「まえがき」
昨日、ニューヨークの話題をブログに書いたら
急に「ニューヨーク恋物語」を更新しなきゃ!って思って。(笑)
私って、本当に唐突ですよね。
8月はお盆休みで、家族が家にいて、食事の支度に追われて
それにオリンピックや高校野球をテレビ観戦して
リビングは、とっても暑苦しかったです。
それでも「家族団欒」の喜びをかみしめてみたり。
ご先祖さまをお迎えして、お送りして、ホッとした自分がいました。
旅行もお出かけもしない日々が続いたのに・・・
ブログに書きたい事がらが、毎日目白押しで
有難いな・・・ なんて思って感謝してみたり。
まだまだ、マドンナのナイショ話は、続いていきますから
どうかこの部屋をご訪問くださいね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/ribbon.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/ribbon.gif)
![A1616 A1616](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/cd/67fb853fb12966b7c5cbe9606838e86c.jpg)
さて、3週間ぶりの「ニューヨーク恋物語」です。
「ニューヨーク恋物語 第9章」は、ニューヨークが舞台です。
タイトルが「ニューヨーク恋物語」なのに
ニューヨークを舞台にしているのは、たった3章だけです。
なぜ?・・・って?
理由は簡単なんです。
![A1717 A1717](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/dc/71588108b1b2fed2a9f88741c9d66d97.jpg)
当時、ニューヨークの写真が、それほどなかったのです。
2001年9月11日の同時多発テロから半年後に
ニューヨークを訪れた娘が撮った、わずかな写真を使って書きました。
当時、コンパクトデジカメで、娘が撮った写真は画素数も低く
お粗末なものでしたが、私にとっては
「タイムズ・スクエア」も「自由の女神」も「5番街の標識」も
すべてが憧れの対象でした。
そんなわずかなニューヨークの写真を元に
後半のクライマックスシーンを書きあげました。
![A2020 A2020](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/d8/b24d45b4973c3465f66c5bf1a73d7aa4.jpg)
この後も、物語は佳境に入り、次第に面白くなっていきます。
どうか、最終章まで、お楽しみくださいね。
上の写真は、ニューヨーク市消防博物館で撮った写真です。
1 2001年9月11日の同時多発テロで活動した消防車
2 同時多発テロで犠牲になった消防士343人の写真
3 2001年9月11日、あの日、あの時の消防士のひとり
尚、今回の物語の、挿絵の写真は、全て私が撮ったもので
私のHP「マドンナの夢ギャラリー」で使用したものです。
</object>
ミューヨーク恋物語2008 BGM 愛し君へ(森山直太朗)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/ribbon.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/ribbon.gif)
「ニューヨーク恋物語 第9章ニューヨーク編」
![9ny1 9ny1](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/39/5d820fc67a6bedda0cf36b778d582ed1.jpg)
大沢がニューヨークに戻って2ヶ月が過ぎた。
日本ではまもなく梅雨が終わろうとしていた。
![9ny2 9ny2](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/0f/40111dda4d18541a3308eabf98c64780.jpg)
今日子からのメールでは、「今日もまた、雨・・・・」とあった。
梅雨が終わると、東京に暑い夏が訪れる。
![9ny3 9ny3](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/5c/63f6973acbe0d2361a32c12b0107ba2c.jpg)
夏になると、二人は毎年、七夕祭りや花火大会へと出かけた。
そんな時、今日子は浴衣を着て、少しはにかんで現れた。
浴衣には、浴衣の化粧があるのかと思うほど
きれいな化粧をして、大沢を驚かせ、そして喜ばせた。
季節がめぐる度に、今日子との思い出がいっぱいだ。
![9ny4 9ny4](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/9b/cb025257182df80cf303540ffbf86950.jpg)
今回の帰国で、大沢は完全に里心がついてしまった。
一週間もの間、今日子の部屋で暮らしたのは
これまでの付き合いの中で、初めてのことだった。
![9ny5 9ny5](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/03/2f2046e67198e16d8957a2fbd8c83f8c.jpg)
長く一緒にいると
お互いの嫌な部分が強調されるのではないかと危惧したが
大沢はそんなことを感じたことはなく
以前にも増して、今日子への気持ちは傾いていった。
今日子のひとつひとつの仕草が、可愛らしくていじらしかった。
目を閉じると、瞼の中に今日子が浮かんで来た。
![9ny6 9ny6](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/a4/6642786cddf590cc291f05135c540fea.jpg)
