読書記録

とりあえず、読了本をあげていくつもりです。
…もしかしたら、映画とか、ゲームとかまで…たどりつくのかww

ローレンス・ブロック「死への祈り」

2007年01月21日 | ミステリー(翻訳)
死への祈り
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◆「死への祈り」

 マッドスカダーシリーズ。
 弁護士夫婦が惨殺された。後日その犯人は、死体となって発見されるが、事件に不信なものを感じた夫婦の姪が、スカダーに解決を依頼する。

 今までスカダーシリーズって、スカダーの主観だけで描かれていた、はずだ。
 けれど、これは犯人の主観が交互にはいってくる。
 解説では、シリーズの終わりを示しているのではないかと、書いてあった。それはなんともいえないが、終わりまで読んでいくとこの形にした意味がわかる。わかるが、やっぱりシリーズの終焉が近いのかとも思う。
 でもって、こんな風に思うのは、ブロックが相変わらず上手いからだ。
 
 主人公の主観と、犯人の主観が交錯するなんて、今じゃステレオともいえるような手法だ。普通のことをしていても、普通に終わらない。だって、ブロックだから。
 やられました。

ジェフリー・ディーヴァー【コフィン・ダンサー】

2007年01月12日 | ミステリー(翻訳)
コフィン・ダンサー〈上〉     コフィン・ダンサー〈下〉

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◆「コフィン・ダンサー」

 リンカーン・ライムシリーズの2作目。
 殺し屋「コフィンダンサー」との戦い。

 表紙がねぇ、なんでこれだけこういうのなんだろう。
 かーなーりー、表紙で損してると思います。

 ともあれ、息詰まる推理合戦って感じで、一気読みしました。いやあ、すごかった。
 「ボーンコレクター」の時は、あんまり気づかなかったんだけど、時々エロティックなシーンがはいりますなぁ。これって、黄門様における由美かおるの入浴シーン? やっぱりベストセラーになるには、こういうサービスも必要ってことなんでしょうかねぇ。

 欲をいえば、もっとコフィンダンサーのバックボーンに明確さがあったらいいけど、でもそれを出したらネタばれだし、作品の緊張感が失われるか。
 そう、ディーヴァーのすごいところは、緊張感のコントロールなのだ。
 上手く緊張させられ、ほぐされ、また緊張させられて、完全にディーヴァーにやられていると感じる。
 そしてそれが快感だから、始末におえないww

ジェフリー・ディーヴァー【ボーン・コレクター】

2007年01月09日 | ミステリー(翻訳)
ボーン・コレクター〈上〉     ボーン・コレクター〈下〉

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◆「ボーン・コレクター」

 映画化されてるので、ストーリーなんかわかちゃってますよね。

 全身麻痺の元科学捜査官リンカーン・ライムシリーズの1作目。
 映画のイメージとは、ライムはちょっと違うかな。映画は、デンゼル・ワシントンが主役で当然黒人なんだけど、原作は白人。でもって、そういうのってなんかちょっと違う。
 つか、これで違和感を覚えるとは思ってなかった。
 恐るべし、アメリカの差別社会。うん、差別社会という根底があるから、ライムの感性が映画と原作では違ってくる。ってことは、映画の脚本がとてもよくできているってことか?
 と、今調べたら、アメリアも原作はアメリア・サックスという名前なのに、映画はアメリア・ドナヒーになってる。アンジェリーナ・ジョリーがアイルランド系には見えないからか?
 あと、看護師も男性から女性に変わってるし…。
 変えた意図が知りたいなぁ。

 ともあれ、映画とストーリーはほとんど一緒だけど、細々と違うために、印象が違う。ゆえに、とっても楽しめます。
 
 でも、ライムとアメリアが接近するのは、急すぎると感じるんだがww

ジェフリー・ディーヴァー【エンプティー・チェア】

2006年12月13日 | ミステリー(翻訳)
オンライン書店ビーケーワン:エンプティー・チェア 上
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オンライン書店ビーケーワン:エンプティー・チェア 下
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◆「エンプティー・チェア」

 「ボーン・コレクター」のリンカーン・ライムシリーズ。
 脊椎手術のためにノースカロライナ州にやってきたライムとサックスは、男を殺害し、女性二人を拉致した少年の行方の捜索を依頼される。

