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◆「花の旅夜の旅~昭和ミステリ秘宝」
扶桑文庫で、「昭和ミステリ秘宝」と銘打ったシリーズを出しているものの1冊。いい作品なのに、絶版になってしまったものをなんとかしてくれるというありがたいシリーズ。
お陰で、「聖女の島」読めました<感涙
「花の旅夜の旅」と「聖女の島」との中編2本のミステリー。
どちらも技巧的な目くらましがあって、さすが皆川博子だ、上手いもんだと思う。「死の泉」からはいった読者にとっても、多分ミステリー色が強いと感じるだろし、他の推理小説からはいった読者にとっても、ファンタジー色が強すぎると感じるだろう。
と、かくと中途半端な印象を受けるかもしれないが、ミステリーとファンタジーのボーダーでしっかり立つというのは、皆川博子にしかできないことかもしれない。
ともあれ、「聖女の島」だ。
有栖川有栖川の「作家の犯行現場」で軍艦島を舞台にした小説と紹介され、絶版になっていると書かれていた時のショックときたら…。
でも、こうやって復刊(?)され読めるのだから、復刊ドッドコムなどの地道な活動の成果なのかもしれない。って、よくわかんないけど。
廃墟の島、軍艦島に女子矯正施設が作られ…という、この設定だけで薄ら寒い。
最初、これの舞台を軍艦島にしたのは無理があったのではないかと感じた。それほどあの島の荒廃はすさまじい。あれは他をまったく寄せ付けない、なにもかも拒否する島だ。
が、最後にはそのマイナスのエネルギーとも思える島の影を、包み込み昇華していくのだ。
全く、すごい。
軍艦島マニアなので、ちょろちょろ読んでますが、軍艦島舞台小説のベストは、
この「聖女の島」と恩田陸の「Puzzle」だと思う。