大沢は今日子への想いをかき消すように繁華街へと出た。
けれど一人で飲む酒は、少しも酔えなかった。
![9ny7 9ny7](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/85/33300cde9465a43116512ea96485c3c4.jpg)
大沢は、ニューヨークではいつも孤独で
得たいの知れない重圧に、押し流されるような思いがした。
それでも負けまいと、この一年やってきた。
今日子の励ましのメールは、どんな時でも心強かった。
![9ny8 9ny8](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/42/f9698de89ab0d73b66d21f24b0f1490d.jpg)
大沢は毎日多忙だった。
時には、ボストンやフィラデルフィアに出張することもあった。
ニューヨークに来て一年余りの間で
現地の人とコミュニケーションが取れ、上手く商談をまとめるようになった。
英語が苦手な大沢にとって、言葉の壁は大きなハードルだった。
![9ny9 9ny9](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/a8/facf28113d2e179a24e7ff38b6aeb52c.jpg)
今日子は帰国子女だった。
父親の仕事の関係で、ハイスクールまで海外で暮らしていた。
ニューヨークに転勤になった頃、よく今日子に英語を尋ねた。
今日子は、英語の持つニュアンスを
その時々にふさわしい英語を詳しく説明してメールをくれた。
今日子の英語のアドバイスのお陰で、まとめられた商談もあった。
![9ny10 9ny10](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/73/b6dbbe69be386f3f1429118bbeeed725.jpg)
ニューヨークの人は、仕事以外ではジョークが好きだ。
そしてプライベートでは、華やかでエキサイティングなことが好きだ。
そんなノウハウを今日子は教えてくれた。
プライベートを充実させると、仕事もスムーズに行った。
今日子はどんな時でも大沢の相談に乗ってくれた.
![9ny11 9ny11](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/07/f8e0f8ef5463b7c6fa4beec5a4541869.jpg)
一年が過ぎ、仕事に慣れると、課題は山積みされた。
大沢は、毎日仕事に追われ、時には自分を見失いそうになる時があった。
![9ny12 9ny12](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/30/cd6829f695385897c24e29d0bd329671.jpg)
一日の仕事が終わり、アパートに帰ると眠るだけだった。
そんな時、今日子の言葉を思い出す。
「どんなに疲れていてもシャワーは浴びて・・・」
シャワーを浴びると疲れが取れた。
今日子が言った言葉の意味がとてもよくわかる瞬間だった。
![9ny13 9ny13](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/10/8a4ee0651b52ffd06a3aa0ea3f4f6c16.jpg)
甘いものが好きな今日子は、よくケーキを買ってくれた。
それを二人で食べる時、今日子は「私は、今が一番幸せ」と言った。
ブルガリの時計をして、エルメスのバーキンを持っていた女が
大沢と二人で、ホワイトクリームのショートケーキを食べる時間を大事にした。
![9ny14 9ny14](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/73/196269559debb471ca27c4b2bff32f09.jpg)
大沢の部屋のベットの上には
湘南の海で撮った二人の写真が飾ってあった。
フォトフレームの中の今日子は、満面の笑みで大沢を見ていた。
その横には一年前、ニューヨーク転勤が決まった時に渡せなかった
今日子への指輪が、今もそのまま置いてある。
![9ny15 9ny15](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/69/8560a31653377fc077e447033a457f5c.jpg)
そして大沢の机の引き出しには
みなとみらいのホテルの部屋で撮った、今日子の全裸の写真があった。
![9ny16 9ny16](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/b3/094dfc02b1901af2191218425ccb41a9.jpg)
今夜は満月だ。
この瞬間、今日子は太陽の下で働いている。
時差が二人の心まで遠ざけるようで、今夜の大沢はやるせなかった。
大沢はそんなことを毎晩思うようになっていた。
![9ny17 9ny17](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/78/33c16fffffab8ad35442a8d63e810f81.jpg)
ニューヨークに来てから、大沢は早くに目が覚めるようになった。
大沢のアパートはセントラルパークの外れにある。
朝のジョギングを始めてもう1年になる。
シープ・メドウまで行き、広い芝生に座って一息つく。
朝のジョギングは大沢の活力になり、気持ちを切り替えられた。
![9ny18 9ny18](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/0c/f0ee46ea160fc3e4448223d302af70bb.jpg)