 「エンプティー・チェア(空白の椅子)」というのは、心理医が使う手段の一つ。椅子を一つおいて、そこに自分の思う人がいると考えて、その人に向かって話すというやり方だそうだ。
 タイトルで損してないかな。

 そのほかは、満点。
 これでもか、これでもかと、やってくる様はまさにジェットコースター。短編集「クリスマス・プレゼント」がよかたので、読んでみたんだけど、これほどパワフルな作家だとは思ってませんでした。
 いやあ、やられましたww
 完敗です。

 ライムとサックスの関係が、けっこう切なかったよ。



【ホロスコープは死を招く】アン・ペリー編

2006年11月12日 | ミステリー(翻訳)
ホロスコープは死を招く
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◆「ホロスコープは死を招く」

 ホロスコープにまつわるミステリー短編集。

 面白かったよ。
 
 しかし、それほどホロスコープってすごいんですか? でもって、信じてるんですか? とちょっとびっくり。
 まぁ、そういうのばかり立て続けにあるからね。
 最後のアン・ペリーの「青い蠍」がなんだか切なかった。
 ともあれ、???な作品は一つもなかったです。

 お買い得です。

ローレンス・ノーフォーク【ジョン・ランプリエールの辞書】

2006年10月15日 | ミステリー(翻訳)
ジョン・ランプリエールの辞書 (上)
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ジョン・ランプリエールの辞書 (下)
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『ジョン・ランプリエールの辞書』

 ギリシャ神話をなぞったように殺された父。その死をきっかけに息子ジョンの前に祖先の残した謎、そして危険が迫ってくる。

 ジョン・ランプリエールは、古典学者で固有名詞辞書を編纂した実在の人なんだそうで…。
 ギリシャ神話のなぞりが多いので、ランプリエールを主人公にしたんだろうけど、でもあんまり必然性がない。まあ、この一度聞いたら忘れられない苗字は、オイシイんだろうな。
 ジャンルでいうと、バロック歴史小説。18世紀のロンドンが好きな人には、垂涎の小説かも。

 で、……。
 前半面白いです。途中から、うーーーーーってww
 が、ラストに向かってくるあたりから、がぜん面白くなります。もうこのラストのために、今まで我慢(<おい)してたのね、って感じ。
 ノーフォークは長編の人ではないのかもね。と思ったので、短編を読みたいなと探してみたけど、どうやら文庫かしそうにないので、まだまだ読めそうにありません。
 次回は「教皇の犀」で、ずっしりとした歴史小説みたい。
 主人公が、魅力的ならいいんだけどねぇ。

トマス・H・クック

2006年09月24日 | ミステリー(翻訳)
緋色の迷宮
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◆「緋色の迷宮」

 主人公は写真屋を営む平凡な男性。ある日突然、息子に幼女誘拐の容疑がかけられて…。
 主人公が過去を回想する形で語られるので、全体のトーンが暗い。暗さと、疑われてでもなんともしようのない焦燥感が重なって、読んでてどきどきした。
 主人公の父や兄にも問題があって、彼はそれらから抜け出す形で今の生活を手に入れたのに、事件によってそれに引き戻されていくのが切なかった。
 家族を「愛憎を煮詰める大鍋」と言ったのはジョナサン・ケラーマンだが、クックなら「全てを引き寄せ飲み込むブラックホール」とでも言うのだろうか。

 あっという展開で終わるのだが、やはり主人公の周りは黄昏ている。
 けれど、遠い空に星の瞬きが見えるような終わり方。
 バッドエンディングのようで、そうじゃない。そして、こういう終わり方ができるのはクック以外にいないだろう。

ピーター・ロビンソン

2006年09月24日 | ミステリー(翻訳)
渇いた季節
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◆「渇いた季節」

 バンクス警部シリーズの10作目。
 渇水で干上がった貯水湖から、白骨死体が発見された。50年前に殺されたらしい被害者を追うバンクス。そして、同じ頃老推理小説家は、長らく封印していた自作を取り出していた。

