったところでは「残光」が3バージョン揃い踏み。これと「冬の花火」の2バージョンでイメージが作られてる感じです。沈みがちな音楽が続いた後で、最後の「生まれたての風」が希望を持たせてます。


【キツネの少女の物語】

 キツネはタヌキと並んで日本では化ける動物としてポピュラーな存在です。そこで、その「化けた」キツネという素材で1人の少女の物語を紡ぎ上げたのが、この真琴シナリオでしょう。
 もちろん、ただの昔話のキツネの変身譚ではありません。キツネはなぜ「化ける」のか、「化けた」キツネはどうなるのかということを、人間とキツネとの触れ合いとして描いているわけです。
 もちろん、これを祐一が見た幻想譚として、夢として片付けることも出来ます。しかし、それを普遍化ならしめてるのが天野美汐という、かつて同じ体験を経た少女の存在です。ま、真琴シナリオにしか登場しないこの少女自身も幻想の存在として片付けることも出来ますが、やはりそこはこの物語をどう捉えるかという受け手側の解釈問題でしょう。

 ところで、化けるキツネといえば最近の作品でも『かのこん』のちずるだとか、『我が家のお稲荷さま。』のクーとかいますが、これらはキツネと言っても妖狐だとか天狐だとか最初から妖怪に変化した存在なので、普通のキツネが化けてるのとは違っています。そういう意味では普通のキツネやタヌキが化けるというのは昔話の中だけの話で、現在の物語として形に表れることはほとんど無いように思われます。
 ま、ジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』とかいう作品もありましたが、あれはどちらかというと現在のタヌキが化けるという作品というよりも、昔話の化けるタヌキが現在にいたらという感じの作品であり、昔話の素材を使った一種の風刺作品なので、積極的にタヌキが化ける物語世界を描いた作品とは言えないような気がします。
 そんなわけで、現在において「化ける」キツネというものを物語の素材として使った作品としては、かなり活気的なものではないでしょうか。

 さて、ちずるにしろクーにしろ、ふだんは隠しているにしても耳なり尻尾なりのパーツがキツネであることを強調するシーンがあります。昨今ではネコミミとかのブームがあって、動物耳が一種の萌えキャラの要素として扱われてたりしますが、真琴自身に関してはその素振り以外の外見的な面でキツネであることを想起させるような要素は存在しません。キツネとしての真琴は祐一の回想に出てくるだけの存在であって、物語上の真琴は終始、普通の人間の少女の姿しか見せません。また、真琴シナリオの最後で弱った真琴は鈴の音を残して消え去ってしまうだけで、キツネの姿に戻ってしまうわけでもありません。
 ま、原作の時点でネコミミのブームがあったりしたわけじゃないから、キャラクター要素としてキツネの外観を取り入れるより、完全な人間体としてドラマのリアリティを狙ったということでしょうが、それがかえって「化ける」キツネというものの存在の曖昧さを生み出してしまっているようです。

 実際問題として、真琴の場合は(保育園に働きに行ったりはしましたが)基本的には水瀬家の人間以外との接触は描かれていないわけだから、動物耳を持っていたってあまり物語的に支障があるようには思えません。
 では、他の作品でネコミミとかのキャラが多くなってるのは、逆に言えば作り手、あるいはそのキャラ自体の甘えの象徴みたいなものではないでしょうか。自分はこういう存在だとあらかじめ予防線を張っておくことである種の責任回避をしていると……
 それに対して、真琴には最初から逃げ道は存在していません。なぜなら自らの生命と記憶を引換に人間の姿を手に入れたのですから。これはある意味、キツネが化けるという話よりも人魚姫の物語に近いものかもしれません。
 遠い過去の日の祐一との思い出。捨てられた悲しみ。それらが相俟って祐一と再会したいという切実で切ない願いが、あるキツネの身に起こした夢か現実かわからない束の間の奇跡。それが「沢渡真琴」の物語だったのです。