セントラルパークには、いつも季節の花が咲いていた。
今日子に恋をして以来、大沢はよく今日子を季節の花に例えた。
春の桜、夏のひまわり、秋のコスモス、冬の椿。
大沢にとって、美しいものは、全て今日子だった。
ストロベリー・フィールドには、今日も花が飾られていた。
ここから南に歩けば、すぐに大沢のアパートだ。
カフェでコーヒーを飲んで、大沢は軽い朝食を取った。
それからアパートに帰り、シャワーを浴びて出勤した。
![9ny19 9ny19](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/9b/3748795fdb996993d17601b70a590a6a.jpg)
仕事が始まると今日子への想いが薄らいでゆく。
仕事に忙殺されることが、今の自分にとって、いいことなのだと思う。
ニューヨーク支店への勤務は、初め三年ということだった。
けれど五年は帰れないだろう。
いや、もっとかもしれない。
二人の結婚はどうなるのかと思うと、大沢の気持ちは塞ぐ。
日本に残してきた一人の女に、未練がいっぱいだった。
だからこの忙しさは、返って有難いと思った。
大沢は今日も会社へと出かける。
今日子は今頃、遅い夕食を食べているだろう。
そんなことを思いながらバス停へと急いだ。
![9ny20 9ny20](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/95/1a2636bd2fffde1c8746a478634c5528.jpg)
ニューヨークにも、初夏の太陽が顔を見せ始めた。
爽やかな朝である。
第10章に 続く・・・
![Banner2_2 Banner2_2](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/5e/6567d35804151e0d162aeda37facb990.png)
昨日、ニューヨークの話題をブログに書いたら
急に「ニューヨーク恋物語」を更新しなきゃ!って思って。(笑)
私って、本当に唐突ですよね。
8月はお盆休みで、家族が家にいて、食事の支度に追われて
それにオリンピックや高校野球をテレビ観戦して
リビングは、とっても暑苦しかったです。
それでも「家族団欒」の喜びをかみしめてみたり。
ご先祖さまをお迎えして、お送りして、ホッとした自分がいました。
旅行もお出かけもしない日々が続いたのに・・・
ブログに書きたい事がらが、毎日目白押しで
有難いな・・・ なんて思って感謝してみたり。
まだまだ、マドンナのナイショ話は、続いていきますから
どうかこの部屋をご訪問くださいね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/heart.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/clover.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/tulip.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/shine.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/wine.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/bell.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/note.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/airplane.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/virgo.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/ribbon.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/heart.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/clover.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/tulip.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/shine.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/wine.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/bell.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/note.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/airplane.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/virgo.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/ribbon.gif)
![A1616 A1616](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/cd/67fb853fb12966b7c5cbe9606838e86c.jpg)
さて、3週間ぶりの「ニューヨーク恋物語」です。
「ニューヨーク恋物語 第9章」は、ニューヨークが舞台です。
タイトルが「ニューヨーク恋物語」なのに
ニューヨークを舞台にしているのは、たった3章だけです。
なぜ?・・・って?