 事件と小説部分が交錯する構成なので、遅々として進まず、な感じになります。が、バンクスシリーズは叙情が売りなので、それはそれはOKかと。相変わらず、飲んだり食べたりのシーンが多くて、そういうところ、好きww
 このシリーズ、講談社からはこれと「誰もが戻れない」「エミリーの不在」が出ていてあとは東京創元社から出てます。でも、数が足りない…。
 こんなに面白いのに不遇なシリーズなんですねぇ。
 ともあれ「エミリーの不在」が面白かったので、買ってみたら正解でした。
 事件やそれの解決も勿論面白いけど、バンクスの家庭や親子などのバックボーンも魅力。

 うむ。ちょっと「バーナビー警部シリーズ」に似てるかもね。

夏の記憶
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ピーター・ロビンスン

2006年07月08日 | ミステリー(翻訳)
エミリーの不在(上)

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オンライン書店ビーケーワン:エミリーの不在 下

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◆「エミリーの不在」

 家出した上司の娘が、ポルノサイトにでていた。探しだすように以来された主人公。娘は無事に家にかえったが…。
 
 シリーズものの11作目。翻訳はどーなってるんでしょうかねぇ。誰か詳しい方、教えてくださいm(__)m
 だもんで、主人公は離婚調停中。妻とよりをもどそうと四苦八苦してるところは「わかってないわね」って感じで、こんな主人公でこの先大丈夫かと思ったら、大丈夫だったww
 わかんないところは気にしない、って方なら充分面白いです。(どーしても気になるって方は1作目から読んだほうがいいかとww)
 ストーリーとしては、さほど複雑でもなく、人物像もさほど深いわけではない。表現もおおって感じでもない。でも、読み終わって胸がしんとした。
 うーーーん、誠実な作品というべきか。
 作者の誠実さが、様々に現れていて、それが物語りに深みを与えてるのだと思う。

ジェレミー・ドロンフィールド

2006年05月25日 | ミステリー(翻訳)
サルバドールの復活〈上〉

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サルバドールの復活〈下〉
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◆「サルバドールの復活」

 「飛蝗の農場」で衝撃のデビューをしたドロンフィールドの2作目。

 旧友の死に、同じ下宿に暮らしていた3人の友達が集まる。すると故人の姑から館に招待を受ける。そこで待っていたのは、恐怖だった。

 「飛蝗の農場」でも、一体何が面白いのかよくわからないままに引き込まれて、最後はああよかった。やっぱ、このミス1位になるのは違うわね、と思ったんだが、今回もうーーーんと思ってたらあれよあれよと踊らされて、最後は「やっぱりドロンフィールドは面白いわ」って思ってる。
 小説家というより、マジシャンですな。
 
 これは、過去と現在、そして聞き伝えの話とか、とっても交錯しているし、主観が変わっていても説明なしにぶんぶん進んでいくので、気を抜いてると振り落とされます。まぁ、その振り回されるのが快感といえば、いえるのでは。
 ただ、このオチというか、過程に、笑っちゃう人もいるだろうし、怒る人もいると思う。でもって、その笑ったり怒ったりする人を想像して、ほくそ笑みながら書いてるドロンフィールドが想像できて、また笑っちゃったり怒っちゃったりする。
 やっぱり、マジシャンですなww

 面白かった。でも、今年の「このミス」ははいってこない、だろうなぁ(苦笑)

ローレンス・ブロック

2006年05月19日 | ミステリー(翻訳)
皆殺し

◆「皆殺し」

 マッドスカダーシリーズ。
 友人ミックが謎の集団に襲われ、マッドも事件に巻き込まれていく。

 最近、生活が安定してきてるせいか、ハードボイルドしてなかったこのシリーズだが、今回はものすごくハード。
 物語の中盤すぎても、敵対する相手がわからない状態っていうのは、すごいはらはらした。
 でもって、やっぱり最後がいい。
 ブロックはそういう意味で、職人なんだと思う。仕上が上手い職人ww

 にしても、かなり流血シーンが多いので、そういうのが苦手な方は覚悟したほうがいいかもね。
 ま、スカダーシリーズ読んでる人は、以前に倒錯の3部作ってこれでもかっていうのがあったから、特にどうってことはないんだろうけどさww