料理下手ヒロインの6タイプ

2008年05月14日 | アニメ
 『S・A』の第3話で華園光がおにぎりを作るという話が出て来ましたが、これが何とも不味そうなおにぎりでした。学年2位という成績には家庭科の成績も入ってると思うんですけど、調理実習の成績配分は極めて少ないのでしょうか?(それとも実技教科は対象外?)
 さて、現実に理想の女性というとやはり料理の上手な人ってのは大きな条件になってくると思いますが、アニメやマンガ、ゲームの世界では料理の下手なヒロインというのが一種のキャラクター付けの定番になっています。ま、萌え要素とまでは言いませんが……
 しかしよく観察してみると一口に料理下手なヒロインと言っても、その実態はいくつかのパターンに分けられると思います。


(1)味覚音痴型

 味覚感覚が常人とは異なっているために本人が美味いと思ってる料理でも他人には激不味な料理になってしまってるパターンです。
 典型的なのが『うる星やつら』のラムに顕著な激辛指向の味覚の持ち主です。ラムの場合はそもそも味覚感覚なんて違って当然の異星人ですから仕方ないといえば仕方ないのですが、これが普通の地球人、しかも幼馴染みとか家族同然の女の子でしばしば料理を食わせられる存在だったら悲惨ですね。

(2)マニア嗜好型

 これも味覚音痴の一種ですが、自信を持って普通ではありえない創作料理を作ってくるタイプ。料理方法とか食材は変では無いけど、組み合わせが常人の味覚感覚と離れているというか……
 典型的な例は『ハチミツとクローバー』のはぐちゃんと山田さんあたり。けっして食おうと思えば食えない料理で無いところがポイントです。『Kanon』の秋子さんは普通の料理は問題ないのですが《謎ジャム》に関してだけはこの辺りかな。

(3)味見欠落型

 このタイプはほとんどが初心者、あるいは滅多に料理をしないタイプで、たいていは味覚に異常があるわけでも変な創作料理に走ったりするわけでもありません。ただ、どういうわけか本人が絶対に味見をしないで適当に調味するので、通常の料理の範囲を超えた味付けになってしまいます。多くの場合は見てくれだけは丁寧に作ってあったりするので、そのギャップが凄まじかったりします。
 このタイプは枚挙に暇がありませんが、典型的な例としては『らんま1/2』の天道あかねを挙げておきましょうか。他人に食わせた後に自分が食ってみて不味さに気付くというのがセオリーですね。原作版『CLANNAD』の椋シナリオでの初期の藤林椋もこのタイプで、ボタンが被害に遭ってますね。

(4)異次元創作型

 変な創作料理を食わせようとするという点ではマニア嗜好型に似ていますが、こちらは常識的に絶対食えない創作料理を作るタイプです。ケーキに生魚をトッピングしたり、パフェに生きたタコが入ってたりとかいうやつです。
 このタイプはそもそも自分が日常的にどんな料理を食ってるかという観察力が欠落してるというか何と言うか、悪意無しによくこんなものが作れるものだと逆に感心してしまいますね。当然ながら自分では味見しないものと思われます。
 とりあえず例としては『ネギま!?』の神楽坂明日菜を挙げておきましょう。

(5)開き直り型

 絶対に毒としか思えないような紫色をしてたり、メタンガスかと思える泡をぶくぶく言わせてる、とても料理とは思えないものを差し出して食えと強要してくるタイプです。
 このタイプは自分が料理下手なことやセンスが無いことは十分に自覚しているのですが、自分のことが好きな相手なら自分が作った料理を喜んで食うのが当然という絶対的な信念に支えられているので、こんな料理でも平然と差し出せるのです。当然、危険だから自分で食ったりはしません。
 女王様的なキャラが思い付きやすいのですが、『Wind -a breath of heart-』の初期の鳴風みなもが主人公に腐ったような弁当を食べさせようとしてたのも印象的です。

