読書記録

とりあえず、読了本をあげていくつもりです。
…もしかしたら、映画とか、ゲームとかまで…たどりつくのかww

フィオナ・マウンテン

2004年11月30日 | ミステリー(翻訳)
死より蒼く
◆「死より蒼く」
 若いモデルの失踪の謎を解く、家族史探偵。
 系図学、という専門知識を駆使して、その人の出生のとか祖先とかを紐解いていくというのは、すごく新鮮だった。で、古き良きイギリスという雰囲気もよかったし、何より死人が少ないのがww
 推理小説としては、わき道なのかもしれないが、不思議と「正統的な」感じがした。
 内容的には、ラファエル前派っつーのを知ってないと、ちょっと辛いかも。…私は、ミレイの「オフィーリア」(川に花と一緒に浮かんでる、とても有名な絵。この本の表紙にもなっている)にモデルがいたこと自体知りませんでした。…って、リジー・シダルって実在の人物なんですか?(苦笑)
 ともあれ、すごく面白かった。
 <このミス>でもいいところいきそうな感じだけど、11月発行だから、微妙かな。

折原一

2004年11月28日 | ミステリー(邦人)
沈黙者
◆「沈黙者」
 二つの一家惨殺事件と、自分の名を名乗らないまま裁判にかけられた男の話が、交錯して続く。
 読み終われば、ああそういうことか、と納得するんだが、それにしてもなぁ。一家惨殺にいたる動機がこれでいいのか? なんか納得がいかないのであった。
 一見、複雑そうな構成だが、実際はそうでもなくて、巨大迷路ですごいわくわくして入ったのに肩透かしだったって気分になる。
 うーん、折原一は密かに好きなんだけど、この○○者のシリーズはあわないのかもしれない。
 にしても、この表紙はすごいいいね。

村上春樹

2004年11月27日 | 評論
若い読者のための短編小説案内
◆「若い読者のための短編小説案内」
 村上春樹がアメリカの大学でもっていた講座をもとに、六人の作家の短編小説を読み解いたもの。
 今まで読んだ評論とか、解読とは、一味も二味も違う。でも、普通に読書してる感覚にはものすごく近いかもしれない。
 これをきっかけに上げられた作家を読むようになるかというのは、ちょっとないかもしれないが(ちょっとアニマックな作家に、アニマックな作品だから)こういう読み方もありっていう肯定は、非常に大きいかもしれない。

塩野七生

2004年11月26日 | 歴史
塩野七生ルネサンス著作集〈6〉― 神の代理人
◆「神の代理人」
 ルネサンス期の4人の法王に焦点をあてた作品。
 宗教家でありながら、政治家であることも求められる法王という立場の複雑さが、4人の全く違っていた理想へのベクトルの違いから際立たせている。
 とはいえ、やはり一番面白かったのは、チェーザレ・ボルジアの父親、アレッサンドロ6世の話だ。他の三人が在位中に何をして、何ができなかったのかということに論点をおいているが、アレッサンドロ6世の場合当時フィレンチェで絶対的な勢力をもっていた修道士、サヴォナローナとの対決だけに絞られている。しかしながら、この対決こそが法王という立場の絶対さや、同じだけあるあやうさや、微妙さを象徴し、それを乗り切ったアレッサンドロ6世という人を表現しているといえる。
 面白かった。

岩井志麻子

2004年11月25日 | ホラー(邦人)
自由恋愛
◆「自由恋愛」
 岩井志麻子なので、ホラーにカテゴリーしたが、ホラーにあらず。ま、人間心理の怖いのを描いてると言えばそうかもしれないが、これでホラーっつーのもね(苦笑)
 大正時代に正反対の境遇になった女学校の同窓生二人の物語で…。多少「えっ」って部分もあるが、それぐらいで終わっている。ようするに、よくかけているけれど、一体何が言いたかったのか、筋を言うのは簡単だけど、それだけって感じなのだ。
 しかも、すでにドラマ化が決まっているそうで、その配役がその衣裳をつけた帯がついていて、これが激しく興ざめさせる。ようするに、あの役者ならここはあーするんだろうね、とか、あーいう表情をするに違いないとか、想像できてしまうのだ。
 うん、ようするにそういうことなんだと思う。つまりは、こちらに想像力を、それを羽ばたかせるものがない、と。
 決して面白くなかったわけじゃないんだけど(読み始めたら止まらなくて、一気に読んでしまった)満足感は得られなかった。

カルヴァン・トムキンズ

2004年11月13日 | ノンフィクション
優雅な生活が最高の復讐である
優雅な生活が最高の復讐である(新潮文庫)
C・トムキンズ・青山 南 訳

◆「優雅な生活が最高の復習である」
 タイトルだけで魅かれてしまう。これは、スペインのことわざだそうで、正確には<優雅な生活が過酷な人生への最高の復習である>らしい。フィッジラルドの「夜はやさし」のモデルとなったマーフィ夫妻の華やかな友好関係を、さまざまなエピソードで綴った作品。一応ノンフィクションになると思うのだが、不思議とフィクションのような手触りがある。もっとも、いわゆるジャズエイジといわれる頃の作品(小説に限らず、映画等などでも)は妙に現実感がないのではあるのだけど。
 ともあれ、アメリカ人のヨーロッパでの生活なのだが、何か過酷なことやダメージがある訳ではない。とにかく優雅な生活が続く。が、読み終わったら、このタイトルの持つ意味がずっしりとくる。
 …しかし、この字の組み方はちょっとなぁ(苦笑) 