理由は簡単なんです。
![A1717 A1717](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/dc/71588108b1b2fed2a9f88741c9d66d97.jpg)
当時、ニューヨークの写真が、それほどなかったのです。
2001年9月11日の同時多発テロから半年後に
ニューヨークを訪れた娘が撮った、わずかな写真を使って書きました。
当時、コンパクトデジカメで、娘が撮った写真は画素数も低く
お粗末なものでしたが、私にとっては
「タイムズ・スクエア」も「自由の女神」も「5番街の標識」も
すべてが憧れの対象でした。
そんなわずかなニューヨークの写真を元に
後半のクライマックスシーンを書きあげました。
![A2020 A2020](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/d8/b24d45b4973c3465f66c5bf1a73d7aa4.jpg)
この後も、物語は佳境に入り、次第に面白くなっていきます。
どうか、最終章まで、お楽しみくださいね。
上の写真は、ニューヨーク市消防博物館で撮った写真です。
1 2001年9月11日の同時多発テロで活動した消防車
2 同時多発テロで犠牲になった消防士343人の写真
3 2001年9月11日、あの日、あの時の消防士のひとり
尚、今回の物語の、挿絵の写真は、全て私が撮ったもので
私のHP「マドンナの夢ギャラリー」で使用したものです。
</object>
ミューヨーク恋物語2008 BGM 愛し君へ(森山直太朗)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/heart.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/clover.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/tulip.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/shine.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/wine.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/bell.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/note.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/airplane.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/virgo.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/ribbon.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/heart.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/clover.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/tulip.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/shine.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/wine.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/bell.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/note.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/airplane.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/virgo.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/bz/ribbon.gif)
「ニューヨーク恋物語 第9章ニューヨーク編」
![9ny1 9ny1](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/39/5d820fc67a6bedda0cf36b778d582ed1.jpg)
大沢がニューヨークに戻って2ヶ月が過ぎた。
日本ではまもなく梅雨が終わろうとしていた。
![9ny2 9ny2](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/0f/40111dda4d18541a3308eabf98c64780.jpg)
今日子からのメールでは、「今日もまた、雨・・・・」とあった。
梅雨が終わると、東京に暑い夏が訪れる。
![9ny3 9ny3](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/5c/63f6973acbe0d2361a32c12b0107ba2c.jpg)
夏になると、二人は毎年、七夕祭りや花火大会へと出かけた。
そんな時、今日子は浴衣を着て、少しはにかんで現れた。
浴衣には、浴衣の化粧があるのかと思うほど
きれいな化粧をして、大沢を驚かせ、そして喜ばせた。
季節がめぐる度に、今日子との思い出がいっぱいだ。
![9ny4 9ny4](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/9b/cb025257182df80cf303540ffbf86950.jpg)
今回の帰国で、大沢は完全に里心がついてしまった。
一週間もの間、今日子の部屋で暮らしたのは
これまでの付き合いの中で、初めてのことだった。
![9ny5 9ny5](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/03/2f2046e67198e16d8957a2fbd8c83f8c.jpg)
長く一緒にいると
お互いの嫌な部分が強調されるのではないかと危惧したが
大沢はそんなことを感じたことはなく
以前にも増して、今日子への気持ちは傾いていった。
今日子のひとつひとつの仕草が、可愛らしくていじらしかった。
目を閉じると、瞼の中に今日子が浮かんで来た。
![9ny6 9ny6](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/a4/6642786cddf590cc291f05135c540fea.jpg)
大沢は今日子への想いをかき消すように繁華街へと出た。
けれど一人で飲む酒は、少しも酔えなかった。
![9ny7 9ny7](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/85/33300cde9465a43116512ea96485c3c4.jpg)
大沢は、ニューヨークではいつも孤独で
得たいの知れない重圧に、押し流されるような思いがした。
それでも負けまいと、この一年やってきた。
今日子の励ましのメールは、どんな時でも心強かった。
![9ny8 9ny8](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/42/f9698de89ab0d73b66d21f24b0f1490d.jpg)
大沢は毎日多忙だった。
時には、ボストンやフィラデルフィアに出張することもあった。
ニューヨークに来て一年余りの間で
現地の人とコミュニケーションが取れ、上手く商談をまとめるようになった。
英語が苦手な大沢にとって、言葉の壁は大きなハードルだった。
![9ny9 9ny9](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/a8/facf28113d2e179a24e7ff38b6aeb52c.jpg)
今日子は帰国子女だった。
父親の仕事の関係で、ハイスクールまで海外で暮らしていた。
ニューヨークに転勤になった頃、よく今日子に英語を尋ねた。
今日子は、英語の持つニュアンスを
その時々にふさわしい英語を詳しく説明してメールをくれた。
今日子の英語のアドバイスのお陰で、まとめられた商談もあった。
![9ny10 9ny10](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/73/b6dbbe69be386f3f1429118bbeeed725.jpg)
ニューヨークの人は、仕事以外ではジョークが好きだ。
そしてプライベートでは、華やかでエキサイティングなことが好きだ。
そんなノウハウを今日子は教えてくれた。
プライベートを充実させると、仕事もスムーズに行った。
今日子はどんな時でも大沢の相談に乗ってくれた.