(6)調理室破壊型

 料理の出来・不出来以前に料理の過程で調理室や調理器具を破壊してしまう凶悪なタイプがこれです。当人に悪気は無くても経済的な被害は甚大になります。たいていは機械音痴というか電化製品との相性の悪さが原因だと思われますが、中には『S・A』の華園光みたいに単なる怪力で台所を破壊してしまう場合もあります。
 代表的なのは『らぶドル』の北条比奈かな。毛色の変わったところでは『ロスト☆ユニバース』のミリィで、毎回派手にソード・ブレイカーの厨房を破壊する割には出来た料理は絶品だとか。もっとも、いくら美味くても厨房の修理費と比べてコストが見合うとは思えませんが。


 ヒロインの選択基準として料理の上手い下手というのはあくまで判断材料の一つに過ぎませんから、他にかけがえの無い魅力にあふれていれば料理下手も愛嬌の一つと見なせるわけですが……でも、やっぱし開き直りで殺人料理を食わせられるのは勘弁して欲しいですね。
 逆に料理でヒロインを選ぶとしたら、天道かすみ(らんま1/2)とか、ミルフィーユ・桜庭(ギャラクシー・エンジェル)辺りが上位にランクされそうですね。もっともミルフィーユだと甘いお菓子ばっかり食わされそうでメタボが心配ですけど。


【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #09

2008年03月19日 | アニメ
「食い逃げ常習犯、月宮あゆ失踪」
「生きて捕らえた者にアイスクリームと豚まん1個、イチゴサンデーと牛丼を与える」
 日本鯛焼き協会会長、安湖八九蔵

あゆ「うぐぅ。何でみんなボクを狙うんだよう」

(元ネタは某お姫様と盗賊の逃避行のお話の第1期冒頭ナレーション)


 第9話「子狐の子守歌~berceuse~」

【ストーリー雑感】

 箸を落としてる真琴。だんだん体力を失って人として振舞うことが困難になるという美汐の言葉を思い出す祐一だけど、真琴本人には自覚が無いみたいね。春になったら元気になるって言ってるのが痛々しいね。

 学校で美汐を呼び出そうとした祐一だけど、なんかクラスメイトにも避けられてるみたいだな。おばさんくさいのが原因か?
 授業中に10年前の子狐との思い出を回想してる祐一。ま、自分の町に帰らなければならなくなったから泣く泣く山に捨ててきたって話だけど……
 また校門で祐一を待ってる真琴。豚まん目当てって言ってるけど……祐一も気前がいいね。で、何でも買ってやると言われて真琴がねだったのは100円ショップにあった鈴。出費を覚悟してた祐一は拍子抜けって感じね。
 ゲーセンの前で立ち止まってる真琴。人見知りが激しくて名雪や秋子さんにも自分からは話しかけないって指摘してる祐一だけど、要するに祐一にしか甘えてないんだよな。
 夕食は秋子さん特製のカレー。真琴は初めてだって言ってるからてっきり辛くて食えないとか言い出すのかと思ったら、ちゃんと美味そうに食ってるのね。しかし、食後というか就寝前の歯磨きは祐一がいないと1人ではできないってか。カレーは食えたのに歯磨きが辛いってのもねぇ。
 ピロをだしにして祐一の部屋に夜這いに来てる真琴(ちがうって)。真琴が寝静まったのを見て、こっそり抜け出してる祐一。意味も無く物見の丘に来てるけど……夜中に簡単に来れるほど近いのか? 水瀬家が山間にあるとかいうならわからなくもないけど、現実感が無いんだよな。
 で、しっかり付いてきてる真琴。昔、同じように置いてかれた覚えがあるって、過去のことを思い出しかけてるけど、それをやめさせようとする祐一。ま、記憶が戻るときは真琴じゃなくなってる時だろうからね。