 と、四季さんにアマゾンのリンクの簡単な貼り方を教えていただいたので…。
 本の画像は、アマゾンです。でも、文字はBK1です。はは、BK1は画像がなかったんだよ。(そういうのが多すぎだよ、BK1<むかっ)
 

キース・アブロウ

2004年11月07日 | ミステリー(翻訳)
抑えがたい欲望(文春文庫)
キース・アブロウ・高橋 恭美子 訳

◆「抑えがたい欲望」
 大富豪の5ヶ月の娘が殺され、その容疑者として富豪の16歳の養子が逮捕される。警察に捜査協力を頼まれた精神科医が主人公。主人公も、そしてその富豪の家族も、皆重大なトラウマを抱えていて、誰もかもが怪しい。が、怪しすぎて、オチが…(吐血)
 なんだか、デミル、エルロイ、ルイヘンなどなどのアメリカのミステリー作家がこぞって絶賛してるそうなんだけど、私の中には疑問符が。そこまですごい作品なのか。まぁ、翻訳されて魅力が軽減されたとしても、やっぱり底が浅い気がしてしまう。ついでに、主人公の捜査もなんだかいきあたりばったりで。そうなってしまうのも、結局はある女性のせいなんだろうけど、それでもね。と、こういうトラウマがあるからこうなりましたっていう図式が、ステレオすぎるように感じた。
 設定としては、ジョナサン・ケラーマンの小児専門臨床精神科医アレックス、シリーズと似ているが、深さが全く違う。
 でも、読後はへんにやりきれない気持ちが残ったりはしないので、もしかしたらアブロウの方が今のご時世向きなのかもしれない。…ケラーマンは、もうアレックスシリーズ書かないのかなぁ<そっちかww
 

日夏耿之介

2004年11月05日 | 学術
吸血妖魅考(ちくま学芸文庫)
モンタギュー・サマーズ著・日夏耿之介著

◆「吸血妖魅考」
 日夏氏を作者として出したが、正確にはモンタギュー・サマーズが書いた「ヨーロッパに於ける吸血鬼」と「吸血鬼-その同族と血縁」の2巻を元に翻訳された「吸血妖魅考」という本(初版昭和6年)と、日夏氏の「吸血鬼譚」をあわせて採用し編集したものだそうだ。
 なので、文庫なのにこの値段もいたしかたないかと…(汗)
 しかも、全編ほんど文語で旧仮名遣いである。読みにくいよ。
 が、これがロマンなのだ。
 
 世界中いたるところに、吸血鬼の伝説があり、吸血鬼とは彷徨える死者である、っていう共通性には正直寒気がした。それだけ血液っていうものは、大事なのか。で、医学的な根拠もほとんどなかった時代から、それを人間は本能で知っていたのだろうか。いや、吸血鬼が実在したからこそ、そう考えたのか…。
 カテゴリーにこまって、一応学術としたが、これほど様々に思いをめぐらせることのできる本はそうそうないだろう。
 すごく面白かった。

ネコ皿

2004年11月03日 | Weblog
湯のみよりあとのシリーズのお皿。
黄色のタンポポが増えてます。

このシリーズ全部そろえたかったよぉ。
も、製造してないんだろうねぇ。
なんせ、○○年前のやつだから(吐血)

塩野七生

2004年11月03日 | 歴史
塩野七生ルネサンス著作集 4 海の都の物語塩野七生著

塩野七生ルネサンス著作集 5 海の都の物語塩野七生著

◆「海の都の物語」
 ながいっ! そりゃそうだ。ヴェネチア共和国1千年の歴史だもの。それを上下巻とはいえ、ここまでしっかりとまとめ、なおかつロマンチックに彩るのは、塩野七生だからこそできたことだと思う。
 蛮族から逃れるために、潟の中にくいを打って作られたヴァネチアが、その地理ゆえに、海の国家になり、その位置ゆえに常に大きな勢力と敵対していく。その在り方は、ロマンだよなと思ってしまう。
 塩野七生のミステリーでヴェネチア貴族を主人公にした3部作があるのだが、その3部作が魅力的だったのもヴェネチアという都市の魅力が反映していたからにさえ思う。
 またシェイクスピアの「ベニスの商人」がなぜ、ベニスなのか、ずーーっと謎だったのだが、これでようやく納得した。宗教も自由、言論も自由、人種的な差別もないに等しいというヴェネチアは、当時のほかの都市からしたら特異だったのだろう。で、特異なものはたいてい排除されるもんだ。
 とにかく面白かった。元々、ヴェネチアって好きだし死ぬまでには行きたいと切望しているのだが、ますます行きたくなった。