メアリ・H・クラーク

2006年05月19日 | ミステリー(翻訳)
20年目のクラスメート

◆「20年目のクラスメート」

 ミステリーの女王、クラーク! まさに王道。

 20年ぶりにクラス会のために故郷に戻ってきたヒロイン。そこでかつて一緒にランチをとっていた7人の仲間のうち5人がすでに亡くなっていることを知る。そしてヒロインのもとには不気味な脅迫状が届く…。

 こう書くと、まぁなんとなくストーリー展開は予想がつくものなんだが、クラークはこの王道の話を、王道のまま、見事に構築している。なんつーか「お城」だねぇ。
 にしても、犯人かもって思わせてる同級生の男性達、そろいもそろって変なヤツ(つか性格悪いよww)で読んでて、うんざりしないわけでもない。が、それだからこそ最後まで犯人がわからないわけで……うーん、ジレンマ。

 1929年生まれのクラークは、すでに77歳。
 娘との共著を出したり(でも娘はいまいち面白くないんだよねぇ)しているが、ほぼ年に1冊のペースは崩していない。
 も、それだけで頭が下がるよ…。

ジョナサン・キャロル

2006年05月19日 | ミステリー(翻訳)
蜂の巣にキス

◆「蜘蛛の巣にキス」

 ダークファンタジーのジョナサン・キャロルの9年ぶりの新作。

 作家である主人公が、自分の高校時代にあった殺人事件の本を書こうとする。すると周りでまた殺人事件がおこる。

 ……ファンタジーかと思ってたら、普通のミステリーでした。
 どーしたキャロル。やっぱり、今までの作品ではマニアックすぎて売れないのか。でもって、お金が必要になったのか? と、勘ぐりたくなりました。
 が、中身は、やっぱりキャロルだった。
 なんてことない表現が、独特のキャロル節だし、展開や結末もキャロル以外にこういうもっていきかたをする人はいないだろうって。
 にしても、キャロルってどっかいっちゃってる人描かせると上手いよなぁ。

 ミステリー作家ジョナサン・キャロル。新作出たら買うから、出版社さまさくっと出してくだいませm(__)m

トレヴェニアン

2006年04月16日 | ミステリー(翻訳)
夢果つる街
夢果つる街
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トレヴェニアン 北村 太郎 角川書店 (1988/04)売り上げランキング: 121,318

◆「夢の果つる街」

 カナダのモントリオールを舞台にした警察小説。
 
 モントリオールを舞台にしてるっていうのがすでにシブイ。フランス移民ではじまった町が、次第にアメリカ人が増え、そしてヒスパニックが増え、ある意味アメリカよりも人種の坩堝になっているのを、パン屋の看板を例にとって語る部分なんか、職人技なのだ。
 主人公は、新婚早々に妻をなくし、今心臓病をかかえている初老の刑事。街を守るためには正義だけではだめという信条で動いている。
 事件自体は地味に、本当に主人公の性格を反映したかのように進んでいく。
 拾った(?)売春婦の少女が花をそえないわけでもないが、やっぱりトレヴェニアンなので絵にかいたようにはならないのであった。

 人生の無常を描いてる感じは、ブロックと似てると思うんだが、やっぱりトレヴェニアンのほうが乾燥している気がする。

 そのうち未発表作品とかって、でてくるんだろか?
 あって欲しいけど、なんか作品読んだ感じじゃ、発表を見送った作品は自分でさっさと処分しまっている人のような印象だな。

トレヴェニアン

2006年04月16日 | ミステリー(翻訳)
バスク、真夏の死
バスク、真夏の死
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町田 康子 トレヴェニアン 角川書店 (1986/11)売り上げランキング: 151,086

◆「バスク、真夏の死」

 異常な愛と死を描いた異色スリラー、だそうで…。

 双子の弟がいるヒロインで、謎めいた家庭となると、パターンはあれか、これか、とまぁなんとなくわかるもの。が、トレヴェニアンなので、一筋縄ではいかなかった。
 つか、この典型的な設定で、ここまでやるのかトレヴェニアン!!って感嘆いたしました。
 「ワイオミングの惨劇」でもラストが切なかったけど、これもラストが切ない。

 やっぱりトレヴェニアンは、ハンドリングが上手い作家なのであった。