![9ny11 9ny11](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/07/f8e0f8ef5463b7c6fa4beec5a4541869.jpg)
一年が過ぎ、仕事に慣れると、課題は山積みされた。
大沢は、毎日仕事に追われ、時には自分を見失いそうになる時があった。
![9ny12 9ny12](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/30/cd6829f695385897c24e29d0bd329671.jpg)
一日の仕事が終わり、アパートに帰ると眠るだけだった。
そんな時、今日子の言葉を思い出す。
「どんなに疲れていてもシャワーは浴びて・・・」
シャワーを浴びると疲れが取れた。
今日子が言った言葉の意味がとてもよくわかる瞬間だった。
![9ny13 9ny13](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/10/8a4ee0651b52ffd06a3aa0ea3f4f6c16.jpg)
甘いものが好きな今日子は、よくケーキを買ってくれた。
それを二人で食べる時、今日子は「私は、今が一番幸せ」と言った。
ブルガリの時計をして、エルメスのバーキンを持っていた女が
大沢と二人で、ホワイトクリームのショートケーキを食べる時間を大事にした。
![9ny14 9ny14](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/73/196269559debb471ca27c4b2bff32f09.jpg)
大沢の部屋のベットの上には
湘南の海で撮った二人の写真が飾ってあった。
フォトフレームの中の今日子は、満面の笑みで大沢を見ていた。
その横には一年前、ニューヨーク転勤が決まった時に渡せなかった
今日子への指輪が、今もそのまま置いてある。
![9ny15 9ny15](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/69/8560a31653377fc077e447033a457f5c.jpg)
そして大沢の机の引き出しには
みなとみらいのホテルの部屋で撮った、今日子の全裸の写真があった。
![9ny16 9ny16](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/b3/094dfc02b1901af2191218425ccb41a9.jpg)
今夜は満月だ。
この瞬間、今日子は太陽の下で働いている。
時差が二人の心まで遠ざけるようで、今夜の大沢はやるせなかった。
大沢はそんなことを毎晩思うようになっていた。
![9ny17 9ny17](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/78/33c16fffffab8ad35442a8d63e810f81.jpg)
ニューヨークに来てから、大沢は早くに目が覚めるようになった。
大沢のアパートはセントラルパークの外れにある。
朝のジョギングを始めてもう1年になる。
シープ・メドウまで行き、広い芝生に座って一息つく。
朝のジョギングは大沢の活力になり、気持ちを切り替えられた。
![9ny18 9ny18](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/0c/f0ee46ea160fc3e4448223d302af70bb.jpg)
セントラルパークには、いつも季節の花が咲いていた。
今日子に恋をして以来、大沢はよく今日子を季節の花に例えた。
春の桜、夏のひまわり、秋のコスモス、冬の椿。
大沢にとって、美しいものは、全て今日子だった。
ストロベリー・フィールドには、今日も花が飾られていた。
ここから南に歩けば、すぐに大沢のアパートだ。
カフェでコーヒーを飲んで、大沢は軽い朝食を取った。
それからアパートに帰り、シャワーを浴びて出勤した。
![9ny19 9ny19](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/9b/3748795fdb996993d17601b70a590a6a.jpg)
仕事が始まると今日子への想いが薄らいでゆく。
仕事に忙殺されることが、今の自分にとって、いいことなのだと思う。
ニューヨーク支店への勤務は、初め三年ということだった。
けれど五年は帰れないだろう。
いや、もっとかもしれない。
二人の結婚はどうなるのかと思うと、大沢の気持ちは塞ぐ。
日本に残してきた一人の女に、未練がいっぱいだった。
だからこの忙しさは、返って有難いと思った。
大沢は今日も会社へと出かける。
今日子は今頃、遅い夕食を食べているだろう。
そんなことを思いながらバス停へと急いだ。
![9ny20 9ny20](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/95/1a2636bd2fffde1c8746a478634c5528.jpg)
ニューヨークにも、初夏の太陽が顔を見せ始めた。
爽やかな朝である。
第10章に 続く・・・
![Banner2_2 Banner2_2](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/5e/6567d35804151e0d162aeda37facb990.png)