 翌日も美汐に声を掛けるけど、無視されたまま。祐一に対してというより、こいつの場合、誰に対してもこんな態度って気がするなぁ。
 その日は校門にも真琴の姿は見えず。家にも帰ってないって話。ピロと一緒にいたいからってずっと保育所に行ってないってことが発覚してるんだけど……そこの保育所、無断欠勤は放置ですか。ま、正式に採用を決める前に来なくなったって話かもしれないけどね。
 で、遅くなって帰ってきた真琴。ピロがいなくなったから探してたって話だけど、それで雪の中をうろつきまわってて倒れてたらどうしょうも無いだろ。
 翌日、登校しようとする祐一を引き止める真琴。それを聞いて学校をサボって真琴と過ごしてる祐一だけど……名雪は朝練で先に出ていたとしても、秋子さんは何も言わなかったのか?
 そんな祐一を電話で呼び出してる美汐。よく水瀬家の電話番号を知ってたものだね。祐一が教えたとも思えないんだけど……ま、原作は個人情報保護法なんか制定される前だから、クラスの連絡簿ぐらいはあるだろうけど、さすがに他の学年の情報まで出回ってないだろうし……
 高熱を出したら人の姿でいられなくなるという美汐。真琴がまだ姿を保ってるのは祐一への思いが強いからだということだけど、それでももう次は無いって話。そして、物見の丘の妖孤の話を語る美汐。そして、別れの辛さに耐え切れなくて今のような自分になってしまったって言ってるけど……別れが辛くて感情を押し殺すってのは、人としてとても悲しいことなんじゃないのか。別れが辛ければ泣けば良い。叫べば良い。でも、その記憶を殺してしまわないためには新しい出会いから顔を背けちゃダメだろ。
 名雪と秋子さんに真琴の正体を話す祐一。名雪は信じられないって感じだけど、秋子さんは半ば知ってた感じね。しかし、真琴を理由に学校をサボるのを認めさせるとは巧妙だな。
 真琴に漫画を読み聞かせてる祐一。それを聞いて祐一と結婚したいと言い出す真琴。結婚したら祐一とずっと一緒にいられるという真琴だけど……結婚したら一緒にいられるというのは一種の幻想だな。世の中には結婚した途端に単身赴任で飛ばされてる不幸な人間も多いだろうし、別に物理的に一緒に暮らすだけなら結婚するしないなんか関係ないだろうし……世間がどう思おうが知ったことじゃないけど。

 ついに舞も登場しなくなったか。ま、真琴シナリオが終われば復活してくるんだけど、佐祐理さんたちとお昼は一緒じゃないのかとか、最近は栞は学校に来てないのか、あゆは商店街をうろついてないのかとか……こいつらの行動って真琴シナリオとシンクロしてるわけじゃないんだから、いきなりバッタリと途絶えちゃうと不自然なんだよな。


【サブタイトル解題】

 「berceuse」はフランス語の子守歌。英語では「lullaby」ですが、クラシック関係では「berceuse」が使われることが多いようです。なんでフランス語かというと、恐らくはパリで活躍していたショパンの『子守歌』あたりの影響ではないでしょうか。
 徐々に体力を失って、まるで子狐に戻ったかのような真琴を思いやる祐一の愛情を「子守歌」として表現してるかな。


【使用BGM】

01.「生まれたての風」(アレンジ版末尾)
  弱りかけてる真琴
02.「Last Regrets」
  OP
03.「霧海」
  サブタイトル~子狐の思い出
04.「pure snows」
  鈴を買ってもらう真琴
05.「2 step toward」
  夕食~歯磨き
06.「凍土高原」
  物見の丘
07.「夢の跡」(ピアノアレンジ)
  行方不明の真琴
08.「風を待った日」
  みかんを食う真琴
09.「残光」(ピアノアレンジ)
  物見の丘の妖狐
10.「冬の花火」(アレンジ版)
  漫画を読み聞かせる祐一
11.「風の辿り着く場所」
  ED
12.「Little Fragments」
  予告

 前回からキャラクターテーマの音楽はいっさい消えてしまってシチュエーション音楽のオンパレードで物語が佳境に入ってるって感じですね。
 今回の特徴は、しばらく使われてなかったピアノアレンジアルバム『Re-feel』からの曲が2つ入ってることですね。オリジナルのサントラ曲よりも感情の起伏を効果的に表せるって感じで使われているんでしょうか。
 あとは予告が「Last Regrets」のイントロから「Little Fragments」に変わってることですね。もういよいよラストって感じのシリアスな感じを予感させます。


【天野美汐の謎】

 真琴シナリオが終われば恐らく出番が無くなってしまう美汐なので、ここで彼女の謎について探ってみましょう。
 彼女が人付き合いの悪いのは、あからさまに祐一を無視する態度は置いておいても、初登場のときにゲーセンにいた女の子たちの態度とか、今回同じクラスの女子に避けられてる様子を見たら明らかです。彼女はそれを妖狐との別れの悲しみに潰されてそうなったのだと語ってますが、果たしてそうなのでしょうか?
 祐一と真琴の先人として、彼女は妖狐との別離の体験者として語られています。しかし、彼女の妖狐への愛着は祐一の真琴に対するそれよりも遥かに強固だったのではないでしょうか? 彼女はその妖狐に盲目の愛情を捧げていたかのように語っています。
 祐一の場合は、真琴への愛情はそこまで深くは無いでしょう。彼は真琴を十分に思いやってはいますが、真琴しか目に入っていないわけではありません。周囲との付き合いの一つとして真琴との付き合いがあるわけです。もっとも、真琴にとっては祐一がすべてのようです。だからこそ名雪や秋子さんも含めてその他の人間に対しては人見知りしてるわけだし、10年前に自分を捨て、再会したときに自分を覚えていない祐一のことを裏切り者だと感じてしまう、2人の間にはそんな温度差があったわけです。
 では、妖狐にすべてを注いでいたという美汐はどうでしょう? 彼女にとってはその当時もその妖狐以外との関わり合いというものが無かったのではないでしょうか。あるいは妖狐のためにその関わりを自ら絶ってしまったのではないでしょうか。真琴にとって祐一がすべてであるように、美汐にとってはその妖狐がすべてだったのかもしれません。だから、妖狐と別れた後には何も残らなかったのです。それはけっして妖狐との別れの悲しみのためなんかじゃなく、最初から彼女自身が周囲との関わりを絶ってしまっていたのではないでしょうか。
 周囲との関わりを拒絶した彼女にとっては、自分の主観がすべてです。真琴が高熱を出したと聞いてそれが終わりの合図だともっともらしく語ってますが、その根拠は何なのでしょう? かつて彼女が妖狐との別れのときに体験した個体事例以外に蓄積された客観的なデータでもあるのでしょうか? 高熱を出したとたんに別れがきたのは彼女の妖狐がたまたまそうだっただけかもしれないのです。ま、お人好しの祐一は彼女の言葉を疑いもせずに受け止めてるみたいですけど……
 祐一に対して悲しみに打ち勝って欲しいともっともらしいことを言ってる美汐ですが、彼女自身はこれからどうするつもりなのでしょうか? 今後もこれまでのように周囲との関わりを絶って生きていくとしても、ま、それは彼女が自分で選んだ人生ですから何も言いませんが……ますますおばさん臭くなってくるのは間違い無いでしょうね。

【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #08

2008年02月05日 | アニメ
鯛焼き、それは焼かれた物。
鯛焼き、それは売られる物。
鯛焼き、それは中身のすべてがアンコの
スイーツ(笑)な食べ物。
そう、これは一個の鯛焼きのため、
命を賭けて逃げる少女の、
超コンバットチェイスストーリーなのである!

あゆ「ナレーション違うよ。ボクはえっと……」

(某執事アニメの初代OPより)


 第8話「追憶の幻想曲~fantasia~」

【ストーリー雑感】

 猫アレルギーの名雪が朝練に出掛けた隙に猫を飼うことを決めてる3人。ひどい話だね。たとえ名雪に直接触れさせなくても、家の中に猫の毛とかが散乱してたらアレルギーは起こるだろうに。
 自分には女の子ウケするツボは心得てるといって猫の名前を出してくる祐一だけど、「猫塚ネコ夫」だとか「シャム塚シャム夫」だとか……センスが無いというより露骨な嫌がらせとしか思えないんだけど。で、「肉まん」は食い物の名前は嫌だと真琴に言われて次に出してきたのが「ぴろしき」……完全に嫌がらせだな。しかし、真琴がそれを食い物の名前だと知らないことを良いことに、結局「ぴろ」で決まりかい。
 それにしても、真琴の喜びようが無邪気で良いね。

 ぴろを連れて保育所に出勤する真琴。同じく登校する祐一と日常会話のごとく豚まんの話をしようとするけど……思いっきりぎこちないね。豚まんの製造過程がどうたらこうたら言ってるけど、やっぱし話題としてならダンボール入り豚まんだろ。

 舞のアドバイス通りに真琴が見付かったことで礼を言う祐一だけど、舞は真琴のことは何も知らないと言う。そしてふと擦れ違っていく少女に、彼女なら何かわかってるというようなことを……。おい、舞と美汐って知り合いだったのか? いや、舞がそこらの霊感少女だったら気配で感付いてるだけって話もあるんだけど、舞のキャラはそうじゃないよな。
 で、放課後、校門のところにいる真琴を見てる祐一に話し掛けてくる美汐。真琴の名前を訊かれて、「沢渡真琴」が本当は別人の名前だったことを思い出している祐一だけど、気付けば美汐はいなくなってたって……まったくミステリアスな少女だな。真琴の存在よりこいつの方がよっぽど神秘的な気がするぞ。
 で、真琴は保育園にぴろを連れて行ったら怒られたから祐一に慰めてほしかったというところみたい。最初の頃のツンツン状態とは一転してデレ状態というか、祐一にじゃれ付いてる感じね。
 祐一の宿題の邪魔をする真琴。良い物を見せるっていうから何かと思えば、ぴろがミルクを飲んでるだけ。しかし、今度はそのミルクが冷たかったおかげで、ぴろはお腹を壊して迷惑かけてるし……。まったくガキだね。
 ぴろの看病疲れで眠った真琴を眺めながら、再び本物の「沢渡真琴」のことを思い出している祐一。で、その名前を知ってた真琴の正体に気付き始めてる感じだけど……
 美汐を呼び出し、真琴の友達になってくれと頼んでる祐一。だけど、美汐の答えは「そんな酷なことはないでしょう」……ま、経験者だからねぇ。頑なに拒否する美汐に、本当は真琴のことを知ってるじゃないかと訊く祐一だけど、知っているのは祐一の方だという美汐。その言葉にどうやら正体を確信したような祐一だけど、美汐の言葉を止めたのは現実逃避か?
 どうでもいいけど、このシーンだけパースを強調したレイアウトが印象的だね。

 何かを思い出したという真琴。ずっといたというその場所は、祐一が真琴を見付け出した物見の丘の草原。そして、ある場所でものすごくむかつく気になったと祐一をいきなり叩いてるけど……昔、そこで祐一に捨てられた恨みだな。
 そんなこともあってか、やさしく真琴に接するようになってる祐一。真琴の方もすっかり素直になってる感じだけど……出迎えた名雪の話では、秋子さんは今も真琴の家族を探し回ってるって話。ご苦労さんね。
 しかし、いきなりぴろを触りまくってる名雪だけど、猫アレルギーは大丈夫なのか?

 紙飛行機を作ろうだとか、マンガを一緒に読もうだとか、何かと祐一にかまってもらいにやってくる真琴。しかし、漢字も読めないのに今までどうやってマンガを楽しんでいたんだろ? それに付き合って最後までマンガを読み聞かせてる祐一。絵本ならともかく、マンガを1冊声を出して読むってのは、とくに少女マンガは苦痛だろうな。ま、世の中にはそれを商売にしてる人もいるみたいだけど。
 それにしても、ハッピーエンドのラストで感動の余韻に浸ってる最中に「結婚は人生の墓場」だなんて言われたら、思いっきし嫌だな。
 夜中、ぴろがいないと祐一のベッドに潜り込んでくる真琴。毛布を真琴に取られてその脇で横になってる祐一だけど……真冬なのに風邪ひかないのか? ま、雪国のことだから部屋に暖房完備なんだろうけど……
 真琴の正体を確信した祐一に、それを奇跡だと言って肯定する美汐。奇跡を起こすには「記憶」と「生命」の二つの犠牲が必要だって話。真琴はその犠牲を払って祐一に会いに来たってことは、もう先が長くないってこと。徐々に体力を失って人間として振舞うのも難しくなってくると語る経験者。悲しい別れを覚悟しろと祐一に言うと、もう自分を巻き込むなってか。

 あゆと栞が出てないな……


【サブタイトル解題】

 古来の「幻想曲」はある主題を別の声部が次々に模倣されていく模倣楽曲の一種でしたが、この形式がフーガとして確立していくとともに用いられなくなっていったとのことです。近代では自由形式で定まった形式が無い楽曲に用いられている感じで、それは「ファンタジア」と呼ぶより「ファンタジー」と呼ぶ楽曲において顕著です。
 伊福部昭の『SF交響ファンタジー』は特撮映画音楽に用いたモチーフをメドレー形式につないで構成されたものであり、作曲者自身は「ファンタジー」という語を「幻想曲」ではなく、いわゆる小説などのファンタジー作品のような意味で用いていると語っていますが、近現代音楽作家の作品ではこれ以外にもメドレー曲を「ファンタジー」と呼称している例は多くあります。

 ここでは今の真琴と過去の子狐の思い出とか、「沢渡真琴」という名前に関すること、あるいは過去に同じ経験をしたという美汐の存在などの要素から模倣楽曲的な意味合いを感じ取れたりしますが、一方で真琴の正体が子狐であることとか単純に「ファンタジー」的な意味合いを持たせてる面もあるような気がします。


【使用BGM】

01.「2 step toward」
  猫の名前
02.「Last Regrets」
  OP
03.「彼女たちの見解」
  豚まん談義
04.「Last regrets -acoustic version-」(アレンジ版末尾)
  祐一の前に現れる美汐
05.「pure snows」
  宿題の邪魔をする真琴
06.「Last regrets -acoustic version-」(アレンジ版末尾)
  「沢渡真琴」の記憶
07.「霧海」
  祐一の頼みを拒絶する美汐
08.「生まれたての風」(アレンジ版末尾)
  物見の丘
09.「夢の跡」
  降り出した雪
10.「残光」(アレンジ版)
  真琴と祐一
11.「冬の花火」(アレンジ版)
  祐一のベッドで眠る真琴~子狐の思い出
12.「凍土高原」
  奇跡を語る美汐
13.「風の辿り着く場所」
  ED
14.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 前回に引き続きマイナーな中間曲が使われるので探し出してくるのが大変です。もっとも、CDに入ってるのと若干長さが違うみたいだから別のオリジナル音源からでも使ってるんでしょうか。
 すっかりキャラクターテーマの曲は影を潜めてしまいましたが、元々シリアスな展開に使えそうなのは舞のテーマぐらいですから仕方がありません。あと、アレンジ版の比率が高くなってる感じがしますが、『recollections』と『anemoscope』から均等に使ってる感じですね。


【名雪の猫アレルギー】

 猫好きなのに猫アレルギーという生き地獄のような体質の名雪ですが、今回はぴろに手を出してしまいましたが、大丈夫でしょうか。
 ま、猫アレルギーと言ってもくしゃみが止まらなくなったり、全身が痒くなったりするくらいで、ショック性の器官不全等で生命の危険に曝されたりするわけでもないでしょうから、これまでにも衝動を抑えられなくなったら何度も猫に触ってそうです。
 しかし、他にもアレルギーがあるならともかく、どうして猫だけにアレルギーを持っているのでしょうか?

(1)前世の呪い説

 名雪の前世は女流武道家で、その昔の中国の奥地で修行をしていました。ある日、彼女が修行をしていると、1匹の猫が通り掛りました。猫は修行場の脇に置いてあった弁当に近づくと、そのおかずを咥え去ろうとしました。
 それに気付いた名雪はおかずを盗られまいと、猫に一撃必殺の蹴りを食らわせました。すると、猫は近くにあった泉に落ちて溺れ死んでしまいました。その猫の呪いで、名雪は猫アレルギーになってしまったのです。
 ちなみに猫の呪いは落ちた泉にも掛かっていて、後世、その泉で溺れた女傑族のある娘は水を被ると猫に変身してしまう体質になったと言われています。何たる悲劇!

(2)後天性心因説

 それは名雪が小学生のときでした。きれい好きの名雪が明るいうちから風呂に入っていると、いきなりどこかからドアのようなものが出現し、そのドアが開いた向こうに眼鏡を掛けた男の子と青くて耳の無いネコ型ロボットがいました。名雪が悲鳴を上げるとドアは閉じて消え去ってしまいましたが、それ以来、何度も何度も入浴時に限って同じ事件が起こるようになったのです。
 最初はわけがわからなかった名雪も、同じことが何度も起こるに連れて恐怖を感じるようになりました。とくにそれは青いネコ型ロボットの姿と結び付いたのです。
 そんなあるとき、ついにドアの向こうのネコ型ロボットがドアの向こうからこちらにやってこようとするではありませんか。名雪は恐怖におののき、慌てて浴室から家の外に飛び出しました。庭ではちょうど野良猫がいたのですが、そこに名雪が飛び込んできてぶつかってしまいました。すると、野良猫についていたたくさんのノミがすっぽんぽんの名雪の体に移ってしまい、たちまち全身が痒みに襲われたのです。
 それ以来、名雪の体は猫を見ると無条件にアレルギー反応を示すようになってしまったのです。

(3)寄生虫感染説

 7年前、祐一が水瀬家にやって来た少し前の話、名雪は秋子さんの仕事の関係でその十数年前に村中が有毒ガスで埋め尽くされて住民が全滅したというとある廃村を訪れたことがありました。
 実はその村は住民全員が恐ろしい寄生虫病に感染していたので政府の特殊機関が住民ごと病原虫を根絶やしにしようとしたのでしたが、住民が全滅しても病原虫はまだ絶滅してはいなかったのです。
 誰もいないかと思えた村でしたが、古い神社の境内で頭に角が生えたような巫女服姿の女の子が名雪の遊び相手になってくれましたが、やがて名雪がこの廃村を離れることになったとき、女の子は悲しそうに言いました。
「あう~、君はもう手遅れなのですよ。村から離れたらすぐに発症してしまうのです。この御守りの中に、クローン培養された女王感染者の脳髄があって、発症を抑えてくれますの。けっして一時たりとも身から離してはいけませんの」
 名雪は意味がわかりませんでしたが、その御守りを肩身はなさず身に付けることにしました。しかし、何故か猫が近づいたときだけ、その御守りの中身がかわいい物好きの友人のことを思い出して泣いてるのか、効力が弱まり、無性に喉を掻き毟りたくなってくるのです。

(4)宇宙人改造説

 名雪が小学校で園芸部に所属していたときのことです。ある日、植物採集に物見の丘に同じ園芸部の月宮あゆという男の子と2人で登っていった名雪でしたが、偶然にも事故で墜落してきたUFOの爆発に巻き込まれてしまいました。
 当然ながら2人の身体は木っ端微塵になってしまいましたが、責任を感じた宇宙人が高度な遺伝子技術で細胞を復元させ、怪我ひとつなかった状態に治してくれました。しかし、宇宙人も神ならぬ身、2人の復元に関して大きな誤りを犯してしまいました。
 宇宙人には性別の観念が無かったので、先に名雪を復元した後、同じようにあゆを女の子として復元してしまったのです。また、猫アレルギーの宇宙人は名雪にも本来は無かった猫アレルギーの体質を付けてしまいましたが、こちらは直後に誤りに気付いたので、あゆは猫アレルギーにはなりませんでした。
 2人を復元した宇宙人は自らの罪と失敗を誤魔化すために2人の記憶を消去して去って行ってしまいました。気が付けば物見の丘にいた2人は、お互いのことすら忘れてしまっていたのでした。